代表幹事の発言

山口明夫経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 山口 明夫

 冒頭、6月2日に公表した経済同友会インスティチュート会員アンケートの結果を説明した後、記者の質問に答えるかたちで、高市首相との昼食会、ガソリン代補助、Claude MythosなどのフロンティアAI、新浪剛史前代表幹事の不起訴処分、本会夏季セミナー等について発言があった。

Q:本日の高市首相との昼食会について伺いたい。社会保障改革に向けて、例えば消費税のことなどは話題になったのかどうかも含めてお聞きしたい。

山  口:今回、1時間を少し超えて会食をさせていただいた。冒頭から非常にざっくばらんにお話しくださり、非常にオープンに、前向きなご意見をたくさんいただいた。(高市首相が)神戸で過ごした学生時代は私が大阪にいた時代と少し重なっているので、神戸の話題も出て、雰囲気よく会話を始めていただいた。学生時代の話に関連し、高市首相はプログラミング言語のFortranから勉強を始められたそうだ。私も同じだったというところから、1980年代、学生時代、アルバイトでの学びなどお互いの経験を共有させていただいた。2点目はやはり経済同友会の活動(が話題になった)。新年度、我々がどういったことに注力しているかということをご理解いただきたいと思い、4月の総会で(代表幹事所見として)発表した『「共助成長社会」の実現に向けて―最先端テクノロジーを、生きる力に変えていく―』での定量目標、委員会構成など(についてご説明した)。また、成長のための一丁目一番地は企業変革をしていくことであり、事業ポートフォリオを変えたり、AIを活用したりして、事業構造をどんどん変え、新しい(ビジネスの)やり方に変えていかなければならない。その結果として出てきた原資を研究開発や人材投資に充てていく。そして国内投資、海外市場の開拓につなげ、社会インフラ、国のプラットフォームの強靭化に貢献し、このプラスのサイクルを回していくことが一番重要であるといった話をさせていただいた。我々経済同友会は経済成長を通じてよりよい社会づくりに貢献するという(ことが設立趣旨であり)、それについては非常に良い取り組みだとコメントを頂戴した。

Q:神戸のどのあたりのお話がでたのか。消費税については話題には上らなかったか。

山  口:1980年代当時、神戸ポートピアランド、ポートピアホテルなどが新しくでき、非常に活気に満ちあふれていた。私もよく散策していたといった話をさせていただいた。(消費税については)少し会話はさせていただいた。それほど(会食)時間があったわけではないが、国民にとって一番何がいいかということを考えているとお話しくださった。

Q:消費税に関し、本日経済同友会が公表した経営者の声(アンケート結果)は伝えたのか。

山  口:経営者の声もお伝えしている。

Q:中東情勢に絡み、エネルギーや原材料の供給についてはどのような議論があったか。

山  口:現在政府が取り組んでいる外交、新しい輸入ルートの開拓などをしっかりと継続してお願いしたいと伝えた。ガソリン価格は現在170円前後で、それをキープしていることについて様々な(立場から)意見はあるだろうが、例えば補助がなくなったら一体どうなるのかといったお話もさせていただいた。(ガソリン代補助については)メリットがあるところもある。例えば地方など、車がないと動けない地域も多い。そうした地域は(ガソリン価格が)高騰すると非常に厳しいこともあり、マクロでは様々な意見があるだろうが、ミクロで見た際に(困っている方に)手が届く方策とは何かを見出していくのは本当に難しいと伝えた。

Q:サステナブルにガソリン代の補助を行っていくべきというご指摘かと思うが首相の反応はどうだったか。

山  口:補助金、社会への支援、輸入をどうしていくかなど、全体の流れの中でベストな方法を考えていると非常に冷静にお話しされていた。

Q: Anthropic社のClaude MythosやOpenAIの高性能AIモデルについて伺いたい。(システムの)セキュリティ上の脆弱性が指摘されているが、高性能AI(の活用)についての課題感を伺いたい。

