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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2020年6月16日(火) 13:30~
出席者 櫻田 謙悟 代表幹事
橋本 圭一郎 専務理事

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新型コロナウイルス問題に対する中長期的な対応方針についての意見

橋本専務理事から「新型コロナウイルス問題に対する中長期的な対応方針についての意見」について冒頭発言があった。続けて櫻田代表幹事から「ウィズ/アフターコロナ・イニシアティブ」について冒頭発言があった。その後、櫻田代表幹事が記者の質問に答える形で、本日当会が発出した「ウィズ/アフターコロナ・イニシアティブ」概要、「中長期的な対応方針についての意見」に加え、倒産件数、独立財政機関、第201回通常国会(給付事業、イージスアショア)日銀の金融政策、雇用(ジョブ型、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度)などについて発言があった。

冒頭発言(橋本専務理事):
まず「新型コロナウイルス問題に対する中長期的な対応方針についての意見」について、ご説明させていただく。はじめに、経済同友会では、6月4日の通常総会後の会見で短期、中期、長期に必要な施策について検討し、短期については同日「第2次補正予算案を中心とした直近の施策についての意見」として公表した。また、長期については、「ウィズ/アフターコロナ・イニシアティブ」 を設置し、日本再生に向けた検討を進めていくことを発表した。本日は、政府の経済財政諮問会議において有識者議員が提案しているワクチン開発・治療薬の普及や医療・検査体制の強化、家計、教育、雇用対策などについては我々も賛同した上で、それらに加えるべき事項に絞り、長期戦略につながる中期的な政策課題として、政府のいわゆる「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2020)などに盛り込むべき事項をまとめている。基盤整備の「(1)さらなるデジタル化の推進」では、まず民間部門において、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を進める必要があるとしている。「2025年の崖」として警鐘が鳴らされている、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを刷新することがまずは不可欠だと考えており、投資促進税制など税制面での手当を期待したいという意見を最初にあげている。次のところでは、DXなど電力を必要とするものが増えるため、日本の電力需要構造の変化が起こる。これに備えて、いわゆるVPP(バーチャルパワープラント)等の新たな技術の導入によって、低炭素化への要請にも応えるエネルギーシステムの再構築をはかるべきであると謳っている。次に、「デジタル・ガバメントの刷新」では、政府のデジタル・ガバメント政策においては、国民目線の欠如、議論の不透明さ、ガバナンスの欠如等が課題として指摘されている。内閣官房IT総合戦略室の機能・体制を抜本的に強化し、国民の信頼を取り戻すことが先決であると述べた上で、国主導の地方行政のデジタル化のための環境整備を進めるべきとしている。具体的には、地方自治体のデジタル化が進んでいない状況に鑑みて、国主導で構築したシステムをもとにして、事務の標準化、統一化を地方自治体ではかると同時に、非効率な業務の洗い出しなどによってデジタル化を活かしたBPR(業務改革)を徹底して、業務プロセスを刷新する必要がある。次の「地方創生の加速と東京の競争力強化」については、BCP(事業継続計画)の観点からも、東京一極集中の是正を求め、リスクの分散を図るべきとしている。そのためにはまず、政府関係機関の地方移転を再検討、そして企業の地方展開を支援するための税制対応を強く求めている。その一方で、東京の国際競争力の強化も必要であるとし、デジタルを活かした生産性の向上、海外企業の進出促進を図るための環境整備を求めているが、これについては少し詳しくご説明させていただく。テレワークの推進により、通勤時間の長さ等、生産性の向上を阻害する要因が東京においても解消しつつあるが、東京の場合、他のところに比べて、高度に産官学の機能が集積する大きな強みを持っている。その強みを発揮するために、「デジタル(リモート)」と「リアル(対面)」を、臨機応変に組み合わせたハイブリッド型都市モデルを構築するアプローチが必要なのではないか。さらに、海外のテック企業が、日本の東京の産官学の拠点が集積し、サービスの検証や実装を短期間で行うことができる環境、これによって東京を魅力的に捉えていることは間違いない。また、香港を巡る情勢が不透明となる中で、アジアにおける国際金融ハブとしての東京に対する期待が高まっていることも事実であると思う。その実現のためには、これまでも言われてきたが、国際金融に関連する規制の見直しと共に、これもずっと指摘されてきた海外企業の進出をはかるための環境整備をはからなければならない。続いて、「2.経済の回復と成長」の「(1)企業経営の変革支援と新産業の創出」では、テレワークが拡大する中、企業が新しい働き方に対応した就業規則の改訂などに対応する必要があることを踏まえ、政府に対しては、こうした動きに対応する法令の整備に早急に取り組んでほしいと要望している。