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小泉内閣への提言その1
「民間活力と個人支援中心の雇用セーフティネット」

社団法人 経済同友会

構造改革を進める上で、最大の問題は失業の増加である。構造改革による失業者は、景気後退に伴う一時的な失業者とは違い、雇用のミスマッチ(年齢、能力(賃金)、地域)によるものである。競争力を失った部門から、より成長性の高い部門への労働移動を促す必要がある。国民の不安を取り除き、労働移動を円滑に進めるには、公共職業安定所のあり方を含め、新しい時代に相応しい新しい発想に基づく雇用のセーフティネットの再構築が必要である。

第1に、職業紹介や教育訓練などを含めた労働市場の機能強化に最優先に取り組む。そのため、民間の力を最大限に活かすよう、規制緩和等により、人材関連産業を育成する。

第2に、対策の重点を、公的機関を経由した措置や企業などの組織に対する支援から、個人への直接支援に転換する。それにより、個人にとっての選択肢の拡大につなげ、また人材関連産業の競争によるサービスの質的向上と多様化を図る。
第3に、国民の不安を払拭するため、失業者の生活を支援するための措置を拡充する。以上、「職業紹介」「職業訓練」「生活支援」の3つのパッケージからなる雇用のセーフティネットを構築する。

なお、言うまでもなく、セーフティネットのもう一つの柱は社会保障であるとともに、これらに並行して新規の雇用機会の創造を進めなければならない。そのポイントはサービス産業にある。特に介護、保育、教育など、これまで主として公的部門が供給主体となってきたサービス部門においては、量のみならず質の面において大きな潜在的需要が存在する。規制緩和や起業支援等による民間活力の活用が早急に求められるが、これらについては、順次、具体策を提言する予定である。

具体的提言

I 民間の職業紹介機能の強化

職業紹介において重要なのは、単に仕事を紹介することではなく、求職者の能力診断やカウンセリング、希望職種・就業条件などに関するコンサルティング、適切な職業教育訓練の紹介など、総合的なサービスの提供である。それには、民間の人材関連産業の発展を図ることが有効である。

職業紹介・カウンセリングの民間への委託

公共職業安定所の業務を民間委託し(報酬は民間職業紹介における紹介手数料に準ずる)、多様できめ細かなカウンセリング・職業紹介サービスの提供、競争促進による職業紹介機能の強化を図る。

なお、公共職業安定所については、将来的には、その職業紹介機能は民間へ移管する一方、民間では十分に対応できない長期失業者や就職困難者の支援に特化する。

各種助成金における公共職業安定所紹介要件の緩和

新規雇用創出のための企業への助成金支給は、公共職業安定所の紹介によることが要件とされているが、公共職業安定所経由の入職率は全体の2割にも満たない。助成金が企業による新規雇用拡大につながっていないとともに、民間との競争条件を歪めている。本年度末までとなっている助成措置を3年程度再延長するとともに、支給の対象を、民間職業紹介所、求人広告など、公共職業安定所以外を経由して採用した場合にも、一定の基準を設けた上で認める。

職業紹介の際の紹介手数料についての規制緩和

職業紹介サービスの多様化と競争による質的向上を図るため、依頼企業が支払う紹介手数料の上限をさらに緩和するとともに、一定の条件の下で求職者本人からの手数料徴収を解禁する。

有期雇用契約期間の拡大

採用における企業の選択肢を広げるとともに、個人の働き方の自由度を高めるために、労働基準法を一段と緩和し、5年、10年など現在より長期の有期雇用契約の締結を可能とする。また、有期雇用契約の適用職種範囲を拡大する。

II 職業能力向上の支援

円滑な労働移動を図るためには、能力のミスマッチを解消することが最も有効な手立てとなる。現在の公的職業能力開発施設は公共職業安定所での求職者を対象とする技能訓練が中心であり、構造改革期の大規模かつ広範な職業転換には対応できない。企業外での個人の職業能力開発を国をあげて支援するとともに、民間の力を活用する。

