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“いて欲しい国、いなくては困る国、日本”の実現に向けて
<櫻田謙悟代表幹事就任挨拶>

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公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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投影資料

はじめに

ただいま皆様より代表幹事にご推挙いただき、その責任の大きさに身が引き締まる思いです。令和の幕開けとともに、設立以来、経営者の志に支えられ、より良い社会の実現を目指してきた、歴史と伝統ある経済同友会を引き継ぐことは、誠に光栄であります。

2018年12月、経済同友会は、「過去の延長線上に未来は無い」という強い危機感を持ち、目指すべき社会のあり方として「Japan 2.0」を提言しました。小林喜光前代表幹事より、その思いをしっかりと引き継ぎ、皆様のご支援とご協力のもと、「Japan 2.0」の実現に全力を挙げて取り組む覚悟ですので、何卒宜しくお願い申し上げます。

本日は、代表幹事の大役をお受けするにあたり、変化を続ける世界および日本の経済社会に対する認識と目指すべき日本の姿、その実現のために経済同友会が果たすべき役割について、私の考えを申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。

Ⅰ.世界および日本の経済社会の現状認識
-先行きが不透明で非連続的な変化が起き続ける時代-

世界は今、不安定(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)な、つまりVUCAの時代を迎えています。急速なグローバル化やデジタル化が進展する一方、その負の側面とされる所得格差や機会不均等が拡大しています。人々の不満がポピュリズムの台頭や自国優先主義を招いており、今まさに、インクルーシブでサスティナブルな社会の実現に向け、民主主義や資本主義のあり方について、人類の叡智が試されています。

また、非連続な変化によって激動する世界では、経済の重心がアジアに移り、米国、欧州、アジアの間のパワーバランスが変化しています。貿易、技術、安全保障等をめぐる米中の覇権競争は、その一つの結果と考えられます。

日本に目を転じますと、急速な少子・高齢化と人口減少に直面しているにもかかわらず、生産性革新や制度改革の後れにより、低成長が続き、財政、社会保障の持続可能性に対し、極めて強い懸念が生じています。

日本は、戦後の高度経済成長とともに、現在の様々な制度や仕組みを構築してきました。しかし、時代や環境が大きく変わる中で、私たちは、過去の成功モデルや方法論から未だに脱却できずにいます。その結果、社会保障改革や規制改革など、痛みを伴う改革は先送りされ、民間主導経済の主役であるべき企業の経営改革も未だ不充分と言わざるを得ません。

また、デジタル技術の進化は、産業や社会のあり方に革命的変化をもたらしますが、日本の企業、政府等のデジタル変革のスピードは遅く、他の先進諸国の後塵を拝していると言っても過言ではありません。加えて、デジタル時代の働き方、すなわち、働く時間の長さを重視する「インプット主義」から、成果を重視する「アウトプット主義」への転換と、これを促す独創性や個の力を高める意味での働き方改革が進んでいません。その結果、日本の生産性は、国際的に低い状況が続いています。

こうした現状にある日本を未来志向で変革していくために、私は、代表幹事としての任期を通じて、経営者、企業として何をすべきかを皆様とともに議論し、行動に移していきたいと思います。そのために、まず、私が考える目指すべき日本の姿について、皆様と共有したいと思います。

Ⅱ.目指すべき日本の姿
-“いて欲しい国、いなくては困る国、日本”の実現に向けた変革-

経済同友会が提示した「Japan 2.0」では、戦後100年となる2045年を念頭に置き、「国家価値の最大化の追求」と「社会の持続可能性の向上」の好循環が成立している姿を目指すべき社会として描きました。これを私なりの言葉で表現しますと、こうした社会を実現することにより、日本は、国際社会において、“いて欲しい国、いなくては困る国”を目指します。

私の考える“いて欲しい国、いなくては困る国、日本”とは、第一に、国際社会から真の信頼を得て、その平和と繁栄に貢献する国です。日本には、この役割を果たすためのコア・コンピタンス(強み)があります。

すなわち、歴史の中で育んできた、「三方よし」や「自然との共生」の価値観に通底する利他の考えや長期的視点です。さらに、安全・安心の重視、伝統と革新、和と洋など異なるものを融合する文化等を特徴とするソフトパワーです。これらは、自国優先主義やポピュリズムを抑え、新たな世界のあり方、秩序を形成する上での鍵になると信じています。

