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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年4月16日(水) 14:00~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)バラク・オバマ米大統領訪日とTPP協定交渉、(2)生産年齢人口の減少と外国人労働者の受け入れ、(3)海外からの留学生受け入れ、(4)法人実効税率引き下げ、などについて発言があった。

Q: 来週、バラク・オバマ米大統領が来日する予定である。環太平洋パートナーシップ(TPP)協定における日米交渉にとって大きな動きだが、打開点が見えにくい状況にある。あらためて、TPP協定に対する所感を伺いたい。

長谷川: TPP協定については、(米国との)二国間交渉において、特に重要農産物5項目での隔たりが大きい。一方で、報道によると、大江博 首席交渉官代理がウェンディ・カトラー通商代表部(USTR)次席代表代行と交渉する中で、まだ距離はあるが問題点は大分絞られたとのことだった。また、甘利明 経済再生担当相も渡米され、マイケル・フロマン通商代表部代表と協議を行う予定である。越えるべきハードルが高いことはよく分かっているが、来週のオバマ米大統領の訪日までに、(日米間の並行協議を)何とか包括的な合意にこぎつけていただきたい。そうでなければ(成長の)モメンタムを失ってしまう可能性がある。大臣や直接交渉にあたられている担当者も、そのような思いだろう。

産業競争力会議や経済財政諮問会議では、6月に向けて新たな成長戦略をまとめる段階に入りつつある。また、3月末には国家戦略特区の指定もなされるなど、議論も少しずつ進展を見せているが、いずれも具体的に成果が出るには少し時間がかかる。ここで(日米間の並行協議が)包括的合意となれば、(経済成長に向けた)大きな推進力にもつながるため、あらゆる困難を乗り越えて、何とか合意にこぎつけていただきたい。

Q: 総務省が昨日発表した2013年10月時点の推計人口によると、数値を公表し始めた1950年以降、15~64歳の生産年齢人口が32年ぶりに8千万人を割り込んだ。将来的な労働力不足が懸念され、政府では外国人労働者の活用なども議論されているようだが、人口問題に対する見解を伺いたい。

長谷川: (労働力不足の問題は)ずっと以前から分かっていたことが現実に起きつつあるということである。これまで政府は、将来の経済成長の維持やそれに伴う財政再建に取り組む上で、労働力人口の問題が大きな要素の一つになると分かっていながら、本格的に手を付けてこなかった。事態が差し迫ってようやく前に進み出したことは、いささか遅きに失した感はあるが、どうしても避けて通れない問題だと思う。

外国人労働者の活用については、段階的議論が必要と考える。欧州のように国々が隣接している地域や、米国のように移民で成り立っている国とは異なる。日本の場合、大量の移民は恐らく千年以上前にさかのぼると言われ、以降、多少はあっても数は少ないという特殊な国である。そのような状況で、実現可能、あるいは効果の高い施策から着実に実施していく(ことが必要である)。例えば、技能実習生の滞在期間延長の検討や、高度の頭脳・技能労働者のポイント制をさらに利用しやすくする法制化が進んでいる。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を控えて建設労働者の人数が不足していることから、建設分野(の技能実習修了者)については滞在期間の延長(、再入国)を認めるといった緊急措置など、必要なところから埋めていくことで、当面の問題を解決しながら、次のステップを考えることが大事である。もう一つ、文部科学省は、「留学生30万人計画(2020年までに30万人の留学生受け入れを目指す計画)」に本格的に取り組もうとしている。同時に、日本に留学した人にできるだけ日本で就職してもらい、労働に参加し、収入を得て納税にも貢献してもらう。そのようなことも着実に進めることが一番現実的であると思う。

前原: 1月に、アンケート調査結果『知日派・親日派外国人層の養成と日本企業のグローバル化促進に向けて~外国人社員やJETプログラム経験者の活用状況に関するアンケート調査結果』(2014年1月24日)を公表した。JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)により、英語圏から約4,300名(2013年度)も日本に来ている。(アンケート調査では、)そのような人材に対する認識は低かったが、興味はあるという結果であった。日本の学校や自治体で働いた経験がある人は日本を好きになっているが、就職に結び付いていないので、今後、各地経済同友会への働きかけも含め、推進していきたい。

Q: 外国籍人材の雇用について、例えば武田薬品工業では既に高度人材の採用も進んでおり、外国人が経営トップになることも含めて異文化交流やダイバーシティの重要性を認識されていると思う。今後、日本企業が国内でダイバーシティを実現することについて、どのくらいのタイムスパンで考えるべきか。

長谷川: 企業によって、ニーズも導入のスピード・タイミングも違う。長い目で見ると、日本は人口減少の中で、生産性を高めることにより安定的に成長する形にもっていかないと、財政再建もおぼつかないことは間違いない。一方で周辺国には、本日、中国の1-3月期実質GDPが7.4%増(前年同期比)と発表されたが、高い成長を続けている国々が多くある。そのような国に日本の技術やサービスを持ち込むことで、(その国の)経済成長や生活レベル向上に貢献しながら、結果としての富を日本に持ち帰ることをしないと、国内だけでは成長はおぼつかない。それを有効に効率的に進めることを考えると、日本人だけでできるかは、業種や企業で差はあるが、なかなか難しい。医薬品産業では、他の産業と比べても、成長の比重が先進国より新興国にかなり偏っている。新興国に自らプレゼンスをもって自らの製品・サービスを提供する体制を作らないと、キャッチアップがなかなかできないことから、買収を行った。その後、買った企業のビジネスのモメンタムを一切下げないことを最大限の課題とし、ほぼ順調に推移している。一方、ガバナンスの面で、本社のリーダーシップが必ずしも十分に発揮できなかった。ここが解決しないと、次のステップでの更なる効率化が難しいため、グローバル・スタンダードを入れるために必要な人材として外国人を採用した。

