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櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2023年1月13日
出席者 公益社団法人 経済同友会
代表幹事 櫻田 謙悟

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記者の質問に答える形で、円高進行と長期金利上昇、中国による日本人向けビザ発給の一時停止、パートナーシップ構築宣言、公正取引委員会による『独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査』の結果を受けた社名・団体名公表、少子化対策、次期代表幹事候補の選考過程、日本銀行総裁人事などについて発言があった。

Q: 為替相場は1ドル128円台まで円高方向に戻ってきている。さらに長期金利も日銀が新たに上限とした0.5%を上回るところまで上昇している。来週、日銀の政策決定会合が控えており、金融緩和策を再び修正するのではとの見方も出ているが、こうした金融市場の動向をどう見ているか。

櫻 田: 金融政策について、黒田東彦総裁を含め、日本銀行は正式には出口戦略を模索するとは言っていない。イールドカーブの歪みを修正することによって、特に10年物に対して金利機能を働かせる、あるいは資金需要のある企業による債権の発行に際しての需要が多いことから、環境を(整える)と主張しているが、一般には、実質的には利上げと思われているし、実際に(金利は)上がってきている。ただ、現状の利上げは、米国のようなインフレーション退治の観点で行われているわけではなく、日本経済全体に大きな足かせになるとは思わない。為替についても、テーマの中心が金利だったこともあり、米国がもしかしたら利下げ基調に転換するのではないかという市場予想に対して、パウエルFRB議長やFOMCのメンバー全員がまだ2023年中に金利を引き下げる考えはないと牽制しているが、言えば言うほど、もしかしたらオーバーキル(景気の引き締めすぎ)になっているのではないかとの声が出てくる。ただ、市場の数字を見ると、米国は引き続き有効求人倍率が高く、失業率は低い。インフレが緩和したと言っても、消費者物価指数の上昇率が下がっただけで、物価は上がっており、欧州とは異なる。今回の日銀のスタンスの変化は、日本経済に大きな影響はないだろう。それよりもむしろ心配なのは、非常に緩い低温な経済に慣れてきた日本の各経済主体が、こうした機会に、生産性や競争力を上げていく、人材の流動化を進めていく、といったことをやらないと、再び危機感が遠ざかってしまい、支援金を待っているような状態になってしまうことであり、それにより本当に怖い(競争力低下による)円安がやってくる可能性があることだ。財政当局にも同じことが言えて、防衛費にしても、子育てにしても、異次元と言われているが、多様な財政資源を使う政策が出ている中で、財源について本気の議論は全く行われていない。日本円の暴落や金利の暴騰が起きない理由は、少なくとも日本は財政規律を維持しようという気持ちはあり、プライマリーバランスについてもまだ旗を掲げている。また、国債の償還もほとんど国内(で賄われている)ということで、返済する実力がある。経常収支も依然として世界トップクラスだ。しかしながら、これらが崩れてくると、数千兆円という資金が一気に円を襲ってくる。このときには日銀がいくら抵抗しても無理となることから、まずは、財政規律をしっかり持っていることを、政府、日銀はしっかりと対外的に示すことが何より大事だと思う。

Q: 中国当局は日本人へのビザの発給を一時的に停止したと発表した。受け止めと、観光を含めて日本のビジネスや人流にどのような影響や懸念があるか伺いたい。

櫻 田: 初めに申し上げたいのは、筋が通っていないとの印象だ。顔を潰されたなどと面子を理屈で外交をしてくるとなると、この国とどのように交渉していくのか、と思わざるを得ない。しかも、同じような対応を取っている別の国にはビザの発行停止はしていない。(中国は日本に対し)科学と法に基づいた判断ではないと言うが、それはそちらではないかと言いたい。正直なところ、そのような気がしている。おそらく(中国の)国内事情が非常に影響を与えているのだと思うが、今後中国がどのようになっていくか、日本および世界経済への影響はどうなるのかを考えた時に、テドロス・アダノム世界保健機関(WHO)事務局長がおっしゃる通り、何が本当か分からない(のが問題だ)。中国で起きている感染状況の全体像が見えてこないため、自国民を防衛するという観点から、(中国からの日本入国者に対する水際)対策を講じざるを得ないということについては、理解できるし、合理的であると思う。中国を排除したいわけではない。特に日本の場合、円安というインバウンド(需要)の好機でもあるため、むしろ積極的に(中国からの観光客を)呼びたいが、それは国民の健康と比較する話ではない。その点において、今回の政府の措置について私は大いに評価している。結果として中国からのインバウンド需要が減少したとしても、それは致し方ない。ここで安易にスタンスを変えるべきではないと思っている。

Q:本日、日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会連名による『「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上に向けて』の発表が予定されていると聞いている。代表幹事の意気込みや抱負、想いを伺いたい。

