代表幹事あいさつ

新たな経済社会創造に向けて
―令和モデル「共助資本主義」の実現―

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経済同友会 代表幹事
新浪 剛史
サントリーホールディングス
取締役社長

 今、日本の経済・社会は、20年余りに及ぶデフレ・スパイラルのトンネルの先に、出口の光が見えており、数十年に一度の大きな転換点を迎えています。一方、世界は、「地政学の時代」、レアル・ポリティークの再来が色濃く予見され、わが国もその激動の渦に巻き込まれています。

 動かずにいれば負けるインフレの時代に求められるのは、前例にとらわれず、しがらみを絶ち、リスクテイクしていく野心と意欲――アニマル・スピリッツです。野性とともにイノベーションを喚起し、資本主義のダイナミズムを取り戻さなければなりません。
 日本の復活と言われますが、経済成長をもたらす資本主義のダイナミズムは、厳しい競争と新陳代謝を前提にしています。また、経済全体が成長しても、社会の豊かさや人々のwell-beingにつながらなければ意味がありません。

 そこで、私が提唱しているのが「共助資本主義」です。共助資本主義の根底にあるのは、あくまでもイノベーションによる成長を前提とした資本主義です。
 共助資本主義において、企業は、社会課題の解決に取り組むNPOなどのソーシャル・セクターと連携することで、社会に欠かせない一員になります。ソーシャル・セクターに企業社会から資金や技術が供給されることにより、「自助」「公助」だけでは不十分なセーフティ・ネットが「共助」の力で強化されます。
 また、社会と強く結ばれることにより、企業のレジリエンスは向上し、将来的なリスク・プレミアムが縮小され、企業価値を引き上げることができるのです。

 日本の経済・社会が大きな転機にある今、私たちは、人口増加と高度成長を前提とした仕組み、あるいは「失った30年」のデフレ社会に最適化した政策である「昭和・平成モデル」と決別し、民主導で大胆に経済・社会構造を作り替えていかなければなりません。内にあっては人口減・高齢化と共にあり、外にあっては地政学の時代を生き抜くための、令和モデルとして「共助資本主義」を形作る、そのために早急に取り組むテーマとして、雇用・労働政策、財政・社会保障政策、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)、政治・行政改革、エネルギー政策の5つを挙げます。

 また、経済同友会自身の成長にも取組んでいきます。「会員エンゲージメント委員会」や経営者としての視野の拡大を図る「リベラルアーツ・プログラム」を新設し、相互研鑽やネットワーキングの機会の拡充により会員の満足度を向上したいと思います。さらに、会員数2000名以上を目指す「プロジェクト2000」を展開し、幅広い業種からの入会を促進していきます。

 代表幹事就任時に掲げた3つの活動方針をあらためてお伝えします。優れた世界の英知と「つながるConnect」、私たち自身にも多様性を取り入れる「開くOpen」、そして、自らと社会を変えるために「動くAct」。ともに脳漿を絞り、汗をかいていきましょう。
 

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