さらに、ものづくりだけでなく、アフターサービスやメンテナンスも含めた多面的な事業パッケージを、官民が連携して諸外国に積極的に展開すること、農業のデジタル化推進、伝統産業の保護について述べている。2点目の多面的な事業パッケージという言葉が分かりづらいかと思うため、補足させていただく。ここについては、いろいろな観点から議論があり、恐らく一日中議論になるような問題かと思うが、ここでは「すり合わせ」「組み合わせ」ということに的を絞ってコメントをさせていただいている。日本が誇る自動車産業、これはおよそ3万点からなる部品で組み立てられており、日本においては大企業、中堅企業、中小企業ということで、優れた技術を持った裾野産業がある。これが上手く連携されていくと、あるいは組み合わされていくと、大きな力になる。さらにAIやロボットをこれに組み合わせていくと、さらにこの組み合わせの力が強力なものになる。産業の枠を超えて組み合わせをした例からすれば、前田建設グループ(MAEDAグループ)が愛知県の道路公社から、コンセッションを受けた例、これは前田建設工業株式会社や大和ハウス工業株式会社、大和リース株式会社、あるいはオーストラリアのマッコーリー、こういったところが、通常の道路運営の受託をうけたわけであるが、既存のPAのつくりなおし、新たなものをつくってみたり、需要動向を見据えたうえで少し離れたところに外国人用のホテルを作ったり、牛の糞を活用したバイオマス発電を運営のところに組み合わせたりと、国内で初めての民間の道路コンセッション事業の具体的な事例が出てきている。さらにITやAIの活用ということでいくと、道路会社の検査システムが大きな典型例である。今までのようにひび割れや老朽化のチェックについて、いつまでも人手に頼れないところがあり、ドローンの活用、道路を無人の小さな自動車のようなものを走らせることによるデータ収集を行うなどして、新しい産業を生み出して、それを海外にも展開できる事例が生まれている。この辺のところを「組み合わせ」「すり合わせ」という形で述べさせていただいた。さらに「(2) 新たな国際協調体制の構築に向けて」では、アジア重視の観点から、中国・インドを含めたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)協定交渉をASEAN諸国と手を携えて主導すること、さらに自由貿易のルールメイキングに積極的に参画すること等を通じて、新たな国際秩序形成においてリーダーシップを発揮すべきと謳っている。次の「3.財政問題への対応」としては、最初に「(1)特別会計の設置」として、「新型コロナウイルス問題特別会計(仮称)」を設置して管理すべきと指摘している。これにより、新型コロナウイルス対策に係る費用の予算実績を可視化でき、国民の信頼性を高めることが可能となる。2番目として「(2)EBPMの推進」に努めるべきとしており、今後このEBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)の考え方に基づく評価と検証を行うことが重要としている。これまでもEBPMの必要性、重要性は再三訴えられているが、現状は浸透していない。今回もこの機を捉えて、EBPMの手法を政策立案プロセスに根付かせるべきであると強く訴えさせていただくと同時に、これを機能させるために、民間企業や学術界で活躍する人材をさらに巻き込み、この推進体制自体を抜本的に強化すること(の必要性)を述べさせていただいている。その次に「(3)民間資金の活用」ということで、地域経済の活性化のために、PPP/PFIの活用を訴えている。民間活力の利活用は不可欠であり、民間の資金・経営能力・技術的能力を活用し、地域経済のボトムラインの悪化を食い止める(必要不可欠なサービスを維持する)、それからトップラインの伸長(需要の創出)を実現する仕組みとして、地方において積極的に推進する必要があると謳っている。さらに、今般のコロナ対策で、地方財政自体も負担が増えることが予想される中、今朝もどこかで下水管が破裂して水浸しになっていたことが報じられていたが、各地のインフラの更新自体は待ったなしの状態にきている。そうした中で、財政負担の軽減・抑制につなげるには、一層のPPP/PFIの活用が有効である。PPP/PFIは事業の採算性のチェックに有効であると同時に、民間経営手法による効率化を通じた支出削減も期待できる。ただ、残念ながらまだこれを活用している自治体は、2割程度に留まっており、8割程度のところが活用していないことが日本の状況である。したがって、ここについては例えば、木更津市と周辺三市による新火葬場整備運営事業において、財政負担が軽減された例や、岩手県紫波町において、駅前都市整備事業を補助金に頼らずに実施し、地域活性化に成功したPPPの非常に良い成功事例があるので、こういった成功事例を横展開、推進することに使用していったら有効ではないか。最後に、「4.緊急事態における政策のあり方」では、現在の新型インフルエンザ等対策特別措置法による感染症対策の特性、すなわち「私権の制限は最小限で、「要請」によって行動変容を求める」にふれたうえで、今後仮にウイルスが致死性の高いものに変異し、広範囲で急速に感染拡大する場合などには、対処できないリスクに言及している。そのため、検査や隔離、感染情報の開示など、一定の強制力をもって対処すべき事象を洗い出し、対応する法令や支援の枠組みなどの検討に、早期に着手する必要があるとしている。