櫻 田: (パートナーシップ構築宣言の)趣旨に関して全く異論はなく、すでにあった運動をさらに加速して経済3団体で推し進めようという意図であるから、大いに賛成だ。(『「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上に向けて』という形で発信した)文書についてももちろん異論はない。あわせて、経済3団体長新年合同記者会見で私から是非ご検討いただけないかと十倉雅和会長と小林健会頭に投げかけたのは、分厚い中間層を作っていく、分厚い中間層で賃上げが行われていく、一回限りではなく持続可能性の高い形で中堅・中小企業の賃金が上がっていくことが何よりも大事であり、(そのために)何よりも大事なのは中堅・中小企業の競争力を高めていく(ことだ )。国内で生産性を上げるだけではなく、ドイツのように世界の中でも(通用する)競争力のある中堅・中小企業を作っていくべきだ。実際、非常に競争力のある中堅・中小企業が日本には数多くあるが、気をつけなければM&Aの対象となり技術も人も流出してしまう。一方、新型コロナウイルス感染症対策による実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の結果として、もしかしたら生産性や競争力が上がらない可能性が高いにもかかわらず、依然存在している企業があるかもしれない。このような状況下で、(提言『「生活者共創社会」で実現する多様な価値の持続的創造―生活者(SEIKATSUSHA)による選択と行動―』で提唱した)中小企業競争力強化会議(仮称)を一緒に作ることを検討いただけないかというお話をした。十倉会長と小林会頭には是非考えようではないかと言っていただいた。正式に発足するかどうかは趣旨や目的、メンバーをきちんと詰めなければならないので(時間は)少しかかると思うが、考え方としては賛成いただいたと理解している。

Q: 昨年12月27日に、下請け企業などとの間でコスト上昇分を取引価格に反映する協議に応じなかったとして、公正取引委員会が13社・団体の名前を公表した。本件に関する受け止めをお聞かせいただきたい。

櫻 田: ネガティブな意味で名前を公表する方法で、punish(罰)ではないが、警告を与えた点でインパクトがある。従来の、良い取り組みをしている企業を表彰し、こういった企業に学んで、一緒にやってくださいという方法ではなく、好ましくないことをやっている企業を公正取引委員会として注意し、これからも注意していくという(姿勢を示した点)において、一定のインパクトがあった。ただ、一つ一つのケースについては、色々(な事情や背景が)あると思う。批判をされたり、通報があったりしたことを受けて、(公正取引委員会として)調べて問題と判断したので公表したと言っても、当該企業には説明したいことがたくさんあると思うので、あまり一罰百戒のようなことをするのではなく、もし(協議に応じなかった)事実(がある)とすれば、例えば公正取引委員会のホームページの中で、改善に向けてこのような対策を講じているというようなことを(各企業が)公表する機会を与えるなどといった公式の場を設けることが大事だと思う。いずれにしても、この問題(の根幹に)も、戦後ずっと続いてきた、親・子・孫のような大企業、中堅・中小企業、零細企業という、かつては日本の強みであった企業間の繋がりが、今は逆に弱みになりつつあることがある。これを機に構造改革、具体的には、競争力がなく改善を受け入れないところは退出していくということ(が必要)であり、何よりも企業を守るために従業員を縛ってはいけない。従業員を守るために、産業構造はどうあるべきかという議論へと展開していかなければならない。そうした議論へ早く動がなければならないのに、次はどの企業が名前を挙げられるのかといった運動に変わっていくと、非常に次元の低い話になってしまう。

Q: 岸田首相は年頭の記者会見で異次元の少子化対策を表明し、今年3月末をメドにたたき台を作るよう指示したとのことだが、財源の問題が今後出てくると思う。このタイミングで、少子化対策をより強化することに対する評価と、財源の問題についてお考えを伺いたい。

