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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2018年7月24日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、自動車新時代戦略会議、原子力政策、オリンピックとテレワーク、外国人労働者、酷暑対策、最低賃金、政権への期待、日銀金融政策、経産省幹部人事などについて発言があった。

Q : 経済産業省において、自動車メーカー幹部も出席する「自動車新時代戦略会議」が開催されている。当社の取材によれば、2050年までに世界で販売する日本車を全てEV(電気自動車)にすることを取りまとめ、1台当たりの温室効果ガスの8割程度の削減(2010年比)を目指すとのことである。こうした国の戦略を含む自動車メーカーの取り組みについてどのように受け止めるか。

小林: 猛暑につけて、CO2問題というものは人類にとって2050年(以降)、つまり次世代、あるいは次々世代の問題と考えられていたが、現実の問題になりつつあるとの認識を皆持ちつつあるのではないか。火力発電などCO2を大幅に排出するようなものについては、欧州、特に英国とフランスでは、だいぶ前から2050年までに(温暖化ガスを)80%削減し、ガソリン車・ディーゼル車は一切なくし、EV車に完全移行することを政府が決めている。その一方で日本は、原発が動かず火力依存で、かつ自然エネルギーがコスト高という状況で、欧州からは「日本はだいぶ遅れている」と誹謗中傷されているというのが現状かと思う。そのような中で、中国もEV車に相当切り替えているし、その動力源であるリチウムイオン・バッテリーも、世界のマーケットでは太陽電池と同様、トップシェアになり、日本企業は苦戦している。中国が素材も含めて大幅に力をつけ、技術面で進化している中、日本(車メーカーの取組み)も例外ではありえない(ということだろう)。ただ、EV車になっても、電力源が石炭では意味がない。やはりEV車に(移行)しつつ、電力源を自然エネルギーなり原子力なり、つまり本当の意味でCO2を出さない電力に日本全体がシステムを切り替え(ていくことが重要だ。)チキン・アンド・エッグかもしれないが、自動車はEVにして、かつ化石燃料を燃やさないことは非常にいいことだと思う。

Q : 軽井沢で開かれた夏季セミナーでも、原発の再稼働や方針について、政府もはっきりと公に話を始めるべきという意見も出ていたが、それについて見解を伺いたい。


小林: 理想論を申し上げれば、自然エネルギーへの切り替えを早めるべきというのは当然のことだ。(しかし、)それに対する研究開発費(の負担もあり)、事業は一定程度の利益を生んでいかなくてはいけない。日本のように基本的に天然ガスを含めた化石燃料が無い国では当然の方向だとは思うが、既に投資済みで40年、60年の寿命(を考慮すると、廃炉まで)長くない原発、あるいは国民が納得する中で(設備コストを)償却している原発については、安全性を完全に担保した上で、コスト安のために使うべきである。一方、そのように経済的メリットがあるもので稼いだ資金は、(新技術の)研究開発、特に太陽光、風力、あるいは地熱のような自然エネルギーのための研究開発、省エネや軽量化部材などを含めた研究開発に国家として持っていき、マルチエネルギーというかエネルギーミックスという形で当座はしのいでいくべきである。世界でも廃炉にすべき原発が500基以上ある中で、(廃炉を)一つのビジネス、産業として捉えれば、やはり原子力エネルギーに関連した学問(は必要不可欠)というか、学生が原子力工学を学ばなくなったら、廃炉をどうするのかという問題も出てくる。世界では、アイソトープが拡散しないような新しい原子炉を開発している。そういった新しい原子核物理をベースにした開発もやりつつ、廃炉もこなして当座をしのぎ、最終的には完全に再生可能エネルギーに移行していくという、長期戦略の中の一つとして(原子力政策を)位置づけるべきである。(原発廃止か否かという)イチゼロの議論というのは不毛だと思う。