冒頭発言(櫻田代表幹事):
先日の所信表明の時に記者会見させていただき、代表幹事イニシアティブとして 「ウィズ/アフターコロナ・イニシアティブ」を起ち上げたいと話をした。その後ご意見をいただいたり、質問をいただいたり、また近隣の団体からもどのようなことをやろうとしているのかという質問をうけたので、コンセプトをはっきりとご説明申し上げて、皆さまの意見を聞きながら進化させたい。まず、どうしてやりたいかについてであるが、要は現在の政策決定プロセスというのは、言ってみれば世論があって、そしてメディアの方がいて、それを省庁が吸い上げていって、最終的には内閣にかけ、場合によっては法案にかけるということでもって予算が決まっていったり、法律が決まっていったりするものであり、これ自体は、決して悪いどころか機能すれば問題ない。ところが、今起きている問題は、まさにステークホルダーキャピタリズムと言われているように、単一のステークホルダーではなく、さまざまなステークホルダーがそれらの意見をいろいろ発信しながら、何が相場であるか、あるいはどうやってプライオリティをつけていくのか、しっかりと透明性高く議論されなければいけない。したがってここで言いたかったことは、今のやり方だと複雑に絡み合った利害の調整に、膨大な時間と努力を要する既存の政策決定プロセスだと私は思っている。特に社会保障制度を見ると、それは皆さんが実感される通りである。従って、どうしても民主主義そのものは、やはりポピュリズムに陥りやすいものであるため、大胆な決断実行は難しい。それに対して、今日本が抱えている状況は、まさに日本の将来を、今ここでコロナ禍を機に、奇貨として、政策を大胆に決定して急いでやっていかないといけないと(思う)。しかし、そのためにはさまざまな意見が必要ということで、どうやったらいいだろうと考えたところ、要は日本の主要課題を特定し、改革の論点と選択肢を提示し、政策形成プロセスを複線化する。それによって最終的な意思決定に、強い影響力を与えていければ、これは日本の変革に多少なりとも大きな力を生み出すことができるのではないかという趣旨である。したがって、このプラットフォームの名称はこれから決めるが、対話型、対話プラットフォームというように例えばした場合、これの参加者は、ステークホルダーの代表であるから、企業、労働組合、アカデミア、マスメディア、政治、行政、地方団体、NPO、NGO、これらのオピニオンリーダーが、リアルもしくはバーチャルに参加していただいて、少し誤解を生むとまたいけないが、ダボスのようなものをつくりたいと考えている。その時に、ただ集まって、意見交換するだけであれば、今でもたくさんあるであろうとなるわけで、やはりそこは、テーマの設定、それから論点の絞り方あるいは事務局が必要になるため、経済同友会は、このような形で事務局機能を担いたいと思っている。何を議論するのかであるが、具体的な例としては、足元は先ほど申し上げた、いわゆる骨太で議論されているものよりもさらに先、そしてそれよりももっと国民レベルでの意思決定が必要なところになっていく。例えば、端的に言うと東京一極集中をいつまで続けるのか、若者の政治参画、現在と未来の選択といった時に、若者が政治に参画しないでどうやって将来が選択できるのか、それから、ウィズ/アフターコロナ、今はウィズ/アフター/ウィズというのか、ウィズがあって、アフターがあってまたウィズであるから、その時の働き方は、このようなレベルでいいのだろうか。それから90兆円を超える(新規の)赤字国債が出るわけであるが、PB(プライマリーバランス)を、2025年(にゼロにすること)を忘れてしまってはいけないが、現実的にできるかどうかが分からない。しかし、そのためにどうするかと、独立財政機関を作るべきではないか。持ってないのは日本だけである。それから、次がステークホルダー資本主義と企業価値の向上、これは何か綺麗な言葉に聞こえるが、端的に言うと、日本の企業、一部上場企業二千数百社全部の時価総額を合わせても、GAFA5社に勝てないという状況は異常ではないか。でもそれは、もしかしたら日本の企業が足りないという以上に、日本の企業が貢献している、創出している価値が正しく評価されてないからかもしれない。価値向上とは何であるかというと、それは意思決定システム、機関であるが、今回のコロナを機に、国民の責任感や公の意識によった意思決定の仕組みでいいのであろうか。最後は、言わずもがなで、デカップリングが間違いなく進んでいく中で、日本の立ち位置はどうするのか、これでいいのであろうか。今日の(イージスアショア)ミサイルの話も、もしかしたら(安全保障上の大きな問題となる)というようなことを、少しやっていく中で、これは経済同友会だけではできない。皆さんの意見も必要でありアカデミアも必要である。いろいろな方の意見をここが論点であるということができて、発表できればよいと思う。具体的な運営については、参加していただく方々の意見をしっかり入れながら、事務局機能を担っていきたいという趣旨であるので、何卒ご支援いただきたい。

