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「郵便貯金銀行および郵便保険会社の新規業務の調査審議に関する所見」に関する意見
2007年1月30日
社団法人 経済同友会
代表幹事 北城 恪太郎
I.基本認識
郵政民営化の最大の意義は、「小さな政府」へ向けて資金の流れを官から民へシフトし、健全な金融市場の発展を促すことにあり、ひいては日本経済の活性化につなげるべきものである。そのためには郵貯、簡保という国の信用を背景に、巨大化した公的金融の規模を圧縮するとともに、郵貯銀行、郵便保険会社が、健全な民間企業として市場で自立できるよう、円滑な移行を果たすことが最も重要である。
しかし標記所見には、政府出資という国の関与を残したまま、新規業務への参入を認め、郵政民営化の意義を後退させかねない内容が含まれる。
郵政民営化委員会には、郵政民営化をあるべき方向へ導くためにも、強力な指導力を発揮されることを要望する。
II.郵政民営化と新規業務について
- 郵貯・簡保の経営の現状について
所見では、『現在の郵貯・簡保のビジネスモデルは競争力がない』としているが、それを理由に新規業務を認めるのは改革の意義に反する。
むしろ既存業務は、現実に相当の利益をあげ、移行期間中の収益の中心となるものであり、市場から高い評価を得て株式上場・処分を進めていくためには、既存業務の効率化、収益力向上に最優先で取り組むべきである。
とくに民営化を目前に控えた郵貯・簡保は、金融機関として最も重要なコンプライアンス態勢が、総務大臣による業績評価でC評価(取組みに遅れ)とされており、むしろ早急な内部統制の強化が必要である。 - 株式上場・処分の意義について
民営化した郵貯銀行、郵便保険会社が自立した健全な民間企業となるためには、経営を市場の監視下におくことが重要であり、そのためには早期の株式上場が求められる。早期の株式上場の条件として、まず経営の効率化から優先的に取り組むべきであり、新規業務については、民間との競争条件のイコールフッティングの確保を大前提とし、移行期間という時間軸の中で、株式の処分の度合いに応じて段階的に認めていくべきである。
従って郵貯銀行、郵便保険会社が完全な経営の自由度を獲得するためには、早期に政府出資株式を100%処分することが求められる。 - 暗黙の政府保証について
所見では、『「暗黙の政府保証」は、預金者・加入者等の誤解に基づくもの』としているが、誤解であるなしにかかわらず、少なくとも政府出資が残る間は、預金者・加入者等に政府からのサポートへの期待が残るとみるべきである。
政府出資が残る限りは、イコールフッティングは明確にはならないことから、現行の限度額設定等は維持するとともに、新規業務への参入に関して厳格な認定が必要である。
III.基本的な考え方について
- 金融二社のバランスシートの規模
所見では、『郵貯銀行、郵便保険会社のバランスシートは厳格なALMの実施により市場原理に基づき自ずと適正化されるべきもの』としている。しかし、そのバランスシートはあまりに巨大であるだけに、その縮小を市場原理に委ねるのみでは、金融市場にとっては波乱要因となるおそれがある。
郵貯銀行・郵便保険会社が、円滑に民間のマーケットに統合されるためにも、規模による弊害が発生する恐れのある場合には、機動的な防止措置が必要である。 - 適正な競争関係の確保
所見では、『適正な競争関係の確保の運用に当たっては、事前の競争制限ではなく、事後の適正な競争関係の確保を図るべき』としている。しかし政府からの出資が残る移行期間中のイコールフッティングの確保については、事後規制だけでは不十分であり、公正中立な郵政民営化委員会による事業毎のモニタリングと徹底した情報公開が必要である。
以上