Q : テレワークについてお伺いしたい。今日は2020年の東京オリンピックの開会式までちょうど2年であり、テレワークデイズのコア日でもある。テレワークを導入している企業はあるが、実施されているかと言うとまだ多くない。総務省の調査などではテレワークに合った仕事がないと答える企業が7割を超えている状態でもある。大会期間中、都内の混雑緩和などは急務だと思うが、テレワークを進めていく上で重要な点は何か。


小林: 業種によるだろうし、時間を束縛されて肉体を奉仕しないと商売にならない業種もあるため、何もかもテレワークというのは元々難しいと思う。しかし、同じ業種でも本社など事務手続きを行う部分、あるいはマネジメント層については、必ずしも(働く場所が)オフィスでなくてもよい(と考える)。働き方改革の一つの位置付けとして、自由な働き方というものを広めていく一環でテレワークも議論していくということだと思う。労働時間をどうカウントするかなどについて早く整理をして、とりわけ自宅で色々な仕事をこなさざるを得ない人たち、育児中の人や、あるいは物理的に身体が不自由な人など、そういった人たちから始めていくというのは一番スマートなやり方だと思う。われわれも本当はテレワークをやりたいところだが、こういった(会見のように、)自分の体を持って行かなければならない仕事ばかりなので、情けないと思っている次第だ。

Q : 外国人労働者問題について、本日、政府の関係閣僚会議が開かれ、5業種以外にも拡大するよう、かなり準備作業が急がれている。人権、移民の問題も含めて外国人労働者のあり方をどう考えているか。

小林: いわゆる保守政治の中で、移民や婚外子の問題はタブーとされてきた。婚外子をフランスのような形でサポートして出生率を増やす、あるいは労働力が減っていくから移民を受け入れていくことまではできないにせよ、やはり今の日本の現状や将来を見越すと、外国人、それも高度なタレントを持った外国人以外にも助けてもらわないとやっていけないというのが、厳然たる事実である。農業に限らず、建設業やサービス業も含めて、そのような段階にきている。移民とは本質的には違うにせよ、一般労働者も許容していくことは自然の流れではないか。言葉の問題として、海外からの労働者に日本語を学んでいただくのも一つだが、英語を話せるのならば、オリンピックもあることだし、日本人ももっと英語を勉強して、共通語でコミュニケートするのも一つだと思っている。

Q : EV車の普及を2050年までにとの話があったが、自動車産業は部品を含めて非常に裾野が広く、日本の主要産業である。EV車になると、これまでの自動車のつくり方とは違ってくるが、日本の産業への影響をどうお考えか。


小林: 自動車産業のディスラプティブな状況は、内燃機関からEVにモジュール化してしまうというハード面の変化もさることながら、5~10年の後には、完全にAIベースで、ソフトウェアプラスハードウェアのハイブリッド型のオートドライブになっていくだろう。 道路や社会システムそのものが AI 化し、新しい産業が興るのは、守りの立場からすれば大変な覚悟がいるかもしれないが、全てのインフラがAIベースで、自動運転的なソフトウェアがベースとなる社会は、自動車産業のみに限らず大変なチャンス、新たな開拓ができると見るべきだと思う。ハードウェアから見ると 、一部は今までの部品と全く違うものに代替せざるを得ない。一方ではモジュール化するので、(競争力を失った)かつてのコンシューマーエレクトロニクスと、全く同じ道を辿る危険性ももちろんある。CO2削減、あるいは電気の省力化というところで素材・部材産業から見ると、いかにコストをかけずに軽くて強いものを作るかという(技術革新の)大きなチャンスでもある。AI やロボティクスのテクノロジーを自動車そのものに応用するか、あるいは自動運転の中で、道路や地図情報なり、あるいは宇宙の情報などをどのようにコネクトするか。そのような産業の勃興もあるだろうし、EV車に適した、あるいはオートドライビングに適した素材やセンサーなど開発の余地がある。特に、リアルエコノミーに強かった日本の産業は、ハイブリッド化によって、新しい成長や開発ができると捉えている。