櫻 田: 日本は、国難や危機的状況の例を挙げると数多くある(国)であるけれども、人口減少と少子化問題は本当に国難だと思う。以前から申し上げている通り、同じような国難は介護だ。介護をする側と介護を受ける側との需給ギャップは既に30万人近く、おそらく2040年には(需給ギャップは)80万人を超える(見込みである)。以前から申し上げている通り、2050年のカーボンニュートラルの時代を迎える前に、日本は介護崩壊してしまう可能性がある。これはまさに国難である。国難に対応するときに、異次元という言葉を使うのは(解決への)覚悟を示す意味で大いに良いと思っている。そうすると、たくさん異次元(の対応)をしないといけない。あちこちに異次元が出てくるわけだが、それほど(少子化や介護は)深刻に(捉えて)真剣に取り組まなければならない問題だと思う。少子化問題は、高齢化や人口減少と対になる問題であるため、(人々が)結婚したくなる、家庭を持ちたくなる、子どもをきちんと育てる自信がもてるという展望が見えて(はじめて、子どもが)増えていくわけである。例えば、フランスは、5年から10年間にわたってありとあらゆる対策を講じ、実施し続けた。今回岸田首相(が表明した)異次元の少子化対策は、言葉として、最初の一歩としては大賛成であるけれども、5年から10年間にわたり、持続可能な(政策として)続け、国はその方向に舵を切ったことを示していってほしい。そのためにはもう少し中長期的な展望が欲しい。(少子化問題の)反対側にある社会保障の問題、大きな課題になっている介護の問題についてもやはり中長期的な展望を示した上でパッケージとし、若者に向けて子育てに夢を持ってやってほしいと、高齢者に向けて応能主義で若者よりたくさん稼ぐ人はそれなりに負担してほしいと訴えていく。新しい資本主義のグランドデザインの一部として、これらを掲げないといけない。(今のところ)粒々(の議論)として出ている感じがするが、(少子化対策の)スタートとしては賛成である。ただ、今回も財源については全く触れていない。一部の政治家が(少子化対策を進める財源として)消費税率引き上げの議論をしなければならないと言った途端に、(関係閣僚が)そのような議論はしていないと火消しに入ることを聞くと、残念と思う。(日本は)世界最大級の財政赤字を抱えており、かつその額が高まっていく中で、コロナ禍で100兆円近くの財政支出を行い、国債を発行しながら、「財源は議論しないが何とかなる」と言われても、国民は信用しない。防衛費の増額については増税の話が出てきたが、どのように使えば(5年間で)43兆円かかるか、十分に説明されているとはまだ思っていない。防衛費は財源、社会保障は支出先(の議論が先行し)、全体としてのグランドデザインの整合性については今ひとつ説明が足りてない気がする。これから(グランドデザインが)出てくると期待している。

Q: 昨年12月16日に発表された次期代表幹事候補者について、役員等候補選考委員会の運営や選考過程に問題はなかったのか。

櫻 田: 昨年の選考過程の運営について、私は役員等候補選考委員会の(委員の一人であり)委員長ではない。委員長が進行しており、その運営に問題があったかとなると、私は(問題があったとは)全く思っていない。これまでもそうであったように、今回も多くの議論を行った。残念なことがあるとすれば、これまでなかった初めてのケースとして、守秘義務が課されている(役員等候補選考委員会の)情報が(外部に)漏れてしまったことだ。私も(役員等候補選考委員会の)一員として、再発防止に向けた議論を大いにしていかなければならないし、反省もしなければならないと思っている。ただ、(選考過程の)運営について、問題があったとは全く思っていないし、 優秀で良い人が選ばれたと思っている。

Q: 選考過程そのもの以外についての運営を疑問視する声もあるようだが、問題はなかったのか。

櫻 田: ファクトを申し上げる。役員等候補選考委員会の議論内容については、守秘義務を負っているため、一切申し上げることはない。ただ、偶然、2つの問題が時系列で非常に近い時期に起きてしまったことが、誤解を招き、2つの事象が結び付けられる結果になったのではないかと思っている。本会の言わば取締役会であり、会員総会に次ぐ非常に重要な会議である理事会への出席(状況)について、懸念が示されたことは事実である。それについて対応を議論したところ、きちんと出席しますとの回答が示されたことから、本人の話を承認し、引き続き(正副代表幹事)全員でこれからも取り組んでいこうと話をして理事会は閉会となった。この理事会と役員等候補選考委員会が非常に近い時期に開催されたため、選考に何らかの影響を与えようと意図的に開催されたと思う人がいるようだ。しかし、影響を意図していないことは、(理事会へ)問題提起を行ったのが監査役会の皆様である(ため明白だ)。(執行を担う)代表幹事が監査役会(の決定)に対して何か意見することはできないため、監査役会の意見を受けて理事会を開催し、真摯に議論したに過ぎない。それが偶然、短い間隔で開催されたことで、誤解して(2つの会議を)結びつけて考えられたのだと感じている。いずれにしても、(役員等候補選考委員会の選考過程には)何ら問題はなく、素晴らしい人が選ばれたと思っている。

Q: 2023年春に交代が予定されている日銀総裁人事について、候補者として様々な名前が挙がっている。日銀総裁にふさわしい要件、能力などがあれば、お考えを伺いたい。

櫻 田: 国会(の同意が必要な)人事であり、現在はもちろん、これまでの、かつこれからの日本の金融政策に必要な、ベストな人材が選ばれると思う。これまでの金融政策の背景をよくご存知であり、(金融緩和政策の)出口戦略が必要であると金融当局が判断したときに、(出口戦略の)良い面と悪い面を、バランス(感覚)を持って考えられる人(が望ましい)。具体的には、金利が世界的に反転して上昇に向かっている中で、日銀はまだ正式には表明していないけれども、今までのマイナス金利政策について一定程度の調整(の必要性)を認めたのであれば、(金融緩和政策からの出口に向けた)方向感(の検討)が今後も続いていくと思う。その速度や程度(の判断)は、日本の経済の体力、健康度合いをよく分かっている人に是非お願いしたい。経済、金融の現場をよく知っている人に是非舵取りをしていただきたいと思う。そういった方が選ばれることを大いに期待している。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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