Q : まず足元の状況について、民間調査会社によると新型コロナウイルスが影響した倒産件数は今日までで全国で250件と増加のペースは幾分緩やかになっているが、引き続き厳しい状況になっている。景気の現状と今後の見通しについて所見を伺いたい。

櫻田: 非常に厳しい状況であり、業種的には飲食業、宿泊業、小売り業等、まさにB to CのCの部分に関わるところが厳しい状況である。ただ、例えばPOSデータの集計を見る限りでは、急速に回復してきているため、希望を含めてだが最悪の事態は脱したと思いたい。ただ、それは第1波を何とか乗り越えることができたということであり、米国で懸念されているような第2波が本当にやってくると、また一気に(景気が)下がってくる。この時間を稼いでいる時に次の第2波、第3波に備えることが重要である。繰り返すと、厳しい状況ではあるが、最悪の時期は脱したと考えている。

Q : 対話のプラットフォームをつくりたいという話について、これは要するに政策の決定プロセスの複線化を図るということだが、民間審議会のようなイメージを考えているのか。

櫻田: どのようなイメージかと言われると、おそらく新しいイメージのため、まだ世界にないと思う。ダボス的なものでもあり、民間の臨時行政調査会(臨調)のようなものでもあるかもしれない。それに比べてどう違うかと言うと、(今日では)圧倒的にステークホルダーが多様化しており、かつそれぞれのステークホルダーの意見が重要になってきていることがポイントである。20年前にLGBT(Lesbian/Gay/ Bisexual/ Transgender)の存在感は(現在ほどには)なかった。今、米国で起きているBLM(Black Lives Matter)も(大きな問題にはなってい)なかった。新型コロナウイルスが発現させた課題は、単線的なものの捉え方や単線的な政策決定は難しく、それを民間審議会と呼ぶのか、民間臨調と呼ぶのか、ニューダボスと呼ぶのかわからないが、とにかく、誰かがそのようなものをまとめていかなければ(ならない)。経済団体だけで経済問題について話し合うと言っても、おそらく政策が片手落ちになり、総合的な政策になっていかないのではないか。特に将来の日本を設計するにあたっては、それが必要だと考えている。

Q : 独立財政機関について改めて伺いたい。赤字国債をさらに発行していくということで、日本だけが持っていないもの(独立財政機関)を、期限を決めて設立すべきとの考えの説明をお願いしたい。