第二に、世界から多様な人材を惹きつける国です。日本が国内外の課題解決に貢献するイノベーションを創出するには、世界から、多様な能力、価値観、考え方等を持つ人材を集め、グッド・クラッシュ(知の衝突)と融合を起こすことが必要です。さらに、日本が優位性を持つ先進技術を活かし、革新的な製品・サービスを生み出すことにより、豊かな社会づくりへの貢献と日本の競争力強化ができると思います。

こうした“いて欲しい国、いなくては困る国、日本”を実現するために、優先すべき変革として、私は次の三点を挙げたいと思います。

第一は、生産性向上に向けた企業の自己変革です。

日本企業が特に優先すべきことは、デジタル変革の加速と新陳代謝の促進です。

デジタル技術の進化は、全く新しいビジネスモデルや顧客価値を創出し、全く新しい生産性の概念を生み出す破壊的な力を持っています。私たちは、自己破壊を含めた変革を自ら起こさなければ、既存の業種や競合企業とは無縁の異業種、あるいは業界の定義すらもできない分野からの参入により、容易に「デジタル・ディスラプション」されてしまう時代です。

また、収益力の高い企業体質にするため、事業の新陳代謝は不可欠です。経済社会や経営環境の変化に応じて、低収益事業は勇気をもってカーブアウトし、イノベーション創出のために経営資源を集中投入しなければなりません。これにより、生産性向上と持続的な賃金引き上げを達成することが、日本経済の本格的再生には必要です。

第二は、モノカルチャー・同調性志向からの決別です。

イノベーションの創出には、異なることを尊ぶ文化を原動力に、組織の多様性を向上させることに加え、グッド・クラッシュと融合が起きる接点や機会を組織や社会全体につくらなければなりません。具体的には、大企業、中小企業、ベンチャー企業、地方自治体等の間で、人材が交流し移動するサーキュレーションの実現です。これには、何よりも経営者の強い危機感と執念とも言える変革へのリーダーシップが必要であり、言葉よりも行動で示さなければなりません。

また、多様な人材の活躍や「人材のサーキュレーション」が定着するには、これまで経済同友会が主張してきたように、新卒一括採用、年功序列、終身雇用等に象徴される日本型雇用慣行の打破が必要です。採用や雇用形態の多様化を図ると同時に、同一労働同一賃金の実現、透明かつ公正な労働紛争解決システムの確立、雇用慣行を補完してきた税・社会保障制度の見直し等に包括的に取り組むべきです。

第三は、挑戦の結果としての失敗を恐れない、むしろ失敗を糧ともしうる価値観の形成を含む日本人の意識改革です。

若者世代では、将来不安が増幅し、貯蓄志向が高まっていることや、不確実な未来を前に立ちすくみ、変化に対し自ら行動を起こせないことが指摘されています。しかし、先行きが不透明で、非連続的な変化があるからこそ、リスクだけでなくチャンスも発生し続ける時代なのです。

こうした時代に社会を変える活力の源泉となるのは、個の自立と自己変革力です。生涯を通じた弛まぬ研鑽や個人の挑戦を支える政策として、リカレント教育やキャリア変更を支援する仕組みの構築が必要です。

Ⅲ.経済同友会が果たすべき役割
-“Do Tank”としての経済同友会へ-

(1)経済同友会への時代の要請

この三つの変革を経済同友会が主導していくために、私は「温故知新」の心構えで、経済同友会の使命や特徴を、ここで再確認したいと思います。

1946年4月の設立趣意書には、「日本国民は旧き衣を脱ぎ捨て、現在の経済的、道徳的、思想的頽廃、混乱の暴風を乗切って全く新たなる天地を開拓しなければならないのである」と、並々ならぬ決意が綴られています。

今日の私たちにとっての「旧い衣」とは、戦後の高度成長の成功体験から脱却できず、危機感が薄れ、日本人が「茹でガエル」と化した平成の30年間と言えます。グローバル化、デジタル化、ソーシャル化が進む中で、「Japan 2.0」を実現し、日本を“いて欲しい国、いなくては困る国”にするには、この国の現状を直視し、今度こそ、経済社会の変革を成し遂げなければなりません。

これまで、経済社会の変革について、経済同友会は数々の政策提言を行い、政府も様々な戦略、施策を立案してきました。しかし、それにも関わらず、日本は、未だ持続的成長の新たなモデルや、若者が希望を持てる社会を確立していません。つまり、行うべき改革や政策の多くは、考え(Think)尽くされているのです。今、必要なことは、どのように実行(Do)し、実現するかなのです。

経済同友会は、設立以来、経営者が個人の考え、意見に基づき、企業、業界の利害を越えて自由闊達に議論し、政策や企業経営に対し先進的な提言をしてきました。また、「開かれた行動する政策集団」を標榜し、社会の諸集団と連携して提言の実行、実現に取り組んできました。

