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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年12月18日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)中国改革開放政策40周年、(2)提言『Japan 2.0 最適化社会の設計』、(3)来年度政府予算案、(4)原発輸出と原子力研究、(5)日産自動車ゴーン前会長逮捕、(6)経営者の報酬とその開示、(7)産業革新投資機構の役員退陣、(8)春闘、(9)今年の漢字、などについて発言があった。

Q : 本日、中国の改革開放政策が始まってから40周年を記念した式典が北京で開かれている。この40年で中国はGDPで日本を追い越し、技術力でも米国を脅かす存在となった。ここまで開いてしまった日中の差をどのようにキャッチアップしていけるのか。また、キャッチアップするためにどのような日中関係が望ましいとお考えか。

小林: 40年前、鄧小平氏がイデオロギーとしての共産主義を維持しつつ、開放政策に出た。46年前に日中の国交が正常化し、40年前に(日中平和友好条約という形で)日本との外交関係が樹立された。その頃は、(中国は)いかにも眠れる獅子と言うか、あれだけの人口で農業中心、第一次産業を中心にやってきた時代だ。逆に日本は戦後の復興期であり、上昇気流に乗っている時代であった。しかし、気が付いたら(日本は)2010年に GDP で逆転されていた。中国は開放政策を起点とし、特に現在(戦略が)明確になっている「中国製造2025」のように、国家戦略を毎回レビューしており、製造の場、マーケットの場から、いつのまにか最先端技術のメッカの一つになる可能性まで出てきた。半導体などのハードウェアについて(世界の最先端と言うに)は、あと5~10年はかかるかもしれないが、5Gのテクノロジー含め、BATJに代表されるプラットフォーマーが、この4~5年であっという間に形成された。また、米国のサーバーに匹敵する、あるいは人口が多いがためにより多くのデータを集積することができる国になった。結局、ヨーロッパにプラットフォーマーはほとんど存在しないため、米国と中国という、文字通りGDPの1位と2位(の国)に独占されていく中で、日本にはどのような生き方が残されているのか。日本がスイスのような永世中立国(を目指すと)非常にコストもかかるわけで、そういう意味では、二つの大国のヘゲモニーの中でどのあたりに自分自身を位置づけるかといったことを、やはり真剣に考えなければいけない。今回の5G(の問題も含め)、セキュリティ的な部分が経済にもかなり大きな影響を与える時代になった。そのような中、地政学というよりむしろ地経学の時代に入ってきており、企業もそういう判断を余儀なくされていくことになるだろう。(米中)双方にいい顔をしてうまくいくならこんなによいことはないが、そう簡単にはいかない時代が来て(いる)。それではどうやって生きていくのか。プラットフォームを中心にしたデータについては、国家によって扱い方がかなり違うが、流れとしてはやはりAIなりロボティクスを使う時代、あるいはバイオサイエンスの時代になって(きている)。日本はものづくりが蓄積してきたかなりの情報をリアルデータとして持っている。それと、ネット系のテクノロジーをうまく融合すれば、十分オリジナルなイノベーションは創出できるはずである。日本という存在理由なり、存在意義を問われている中で、逆にチャンスの時代が来ているのではないか。混沌こそ一種の大きな機会ではないかと思う。

Q : 12月11日に提言『Japan 2.0 最適化社会の設計―モノからコト、そしてココロへ―』を発表し、12月14日にシンポジウムで議論したことを踏まえて、感想を伺いたい。