櫻田: 経済協力開発機構(OECD)加盟36か国のうち、28か国が独立財政機関を設置しており、(日本が)マイノリティであることは間違いない。設置国では、イタリアを含めて、財政赤字が確実に改善されており、設置していない日本(の財政)は悪化している。この現象だけ捉えたときに、独立財政機関が不要という理屈は成立しないと私は思う。期限について申し上げたのは、国会内に調査委員会を設置すればよいという議論があるが、それならば、いつ誰がどのように委員会の設置を提案し、議論の俎上に載せていくか(必要なのに)、誰もまだ言い出していない。誰かが言い出して動き出さないと議論にもならない。今この場で、私が(今年度の国債新規発行額)90兆円や2025年度プライマリーバランス黒字化は相当大変と申し上げると、おそらく猛烈な批判を浴びる。目の前で(コロナ禍という)火が燃えているときに、どのように火を消すかではなく、そのあとの対策という甘い話をしている場合じゃない、という批判が出るだろう。ただ、誰かがこの話をしないと、全員が足元の問題(の対応)で、(今が)将来世代からお金から借りている状態という危機感を共有できない気がしてならない。いつまでに何をするというよりも、早く提案して早く俎上に載せたい。そのために、経済同友会が新たに設置する対話プラットフォームを使えないかと思っている。

Q : プラットフォームは日本版ダボス会議のようになると思うが、第1回の開催時期、人数規模など、現在確定しているイメージがあれば伺いたい。

櫻田: プラットフォームのイメージをもう少し固め、賛同者を増やしてから披露しようと思っていたが、二つの理由で、早めに発表することとした。1点目は、早く起ち上げるということが必要だったため、(企画が)生煮えかもしれないし、メディアの皆さまから批判があるかもしれないが、一方で提案をいただける可能性があることから、早く発表することとした。2点目は、出来上がったものに参加してもらうのではなく、(参加者と)一緒に作るというスタンスでないとこの種のプラットフォームは上手くいかない。事務局が参加者の選定やテーマの設定をしているのでは、ここで意図するところでのプラットフォームにはならない(ため、早めに発表した)。時期について、私の目途としては9月中旬の夏季セミナーでプロトタイプを起ち上げ、年内には第1回目の具体的な活動を開始したいと考えている。第1回の人数規模はこれから考えたいが、まずは数よりも多様性や質を重視してスタートしたい。また、(経済同友会の対話プラットフォームを)わかりやすくダボス会議と申し上げたが、50年前に設立されたダボス会議と同質ではない。ダボス的としたのは、ダボス会議が何かを決定するところではなく、アジェンダを設定しているためだ。(経済同友会のプラットフォームでは)アジェンダ設定だけでなく、日本のために起ち上げるので、具体的なテーマを取り上げ、論点を整理する。そうした意味で、ダボス的なものであり、ダボスではないことを申し上げたかった。

Q : 「中長期的な対応方針についての意見」に関して2点伺いたい。制度改正や法改正につなげるためには、従来通り、省庁へ提言を出していく形を考えているか。もう1点は、東京一極集中の点について、これまでも文化庁や消費者庁が移転を検討してきたが、あまり進んでないと思われる。かつ、意見書に書かれている通り、テック企業から見て、東京に産官学が集積しており、魅力的に捉えられている現状もある。なかなか一極集中の是正が進んでこなかった中で、どのようにすれば一極集中を是正できるか、経済界からの立場で何ができるか、お考えを伺いたい。

櫻田: 1点目については、「はじめに」に書いている通り、意識しているのは「骨太の方針」である。骨太の方針ということは国会と予算に繋がってくるため、予算の配分に影響を与えたいということと、それに必要であれば法改正も当然求めたいということになる。それに繋がる行動をとっていかなくはならず、そのためにはこの意見書を出すだけはなく、例えば私自身は未来投資会議や財政制度等審議会あるいは全世代型社会保障検討会議のメンバーであり、新浪剛史 新副代表幹事であれば経済財政諮問会議のメンバーである。その他にも沢山いらっしゃるので、そういった方々がそれぞれの場で、ご自身の意見と経済同友会の意見が符合するのであれば、しっかりと主張していくことになる。あるいはこういう(会見の)場を使って、メディアを通じて訴えていく。つまり、政府、政策を決定する機関に対して、どのようにアピールするか、訴えていくかということが大事であり、その手法を取っていくしかないと思う。中期的な、また骨太の方針に対してどのように向き合っていくかということについては、そのやり方しかないと思っている。2点目の東京一極集中については、頭の痛い問題で簡単ではない。ただ、なぜ今回取り上げたかというと、誤解を招く可能性もあるが、ひとつは昔からGDP世界第3位の国であるにもかかわらず、東京はなぜ世界金融都市ではないのかという問題や、東京は世界で一番安全な都市でもあるといわれているが、ではなぜスーパーシティのような構想を取り入れていかないのか、税金や税制、言葉といろいろと言われている。一方で、今回の新型コロナウイルスによって、やはり一極集中は良くなく、一極集中ではないが、ノウハウや資本や資金や人材が、物理的には集まっていなくても、東京のファンクションを世界にアピールできるのではということを、デジタルやリモートということによって、我々経済人は強く感じ始めている。具体的に言うと、まさに就業規則において3分の1程度を在宅勤務とすれば、自宅は東京近郊エリアや、もっと言えば地方でも良くなると思う。あるいは、企業のあるファンクションを地方にそのまま移転し、リモートで行うということもできる。「東京的なもの」は東京に残しながらも、物理的なファンクション、ヒトやモノを東京の外に置くことができるのではないかということを感じ始めている。そこに、世界に負けていられないということで、スーパーシティ法案が通った。いろいろな意味で、本格的に一極集中について考えていく機運が整ったように思う。ただ、もう一つ要因があるとすると、それは首都直下型地震(のリスク)である。どの程度の危機感をもっているかによっても、背中を押す力が変わってくると思う。このようにさまざまな要因があり、今のような知恵は、先ほど申し上げたプラットフォームで是非議論したいと思い、一番上(のアジェンダ)にもってきている次第である。相当大きなインパクトがあると考えている。

