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スペシャルレポート第4回
<鼎談>髙島宏平氏・間下直晃氏・南壮一郎氏
「『複業』の時代 多様な経験積み 新たな価値生み出そう」

経済同友会は「みんなで描くみんなの未来プロジェクト」の一環として、会員である経営者が情報発信するシリーズを連載しています。第4回は、髙島宏平氏(オイシックス取締役社長)、間下直晃氏(ブイキューブ取締役社長)、南壮一郎氏(ビズリーチ取締役社長)の起業家3人による鼎談(ていだん)です。

3氏はいずれも若くして会社を立ち上げ、それぞれの分野でパイオニアとして市場を切り開き、独自の地位を築いてきました。なぜ起業の道を選んだのか、これから成し遂げたいことは何か、日本の企業や社会はどう変わっていくべきか。若手ビジネスパーソンやこれから社会に出る世代に熱いメッセージをお届けします。

世の中にない だったら自分で作る

髙島氏フォト

髙島 今日は起業家3人による鼎談(ていだん)ですが、若い方々に「起業した方がいいよ」と、ことさら勧めようとは思っていません。私たちはたまたま、自分で会社を設立しただけです。ただ、起業して会社を経営する中で、いろいろ学んだことがあります。それをお伝えして、将来を考える際に何かのお役に立てればと思っています。

 そうですね。まず私のことからお話ししますと、2009年4月に、即戦力人材に特化した転職サイトを立ち上げました。もともと起業するつもりはなく、自分自身が転職先を探していた時に、ものすごく不便を感じたからです。プロの経営人材に関する情報はほとんど公開されておらず、人を介してなど限られた手段でしか情報が得られない。前職の経験から、ITを活用して社会の課題を解決することに大きな可能性を感じていたので、それなら自分が人材プラットフォームを作ればいいんじゃないかと考えたわけです。

起業したもう一つの理由は、自分たちの時代に合った新しい働き方が必要だと思ったことです。父の仕事の関係で海外生活が長かったのですが、自分が働くようになってから「日本はどうしてこんなに働き方が窮屈なんだろう」と感じました。人は会社に頼り、会社も人を手放そうとしない、そんな風に見えたのです。自分のやりたいことや目標、必要なスキルを明確にし、主体的にキャリアを考えていく。これからはそんな価値観が大切になると思いました。

間下 私の場合は19年前、学生時代に始めたウェブサイトの受託制作がスタートです。ですから就職はもとより、アルバイトもしたことがありません。米国に開発拠点を置いた際、既存のテレビ会議システムを購入しようとしたのですが、高価で買えず、ウェブ会議サービスは使いやすいと思えるものがなかった。そこで自分たちでサービスを作り、しばらくして「これは売れるんじゃないか」となり、外販を始めたのです。幸い、他のサービスに比べ技術優位性、価格競争力があり、どんどん顧客が増えた。自分が生み出したものにお金をいただけるのが単純にうれしかったですね。私も起業するつもりはなかったのですが、やりたいことをやり続けるために、会社というハコが必要だったという感じです。

髙島 僕も学生時代に仲間と会社を作り、インターネットを使った事業をいろいろ手掛けました。事業は順調でしたが、世の中をよくする大きなインパクトのあるビジネスをやりたいという目標があった。そのためにはメンバーそれぞれが社会に出てビジネスを学んだ方がよいと考え、僕は大手コンサルティング会社のマッキンゼーに入社しました。そして2年後、再結集して設立したのがオイシックスです。ネットを活用して安全で新鮮な食材を効率よく届けられる仕組みを作る。当時はネット先進国の米国でも成功例はなく、ゼロから自分たちの力で新たな価値を作ることに大きなやりがいを感じました。

鼎談風景。左から間下氏、南氏、髙島氏

 間下さんは5年前、シンガポールに住居を移されました。アジアで事業を拡大するために社長自ら現地で陣頭指揮をとるのは、すごい決断ですよね。

間下 最初は駐在員を置いていたのですが、現地特有の事情があってなかなか事業が前に進みませんでした。報告書が送られてきても、日本の本社にいると理解できないことが多いし、海外のことは後回しにされがちです。それなら自分が行って実際に見た方が、話が早いと思ったのです。社長が言えば、日本の本社も聞かざるを得ませんしね。

海外にいると、日本の良い面、悪い面がよく見えるというメリットもあります。日本は市場が大きく、規制や言葉の壁に守られていることもあり、アジアに比べると恵まれた環境だと思います。一方、守られていることの弊害もあって、何をするにしても画一的で、みんなが同じでないといけないという風潮が強すぎます。例えば働き方にしても、自立して自分の時間をコントロールして成果を出せる人と、そうでない人がいます。それを一緒にして1つの制度や枠にはめようとするから無理が生じているように思います。

 もっと多様な働き方を認め合う価値観が必要ですね。

間下 そうです。労働関連の法律も多様性を前提としていません。個人個人が理想の働き方を追求するには、法律も、会社の制度も、技術も整備していく必要があると思います。今、世界では、AI(人工知能)に人間の職が奪われるのではないかという脅威論が叫ばれていますが、日本は人口減少でAIに助けてもらわなきゃいけない。AIとどう共存していくかの議論も急ぐべきですね。