小林: 今回は、人口・労働、教育、社会保障、財政健全化、環境・エネルギー、外交・安全保障、あるいは新しいフロンティアのテクノロジーなり、稼ぎ方なり、個別のテーマはそれほど立ち入らずに、大きな骨格(について議論した)。当然、提言の本文にはそういった詳細テーマの紹介は一部ある。今回の提言は、経済人として誰に向かって書いたのか、(つまり)「To Whom」はある意味では明確ではないかもしれない。しかし、私自身は「経営者宣言」も含め、経営者に向かって(書いたつもりである)。従来は、どちらかというと政治に注文をつけるような他力本願の部分もあったが、先ほど申し上げたとおり、(現在は)かなり地経学的な時代というか、米中(関係)についても、為替だけではなく先端技術、もっと言えばそれがサイバーセキュリティ、防衛、宇宙といったテクノロジーそのもの(の時代)だと思う。日本は、金利が下がり、成長戦略として何か新しいクリエーションをやろうといってから、もう5~6年が経っている。それなりの実績はあるものの、本当に変革に向かってお金を使っているのだろうか。本当に世界で比較優位な戦略を立て、そのデザインに則ってきちんとした経営をしているのだろうか。こういったことが最大のポイントだと思う。Japan 2.0(というタイトル)については、「安物ソフトウェアのバージョンアップではないか」という向きも一部にあるようだが、日本が過去70年間ずっと経済・社会システムが一向に(変わっていないという問題意識が根底にある)。(例えば、)マイナンバーの良し悪しはともかくとして、まだ(カードは)12%しか普及していない。そしてハンコの文化も未だにはびこっている。やはり日本人の心、特に経営者を含めて、心に巣食っている今までの古いアナログの社会的なシステムを解きほぐすことこそが、バージョン2.0という宣言(の目的)である。ダウ・ケミカルのリバリス会長(当時)から、「日本は全くバージョンアップしないではないか。いつになったらこのシステムを変更するのか」と言われたのがひとつの動因だ。中国のような政治体制で、方向性を明確にしたらやりやすいという部分もあるのだろう。気が付いたらあれだけの変革が出来ている。また、シリコンバレーからは「日本は三周遅れ」と明確に言われている。(日本の経営者としては、)いま少々儲かっているというレベルで、幸せを満喫している時代ではなかろうという警鐘である。(先日、「平成は)敗北の時代」であると申し上げたら、「経済同友会の代表幹事が敗北とは何事か」などとお叱りを受けたのだが、やはり本気で勝っていくためには挫折というものをどれだけ餌にして前に進む(かが重要だ)。(日本人は、)そういう感覚を忘れつつあるのではないか。戦後100年の2045年まであと27年しかないが、今やらないと日本は本当に劣化した国になってしまうという危機感を持って、今回の提言を発表した次第である。

Q : 政府は来年度の予算案について、101兆円とする方向で最終調整に入っている。景気対策も必要だが、一方で100兆円を超える予算は初めてとなる。これについての見解を伺いたい。

小林: 社会保障費の自然増が4,800億円など、具体的な数値が出始めているが、まだ、平準化対策の定量的な額がすべて整理された情報として入ってきていないので、何とも言い難い。今言われている、(消費増税による)5.6兆円の税収増に対して、ほぼ3.6兆円か4兆円は対策として明快になっているが、このあたりをもう少し綺麗な形で知りたいというのがひとつある。平準化対策については、確かに(前回消費税が)3%上がった時に大変な駆け込み(需要)とその後の落ち込みがあったので、それに対する対応レベルをどこにするか。なかなか落としどころは難しいと思うが、少なくともtoo muchと言うか、「消費減税」にだけはならないようにしていただきたい。

Q : 今出ている消費増税対策で既にtoo muchである懸念はないか。

小林: 現在出ている対策だったら充分に平準化だという感じはある。

Q : 昨日、経団連の中西会長は会見で、日立製作所の英国原発建設計画について「なかなか難しく、限界だ」とコメントした。社として機関決定はしていないようだが、経営トップが公の場で発言された。報道ベースではあるが、三菱重工業のトルコでの原発案件に関しても、(状況としては)難しくなっている一方、首相案件ということもあり、落としどころを見つけようとしているようだ。日本企業2社が行ってきた海外への原発進出について、どのような点が難しいとお考えか。また、経済同友会あるいは代表幹事個人として、これまで技術としての原子力の研究についてはしっかり議論すべきと主張されているが、政府や民間企業は、どのように整合性を担保して対応していくと考えているか。