山  口:システムには脆弱性が存在することは間違いない。脆弱性は、システムを利用する中で次第に発見されていくものである。もちろん、メーカーは出荷前に脆弱性がないよう最大限確認した上で出荷するが、それでも100%完璧というわけではない。そのため、稼働後に発見された脆弱性を随時修正しながら対応していくのが現在の基本的な考え方である。Claude Mythosや(OpenAI社の)新しいGPTモデル、その他のAIも同様に、これまでは見つけることが難しかった脆弱性についても、AIの能力向上によって短時間で確認できるようになった。例えば、これまで5年かけて発見されていたものが、1日で何百件も見つかるような世界になったということである。そうして発見されたシステムの脆弱性のうち、優先順位を付け、迅速に塞いでいくことが最も重要となる。現在は、その対応を各企業や顧客を含め、世界中で進めているところである。

Q:金融機関によるアクセス権取得の要請について、日本政府も働きかけを行っていると承知している。重要インフラ施設についても対象に含めるべきとの指摘があるが、アクセス権の対象をどの範囲まで広げる必要があると考えているのか伺いたい。

山  口:金融機関が重要であることは間違いないが、それ以外の社会インフラのシステムも極めて重要である。日本のシステムには、特に重要なものは外部ネットワークと接続されていないものもあり、アイソレートされ、攻撃を受けにくい構造で設計されているシステムも存在する。一方で、そのような環境にない社会インフラのうち、極めて重要なものについては、早期に対応を進める必要がある。少し専門的な話になるが、システムには(いくつかの種類があり)、例えば、IT企業が(開発し)テストして提供しているものがある。また、企業ではなくコミュニティが開発したオープンソースソフトウェア(OSS)をRed Hat社のような企業がサポート付きで提供しているものもある。さらに、(特定の企業によるサポートがない)OSSをそのまま利用しているケースや企業自身が開発したアプリケーションシステムも存在する。メーカーが提供している製品であれば、メーカーが責任を持って確認し、修正プログラムを提供していくことになるだろう。また、OSSをサポート付きで提供している企業についても、同様に確認を行い、必要な修正を提供していくことになると思う。一方で、そのようなサポートがないものについては、利用者自身が相当程度の確認を行わなければならないだろう。ただ、その全体的な対応としては、IT業界全体として有効なアプローチを迅速に利用者へ伝えていくことが最も重要だと考えている。

Q:本日の昼食会に(三菱UFJ銀行特別顧問の)三毛兼承副代表幹事も同行されたと思うが、高市首相との間でClaude Mythosへのアクセス権に関する話はあったか。

山  口:高市首相との昼食の場では、Mythosのアクセス権について、特に話をしていない。

Q:5月22日付で金融庁と日銀が『「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」に係る要請について」』という文書を出した。フロンティアAIへの対応を経営課題として扱うようにと書いてあり、経営トップとしてのコミットメントが不可欠だとある。この具体的な内容、期待されるコミットメントとは何か。また人的リソースを追加するようにとの項目もある。これから様々な脆弱性に対応するための作業が必要になってくると思うが、人材不足が既に顕在化しているのか、今後課題になってくるのか、お考えを伺いたい。

山  口:各企業が持つ稼働中のシステムに脆弱性が見つかると、それを更新するために色々な作業を行い、コードを変える。通常であれば、それでよくなるケースが大半だが、稀に違う障害を起こす可能性がある。したがって、特に社会的使命の高いシステムの場合は、適用までに時間をかけたり、多くのテストを行ったりする。しかし、この対応の場合、それらを待っている間に脆弱性の穴を塞ぐことができず、大変なことになるケースがある。であれば、プロス、コンスあるが、少々期間を短くして、先回りして迅速に対応すべきという考え方もある。これは現場の作業者が判断できるわけではなく、まさに経営リスクとして何を取るかという経営者としての判断だと思う。もう1つは、先ほど申し上げたように、これからは(従来であれば)数年間で出てくるもの(脆弱性)が突然まとめて出てくるため、スパイクしたかたち(短期間)で対応しなければいけない。そうすると、ヒト・モノ・カネをしっかりとアロケーションして対応する必要がある。そこも経営者としての判断だと考えている。人材不足については、システム(改修)はおそらく全て自動化AIで対応できるようになり、10年前、5年前のような人海戦術での対応が不要になる。脆弱性をAIが見つけられるのと同様に、それらの(改修)対応もAIで可能になる。このため、従来の対応方法だと人材不足に(陥ると)思われるかもしれないが、今のテクノロジーの進化を踏まえたかたちであれば対応可能だと見ている。