南氏フォト

「副業」から「複業」へ 多様な価値観が武器になる

髙島 1人が1つの職業だけに就くという時代ではなくなっているんじゃないでしょうか。僕自身、オイシックスの社長であると同時に、東北復興を支援する団体の代表でもある。新潟県で開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や、アフリカの食の応援をするNPOにも携わっています。経済同友会では、この4月から東京オリンピック・パラリンピック2020委員会の委員長に就任しました。

そもそも、日本では1人が1つの仕事をするようになったのはそんなに昔のことではありません。諸説ありますが、農家の人を「お百姓さん」と呼ぶのは、100個の仕事ができる人という意味なんですね。農作業以外に、大工もやれば鍛冶もやる。尊敬を込めた呼び方なんです。日本はすでに人口減少社会になっているわけで、1人が2役も3役もやらなければ回らない。1人1役はいずれ時代遅れになるでしょう。

 先ほど僕が言った窮屈さも、そこに通じるのかなと思います。本来、仕事は楽しいものだし、仕事を通じて人生を発見していくものであるはず。1つの職業、1つの役割に縛られず、若い人たちには柔軟に考えてほしいですね。

髙島 本業のほかに、NPOに参加したり、自分の得意分野を生かしたアルバイトをしたりすることをお勧めします。価値観の違う人たちと交わることで世界が広がり、それは本業にも役立つはずです。それを許さないような会社には就職しなければいい。(笑)

 副業というと、本業の片手間にこっそりとやるようなイメージがありますが、これからはいろんな仕事を並行してやるのが当たり前になる。「副」でなく、「複」業に変わっていくのかもしれませんね。

髙島 アップルを創業したスティーブ・ジョブズは学生の頃、選択していなかったカリグラフィー(文字を美しく見せる手法)の授業に出ていて、それが後にパソコン「マッキントッシュ」の美しいフォント作りに役立ったそうです。自分の中で「越境する」ことで、仕事の幅がすごく広がると思うんですね。他の人ができることを自分もできるようになる努力より、自分のオリジナリティーを作る努力の方が大事です。

間下氏フォト

間下 それを身に付けるには、若いうちに海外に行った方がいい。日本人は横並びのメンタリティーが強いですが、海外では独自性や個性が尊ばれますし、同じだとむしろ評価されない。人と違っていいんだ、人と違う方がいいんだという価値観を持つ人が増えると、日本の社会もずいぶん変わると思います。

 ふだん自分が過ごしているコンフォータブル・ゾーン、つまり居心地のよい環境から出て初めて、人は本気で努力するのではないでしょうか。私は父の転勤で日本と海外を行ったり来たりしたので、小さい頃からずっと「マイノリティー」でした。新しい環境に出会うたびにストレスを感じてきましたが、だからこそ、アイデンティティーやいろんなことを考える機会に恵まれたのかなと思います。

髙島 僕はこの3人の中では一番ドメスティックで、これまで海外に滞在したのも最長で10日間です。でも働いてきた環境、ともに仕事をしてきた人はさまざまで、国内にいても多様性は感じられると思うのです。例えば経済同友会の活動も、僕にとっては新鮮です。ふだんは会えない大企業のトップの方々とお話ししていると、僕たちのようなベンチャーとは異なる企業文化を知ることができて発見も多い。若い人にとっては、自分の会社の社長と飲みに行くだけでも発見があると思います。

間下 社長の方もそういう機会を求めているかもしれません。

 難しく考える必要はないということですね。新しい環境に身を置くために、自分が何かを発案して中心で動かなければならないと考える人もいますが、まずは面白いことをやっている人に巻き込まれてみればいいと思います。髙島さんの活動のお話をうかがうと、いろんな人が気軽な感じで参加して、それぞれの役割を担っていますよね。

髙島 おっしゃるとおり、世の中には誰かの助けを求めている人がたくさんいます。そういう場所に参加して感謝されると、こちらのモチベーションも上がります。コツは歯を食いしばらないこと、楽しくやることです。

 僕はよく学生の方から「将来に向けて何をすればいいか分からない」と相談を受けます。そういう時は「渋谷のスクランブル交差点に1日中立って、重い荷物を持っている高齢者の方を手伝ってごらん」と答えています。これは一例で、高齢者の方以外にも困っている人は身近にたくさんいる。とにかく何でもいいから動いてみることですね。

髙島氏フォト

身に付けてほしい 英語、柔軟性、努力する能力

間下 いま日本では「働き方改革」の議論が盛んですが、やはり多様性の視点が欠けているように思います。ネットを使えば、時間や場所を選ばず働ける時代です。そもそも副業を認めるようになれば、残業の定義もまったく変わってくるはずですよね。

南氏フォト

 まったく同感です。一人ひとり、意欲やスキルは違います。これからは個人個人が兼業や副業も含めて、どう働き、どうアウトプットするかをきちんと考える。そして、それをお互いに認め合う。これがファーストステップになると思います。