コミュニティ・カレッジの創設

地域密着・官民連携の職業教育訓練の場として公設民営の「コミュニティ・カレッジ」を創設する。施設は国公立大学・専門学校等の既存のインフラを有効に活用する(新たな箱ものは不要)。地域の企業や事業者団体が積極的に関与し、求職者に求める職業能力を明確にした上で、そのための実践的な教育プログラムの開発、講師派遣、運営などに当たるとともに、修了者を積極的に採用する。

教育バウチャーの具体化

非自発的な失業者を対象に、大学・大学院、専門学校、各種教育訓練機関など教育サービス受講への支払い(修了を義務づける)に使用できる教育バウチャーを発行する。就業者や自発的な失業者に対しては、自己啓発費用の所得控除を認める(これに伴い、雇用保険における教育訓練給付制度は廃止する)。

III 生活支援の拡充

失業者の生活を支援するための措置を拡充する。

雇用保険の訓練延長給付制度の拡充と見直し

公共職業訓練を受講する者に対して所定給付日数を超えて支給される訓練延長給付について、民間への委託講座を大幅に拡大し、対象者を増やす。その一方、給付額は、前職給与や年齢を前提としない生活支援に相応しい一定額とし、一般財源で賄う。

全国延長給付の拡充

今後、構造改革が本格的に始動すれば失業率の上昇が見込まれることから、雇用環境が全国的に悪化した場合の全国延長給付の発動条件を、失業率5%に相当する程度に引き下げる。

短時間労働者に対する雇用保険の適用

雇用者の約半数は雇用保険の適用外になっている。パートや派遣労働などの短時間労働者を対象とする雇用保険制度を整備する。

なお、公務員についても、公的部門の抜本的改革が不可欠な中で、失業はないという前提は最早成立しない。公務員も雇用保険に加入するべきである。

住宅ローンの救済措置

住宅金融公庫融資については、失業等で収入が激減した場合に償還期間の延長、元本返済猶予等の救済措置がとられているが、民間金融機関の住宅融資についても政府保証により同様の返済繰り延べ措置を講ずる。

教育費・生活費の支援

奨学金や公的な無利子融資などにより、子弟の教育費や家族の医療費等に対する支援を拡充する。

(参考)対策に要する財政規模の推計 (経済同友会事務局による試算)

* 以上に提言する具体策を実施した場合に要する財政規模は、年間1兆5000億円程度と見込まれる

職業紹介・カウンセリングの民間への委託......1000億円の基金の創設

  • 1年間の新規就職者・転職者が、失業の拡大により900万人(現在約750万人)に増加し、かつ、民間職業紹介所経由を全体の6%(現在約2%)と仮定。なお、賃金については、平成12年賃金構造基本統計調査結果報告により、平均月収302,200円、年収3,626,400円とした。
  • (半年の賃金:3,626,400円÷2)×(係数:10.5%)×(対象者:900万人×6%)=1028億円
    注:(半年の賃金)×(10.5%)は、有料職業紹介事業者が紹介先企業から受け取る手数料の上限

各種助成金における公共職業安定所紹介要件の緩和......2500億円の予算措置

  • 現行措置の約2倍を予算措置すると仮定
    <現行>
    「新規・成長分野雇用創出特別奨励金」:基金対応900億円(平成11年8月~13年度末)
    「特定求職者雇用開発助成金」:823億円予算措置(平成13年度)
    「緊急雇用創出奨励金」:基金対応600億円(平成11年1月~13年度末)

コミュニティーカレッジの創設......200億円の基金の創設

  • 開設準備費用(施設整備・設備費など)及び運営費用(プログラム開発費など)として1箇所につき1億円を想定。全国で年間200箇所で開設する。

教育バウチャーの具体化......4000億円の基金の創設

  • 1人当たり100万円に相当する教育バウチャーを支給、非自発的失業者120万人(現在約100万人)を想定、その1/3が利用すると仮定した。

雇用保険の訓練延長給付制度の拡充と見直し......5400億円の予算措置

  • 1日5000円と給付額を固定、30万人(一般受給者120万人と仮定、その1/4の利用を想定)が360日利用すると仮定した。

全国延長給付の拡充......1600億円の予算措置

  • 90日の延長に対し、1日6000円(給付実績平均)で、30万人が対象と仮定した。

以上


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