企業によって状況は異なるが、長い目で見れば、そのようなことをやらなければ世界の競争相手と伍して戦っていけない。特に、医薬品企業の場合、各国の規制当局の審査・承認を得て売るため、もちろん製品の差別化に努力はするが、必ずしも日本が得意とする製品の品質、コスト競争力、デザイン、納期の確実性で差別化できる類のものではない。現地で自らの従業員を雇い、情報とサービスを提供することで(現地に)浸透するという地道な経営が不可欠で、ローカライゼーションが必要である。その意味で、そういう(グローバル・スタンダードの)人材を使う必要があるので、他社に先駆けて決断した。遅かれ早かれ多くの企業も直面する課題ではないかと思う。

Q: 海外からの留学生30万人計画について、現状では中国からが多く、韓国、台湾と続く。受け入れの際、国の特定をする方が良いか、それとも広く受け入れる方が良いか。

長谷川: 産業競争力会議でもそのような話をしている。基本的には、国によって受け入れを抑えるなどということはまったく考えていないが、できればバランスが取れた方が良いことから、例えばASEAN諸国からも来てもらう努力をする必要はあると思う。

前原: 2年ほど前、アフリカ諸国から日本にもっと留学したいが、アフリカ地域で(入学に必要な)試験がないとの話があった。その際、文部科学省に留学生受け入れの基準を確認したところ、ルールがなかったので、20年、30年先の国益を考えて受け入れるべきとの意見を述べた。昨年、下村博文大臣が就任され、「戦略的な留学生交流の推進に関する検討会」が設置されて私も委員になり、一年間議論をした。重点国と方針、例えば、アフリカであれば農業や資源関係など方針を決め、働きかけて日本に留学してもらう。重点国には米国も入っている。日本人の米国への留学が減ったと言われるが、日本に留学している米国人は留学生全体の1.5%に過ぎない。両国が努力をして増やしていかなければならない。その国の発展段階や状況に応じて、どのような学問を学ぶ学生にどのくらい来てもらうかを、文部科学省で真剣に議論しているので、かなり進んでいくと考えている。

Q: 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設労働者受け入れについて、引き続き定住するとなれば警察庁の治安の問題等も懸念される。一時的かそうでないかの使い分けも必要ではないか。

長谷川: 単純労働者の受け入れについては、ほとんどの国で制限を設けているので、各国の事例を見ながら国として考えていく必要がある。当面は、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催の準備に支障をきたさないための受け入れ等を関係閣僚会合で取りまとめたところである。そこから先は、別途考える必要があるだろう。外国人による犯罪が増えるのではないかとの懸念について、そのようなイメージが持たれることは理解するが、事実であるか否かについて統計的にきちんと検証することが非常に大事である。個人的に、以前からカナダやオーストラリアなどの大使の方々に(外国人労働者の受け入れと犯罪の増加に関する)事実関係の調査や懸念について聞いているが、必ずしもそのような懸念を持って事実を把握しているわけではない国もある。日本でのみそう(外国人労働者の受け入れによって犯罪が増える)かは、よく検証する必要があるだろう。

前原: 各地で農場などを視察すると、海外からの(農業)研修生が非常に多い。二年程度で帰国しなくてはならない制度だが、研修生にヒアリングをすると、もっと長くいたいとの声が多く、(受け入れ側の研修生への)評価も高い。一律で(滞在期間を決めるので)はなく、評価をした上で、もっと長く日本にいても良いような制度を作っていくことも一つの方法ではないか。また、将来の生活が成り立つようにすることも大切である。

長谷川: 制度を作ったときとは状況が変わっている。例えば、看護師や介護士などの受け入れに対する所管官庁の認識は、FTA/EPA締結の一環として人材を受け入れているのであって、労働不足を補うために門戸を開いたわけではない、ということだが、事情が変わり、他にもそういう人たちなしでは成り立たないような事業・業種が出てくれば、現状に合わせて見直すことは当然である。

Q: 6月の第2弾成長戦略に向けて、法人実効税率引き下げの議論が本格化している。先日、意見書『成長を促す法人課税と財政健全化の実現を』(2014年4月9日)を発表されたが、あらためて求める方向性など見解を伺いたい。

長谷川: これから経済成長を安定路線に乗せていくという観点から、例えば、国内の第3次産業の生産性向上や企業の国内での設備投資、特に節エネ・省エネ等対策も含めた投資による内需喚起、雇用や賃金の増加も必要である。同時に、これまでかけ声だけで進まなかった対内直接投資のGDP比率(残高)は、OECD加盟国の平均が30%程度であるにも関わらず、日本は4%以下であり、安倍晋三政権では2020年までに倍増させる計画を掲げている。それを実現させるためにも、海外の投資家から見て(日本市場を)魅力的な環境にすることが当然必要であり、海外からの投資があれば雇用も新たに発生し、成長にも貢献する。法人実効税率においても、周辺国と比してあまり劣後しないことが、競争力を高める意味で必要である。英国でも、消費税率引き上げと法人税率引き下げを実施し、魅力を高めている。英国は一時期、成長性について疑問視されていたが、今はようやく上向きの兆候が出てきている。日本も(魅力を高めることを)考えるべき時期に来ている。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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