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「人生100年時代の働き方」経済同友会×ONE JAPAN共創フォーラムレポート

2018年11月 5日

2018年8月27日に開催した「経済同友会×ONE JAPAN共創フォーラム『人生100年時代の働き方』」におけるパネルディスカッションの抄録です(所属・役職は開催時)。

《ファシリテーター》

秋池 玲子 副代表幹事・経済同友会2.0を実践推進するPT委員長

《パネリスト》(順不同)

経営者(経済同友会)

  • 中野 祥三郎 経済同友会2.0を実践推進するPT 委員(キッコーマン 取締役常務執行役員)
  • 南 壮一郎 経済同友会2.0を実践推進するPT 委員(ビズリーチ 取締役社長)
  • 中田 るみ子 人材戦略と生産性革新委員会 副委員長(三菱ケミカル 執行役員)

若手・中堅ビジネスパーソン(One JAPAN)

  • 濱松 誠 ONE JAPAN共同発起人・代表(パナソニック)
  • 大川 陽介 ONE JAPAN共同発起人(富士ゼロックス)
  • 川元 弓恵 ONE JAPAN子育て分科会メンバー(NEC)

パネルディスカッションの様子

テーマ1「働き方改革」

「施策が推進されている実感」は、経営者と若手・中堅でギャップ

秋池 経済同友会とONE JAPAN で実施した意識調査の結果をみると、経営者、若手・中堅社員ともに働き方改革で重要視する施策の上位3項目は一致しましたが【図表1】、経営者の約9割が推進の実感が「ある」と回答したのに対し、若手・中堅では過半数に届いていません【図表2】。目指す方向は同じでも実感に差が生じている、これこそが働き方改革の難しさです。この結果をどうお考えですか。

図表1 働き方改革において最も重要だと思う施策は?

図表2 その施策が推進されている実感は?

中野 経営者も意識が変わってきて、さまざまな制度や施策を導入し、働き方改革もかなり進んできたのかなと思っています。ただ、現場では、社員が申し訳ないと思いながら制度を使っているのではないのか、とも感じています。組織の意識改革を進めていく必要があるのではないでしょうか。

濱松 この結果を見て、従業員側が「経営者は分かっていない!」と思わないことが大事だと思います。対話こそが重要で、差を「見える化」したのはその始まりに過ぎません。このギャップが悪いとは思わない、というのが私のスタンスです。

 私が社会人になった20年前に比べれば、だいぶ環境が変わったというのが実感です。経営者が頑張ってきた結果でしょう。しかし従業員は「全然変わっていない」と思っている。私は経営者ですが、現在42歳の「中堅」世代でもあり、現場の言い分もよく分かります。しかし、経営者にならないと見えないこともある。どちらが正しいかではなく、理解に時間がかかる問題だということを皆が認識するために「いい結果が出た」と思っています。

大川 今、長時間労働の是正に向け、業績が芳しくなくても労働時間は短くしろという状態で、若手が疲弊している感覚があります。この調査結果でそれが定量的に示されました。制度を整えるだけではだめで、活用を進めるには、制度に対する肯定的な空気が必要だと感じます。

中田 働き方改革は、経営者だけが行うものではありません。仕事のことを一番理解している現場の社員一人ひとりが、プライオリティをつけて業務の取捨選択をしたり、今までのやり方を思い切って変えてみる。そうしたチャレンジングな取り組みが必要でしょう。長時間労働の是正は経営側の役割で、上から降ってくるものという認識があることから、このギャップが出てくるのではないかという気がしています。

川元 働き方改革はまだまだ、特別な人のためのものというイメージがあるのではないでしょうか。あるいは、「残業を減らせばいいのだろう」と認識している人や、「テレワークをすれば解決するのでは」と考えている人もいる。働き方改革に対する考え方は千差万別なのではないかと思っています。

若手・中堅は「多様な人材の活躍」を期待。施策の妨げは「商習慣や労働慣行」

秋池 施策に期待する効果は「生産性向上」「ワークライフバランスの実現」が両者とも上位でした。ギャップに着目すると、最も目を引くのは「多様な人材の活躍」で、若手・中堅の4割が期待しているのに対し、経営者は5.3%です【図表3】。また、施策の妨げとして上位に挙げられたのは、「従来の商習慣や労働慣行」でした【図表4】。これは社員だけではなく、働き方について顧客も含めた世の中の見方が変わる必要があるのではないかと思います。この結果をどうご覧になりましたか。

図表3 施策が推進されている実感が「ある」方に聞いた施策に期待する効果は?

施策が推進されている実感が「ない」方に聞いた施策の妨げとなっていることは?

