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いわゆる『年収の壁』問題への対応について
―支援強化パッケージの評価と社会保険制度の中長期的な改革の方向性―

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公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史
年収の壁タスクフォース 座長 菊地 唯夫

意見本文

意見のポイント ※詳細は、意見本文(PDF)をご確認いただきますようお願いいたします。

Ⅰ.現状認識

  • 制度上、年金関連の「壁」は106 万円および130 万円だが、日本スーパーマーケット協会の調査によれば、パートタイム労働者の8 割超が103 万円以下に就業調整。社会保険料負担への忌避感、家庭内に性別による伝統的な役割分担意識が残っていること、税と社会保険料をあわせると「壁」が複数あるため、制度改正を把握しきれない――といった理由が大きく、短時間労働者のみならず経営者、現場責任者への税・社会保険制度に関する啓発が極めて重要。

Ⅱ.より正確な情報の提供に向けて

  • (報酬比例年金の必要性)『2019(令和元)年財政検証』によれば、マクロ経済スライドによる調整終了時の基礎年金の所得代替率26.7~21.9%。2024 年の財政検証に向け、政府は、基礎年金の所得代替率の見通しと、報酬比例年金の必要性を平易に説明することで、やみくもな年金不安を防ぐとともに、社会保険料負担への忌避感を低減すべき。「壁」の引き上げを提案する声も聞かれるが、報酬比例年金の加入条件を引き上げるということは、短期的な保険料負担は回避できる半面、将来、報酬比例年金を受け取る機会を奪い、低所得の高齢者を増やすことを意味するため、国としてそうした選択はすべきでない。
  • (名寄せの必要性)2 つ以上の事業所で働く短時間労働者の場合、通算すれば週の所定労働時間が20時間以上かつ賃金月額が8.8 万円以上であっても、事業所単位でみればいずれかを満たさない場合、健康保険・厚生年金保険の被保険者となることができない。マイナンバーを徹底的に活用し、週20時間未満・賃金月額8.8 万円未満の労働者についても、名寄せを柱とした執行の見直しを行うべき。

Ⅲ.支援強化パッケージについて

  • (パッケージの評価)就業調整の大きな要因の一つである社会保険の「壁」を超えるための緊急避難策が講じられること自体は時宜を得ている。一方、3年間の支援強化パッケージはあくまで弥縫策に過ぎず、「年収の壁」問題の実態と複雑な背景を鑑みれば、実効性が十分に発揮されるかは不透明。
  • 今回の施策はいずれも時限的な措置であり、中長期的な抜本改革の方向性が早期に示されない限り、期間終了後には再び就業調整が始まり、人手不足が深刻化する可能性も否めない。
  • 106万円の壁に対する施策は社会保険への加入を促すものである一方、130万円の壁については加入を免除する措置であり、同じタイミングで逆方向のメッセージを発しているため、中長期的にどちらに向かう心構えが必要なのか、働く個人にとっても企業にとってもわかりにくい。
  • 複雑な年金制度に関する正確な理解の浸透や、第3号被保険者の家庭内の性別役割分担等の意識の変化には時間を要する。3年間という期限の中で、同パッケージの実効性を徐々に高めていくため、開始にあたっては、パッケージの効果をタイムリーに可視化・検証するためのデータ収集・分析・公表の枠組みを整え、施行1年目で明らかになった制度上・執行上の課題は、2年目以降、速やかに改善することを徹底していただきたい。
  • (手続の効率化)キャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースは、スキームの内容が複雑であり、短時間労働者と現場責任者が制度を十分に理解し、個々の事情を踏まえた判断がしやすいよう丁寧な周知を期待する。また、キャリアアップ計画の提出と毎年度の支給申請が求められているが、過度な事務負担とならないよう手続きの簡素化を求める。
  • (抜本改革に向けて)3年という時間的猶予を無駄にすることのないよう、長期的な視座に立ち、社会保障、税、雇用・働き方といった多岐にわたる課題について、抜本的な制度改革の方向性を精力的に議論し結論を得るための、経済界、労働組合、有識者等からなる総理トップの新たな国民会議を内閣官房に設置すべき。
  • (家族手当等の見直し)短時間労働者の配偶者所属企業において、家族手当等の支給基準に配偶者の年収制限があり、こうした福利厚生がいわゆる「壁」の効果を強めてしまっている側面もある。近年、手当の見直しを進めている企業も増えており、引き続きこうした制度の改善に取り組んでいく。

Ⅳ.抜本的な制度改革について

  • (抜本改革の必要性)現行制度は家族形態や働き方の多様化に対応できていない。男女ともに一人ひとりがその能力と意欲を最大限発揮するためには、社会保険制度も経済・社会構造の変化・多様化に対応する必要がある。多様なパターンに応じた複雑な年金制度を作るのではなく、簡素な制度で多様性を包摂すべきであり、雇用や働き方を歪めない年金制度への抜本改革が必要である。
  • (中長期的な改革の方向性)将来を見据えて設計する新たな年金制度は、急速に多様化の進む働き方や家族形態の選択に中立で、その持続性が国民から信頼される、公平かつ簡素なものであるべき。
  • 企業規模により社会保険の適用対象が異なることは、働く個人にとって合理的でないため、企業規模要件を撤廃するとともに、現行の非適用事業所の雇用者も対象とすべき。
  • 第1号被保険者と第3号被保険者の第2号被保険者への移行を促進し、被用者保険としてのあるべき姿に戻す。第3号被保険者については、106万円の壁(被用者保険適用基準)と130万円の壁(被扶養認定基準)を大胆に引き下げ、第2号被保険者への移行を促す。同時に、106万円の壁の引き下げ等により、現在、第1号被保険者となっている被用者も、応能負担の被用者保険の第2号被保険者への移行を促す。その他の第1号被保険者(自営業者、フリーランス)についても、マイナンバーの活用により所得を捕捉することで、保険料を定額負担から所得比例に変更すべき。なお、育児・介護で短時間労働とならざるを得ず、負担能力に不足のある第1号、第2号被保険者には、当該期間の保険料を減免し、一般財源により補填するなどの配慮が必要。
  • 長期的には、報酬比例年金と税財源による最低保障の基礎年金の組み合わせによる2階建ての年金制度を目指すことが考えられる。無職の方々の高齢期の生活保障のあり方については、働き方や家族形態の多様化に即した国民皆保険のあり方、基礎年金の設計と税による生活保障のあり方、および同様の問題を抱えている医療保険制度等のあり方と併せ、国民会議において総合的かつ集中的な議論を行う中で、適切な結論を見出すべき。

以上

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広報誌『経済同友』委員長インタビュー記事(2023年11月号)

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