小林: 3.11の東日本大震災まで遡るが、不幸にも福島原子力発電所の大事故が起こった。(その影響もあり、)ドイツは自然エネルギーにシフトしている一方、イギリスやフランスは、いまだに原子力発電に依存している。今後もそのような状況(が続く)だろう。日本は二酸化炭素の問題も含めて、化石燃料がない国なので、自然エネルギーまたは原子力発電に頼るしかない中で、(原子力の被害が)拡散しないテクノロジーの研究開発をもっと進めるべきだ。海外への展開については、(原子力)技術を保持していく必要性もあり、政府や経済産業省、および民間で、4~5年前から原発(のインフラ輸出)の活動を始めたが、3.11以来の安全を担保するために、建設に思った以上の安全コストがかかる。そのような中、電力会社も含めて、大きなプロジェクトに参画するリスクを考え始めている。私自身、東芝の原発事業の問題に関わったので、基本的には研究開発なり、廃炉も含めて、新しいテクノロジーとしての原子力発電の研究は進めるべきではないか(と思っている)。原子炉を世界中に広めていくことの難しさは、ウエスチングハウスやGEなり、今回の日立製作所のイギリスからの撤退(可能性の話)も含め、特にプラント輸出、インフラ輸出の中でもとりわけ難しいという実感がある。イギリス政府もそうだが、日本の場合は、東京電力が廃炉を含めて全ての責任を持つとはいえ、一民間企業としてリスクを十分取れないとしたら、原子力政策は国家主導でやるべきというのが当会の主張だ。人類にとっての原子力の光と言うか、かつての1950年代の(原子力に対する)思いはだいぶ変わってきている。自然エネルギーのコストも安くなり、再生可能エネルギーのFIT(固定価格買い取り制度)をだんだん縮小していくなど、かつて思ったよりも明らかに早く、自然エネルギーのコストが下がってきている。30~50年先を見据えると、なかなか現行のテクノロジーでは難しいのではと個人的には思う。今回のCOP24でも、石炭火力に対して、日本の金融系がかなりファイナンスしているということ(が批判された)。また、原子力については、中国が(長期的に)リアクターを100近くまで稼働させるとの情報もある。しかし、世界的な流れとしては、太陽光、地熱発電、風力発電あるいは水力発電など(がさらに普及していくため)、もっと先のテクノロジーを含め、長期的には違った技術が必要とされるのではないか。100年後には、核融合による発電が人類の夢としてあると思う。それまでは原子力で一部をつなぐ。原発の新設は期待せずに、現状ある原発をどれだけうまく使いこなして、安全を担保しながら、自然エネルギーに変えつつ、100年後には核融合が可能になればと思っている。

Q : 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の疑惑について、だいぶ全貌が見えてきた。ゴーン前会長も反論するべきところは反論しており、日産とルノーがせめぎ合っている状況で、事件と経営の両方からの視点で、どのように考えているか。

小林: 事件の真相については経過途中なので、何とも言い難い。しかし、第三者機関というか、社外取締役プラスアルファで、もう一度ガバナンスを見直そうとすることは、必然だ。どうして今までそうしたことができなかったのか、非常に不思議に思える。形式的に、非常にしっかりした指名委員会等設置会社を持っていた会社でも、大変なスキャンダルが起こっているので、形だけ整えればいいというわけでもない。されど、これほど形がなかったのかと驚かざるを得ない。それを並行してやるなら大いに結構だが、民事か刑事かは別にして、まずやるべきは、ゴーン前会長の基本的な行為がどうであったかをクリアにすることが先ではないか。フランス政府の思惑がどうであれ、ガバナンスという観点でも、国家が(ルノーに対し実質)30数%も議決権を持っていることも考慮し、並行して罪状をしっかり固めていくべきである。株を国家が持っていると言う(のは)、従来の民間企業としてのガバナンスコードとはまた違う。そのようなことを含めて(考えれば)、民間企業のガバナンスに国家が入り、官民でやっていくことが難しいことは明らかである。したがってこのような状況におけるガバナンスとは何かという真剣な議論と、ゴーン前会長の罪状を詰めていくことは並行してやるべきだ。

Q : 経営者の報酬金額は、日本ではグローバル企業でも1億円、欧州では5~6億円、米国だと10億円(が一般的と言われる)。その代わり、海外では数十ページにおよぶ説明文書があるが、日本にはほとんどない。このことをどのように考えるか。