Q : ひとつひとつの企業に落とし込んだ場合であっても、企業の利益を考えた場合でも、それが可能と考えているか。

櫻田: 可能と思う。というのは、利益というか、生産性と考えてもよいと思うが、今回の新型コロナウイルスによって(人々の接触を)8割まで圧縮して何が起こったかを考えると、最初に出てきたことはIT機器や通信機器といったハードウェアへの支出が増加したが、他方で交際費や会議費、出張費が減少した。今ちょうどSOMPOホールディングスにおいてそろばんを弾いているが、これまでと比べて同等からプラスかという状況になっている。これをもっと大胆に進めるためには、機能を移すことによって税制的なメリットが出てくるかということになると思う。法人税の見方を少し変えていただき、地方への移管を後押ししていただくものがあれば、これは十分出てくると思う。あとひとつは官公庁であり、文化庁と消費者庁の移転だけでは不十分と思う。

Q : 「新型コロナウイルス問題に対する中長期的な対応方針ついての意見」の中で挙げられている、特別会計の設置を提案するに至った背景をお聞かせ願いたい。今般の巨額の第二次補正予算が背景として存在するのか、また特別会計を設置することの効果について伺いたい。政府の西村康稔経済再生担当相は、緊急事態における政策のあり方について、事態が収束してから第三者を交えて検証したいと仰っている。第1波をしのぎ切った今、来る第2波に向けて一刻も早く検証するべきなのか、あるいは事態が収束してから第三者を交えて議論すべきか、お考えを伺いたい。

櫻田: 透明化を担保することが重要だと考える。会計を当初予算と分けて「入と出」を明確にする意味ではEBPMの提案と近い発想だ。第一次・第二次補正予算(合算で国費の投入)は総額50兆円超という規模であるにもかかわらず、(審議に要する時間等)当初予算より緩いガバナンスで編成されている。危機下においては当然スピード感を持った決定が必要で、それなりに評価しているが、やはり「wise spending」の観点は欠かせない。財源は、自分たちではなく、我々の孫やひ孫世代の税金を使っており、現役世代の責任を含め、将来にわたって約50兆円がどのように使われたか検証しなければならない。経済人としては、第1波は日本人の規律や精神性によって乗り切った印象があり、科学的な要因については現時点で明確に説明できていない。第1波の日本の成功要因を可能な限り、客観的かつ科学的に世界に向けて発信する必要がある。民間企業や各家計において、今回経験したことをリスト化して、第2波に備える機運を醸成していかなければならない。地方政府等が音頭をとって、有効な取り組みを洗い出し、横展開すべきだ。緊急事態における政策決定のあり方は、第2波に向けてどのように準備するのか、という実践的な時間軸で捉える必要がある。

Q : 明日で通常国会が閉会する。今回、持続化給付金と特別定額給付金の給付事業が、民間に委託された。役所の力ではできないので仕方がないと思う。経済同友会は民間の力を使うことが必要だと提言されている。だが、このまま検証もせずに進めていいのか。大手広告代理店(の経営者)は経済同友会の主要な会員であるが、どのような評価をされているか。

