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医療制度改革について
- 「医療制度構造改革試案」(厚生労働省10月19日)に対する意見 -

社団法人 経済同友会
代表幹事 北城 恪太郎
社会保障改革委員会
委員長 桜井 正光
(リコー 取締役社長)

厚生労働省より「医療制度構造改革試案」が発表され、医療費膨張への一応の抑制策が示された。しかしながら、患者本位を起点としながら、医療サービスの提供を徹底的に効率化し、財政的にも持続可能とするためには、不十分な点が多い。
医療費適正化のために、医療給付費の伸びをいかに抑えるかが、試案での一番大きな柱に他ならない。厚生労働省はミクロの施策を積み上げ、一方で、経済財政諮問会議民間議員はマクロの政策目標を提案するが、両者の間には、理念と目標値において大きな隔たりがある。

1.マクロ指標による政策目標の設定と管理が必要である

経済財政諮問会議民間議員が提案する名目GDP成長率に65歳以上人口の増加数を加味した政策目標については、現役世代への過重な負担により、経済活力が過度に削がれることを防ぐうえで、必要な措置であると考える。
さらに言えば、財政健全化を進めるにあたっては、社会保障給付費のなかでも、特に大きな増加が見込まれる医療給付費に、一定の歯止めをかけなければならない。経済社会の有り様に見合った管理目標を設けたうえで、個々の適正化策を展開していく重層的な取り組みが、今後一層求められることになる。この様な視点に立った目標値および諸施策の立案を目指して欲しい。

2.試案におけるミクロ施策の積み上げに頼るのみでは不十分である

低所得者に十分に配慮したうえでの、高齢者の自己負担増や療養病床での食費・居住費の自己負担化等はやむを得ない。また、生活習慣病の予防や平均入院日数を短縮するための工夫は妥当であるが、その効果は未知数である。
これら以外にも、規制の撤廃・緩和による競争促進策等、医療の効率化につながる具体的手段を示し、実施へ向けた議論をさらに進める必要がある。

3.更なる具体策の検討を

医療給付費の将来目標を達成するためには、更なる具体策が求められる。

  1. 粗診粗療の未然防止等を十分に考慮したうえで、医療機関の効率化へ向けたインセンティブを高めるためにも、診断群別定額払い方式の本格導入に向けた検討を進めるべきである。
  2. 高齢者の患者負担を現役世代と同様に3割とすべきである。負担増に対応できない人への施策を確実に講ずることを条件とし、低所得者には十分な配慮を行い、同時に高額療養費制度を適切に運用する。
  3. 診療報酬のあり方やその配分について、その実態を精査し、必要な見直しを行うことを求めたい。

なお、諸施策の実施過程で蓄積された情報を基に、目標値および個々の施策を検証し、必要に応じてそれらを見直していくことは言うまでもない。

4.加入者へのサービス向上も重視した保険者の改革を

運営の安定化および効率化に繋がる適正な規模を実現するために、保険者の再編・統合は、都道府県単位を軸として議論を深めるべきである。また、患者のエージェントとしての機能を強化すること等を通じて、加入者へのサービス向上をより一層図ることも重要である。
さらに、将来に向けては、加入者の職業、年齢、所得の多寡、所得補足率等の条件や保険料賦課方式の調整等を図りつつ、公的医療保険の一元化を視野に入れた検討が行われることが望ましい。

5.試案における新たな高齢者医療制度には反対である

現役・若年世代からの保険料で、高齢者医療費の一部を賄う世代間での所得再分配が大きくなるにつれて、受益と負担の関係が不明確となり、医療保険制度への信頼が揺らぐという問題が生じつつある。後期高齢者の保険料1割、国保・被用者保険からの支援約4割、公費約5割という財源構成は、拠出金に大きく依存する現下の「老人保健制度」と大きく変わるものではない。
後期高齢者の医療は、社会福祉政策として、3割の自己負担と7割の税により着実に実施すべきである。

6.国・都道府県・市町村は綿密な連携を

新たな高齢者医療制度を含め、保険者の再編・統合へ向けては、国、都道府県、市町村が対立していては、その実を結ぶことは困難である。将来を見据え、それぞれの役割分担を明確にしたうえで、綿密な連携を図りながら改革を進めることを、国および地方公共団体等には求めたい。

試案の内容は多岐にわたるが、国民に対して十分な説明が必要であることは言うまでもない。負担をどこまで許容できるのか幅広く議論し、国民の理解と納得を得るには、政治が果たすべき役割は極めて重い。
改革の先延ばしは許されない。医療サービスの質的低下を伴わず、国民に安心を与えつつ、財政的にも持続可能とする理念を堅持した改革の断行のために、小泉首相には、自ら調整に乗り出し、より一層のリーダーシップを発揮していただきたい。

以上


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