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金融システムの信認確立への政府の決断を求める

社団法人 経済同友会
代表幹事 小林 陽太郎

経済情勢が厳しさを増す中で、4月からのペイオフ解禁を控え、金融システムをめぐる不安が急速につのっている。不良債権問題の処理にはこれまで様々な努力が積み重ねられ、政府も、問題が生ずれば公的資金の再注入を含め機敏に対応する意向を表明しているが、未だに最終的な解決の目処は立っていない。市場は、金融機関が実態として過小資本の状態に陥っており、さらにそれが悪化しつつあるのではないかとの強い不安感を抱いている。こうした事態を前提とすると、金融システムに対する信認を確立するためには、個々の金融機関が資金繰り破綻等何か具体的な問題が持ち上がる前に政府が決断し、思い切った措置をとることが求められる。

政府は直ちに、経営健全性に応じた注入方式の工夫など現行の金融危機対応スキームの見直しを含め、今国会中に所要の措置を講じた上で公的資金を注入するとの方針を固め、金融システムの信認確立への不退転の決意を明確に表明すべきである。

そして、今回の措置は抜本的かつ最終的なものとしなければならない。過去2回の公的資金の注入は、その都度人々や市場に心理的な安心感を与える効果はあったものの、結局は不良債権問題の抜本的処理を進めることにはならなかった。今回は、この失敗を繰り返してはならない。今回の措置が将来性の乏しくなった金融機関・企業の退出と一体となり、金融機能の活性化につながって、初めて構造改革の突破口を開くことになる。そのためには、今回の公的資金注入は次のような条件の下に実施されることが極めて重要である。

  • 公的資金の再注入に際しては、株主責任と経営責任の明確化、ならびに、特別検査に加え新会計基準に基づく財務内容開示と公認会計士による厳正な監査の実施を大前提とすること
  • 政府側は、公的資金を資本として注入する場合は、実質的に国有化されることになるが、その弊害を避けるために、
    • 当該金融機関が注入された資本を元手に新しいビジネスモデルを構築し、積極的にリスクテイクすることを容認すること
    • 当該金融機関の企業価値の向上を期待するが、確定利付き貸付ではないので、定期的な元利返済には拘らないこと
    • 経営者の交代を求めるとともに、コーポレートガバナンスの変革を求めるが、個別の経営には干渉しないこと
    • 大口倒産の防止や中小企業貸付の義務づけなど、合理的判断を超える負担を持ち込まないこと
  • 金融機関側は、収益性の高いビジネスモデルを早急に確立し、金融サービス業として再生するため、
    • 問題企業の整理や新しいビジネス機会の評価に関し、的確かつ果敢な判断能力を持つ経営者を、外部にも門戸を開き、選任すること
    • 財務体質の健全化を果たした金融機関については、適正なリスクマネジメントの確立を図りつつ、リスクに挑戦する金融機関への脱皮を図ること
    • 伝統的融資等については、特定企業、特定業種への集中を避け、選択と集中を実践すること
    • 大手金融機関については、国際競争力再構築のため、国際業務にも新しい活路を見出す努力を開始すること
  • また、公的資金再注入のほかに、償却財源補填の観点から、米国に倣い金融機関が過去に納めた税の取り戻しができるよう、政府において所要の措置を講ずることも検討に値する。

金融システムをめぐる問題は既に重大な局面にあると推察される。いま最優先すべきは、ペイオフ解禁後にシステミックリスクが生ずることのないよう、その前に万全の体制を確立することである。これ以上の問題の先送りは、構造改革の貫徹自体を危うくする。わが国の問題解決能力が問われていると言っても過言ではない。改めて、政府の不退転の決断を求める。

以上


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