中野 従来の商習慣や労働慣行が施策の妨げになっているという点では、自社の働き方改革を外部に押し付けるようなところが一部であるのではないでしょうか。自社だけ良ければいいのではなく、自社の働き方改革によって取引先も活性化させる方策を考えるべきでしょう。経営者の最終目標は、企業が価値を創造してお客さまに喜んでもらうこと、別の言い方をすれば、社会の課題を解決していくことにあります。そのためには多様な人材が活躍しなければならないし、個人が心身ともに活気に溢れていないとイノベーションも起きず、価値も創造できません。

濱松 働き方改革の効果として「多様な人材の活躍」を期待する声が経営者と若手・中堅で大きく異なるという結果は、われわれ現場側からみると、経営者や中間管理職のマインドセットが十分ではないのでは......、と思ってしまいます。

 会社が継続的に成長するためにどうあるべきなのか。それが働き方改革の本質でしょう。経営者が価値創出を期待するのに対し、若手・中堅は現場の活性化を求めている。この調査結果をみると、若手・中堅のみなさんは働き方改革を少し短絡的に考えているのかなという印象を受けました。

テーマ2「副業・兼業」

若手・中堅に期待が大きい副業・兼業の広がりとその効果

秋池 経営者、若手・中堅社員ともに、副業・兼業が推進されている実感はほとんどありません【図表5】。しかし若手・中堅では、複数の企業に同時に従事する働き方の広がりに期待が大きいことが分かりました【図表6】。人材戦略の観点から着手できることは何でしょうか。

図表5 所属企業で、副業・兼業は推進されていると思うか?

図表6 一個人が複数の企業の業務に同時に従事する働き方は、今後増えていくべきだと思うか?

中田 多様な人材がぶつかり合う場を作ることで、人材をサーキュレーションしていく、循環していくことがイノベーションにつながると思っています。そういう出会いの機会の一つが出向であり、もう一つが副業・兼業です。例えば大企業に勤める人がベンチャー企業に出向するなど、違う文化の中で働くのは大変なことです。同じ言葉でも意味が違ったり、成果を出さなければとストレスも抱えます。しかし、若いうちにそうした経験をすることは、本人の大きな成長につながりますし、そこで生まれるイノベーションが企業にとっても重要になります。

秋池 推進に向けては経営者、若手・中堅ともにルールの整備・明確化を挙げる声が圧倒的です。経営面からは、就業規則を改定しても、副業・兼業には労働者の健康確保、守秘義務や利益相反などクリアすべき問題がたくさん残っています。さらに経営者は、「社外の知見を活用する柔軟性」という土壌が必要だと考えているようです【図表7】。

図表7 副業・兼業を推進するために必要なことは?

大川 副業・兼業は、日本全体でイノベーションの可能性を高める手段の一つではないかと思っています。例えば、ONE JAPAN で試みたことの一つですが、メーカー、広告代理店、メディア、ベンチャーが一緒に同じプロジェクトに向かって行動すると、価値観は違っていても、プロフェッショナル同士なのでスピード感があり、アウトプットも1社単体で出す内容とは一味違うということがありました。

川元 人生100年時代に80歳まで働くことを考えれば、キャリアのステージをたくさん持ち、得意分野を伸ばしていくことが重要でしょう。その意味で、副業・兼業は良いことだと思います。

経済合理性があれば副業・兼業は広がる

 経営者にとって、優秀な人材を獲得・維持する経済合理性があれば、副業・兼業は広がると思います。やりたい人はたくさんいるので、問題は、人材の需要側である企業が仕事をうまく切り出せるかにあるでしょう。そのためには仕事の要件定義が必要です。これこそが生産性向上の最も重要な課題であり、ジョブ・ディスクリプションが明確になれば、必然的に働き方改革も前に進んでいくはずです。

中野 さまざまな組織が手を組み共同でプロジェクトを推進するというのは非常に分かりやすいのですが、ある企業に属している社員が、夜だけ違う企業のプロジェクトに参加するということが本当に成り立つのでしょうか。正直分からないところもあります。

 「副業・兼業」という呼び方をしているからよく分からないのであって、企業はすでに、顧問や業務委託、コンサルタントなど外部の力を入れて仕事をしています。

濱松 まさにその通りだと思います。副業・兼業という言葉はともかく、週1回でも、自分は他社でお金をもらえるような業務、プロフェッショナルな仕事をやれるか、価値を提供できるかということを、働き手一人ひとりが意識すべきだと思います。

秋池 副業・兼業の推進に必要なこととして、「従業員の主体性やチャレンジ精神」を挙げる声は経営者の方が多いという結果も出ています。

大川 この結果は、社員はきちんと手を挙げて主体的に行動すべきだと、経営者から言われているように感じました。

中田 従業員が他社で働くことのリスクを言い出すときりがありません。リスクをとって、成果に着目していくことが必要で、従業員にもチャレンジしてほしいと思います。他社に限らず、自社の他部門、海外支社など、いろいろな形で外から来てくれる人が組織の刺激になります。

図表8 所属企業で、今後、副業・兼業で働く社外人材の受け入れが増えると思うか?

テーマ3「仕事と子育ての両立」

「男性の育児」にはまだまだネガティブな空気が強い

秋池 経営者の9割が、自社は「仕事と子育てを両立できる環境」だと思っており、8割が「今後、育児に積極的な男性従業員が増えていく」とみています。若手・中堅社員の回答も低くはないものの、それぞれ7割台、6割台に下がります【図表9、10】。この差をどうお考えでしょうか。

図表9 所属企業は、仕事と子育てを両立できる職場環境だと思うか?