髙島 僕は働き方について政府があれこれ言うこと自体に危機感を覚えています。本来は働く人それぞれが決めることであり、企業も重い責任を負っているはずです。経済界が主体となって解決策を見いだすべき問題ではないでしょうか。

間下 働き方問題の根底には、日本の労働生産性の低さがあります。これを引き上げるには、「値下げ文化」を何とかしないといけないですね。日本は手間暇をかけて素晴らしいものを作りながら、それを安く提供する競争に陥っています。アジアは逆で、質はそれほどでなくても高く売ろうとする。このしたたかさは見習うべきだと思います。

また、デフレは雇用の流動性が低いこととも関係しています。例えば、シンガポールでは転職する場合、給与が15~20%くらい上がるのが相場です。企業は優秀な人材を引き留めるために給与を上げざるを得ない、だから商品価格も上がる、というサイクルが回っています。ところが日本では転職すると給与が下がってしまうことが多い。これでは経営者が給与を上げるインセンティブは働きません。

 米国で雇用の流動性が高まったのは、1980年代にIBMが数十万人を解雇したことがきっかけと耳にしたことがあります。米国では競争力の低下と市場の圧力により、生産性の低い事業や人員を削減せざるを得なくなった。一方、優秀な人材は給与を上げて確保する。結局、この議論は格差をどこまで認めるかという問題に突き当たります。

髙島 非常に難しい問題ですが、僕たちの世代が主体となって解決しないといけないことの一つです。そのためにはどうすればいいか。組織にはそれぞれ、そのなかで流通する「言語」や「文脈」がありますが、同世代でベンチャーの世界と大企業の世界の両方の言葉で話せる人、つまりバイリンガルは多くありません。ましてや政治の世界も含めて話せるトリリンガルはほとんどいない。今日話してきたような難しい課題を実際に動かしていくには、まず僕たちの世代がもっと交流し、属しているコミュニティーを超えてお互いの言葉を理解することから始めてはどうでしょうか。

間下 最後に、若い世代に向けたメッセージを一言ずつ。まず私からは、多様なこと、みんなと違うことが評価されるべきだという価値観を持ってほしいですね。そして、やはり英語を身に付けること。日本企業はこれからグローバル市場で成長していくしかないわけですが、英語を話せる人材が圧倒的に少なすぎます。

 80歳まで働く時代はすぐそこです。新卒のみなさんなら60年働くことになるかもしれない。仕事が楽しくなければ、人生は楽しくありません。猛烈なスピードで時代が変化する中で、柔軟に変化し続けられる礎を若いうちに身に付けてほしいと思います。

髙島 年齢を横軸にとって人間の成長度合いをグラフにすると、もっとも急な上昇カーブを描くのは20代です。皆さんはいま、人生最高のスピードで成長しているはずです。そのスピードは十分ですか、加速度は足りていますか。確認してみてください。ムチャなことができるのは若いうちだけです。20代のうちに、努力する能力をぜひ身に付けてほしいですね。

間下氏フォト


髙島宏平氏フォト

髙島宏平(たかしま・こうへい)

経済同友会 幹事(役職はインタビュー当時)

プロフィル

1973年神奈川県生まれ。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、マッキンゼー日本支社に入社。2000年6月、オイシックスを設立し代表取締役社長に就任。2013年3月に東証マザーズ上場。2016年12月には、有機・無農薬野菜販売の草分け的存在である「大地を守る会」との経営統合に合意、新会社社長に就任予定。2007年、世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出される。
2014年経済同友会入会、2016年度から幹事。2017年度に「東京オリンピック・パラリンピック2020委員会」の委員長に就任。

間下直晃氏フォト

間下直晃(ました・なおあき)

経済同友会 幹事(役職はインタビュー当時)

プロフィル

1977年東京都生まれ。慶応義塾大学理工学部に在学中の1998年にブイキューブの前身となるブイキューブインターネットを設立し代表取締役社長に就任。2002年、同大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻修了。2002年、ブイキューブに社名変更。2013年12月に東証マザーズ上場。2015年7月に東証1部に市場変更。
2010年経済同友会入会、2014年度から幹事。2017年度に39歳で「新産業革命と規制・法制改革委員会」の委員長に就き、経済同友会では56年ぶりとなる30歳代での委員長就任となった。

南壮一郎氏フォト

南壮一郎(みなみ・そういちろう)

経済同友会 会員(役職はインタビュー当時)

プロフィル

1976年大阪府生まれ。1999年、米タフツ大学卒業、モルガン・スタンレー証券入社。2004年、東北楽天ゴールデンイーグルスの創設に参画し、初年度からの黒字化に貢献。2009年、ビズリーチを設立し代表取締役社長に就任。2014年、世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出される。
2016年経済同友会入会。2017年度は、経済同友会の組織運営改革を検討する「経済同友会2.0を実践推進するPT」で活躍。

  • この企画は、日経電子版特設サイト(広告特集)記事の再掲です。

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