Q : 東京オリンピック・パラリンピックまであと2年だが、このような暑い時期に、本当に大会が開催できるのだろうか。オリンピック期間中の、企業の経済活動や働き方をどのようにするべきか伺いたい。


小林: この猛暑が2年後も続くと考えると、海外から来られる選手に対してと、観客として参加する日本人に対してと、考えるべき事柄が二つあると思う。アスリートは同じ条件で競技を行うので暑いところから来た人と寒いところから来た人のハンデキャップがあるが、(マラソンなど)朝7時開始は少し遅すぎるのではないか。もっと早くからスタートしてはどうか。また、難しい問題だと思うが、観客も大変なヒートショックがある中での観戦となるので、健康管理はしっかりとした形でシステム化し、(観戦できる状態の人だけが)会場に行くなどの(対策を取る)必要もあるのではないか。もう一つの懸念として、大変な交通渋滞が予測できるので、企業としては、期間中はテレワークなど、自宅でできる作業を何らかの形で増やすべく、今から準備する必要があるのではないか。最高気温が40度を超えるのは、今まで日本人が経験したことのない暑さだ。今後1年で色々なデータが出てくると思うので、8月がどうなっていくのかも含めて、企業も国も個人も、全体で対策を練っていく必要がある。まだ2年あるので、今はそのようなことを考えるよい時期ではないか。

Q : 厚生労働省の中央最低賃金審議会で最低賃金が議論され、目安が答申される。これまで2年連続で3%増と政府の方針通りに進んできた。しかし、中小企業の経営の厳しさ、下請けに対する取引慣行などの問題も抱えている。最低賃金はどれくらいであるべきか、また、どう決めていくべきか伺いたい。


小林: 最低賃金の話の前に、今年の春闘では政府から賃上げ3%の要請があり、結果としては、定期昇給とベースアップでは3%に届かなかったが、ボーナスを含めると3%を超えた(企業も多かった)。それは、政府に言われたからやっているわけではなく、企業業績が良かったということをベースにして、自社の判断でそれぞれが決めてきたということだと思う。最低賃金の引き上げが消費者の購買意欲を促進することは明らかであり、政府が言っているように、相対的に日本の最低賃金は、低すぎるのではないか。最低賃金1,000円という目標に向かって、数学的には3%ぐらいを目標にすることは、むべなるかなと思う。中小企業を中心にした業績をどう上げるかという議論とともに、進めなくてはならない。

Q : 適度な暑さは経済効果にもなるが、今年の猛暑は多くの方が亡くなっており、広義の気象災害であるとの指摘もある。経済の面でどのような猛暑の影響があるのか。また、代表幹事はこの暑い半月をどうしのいでこられたかも含めて伺いたい。

小林: (ここ最近、自分が聞いた話だが、)家電メーカーの会長はクーラーが売れると言い、ビール会社の相談役は飲料が売れると言う。まずそういった局面もかなりあるのではないか。それらに限らず、景気には良い方向へ何らかの変化があるわけで、その変化が経済的なひとつのインパルスになる為、(経済面では)悪いことではないと思う。個人にしてみると、例えばゴルフをこんな(猛暑の)中でフルでラウンドするのは現実的ではないのではないか。本人たちはやる気があっても、周りから呆れられると思う。例えばハーフで止めるなど(するべきで)、途中でクラクラしては後がみっともない。個人的に非常に実感があるのは、フルでゴルフをやりきるのはきついなと、この暑さから感じているところだ。やはり自分の身は自分で守るということだろう。今回もあれだけの豪雨に対し、(対応が)早かったか遅かったかは別として、アラートが出ている中でアクションが早いところも遅いところもあった。この猛暑についても、これだけ報道が危険を喚起し、あるいは気象庁が情報を流しているので、受け取る側もよりセンシティブにならざるを得ないのではないか。

Q : この暑さを受けて、小中学校にクーラーを設置する補助をしたり、夏休みを延長するなどの動きがある。企業としては、テレワークや時差出勤など、暑さのなかでの働き方に工夫の余地はあるのか。