小林: 成功報酬をどう(評価)するかだ。海外では成功報酬の比率が高く、日本の場合は固定給が7割くらいで、成功報酬は企業によっては1、2割しかない。これはそもそもの歴史や文化によって違うし、私から言わせれば、1億円以上(の報酬)をもらってどうするのか。どうせあと20~30年くらいしか生きられないのに、(自分の)家族だけがいい思いするのは不平等ではないか。米国の同業の経営者は30~50億円の報酬を得ているが、それを羨ましいとも思わない。従業員と(経営者)の給料格差は、日本の場合は30~50倍、米国だと300~1,000倍、中国だと1万倍まで達することもある。何が正しいのかを判断することは、なかなか難しい。数十ページにわたって理由づけしたところで、たかが屁理屈だ。日本は「三方良し」を重んじ、お客様、社会、自分も良し(を美徳としてきた)。また、株主(向け)だけの説明責任が本当に正しいのか。やはりステークホルダー全体、(つまり)従業員であり、お客様であり、取引先であり、最後は世界であり地球だ。二酸化炭素を排出し、地球を汚し、海水にプラスティックゴミを出し続けていいのか。全てのステークホルダーのために企業は存在している中で、確かに日本は給料が低いからトップがリスクを取らないと言うが、給料が低いこととリスクを取る、取らないはまた別の話だ。日本は日本流の部分で、海外のいい所を取り入れていかないと、ただの真似事の国になってしまうのではないか。

Q : 官民ファンドの件(産業革新投資機構の役員退陣)について感想を伺いたい。社外取締役には経済同友会副代表幹事もいらっしゃったが。

小林: 取締役があのような(辞任に至った理由を説明する)声明文を出すというのも珍しいことだ。冷静に事実を把握しないと、本件についてはコメントしづらい。(産業革新投資機構は)米国にバイオ系対象の第一号ファンドを創設し、テクノロジーを持ってこようとしたが、個別企業でも行っていることだ。官民と民間(のファンド)でどこが違うのかをもう少し議論する必要がある。民の色があるならば、かなり自由度がなければできないのも事実だろう。(一方、)官から見ると、他の公務員と比べて相対的に給料が高いというのも、政治の方から問題提起されてしまう。拙速だったという印象はある。

Q : 春闘について伺いたい。例年なら今の時期に首相から賃上げの要請があるが、今年はまだ発言されていないようだ。

小林: 先日の(日本経済研究センターの)「年末エコノミスト懇親会」の(壇上)で「(賃上げは)大丈夫ですね」とちらりと言われた。かつてのように、3%など定量的にはおっしゃらなかった。言わなくても(賃上げは)やってくれるのではないかと思っていらっしゃるのではないか。やはり、儲かっている企業は応分のリターンをすべきだ。今までも、経営者は首相に言われたから(賃上げ)してきたわけではないだろう。自社の状況を見て(行うもので)、従業員に報いたいという熱い思いがあるからだ。儲かっていない時は出せないが、儲かった時に出すのは当たり前だ。それは、国に言われたからということではない。

Q : 首相はそういう対応を見ているということか。


小林: 言わなくても、(企業は)リーズナブルな対応をすると思われているのかもしれないが、それについては何とも言えない。来年は分からないが、今年のパフォーマンスはそれほど悪くないので、来年のボーナスも悪くはないだろう。2019年が暗いと予測するならベースアップは難しいが、当然、昇給は実施する(だろう)。

Q : 代表幹事の会社も(賃上げ)するのか。

小林: 報いなければならないと思っている。

Q : 日産の件について、ガバナンス委員会の提言が3月末に予定されており、会長人事もその頃かと思われる。複雑な構造ではあるが、このスピード感をどう思うか。また、(代表幹事にとっての)今年の漢字を伺いたい。

小林: 日産の件は、ルノーの株主であるフランス政府(との関係も)あるので、なかなかそう簡単に(はいかず)、オープンでクリアに、フェアに進めるとなると時間がかかるのは仕方がない(面もある)と思う。
今年の漢字については、英国のブレグジットで「脱退」、中国と米国の関係が「絶たれた」ということで、「脱」「断」だ。来年は「結ぶ」時代になってほしい。デモクラシー、グローバリズムといった、これまで先進国が続けてきたドグマがこの2、3年で完全にひっくり返り、アンチグローバリズム、ポピュリズムが現実のものとなった。とにかく一度、脱却、破断した。来年は猪年だが、「結ぶ」時代になるだろうか。非常に混沌とした状況になるのではないかという雰囲気はある。猪突猛進といくか、あちこちにランダムウォークし、ますます混沌のなかに入っていく年かもしれない。非常に面白い年になるのではないか。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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