代表幹事の発言

記者会見発言要旨(未定稿)

桜井 正光 代表幹事
小島 邦夫 専務理事

冒頭、小島邦夫専務理事より、2010年3月(第92回)景気定点観測アンケート調査結果について説明があり、その後、記者の質問に答える形で、(1)発足半年を迎えた鳩山内閣および民主党の支持率低下、(2)自民党、(3)地球温暖化対策基本法の閣議決定、(4)春闘、(5)地中海・大西洋産クロマグロの国際取引禁止、(6)内閣府令の改正案、などについて発言があった。

Q: 鳩山政権発足から半年経った。報道各社の世論調査では、鳩山内閣も政権与党である民主党も支持率の低下が続いている。その理由をどのようにお考えか。

桜井: 支持率低下の要因はおそらく、(報道)各社が挙げている(通り)、例えば、鳩山総理のリーダーシップの問題、政策課題の先延ばしの問題、政治とカネの説明不足という不透明さに対する問題等が大きいと思っている。質問にはなかったが、鳩山政権の評価については、今すべきではないと思っている。(政権としての課題の)内容的には、国家運営上重要な、今日本が抱えている大きな債務残高、財政赤字をいかに健全化させていくかが非常に問われている。歳出・歳入の(一体)改革、歳出においては行財政改革をいかに徹底するか、歳入については成長戦略と税制改革(がまずある)。活力ある日本(にするために)は、やはり規制改革であり、セーフティネットもペアで考えなければならない。また、将来に対する国民不安が大きい社会保障制度の持続性(を確立することが必要)である。このような課題について政府は、財政健全化であれば中期財政フレームや財政運営戦略、成長戦略の具体化、(地球)温暖化防止の道筋の具体化、地方分権に対する具体化など、5月、6月までに纏めようとしており、総合的なプランが出揃うことを切望している。どのような内容の工程表や道筋が出てくるかが、政権の評価という点では重要な節になるだろう。そのときになれば、総合評価を行える。

Q: 一方、政府与党の支持率低下が野党・自民党の支持率上昇には結びついておらず、どちらかと言えば無党派層が拡大している状況であるが、これをどのようにご覧になっているか。

桜井: 残念だ。拮抗する2大政党があって初めて、互いに牽制し合いながら、日本の活性化政策を磨き、競争することになると思う。受け皿(となる自民党)が具体的に、民主党の政策をどう評価しているのか、問題点は何なのか、また(自民党が)受け皿としてどういう用意があるのか、これからの自民党の姿が見えないことが非常に残念だと思う。早急に、対抗馬としての民主党に対する課題提起と、受け皿としての政策体系や体制の充実が望まれる。

Q: 自民党内では、財政に詳しい与謝野元財務大臣(の執行部批判や)、鳩山邦夫元総務相の離党などいろいろな動きが出ている。このような動きについて、期待が持てるのか、あるいは評価できないとお考えか、所見を伺いたい。

桜井: わからない。(政策の)目標とするところや意図が大事だと思う。自民党も受け皿たるに相応しい党を作っていく努力をされているのだろうと期待したい。しかし、今の動きがそれにつながるかどうかはわからない。

Q: 地球温暖化対策基本法が閣議決定されたが、代表幹事の評価を伺いたい。

桜井: まず、(経済同友会では、)新政権発足時に「新政権に望む」(2009年8月31日)、COP15の開催前に「COP15に向けて」(11月17日)、「地球温暖化対策基本法の閣議決定について」(2010年2月23日)において、一貫して次のことを申し上げてきた。25%(削減という目標値)は、世界各国・各地域の全員参加を促し、かつ日本の新しい社会システム(づくり)、いわゆる低炭素社会改革を促すために、意味ある高い目標であるとして評価する。しかし、この目標(達成)のハードルは(実現性からして)かなり高いことから、達成の道筋の明確化と、国民に対する受益と負担についての説明を強く求めてきた。(にもかかわらず、)基本法の閣議決定が、道筋(の明示)無し、国民への説明無しにされてしまい、大変に残念である。

また、質問にはないが、排出権取引についてコメントしたい。総量規制と原単位目標とが両論併記になった。併記になった過程やなぜ併記になったのかも分からない。何がネックになったのかについて説明することが重要である。

経済同友会では深くは議論していないが、個人の意見を責任をもって述べると、絶対に総量規制で行くべきと思っている。原単位というのは、経済成長率や(売上高や)生産量の増減に影響を受ける。地球が求めているのは、効率の向上ではなく、(排出)総量をいくらで止めてくれるかである。(また、)日本が、原単位で排出権取引をやることになれば、(国家目標として原単位を主張している)中国に、2桁成長を遂げて主要排出国になるのに原単位とはなんたることかと意見することへの矛盾は、当然出てくる。中国に対する説得力がなくなる。

Q: 総量と原単位の話について、中国の原単位というのはGDP(経済規模)当たり排出量の削減(目標)である。これと、(国内の)電力業界の「電力等は総量規制が難しいので、効率を上げることによる原単位(での削減)が望ましい」という主張は同じか。