櫻田: 皮肉な言い方かもしれないが、コロナ危機によって、説明が十分になされていなかった仕組みが明らかになったことは、良かったと思う。やましいことでないのであれば、しっかりと徹底的に説明責任を果たすことにより、民間の力を借りることが最も経済合理的で、税金を活用するという点においては効率的であると証明されることを期待したい。もしそうでなければ、根本的にやり直す(必要があると考える)。

Q : 昨日参議院決算委員会にて安倍首相から、持続化給付金の支給の遅れは、申請者の書類の不備に一因があるとの発言があった。国会が閉会するが、イージスアショアの問題もある。代表幹事は対話プラットフォームを計画されているとのことだが、経済同友会として政治に対するスタンスはどうされていくのか。

櫻田: 経済同友会のスタンスとして、政治に対しては(無色)透明、是々非々ということは、これからも変わらない。ただ政治に対する距離を、今までより近くしていかなければならない(と感じている)。重要な政策決定の集団である内閣に対し影響を及ぼし、野党も与党も同様にステークホルダーとして我々は向き合う必要があると思う。今回の新型コロナウイルス(関連)のいくつかのテーマについて、野党が何でも反対するかというと、そうでもないという面があったと思う。それを国民も正直に受け止め、内閣(や各政党)への評価にも表れてきていると思う。私はそのようなバランスが今働いていると思う。結論から言うと、17日に(通常国会が)閉じてしまうことは、私には理解できないが、(今国会では)マイナンバーもちゃんとやってほしかった。多くの法案は通っているが、今回新型コロナウイルス(関連の施策)で現金が届かない(ということがあった)。現金が早く届いている国は、マイナンバーのような仕組みが、とっくに入っている国だ。それがたまたま預金の問題、ディスクロージャーの問題、個人情報の問題で滞ってしまった。もっとしっかり議論して、延長してでもやるべきだったのではないか。イージスアショアの問題もそうだ。説明責任を十分に果たすというのは、自信を持った主体であれば、当然のことだ。足りていなかったところが皆無かというと、あったのではないかと私は思う。残念な部分はあったと思う。100点満点を常に取らないといけないと考えると、動かない政治になってしまう。この問題は常にバランスだと思う。これからは、かつて以上にバランスを重視しなければならなくなる。理想的、空想的な姿を追いもとめるのではなく、前に進める、そのためにどうバランスをとるのか。その時に、特定の人たちの意見だけを聞いていてはいけないというのが、ポイントになると思う。そこに向かって、経済同友会が少しでも前に進めたいと思う。

Q : 日銀の金融政策について伺いたい。今日の決定会合で大規模な金融緩和政策が維持された。資金繰り支援の枠組みは110兆円規模に増やした。今回の決定に対して、どのようなご認識か。

櫻田: 今回のコロナ渦による経済ダメージがどれくらいなのか。世界では2,000兆円と言われているし、日本では(財政支出の)真水の部分は50兆円程度になるのか。真水が(需要の穴埋めという意味で)GDP貢献に一番近いとすると、(対GDP比で)10%弱となる。したがって、真水効果以外に、できる支援と言えば、事業化の支援であったり、今回の日銀の金融政策の支援になってくる。110兆円がどうかというと、私の理解では少なくとも、国債について言うと、一旦(購入)上限を撤廃しているので、足りているのではないかと思っているし、使い切ることはないのではないかと思う。それ以外のところについて、かなり大胆に、支援側に寄ってきているので、私は今回の決定は、「とことんできることはやるよ」というメッセージを日銀は出したということで、それ自体を私は評価したいと思う。実際にそれだけのキャッシュが、必要かどうかは、私には今は分からない。ただメッセージとしては強いものが出ていると思っている。

Q : (新型コロナウイルス問題に対する中長期的な対応方針についての意見において)第2波、第3波が来る前に、やるべきことはやる必要があるということだが、企業としてどのようなことを行うべきとお考えか。