図表10 所属企業では、今後、育児に積極的な男性従業員が増えていくと思うか?

中野 子育て支援制度は整えていますが、男性が女性同様に子育てに参画するという意味では、現実はなかなか進んでいないと解釈しました。かつてと違い、今は長時間働くことが必ずしも成果に結び付かなくなっています。それを前提に、仕事と子育ての両立には、なるべく短時間で仕事を終えられる環境を作ることが重要でしょう。

川元 どうしても「遅くまで残っている人=がんばっている人」とみられる風土があります。投入した時間だけが評価されるのではなく、成果、さらに言えばそこに至るひらめきや創造性も評価してほしいと思います。また、若手・中堅世代でも、男性が育児をすることに対してまだまだネガティブな空気があると思います。育児に積極的な男性社員を増やすポイントは、長時間働くこととの兼ね合いをいかに解決していくかではないでしょうか。

大川 私は6歳と2歳の子どもがおり、二人目の子が生まれたときに3カ月間の育児休業を取りました。自分ではまったく考えもしませんでしたが、先輩から「取れば」と助言をいただいたことがきっかけです。私が取得したことで、後に続く男性社員も増えてきました。制度はすでに整っているので、それを使う空気が醸成されていけば、一気に広がるのではないかと思っています。ONE JAPAN メンバーで、1年間の育児休業を取った男性の経験談によると、育児休業を取ると愛社精神や、仕事をしたいという渇望が生まれるようです。また、育児との両立によってタイムマネジメント力がついたり、休業中の同僚をカバーするために職場のチームワークが高まる効果もあると思います。

人生100年時代には育児・時短はキャリアの妨げにならない

 あえて厳しい問題提起をしたいのですが、仕事と子育ての両立や、男性の育児参加が増えることで、企業の生産性は上がるのでしょうか。当社は自信を持ってYESと言えますが、経済合理性が悪い、すなわち支援制度の充実と、従業員のパフォーマンス向上に、あまり正の相関関係がないケースにも目を向けるべきでしょう。

秋池 調査では、仕事と子育ての両立を推進するために必要なこととして、支援制度や組織体制の充実を望む若手・中堅と、ライフステージに合わせた働き方の選択肢を挙げた経営者とでギャップが見られました。キャリア選択に対する従業員の自覚と責任についても、経営者の方が強く意識している傾向が見られます【図表11】。

図表11 仕事と子育ての両立を推進するために、所属企業に必要なことは?

中田 私は最初に入った会社で13年勤めましたが、二人目の子どもが生まれたとき、育児休業取得を理由に保育園を出されてしまいました。それで会社を辞め、しばらく専業主婦をしましたが、30歳代半ばの、一番経験を積まなければならないときに仕事ができなかったことをハンデと感じ、長い間コンプレックスでした。ただ、言葉を話せない子どもの要求を読み取って対応したり、一人でできるようになるまで寄り添い見守ることは、部下育成にものすごく役立ちます。ものごとの優先順位付けや、タイムマネジメント力もしかりでしょう。仕事を続けることは大事ですが、子育ても十分勉強になります。現在は、休業しても後から勉強すれば十分キャッチアップできると感じています。

川元 私は今まさに30歳代半ばですが、育児で時短勤務をすることに対し「私は一人前に働けないのか」と悔しい思いをすることもあります。しかし、在宅勤務で通勤せずに済んだ時間を資料作成業務に充てるなど、時短だからこそ自分がどこまで仕事を効率よくできるかを考えるようになりました。働き方改革によってその範囲を広げていくということが、南さんのおっしゃる経済合理性の追求になるのではないかと思います。

中野 私の部署には、働くお母さんが大勢います。大変そうな方も多くいますが、そういう人たちに会社の中心で活躍してもらい、食品メーカーである当社でいい商品を開発してほしいという気持ちがあります。人生100 年と言われる時代ですから、子育てで休業したり時短勤務をする2~5年は、キャリアの上では、あまり関係ないと思います。

まとめ

質疑応答では、社内での仕事のシェアが副業・兼業普及の端緒になるのではないかという質問に「兼務では当事者意識が希薄になる。社外に業務を出した方がコントロールしやすい」(南幹事)、「パナソニックでは部門をまたいだ社内"複業"制度の取り組みを始めた」(濱松氏)と回答しました。男性の育児休業推進には経済合理性に加え長期的な社会展望が必要ではないかという問いには、南幹事が「少子化の大きな要因は男女の固定的な性別役割分業意識。経営者も若手も、30年かけてこの国を変えていくという強い意志が必要だ」と述べました。

最後に秋池副代表幹事が「働き方改革は残業抑制の議論に偏りがちだが、このフォーラムの事前会合で、労働時間の長さではなく質の問題だという意見に両団体ともたどり着いた。本日のパネルディスカッションでも、両者にはやはり差があるように見えるが、目指しているところは同じだと感じられたのではないか。こうしたコミュニケーションを重ねることで理解を深め、互いに刺激を受けながら、人生100年時代の働き方改革に取り組んでいきたい」と述べ、閉会しました。


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