Q:AIで(システムの脆弱性に)対応するという話だが、Anthropic社はMythos級のものを提供するとの話も出ているようだ。

山  口:AIはどんどん進化していくためどれを使ってもよいが、コードの脆弱性を見つけ、自動的に修正コードを作成し適用して、本番にリリースされていくという全体の仕組みが出来上がると思う。これから先、新しいコードやシステムはそのプロセスを経てからリリースされていくと考えられるため、今のような、突然たくさん(システム改修を)しなければならないということではなく、今後はそのルーチンを回していくかたちになると思う。よって、今この瞬間は大変かもしれないが、これを乗り越えればAIによるフル自動化で対応していく世界が来るだろう。

Q:(書類送検されていた)新浪剛史前代表幹事が不起訴処分となった件について、疑いが出た時の報道状況と比べると、不起訴処分であることがきちんと報じられていないという声がある。代表幹事が感じていることを伺いたい。

山  口:(昨年9月の)退任はご自身で判断された。その後、(捜査状況等に)変化があったからといって我々がコメントをさせていただくことは適切ではないと考えている。

Q:今年の経済同友会夏季セミナーについて、現時点でのテーマなど方向性を伺いたい。

山  口:先日、副代表幹事や委員会委員長などが集まり、都内で2026年度のキックオフミーティングを行った。そこで現在の日本経済、企業を取り巻く環境、世界がどう動いているかを皆で共有した。やはり全ての委員会に横串で影響するものはAIだと思う。AIの進化がどうなってきているのか。これは医療制度にも影響するし、企業変革、教育にも影響する。その全体がどうなっているのか。その上で、私たちが考える優先順位、成長戦略をどう考えていくかを議論した。これをより具現化して次のステップに進めるところや、半年後~2年後にどういう世界をつくっていきたいかといったことなども夏季セミナーで共有したいと考えている。(代表幹事に就任した)1月から、4月の総会を経て事業戦略がまとまり方向性も定まり、委員会活動も明確になってきた。並行して、経済同友会事務局の体制強化も進め、人事、企画、財務などを再定義して今、動き始めている。あとは、まさにこの成長戦略だ。(代表幹事所見で掲げた)共助成長社会では、一人当たり名目GDPが2024年度対比で倍増している(日本を)目指すと打ち出したが、これをブレイクダウンして、どう活動していくか(の検討を)進めているので、その進捗などを共有させていただきたい。ただ、あまりにも世の中の変化が日々激しいので、前提のパラメータはどんどん変わってきている。それも柔軟に取り込むような運営体制にしていきたい。(メディアの)皆様からもご意見をいただきたく、参加をお待ちしている。

Q:フロンティアAIへの対応は、企業によってかなり濃淡があると思う。まだどう対応すればよいか分からない企業もあると思うが、どのように危機感を持つべきだとお考えか。

山  口:セキュリティ問題に関しては今でも企業は危機感を持っていると思う。ただ、海外企業と比べると、日本企業は総じてセキュリティに関する投資や迅速性が弱いところがある。自分の家が泥棒・強盗に入られる可能性は必ず存在する、という前提で対応を考えるべきだ。大丈夫だろうと思わず、例えば2階建て(の家)ならば1階の鍵やベランダなど重要なところから極力早く対応していくといったことが必要だ。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)

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