櫻田: 企業としては2つあると思っている。分かりやすい言葉で言えば、売上という世界で考えた時に、今のビジネスモデルを抜本的に見直さなければならない部分が相当あると思っている。キーワードとしては、非対面、非接触、リモートになる。対面して、接触して、物理的に集まらないといけない事業体、あるいはビジネスモデルの中にそれを含んでいるところはどうするのか、という答えを出さないといけない。ほとんどの企業がそうではないか。B to Cは特にそうである。コロナはB to Cから始まって、後からB to Bに(影響を及ぼして)きたので、やはり消費者の活動、世界中がそうであるが、消費者の活動が滞るとこれほど大変なことなのかと痛感した。いかにB to Cが大事かということが分かったことである。B to Bに特化している事業体でもあったとしても、(他の)B to C事業がどうなっているのかを見ながら、自分たちのビジネスモデルやサービスを作り直さなければいけない。もう1つは生産性という面で見ると、いわゆるリモートワークとか、テレワーク、ビデオ会議、Webミーティングというのは、特別なものではなくて、新しい普通である、と思い込むだけではなく、仕組みにするとはどういうことか、ルールにするとか、制度にする、労働組合としっかり話合って、こういった仕組みを、我が社ではリモートワークや、テレワークと定義します、と。テレワークを自宅で行う必要は必ずしもなく、ホテルでもよく、もっと言えば、ゴルフ場でやってもいいはずである。ゴルフ場で行った時に、どういう価値を生んでいるのかを、きちんと定義出来ない限りは給料が払えないので、そういったところをしっかり詰めていく。現実の問題であり、マクロで決める話ではない。それぞれの企業がそれぞれの企業の文化や、それぞれの労働組合の感覚と照らし合わせて、具体的に就業規則を決めていく、これが必要だと思う。ただ1つだけ言うとすれば、その場合には今の労働法制は、あまりにも古い。戦後まもなくの世界をずっと引きずっている。これでは如何ともしがたい部分がある。時間管理の部分がいつもネックになっている。

Q : 中長期的な対応方針についても触れられているが、あらためてジョブ型雇用がなぜ必要なのかということと、法制の整備について書かれているが、具体的にどういうサポートがあると、企業としてジョブ型雇用に転換が進みやすくなるのか。

櫻田: ジョブ型がなぜ必要かということは簡単で、企業はなぜ賃金を払っているかと言うと、その方が提供してくれている価値について払っている。その価値をどのように定義するかというと、今までは時間だった。時間が全て意味がないと言っているわけではない。時間だけなのかということのなかで、かつては時間のウェイトが高かった。そういう仕事が多かった。今は時間よりもその中身が、どういう質の仕事をしていますか、どういうプロダクトを出していますかという方が、重要になってきている。質を定義する仕事に変わっていかなければいけない。したがって時間の長さから価値に変わっていかないといけないと、したがってジョブ型である。ジョブ型をするためには、企業によっては、1,000、2,000、場合によっては、3,000、4,000のジョブがありますから、それを定義していかないといけない。そのためには結構時間がかかるが、世界ではそれをやっているわけで、日本だけ出来ない理由はないでしょうということが1つである。2つめはどういう支援かということであるが、兼業・副業で大きな問題になっているところはどこかというと、時間通算の概念である。A社とB社を兼業したときに労働時間をどうやって把握するのかとか、残業代はどちらの賃金をベースにするのかとか、どこまで行っても時間の概念から出ていくことはできない。時間は捨てる必要はない、常に必要である。時間と仕事の内容、ジョブとのハイブリッドができる仕組みはない。ここからこのような仕組みについてはハイブリッドで良いと、ここからここまでについては時間という要素を多めにしてくださいとか、例えば腕の良いお医者さんは(賃金が)高いですが、そうじゃないお医者さんは安いですと、やっていいかという問題ですが、あるいは弁護士もそうだが、実際にはある。どこまでその(時間の)議論を入れるかである。結構難しい問題であるが、少なくとも、社会的な大きなインパクトあるような仕事、公平性云々というところでないのであれば、企業であればこのジョブは1時間いくら、このジョブはこういうアウトプットを出してくれたらいくら、1万円、10万円ときめることができる。そういったことを決められるような仕組みに法律を見直してもらうしかない。

Q : 裁量労働制とか高度プロフェッショナル制度とあるが、対象業種が限定的だという議論があり、進んでいないことについてどのようにお考えか。

櫻田: 他の会社のことは言えないので、私どものグループの場合では、入社して4年目から裁量労働制が入るが、Aさん、Bさん、Cさん、個人的に全て話し合って決めている。それを労働基準監督署へ届ける。それで可となったら、決めていくが、これはすごい手間である。もう少し自由度が利かないのかと思うが、そういう意味では、日本はやるのは良いが、人事部や管理職の人の負担がかかっているという気がしている。これだと(世界には)勝てない。
以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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