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「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」等の見直しに関する意見

企業・経済法制委員会
委員長 岩沙 弘道
(三井不動産 取締役社長)

経済のグローバル化が急速に進展するなか、日本企業の国際競争力を維持・強化すべく、企業結合審査の予見可能性向上が必須の課題となっている。ところが現行の運用指針については、セーフ・ハーバー基準と審査実績との乖離iや、国際競争の実態を踏まえた審査基準が不明確であるなどの問題点があり、予見可能性の観点から早急な見直しが要請されていた。

こうした指摘を踏まえ、公正取引委員会(以下公取委)から示された案は、

  • セーフ・ハーバーに関するHHIの採用と水準自体の見直し
  • 国際市場画定に関する可能性の明記

など、全般的に審査の予見可能性向上に資する内容となっており、我々としては、今回の見直しの姿勢や方向性について賛同する。

以下、現指針の問題点を概括したうえで、今般の見直し案に関する論点について意見を述べる。

1.現指針の問題点

政府の調査によれば、企業の多くが「35%~50%のシェアをとっても、自由に価格を上げることはできない」と回答している ii。これは経済のグローバル化・市場のボーダーレス化に伴い、有力な競争者の存在、国際価格と国内価格との連動性が見られるほか、外国からの輸入圧力にさらされている商品が増えていることを反映している。

公取委も、こうした経済実態を認識し、国内のシェアやHHIだけでなく、需要者の価格交渉力、他の供給業者による供給余力、同一商品の輸入量などの判断要素を取り入れるほか、国際的な競争が行われている商品については、市場の地理的範囲を拡大・画定のうえ検討するなど、個別事案においては柔軟に対処してきた。

しかし、逆に経営者側から見れば、セーフ・ハーバーの範囲を超える結合事案の審査について、実際の審査基準が明示されていない項目が目立ち iii、運用の幅が見えにくいものになっている。このような予見可能性の欠如が、経営者に対し、企業結合に対する判断を不必要に躊躇させている弊害も見られる。 iv

2.主要な論点に対する意見

(1)セーフ・ハーバーに関するHHIの採用について

見直し案では、水平型企業結合の場合、従来の国内シェア基準に代わって、寡占度を測定する指数としてHHIの絶対値とその増分によってセーフ・ハーバーを決定するとされた。
HHIの採用に関しては、

  1. 結合する当事会社のみのシェアだけでは、競争を制限するか否かの判断が必ずしも容易ではないこと
  2. 実際の結合審査にあたっては、当事会社の「単独行動」のみならず、他の競争業者との「協調行動」による競争阻害の可能性をも考慮する必要があること
  3. HHIは既に欧米諸国で採用されている基準であり、国際的調和の観点からも望ましいこと

などの理由から賛同する。

(2)セーフ・ハーバーの水準について

見直し案では、HHIの採用に伴い、セーフ・ハーバーの範囲を当該商品市場の寡占状況に応じて、大きく3 つのケースを設定している。これは、寡占度の絶対的水準だけでなく、結合が市場に与える影響度を考慮したものであり、現状の審査実務の複雑さを可能な限り定量的に反映しようとした努力がうかがえる。

また、その水準に関しても、欧米諸国に比較して全般的に緩和されたものになっており、今後も国際的な競争が加速し、企業再編等のニーズが高まることを考えれば、戦略的な事業展開を検討していくうえで有益なものと言える。

こうした見直しによって、相対的に寡占度の高い市場であっても、問題とならない可能性が広がったうえ、審査の予見可能性も高まったことから、これまで経営者の決断を不必要に躊躇させていた弊害を回避する効果も期待できる。

(3)国際市場の画定に関する可能性の明記について

見直し案では、一定の条件付きで国境を越えて市場の地理的範囲が画定され得ることが明記された。審査の透明性向上に資するうえ、国際的な競争が激化するなか、企業の国際競争力を維持・強化する方向での見直しがなされたことは高く評価できるものである。

しかしながら、今回の見直しは現状の審査実務を反映させたものにすぎず、国際市場の画定とそれに伴う競争実態の把握が、どの程度審査全般に影響を与えるのか、国内市場の寡占度をはじめとする他の要素に対しどの程度優先されるのか等について、その判断は依然として個別事案ごとの公取委の裁量に委ねられており、審査結果の予測可能性を高める効果についてはいまだ十分ではない。審査事例の開示の充実はもちろんのこと、判断基準の明確化については今後の課題として検討を求める。

(4)第1次審査結果の回答を得るまでの期間について

見直し案では、必要書類の提出後、原則として20日以内に追加資料が必要ないことを当事会社に通知し、その通知した日から30日以内に第1次審査結果の回答が得られることとなっている。

しかしながら現指針では、「資料の提出の日から原則30日以内」に書面審査の結果に関する回答を得られることとなっているため、当初の書類提出に問題がない場合には、結果として現状に比べて第1次回答が遅れる可能性があるv 。したがって、少なくとも、追加資料を必要としない場合については、現状どおり「書類提出の日から30日以内」に第1次審査結果の回答が得られるようにすべきである。

企業結合審査は、今後もますます高度化・複雑化していくことが予想されるが、経営者にとって、合併等の企業結合は、変化する事業環境に即応した高度な経営判断が要求されるものであり、審査の透明性、予見可能性、迅速性の向上については、継続的・機動的に見直しが行われることを望む。

以上

  1. 【直近3年間における審査実績】
    現在のセーフ・ハーバー基準を超える35%超~50%以下の案件でさえ、82%が「問題なし」との結果
    • 結合後シェア35%以下の案件→100%が問題なし
    • 同35%超50%以下の案件→82%が問題なし
    • 同50%超の案件 →65%が問題なし
    (なお50%超の案件については、問題解消措置を講じた後は9割の案件が企業結合を実現している。)
  2. 2006年4月に実施した経済産業省の日本企業144社に対するアンケート結果による(有効回答55社)
  3. たとえば現指針には、「法により保護すべきは国内における競争である」として、当事会社の事業活動の範囲の観点から、「輸出先の地域を含めた市場画定が行われることはない」と記載されている。
  4. 国内シェア25%~35%以下の結合案件では、「5割」の企業が「企業結合に躊躇する」との意向を示し、35%~50%以下の結合案件では、「ほぼ100%」の企業が「躊躇する」との意向を示している。
  5. 近年TOB(株式公開買付)の利用が顕著に増加しているが、一旦開始したTOBの中止・撤回は、証券取引法上限定された場合にのみ認められている。しかし現在の運用では、TOBの開始に当たり、「公取委に対する事前相談の結果、承認が得られない場合はTOBを撤回する」という条件を付したとしても、それをもって撤回できないのではないかとの疑問が残るため、当事会社としては、こうしたリスクを考慮し、事実上、事前相談の回答を待ってからTOBの開始公告を行わざるを得ないことが少なくない。この点からも、事前相談、特に第1次審査については、早急な回答が望まれるところである。

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