目指すべき外国人材との共生社会とステークホルダーの果たすべき役割
~外国人材の人口1割時代に向けて~
座長 長尾 裕
(ヤマトホールディングス 取締役社長 社長執行役員)
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、わが国の労働力不足、とりわけエッセンシャルワーカーの不足が深刻化しており、社会基盤の維持や経済成長への悪影響が懸念されています。このため、働き方改革、女性・高齢者の活躍促進、生産性向上に加え、エッセンシャル領域での外国人材の活躍促進が急務となっています。一方で、外国人材が総人口の約1割を占める可能性も指摘されており、地域社会では言語や文化の違いによる分断や摩擦リスクが懸念されています。
提言のポイント ※詳細は、別添の提言本文をご確認いただきますようお願いいたします。
目指すべき「外国人材との共生社会」の定義
定義1:相互尊重と公平な社会の実現
「外国人材を『共に国を支える仲間』と位置づけ、日本国民と外国人材が互いの文化や価値観を尊重し合う社会を形成する。その上で、国籍や出身に関係なく、能力や意欲を正当に評価し、公平な機会を確保する」
定義2:自助を前提とした包摂的な支援と活躍の促進
「中長期的に活躍する意思と向上心を持つ外国人材に対し、生活・教育・就労スキル向上の支援を国・自治体・企業等が連携して提供する。単なる受け入れ拡大ではなく、主体的な努力を前提とした支援を通じ、持続可能な社会参画を促進する」
定義3:安全と安心の確保
「外国人材がわが国の法令や社会制度を正しく理解し、安心して生活・就労できるよう、適切な情報提供を行う。一方で、日本社会も安心して外国人材を受け入れられることができるよう、法や制度に反する行為には、日本国民と同様に公正に対処し、安全な共生社会を実現する」
優先的に取り組むべき施策
- 国による「共生支援プログラム」の構築と受講促進
⚫外国人材が日本社会に円滑に適応できるよう、国が日本語・社会制度・文化・マナー等を体系的に学べるカリキュラムを策定。
⚫プログラムの修了後には、永住権取得や家族帯同の条件緩和といった優遇措置を設定。 - 外国人子女が身に付けるべき日本語能力水準の規定と小・中学校教育の義務教育化
⚫ 国が最低限の日本語能力水準と教育指導要領を策定し、その上で外国人子女にも小・中学教育を義務教育として適用。 - 共生を推進する企業に対する国の認証制度
⚫大企業には統合報告書などで、共生に関する方針と具体的な取組みの記載を推奨。
⚫「共生促進企業」認証制度の創設。 - 企業による生活支援の強化
⚫外国人材とその家族を対象に、日本の社会制度・文化・マナー等に関するセミナーの実施、社内相談窓口の設置などによる生活支援の強化。
⚫本人同意のもと、自治体との連絡先情報の共有を行い、災害時や行政情報の迅速な伝達を可能にする情報連携体制の構築。
⚫家族を対象とした日本語・文化等の教室の提供。 - 複線的なキャリアステップ形成と適切な人事・育成体制の構築と発信を促進
⚫企業は、育成就労から特定技能2号取得までの道筋を含む複線的なキャリアパスを提示し、必要なスキルや日本語能力の向上を支援する育成体制・人事制度を整備。
⚫大企業に対しては、外国人材への人的資本投資の内容を統合報告書に明記することを推奨し、育成やキャリア形成への取組みを透明化。
⚫外国人材がより多様な業務に関われるよう、「技術・人文知識・国際業務」や「育成就労/特定技能」等の在留資格における従事可能な業務範囲を、現場実態に即して柔軟に見直し。
外国人政策の実効性担保に向けた施策
- 外国人政策の実効性担保に向けた施策
⚫共生社会構築に向け、ステークホルダーの役割を明確化し、必要な活動とコストを支える体制を規定。 - 共生政策を統括する横串機能をもった組織の設置(事務局と戦略会議)
⚫複数省庁にまたがる一貫した政策形成と、機動的かつ実効性ある政策実施を可能とする組織を政府内に設置。
以上