小林: 工場は三交代制勤務などでなかなかフレキシブルにはいかないが、本社などの事務職については、例えば朝5時から9時頃まで働き、必要があれば夕方もう一度出勤する、あるいは暑い時は働かないと(いうことも考えられる)。そうすれば冷房代も節約できる。そういったフレキシビリティは必要かもしれない。特に研究所など、裁量労働制で比較的(そうした対応を)とりやすい所は、もっと自由にすればよいと思う。中東では昼休みを12時から16時くらいまで取ると言われているし、そのくらいはできるのではないか。ただ、一斉に実施しないとなかなか難しいだろう。

Q : IR整備法、参議院の定員増となる公職選挙法改正案が成立し、国会が閉会した。9月の総裁選に向けて、安倍政権は着々と地歩を固めている。一強時代が続き、政治が安定しているのは確かによいと思うが、成果がほとんど見えないのではないか。米中の貿易戦争や日本への追加関税など問題も多い。対抗措置を取るべく発言する閣僚もいるが、何ができるのか。政治、自民党総裁選への所感を伺いたい。

小林: 公職選挙法改正案についてはコメントを出した通りだ。IR整備法については経済的な活性化、カジノのみならず、日本に学会(誘致)などで人の集まる場所を広げようという意味では大いに賛成だ。ただ、私自身、賭け事は好まない。パチンコや競馬にも関心がないので、(カジノには)少し心配がある。(政治については)何も決められず、1年ごとに政権が交代するという情けない状況よりは、決まるという点ではよい。しかし、何を決めるか(が問題だ)。次の世代、さらにその次の世代も考慮した決め方を、是非してほしい。これは温暖化もそうだ。温暖化(問題が顕在化するの)はひ孫の時代かと思っていたが、自分の時代にこれほど暑くなってしまっている。あるいは財政の健全化についても、今はまだよいが、サドンデスになってしまうかもしれない。エネルギー、環境、さらには教育の問題もある。結局、持続可能性が(重要であり)、次の世代、その次の世代(のことを考えなければならない)。「今がよければ」「自分さえよければ」ではなく、日本の将来の行く末を見て、30年~50年先からフューチャーデザインをする。そこからバックキャストをして今、何をしなければならないのか(を考えるべきだ)。(政治が)安定しているからこそ出来ることとは、持続可能性を考えることだと思う。是非それをやっていただきたい。

Q : マーケットの動きについて伺いたい。日銀の緩和について変更観測が広がり、昨日は長期金利が上がり為替も大きく動いた。シミュレーションになったとの声もあるが、これから日銀はどう対応していくべきか。

小林: 日銀総裁は南米(ブエノスアイレスで行われたG20財務相・中央銀行総裁会議)にいたので、今回の事象は(日銀が)何かを決めたからではなく、たまたま一部報道で(マーケットが)動いたということだろう。そのぐらいフラジャイルというか、ちょっとした事象によって物事がとんでもない方向に行ってしまう前兆のようなもの(とも言え)、そうでなければよいと思う。今やそのくらい疑心暗鬼の部分が増えてきてしまっている。ステルス・テーパリングといわれるが、(国債の買い入れが年間)80兆円から40数兆円に減ってきているといったことや、米国が金利を上げている中で、日銀も何かしらの動きがあるだろうなどといった憶測がトリガーになって、変な方向に行く危険性が全く無いわけではないということだろう。マーケットの一部では、そろそろ限界状況になっていると考える人々も増えてきたということではないか。非常に繊細な対応が日銀には求められている。

Q : 先ほど経産省の幹部人事が発表され、柳瀬唯夫経済産業審議官が退任され、後任には、寺澤達也商務情報政策局長が就く。日米の通商交渉を含め期待することと人物評を伺いたい。


小林: ネゴシエーターであり、英語も堪能だ。なかなか強気な方で、通商(交渉)に向いているのではないかと思う。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)


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