私は、経済同友会に脈々と継承されてきた伝統や特徴を踏まえ、「開かれた行動する政策集団」としての役割をさらに強め、提言を考える“Think Tank”にとどまらず、政策実現に向けて行動する“Do Tank”として再定義し、進化させたいと思います。

(2)多様なステークホルダーと共に改革の実行・実現を先導する集団へ

経済同友会の“Do Tank”としての進化とは、経営者自身による経営改革の実践はもとより、多様なステークホルダーと連携し、課題解決のエコシステムを築き、叡智を結集して、改革の実行、実現を先導することです。

具体的には、まず、企業、産業界が取り組むべき改革の実現には、現役の経営者として、自らの組織で経済同友会の提言を実行する“言行一致”の姿勢で臨まなければなりません。ここでの「現役」とは、経営者や経営経験者として活動する組織において、改革に向けて影響力を持つ立場にあることを意味します。

政策課題に関しては、提言の実現に向けて、社会の多様なステークホルダーとの対話、連携の枠組みを、より叡智を結集できる「エコシステム」へと発展させ、実現するための方策を具体的に検討します。

次世代に希望の持てる未来を継承するために、特に若い世代との議論は重点的に行います。2018年8月、スウェーデンの高校生であるグレタ・トゥーンベリさんは、学校を休み、国会議事堂前に座り込み、気候変動問題への対策を訴えました。世界には、彼女のように自らの行動で世界を変えようとする若者がいます。日本でも、社会課題に関心を持つ志ある若者が増えています。彼らと、目指すべき社会を実現するためのアクションについて対話したいと思います。

また、各地経済同友会との連携も引き続き行います。これまで各地経済同友会との交流や共同プロジェクトを実施してきましたが、今後も、プロジェクト等を通じて連携し、地域の具体的課題の解決に貢献したいと思います。

こうした“Do Tank”としての役割を果たしていくために、私たち経営者は、社会や企業の改革の意義、目的を伝え、行動変革を促す伝道者(Story Teller)になることが必要です。経営者同士が予定調和ではない、自由闊達な議論を行い、グッド・クラッシュを起こしてこそ、叡智が生まれます。経済同友会はまさにそうした場であり、そのプロセスに身を置いてこそ、説得力のある真の伝道者になれるのです。

もちろん、改革の実行には、人々の共感も重要です。まずは、国民と目指すべき将来像、およびデータを踏まえた事実を共有します。そして改革の必要性を分かりやすく、繰り返し説いていきたいと思います。

(3)注力すべき課題、具体的なアクションと組織運営の改革

こうした“Do Tank”となる経済同友会において、私は、「グローバル」「サービス」「スタートアップ」に関わる経営・政策課題に注力したいと思います。

そこで、2019年度事業計画では、代表幹事イニシアティブとして、「グローバル・ビジネスリーダー対話推進タスクフォース」、「サービス産業の生産性革新プロジェクト・チーム」を設置しました。また、「日本の明日を考える研究会」において、2019年秋に、大企業とベンチャー企業の経営者等が一堂に会し、産業や政策のエコシステムのあり方について議論するフォーラムを開催します。

一方、組織運営の改革では、三点に取り組みます。

第一は、若手経営者の活躍推進です。スタートアップを含む40代前半までを中心とした起業家等に活動への参加を依頼する「ノミネートメンバー制度」を本格始動させ、若い経営者の斬新なアイディアを活かした価値創造を推進していきます。

第二は、発信力の強化です。意見発信では、常に社会の一歩先を行き、先進性を発揮する「プロアクティブ」と、国内外の事象に迅速に対応する「レスポンシブ」の両面を重視していきます。

第三は、多様な意見に基づく熟議の促進です。複雑化する経営・政策課題に対する解決策を見出すためには、様々な意見を出し合い、熟議することが必要です。提言等の取りまとめの過程では、こうした議論を可視化し、世論を喚起したいと思います。

おわりに

以上、経済同友会への時代の要請と、それに応えるために私たちが果たすべき役割について、私見を披歴いたしました。

私は、国内外の課題について一人ひとりが自ら考え、既存の制度や仕組みの改革を実現するために、粘り強く行動する社会にしていきたいと思います。そのために、まずは経営者である私たちが、自らの行動によって改革を先導していこうではありませんか。会員の皆様の活動への積極的な参加を得て、経済同友会の“Do Tank”への進化に挑んで参りたいと思います。

皆様のご支援とご協力を重ねてお願い申し上げます。

以上


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