桜井: まったく同じだ。(中国の主張を計算してみる。)中国の今のGDPを日本とほぼ同じ470兆円として、(排出量を例えば)10億トンとする。これを割り算すると、GDP当たりの排出量が決まる。これが原単位だ。(中国が提案する原単位で40%削減とは)現在の効率でGDPが膨らみ、例えば2倍の940兆円になったとすると、排出量も2倍の20億トンになる。そこで、20億トンになる(はずの排出量)を原単位40%削減によって排出量を12億トンまでは下げるということである。この様に、原単位目標を設定しても、経済規模の変動により総排出量は逆に増えてしまうことにもなる。

(日本の)鉄鋼や電力業界等の主張も同じで、生産量単位の排出量を(すなわち原単位)を設定しても、生産量の変動次第では排出量は増えることにもなる。(中国の主張と)まったく同じ論理である。

日本国内でもずっとその論争はあった。京都議定書のマイナス6%のときも、日本は絶対量でマイナス6%を達成しなければいけないと義務付けられた。それを守るためには、各企業(に)も、絶対量での削減義務をかけなければならなかったが、(結果として)総量と効率とのミックス型ということになってしまった。日本が、例えば(削減目標のうち)真水分で15%や20%など、義務的な上限を設定された場合、効率や原単位では問題になる。効率は絶対量を保証するものではない。

Q: 排出権取引が導入されると企業活動の拡大を抑制する方向に働く、特に総量規制なのか原単位目標なのかによっては日本の空洞化につながるという指摘があるが、いかがお考えか。

桜井: (事業拡大の抑制や空洞化に)つながる可能性はある。しかし、これまで日本の企業は資源小国だからといって海外へ逃げ出したり、何の技術革新も起こさないなどという姿勢はとらなかった。言い古された話だが、日本は資源小国であるため海外から資源を買わなければいけなかった。為替の変動や投機によって高騰する資源価格への対応策として、技術開発によって省資源化・省エネ化を推し進めてきた。資源小国のディス・アドバンテージを技術革新で乗り越えてきた。だからこそ、日本は省エネ・新エネの分野でトップクラスになっている。(そうした実績のある日本の企業が)今後は技術革新を進めないとは思わない。

技術革新ののりしろの問題はある。キャップを設ける際にのりしろの有無で工夫をすればいい。一向にそうした(詳細の)議論に入っていかずに、一般論で「経済界にとっては大変な負担だ」となってしまう。業種・業態によって変わってくる話なのだから、早く(具体的な)議論に移るべきだ。それが道筋である。いつもゼロかイチかで話が止まっていて先に進まない気がする。なぜ単なる両論併記なのか、私は非常に不思議だと感じている。もっと議論をしていけば、例えば、ある業種では原単位に重きを置いたキャップにしよう、こちらの業種では総量に重きを置いたキャップが相応しい、などという話も出てくるのではないか。

Q: 今の原単位の決め方では、全体の削減という意味では弱いということか。

桜井: そうだ。

Q: 明日、春闘の集中回答日である。デフレ下での春闘ということもあり、今までとは違うのではないか。代表幹事の所見を伺いたい。

桜井: 企業側から見れば(昨今の)業績が構造的デフレによってかなり厳しいのは確かだ。(内閣府の)月例(経済)報告や(財務省の)法人(企業)統計、あるいは(経済同友会の景気定点観測)アンケート調査による今後の(景気)見通しは、後退局面から持ち直し局面になっていると思う。業績も(かなり悪かった)前年対比では数字的には良くなっているが、やはり最終利益等を考えるとまだまだのレベルだ。春闘については、以前にも話した通り、企業としては苦しいなかでも今後の業績回復を視野に入れ、少なくとも定昇は維持するという姿勢で臨むのが相応しいと思う。また、(就職)内定率が前年より約10%低くなっているが、(企業は)採用についても正規社員の雇用減を抑えることに努めていくことが必要だと考えている。

Q: (地中海と大西洋の)クロマグロが、国際会議で取引禁止になるかどうかという瀬戸際に立たされている。専門家ではないが、この問題についてどのように評価されているか。

桜井: いろいろな角度から評価すべき問題だろう。よく分からないとしか言えない。

Q: 役員の個別報酬の開示について、昨日、各団体から一斉に反対の意見書が出され、経済同友会からも出された。これを受けて亀井大臣は、「経済界が反対しても絶対にやる」と発言されている。今後、経済同友会あるいは経済界として、継続的に働きかけをされるのか。

桜井: 内閣府令の問題については昨日意見書を出し、政務三役や政策担当者に向けて、しっかりと説明をしようと進めている。内閣府令の各項目は非常に大事な問題だけに、我々としての考え方を十分に説明し、議論をすることが必要だと思っている。

小島: 昨日はパブリックコメントの提出期限だったので一斉に出てきたのだと思う。何と言われようと聞く耳を持たないという態度が本当に良いのか。

桜井: きちんと議論をしていただきたい。

(文責:経済同友会事務局)

以上

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