代表幹事の発言
第2次補正予算案を中心とした直近の施策についての意見
公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟
代表幹事 櫻田 謙悟
【全般について】
- 5月25日に全国で緊急事態宣言が解除された。経済の立て直しはこれからが正念場である。第2次補正予算案は、第1次補正予算と合わせると、国費ベースでGDPの1割に達する金額規模となっている。また、第1次補正予算の施策の改善や家賃支援給付金などの新制度の創設が盛り込まれた。早期に国会審議に入り、熟議を尽くし、一刻も早い成立と執行を望む。
- 第1次補正予算の施策について、執行の遅れが指摘されている。改善が進んでいる面もあるが、コロナの影響により経済的に困窮している個人や事業者に、いまだ支援が届いていないとの指摘も少なくない。
- 第2次補正予算案の成立後、執行の迅速性を高めるには、効率的かつ実効性ある体制の整備が急務である。以下、この問題意識に基づき、意見を述べる。
【迅速な支援の実現のために行うべき措置】
(1)信用保証限度額の拡大と審査人材の融通
- 中小企業の資金繰り支援において即効性の高い、信用保証全体枠の拡大および個社別限度額の引き上げを実施すべきである。また審査の短縮化を実現するために、既に一部で導入されて実効があがっている地域金融機関の人材を融通する仕組みを早急に拡大していくことを検討すべきである。
(2)資本性資金の活用
- 今回導入される企業向け劣後ローンは、受け入れやすさを十分に考慮したものであり、積極的に推進されるべき支援策である。
- 他方、金融機関への資本参加枠拡大に関しては、国内基準行の場合、ルール上、劣後ローンの導入が自己資本比率の向上につながらず、ひいては融資のインセンティブにつながらない可能性もあるため、期間限定で自己資本比率に算入する特例措置を認めるべきである。
(3)家賃支援制度の「つなぎ」融資制度の創設
- 家賃については、特に迅速な支援が必要不可欠となる。家賃支援の条件を明文化することにより、金融機関を介在させ、「つなぎ融資」を行うことのできるスキームを構築するべきである。
(4)中堅企業・スタートアップ支援
- 家賃支援給付金は、中堅企業も対象とした制度だが、最大600万円の支給であっても、不足する可能性が極めて高い。中堅企業はわが国の雇用を支える重要な部門の一つであり、中小零細企業とは別のスキームの検討が不可欠である。
【外国人材の入国制限緩和と対応の改善】
- 入国制限の影響で、外国人技能実習生や留学生が来日できない状態が続いている。実習生がいない農業や水産業の現場では、人手不足に陥っている。在留資格を持つ外国人については、PCR検査と一定期間の待機を義務付けることで、早急な入国制限の緩和を行うべきである。
- 特別定額給付金の支給締め切り日までに再入国が叶わない在留資格を持つ外国人については、申請期間の延長措置を検討する必要がある。
- 第2次補正予算案で示されている学生支援緊急給付金(20万円)は、留学生に対して成績要件が付されている。明確な理由がない限り、撤廃が妥当と考える。
【中長期視点の施策の検討】
- 短期的には、感染拡大抑止と経済再開の両立という難しい対応に全力を尽くさねばならない。そのためには、補正予算の執行の迅速性がカギとなるが、「ウィズ・コロナ」の時代を見据えた中長期の対策も求められている。
- 本会は、中長期の視点で考えた意見を近く公表する予定である。
以上