経済成長と多様な個人の活躍を支える「雇用型自律労働契約」の導入を
~労働法制の令和モデルへの見直し~
委員長 峰岸 真澄
(リクルートホールディングス 取締役会長 兼 取締役会議長)
委員長 安渕 聖司
(アクサ生命保険 取締役社長兼CEO)
提言のポイント ※詳細は、提言本文をご確認いただきますようお願いいたします。
流動化する労働市場において、イノベーション創出に取り組む企業や多様な働き方を求める個人の活躍を後押しするためには、「働き方のOS」である労働法制の改革が不可欠です。これまでの画一的・硬直的な時間管理による働き方とは別に、意欲ある人材が自律性を発揮し、成果に応じた報酬を前提に柔軟に働ける新しい雇用の選択肢が求められています。
本提言では、労働時間と成果・賃金が結びつく業務を対象とする労働基準法に基づいた従来通りの雇用に加え、労働時間と成果が比例しない業務に従事する意欲ある人材を対象に、自律性・柔軟性・成果責任に基づいた新しい雇用契約である「雇用型自律労働契約」の導入を提言しております。「令和モデル」の労働法制として、選択可能な二つの雇用が併存する労働法制へと転換を図ることで働く個人の潜在力を引き出し、企業と社会の持続的な成長を実現できると考えます。
また併せて、不当解雇時の金銭解決ルール、会社分割時の労働契約継承に関する課題への解決策についても検討を行い、データベース整備など透明性・予見性を向上すべきと提言しています。
「雇用型自律労働契約」の導入について
【雇用型自律労働契約の特徴】
労働基準法の適用除外:労働時間制約を撤廃し、真に時間にとらわれない働き方を実現
• 成果責任を基礎とした報酬体系:労働時間ではなく成果やスキルに応じた報酬
• 個別労働契約による自律的な働き方:労働者自身による自律的な労働時間管理と柔軟な雇用契約
• 新たな健康確保措置:画一的な時間管理に代え、個人の実情に即した柔軟な健康確保の仕組みへ転換
【制度設計のポイント】
<導入要件>
• 労使自治に基づく本人同意(随時撤回可能)
• 対象業務の限定(個人の裁量による成果の差が大きい業務)
• 濫用防止のためのガイドライン整備
<健康確保措置:新しい労使の役割分担>
• 使用者:労働時間把握に代わる健康管理支援義務(ウェアラブル端末、健康管理アプリ等の提供)
• 労働者:自らの健康維持への一定の責任
【法制度見直しのイメージ】
• 労働契約法:雇用型自律労働契約の位置づけを明確化
• 労働基準法:第41条に新たに第四号を追記し、労働時間等規定の適用除外
• 労働安全衛生法:新たな健康確保措置の導入
【令和モデルを補完する提言】
• 不当解雇時の金銭解決ルールの予見可能性向上
• 会社分割時の労働契約継承手続きの改善
本提言による「雇用型自律労働契約」の実現により、イノベーションを担う意欲ある人材が潜在力を十分に発揮できる環境を整え、個人の成長と企業の生産性向上の両立を図り、日本の経済成長を加速させることを目指します。
以上