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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年10月14日(金) 13:00~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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冒頭、小林代表幹事より、STSフォーラム第13回年次総会(10月2~4日・京都)、第42回日本・ASEAN経営者会議(10月10~12日・札幌)、関西経済同友会創立70周年記念式典(10月11日・大阪)について感想を述べた。その後、記者の質問に答える形で、(1)タイのプミポン国王の逝去、(2)ボブ・ディラン氏のノーベル文学賞受賞、(3)TPP、(4)東京都内の大規模停電、(5)配偶者控除の廃止見送り、(6)政治献金、(7)出光興産・昭和シェル石油の合併延期、(8)高額薬剤の費用負担、(9)外国人労働者の受け入れ、などについて発言があった。

<冒頭発言>

小林:10月2日からの3日間、京都で開催された、尾身幸次氏が理事長を務めるScience and Technology in Society(STS)フォーラムの年次総会に出席した。印象に残ったのは、大隅良典 東京工業大学栄誉教授のノーベル医学・生理学賞受賞が決定した日(10月3日)の朝に行われたセッションである。日本の研究開発は、中国等に比べると相対的に伸びが悪い。研究開発をやってはいるが、ユニコーン企業(評価額が10億ドル以上かつ非上場のベンチャー企業)数の国別割合は、米国が58%、中国が21%で、日本には1社もない。これはなぜかとの質問を受けた。優等生的に言えば、エコシステムができていない、ベンチャー企業を育てる風土がない、大企業志向である等の理由が挙げられるが、二つのエネルギーが枯渇してきたためと考えている。一つは、原子力も含めた実際のエネルギーである。日本は、いまだに韓国と比べて電気料金が2.5倍も高く、米国やその他諸国と比べても高い。それだけのハンディキャップを背負っている中では、対内直接投資は4%程度からなかなか伸びない。もう一度、成長戦略の基本を本気で考え直さないと、いつまで経っても新しいものは出てこない。(もう一つは)われわれ経営者も含めた日本人のガッツ、エネルギーである。内部留保を言う以前に、海外に向けてはそれなりのM&Aも行っているが、アクティビティが下がっているのかなと、反省も含めて感じた。
 また、10月10~12日、札幌で第42回日本・ASEAN経営者会議(AJBM)を開催した。これは経済同友会が主催し、42年も続いている。Brexitやトランプ現象、サンダース現象がある中で、ASEANはFTA(自由貿易協定)などグローバル化を10カ国が一緒になってやろう(という方向である)。物流・港湾など、本質的なグローバル化を日本と協力して行う流れがあり、大切にしたいと思った。その後、大阪で関西経済同友会70周年記念式典に出席した。われわれ東京の経済同友会も、11月21日に70周年記念式典を行う。(経済同友会は、)戦後1946年4月に、焦土の中から志ある83人の経営者が集まり、脳漿を絞って日本再興のために頑張ろうと立ち上がった。70年経って、日本は当時とは違った意味の危機に面している。政治とは別(の動きとして、式典で発表する提言は、)われわれ経営者が本気で今後の日本を考えるよすが、トリガーにしたいと思った。

<質疑応答>
Q: 日本時間の昨夜、タイのプミポン・アドゥンヤデート国王がご逝去されたが、代表幹事の受け止めを伺いたい。現時点での日本企業への影響は少ないと思うが、日本にとってタイは、中国・アメリカに次ぎ、海外で3番目に進出企業が多い国である。今後、日本企業にはどのような影響があるとお考えか。

小林: タイには、日本企業が大いに進出している。観光でも、日本のインバウンドはタイからの旅行客が飛び抜けて増えている。先日開催した日本・ASEAN経営者会議でも、最も出席者が多かった。(日本は)タイとは歴史的に深い関係を保ってきており、70年の長きにわたってタイを安定的に治められた国王が亡くなられたことは非常に残念である。当面、政治が安定することを祈る以外ない。早く王位を継承され、正常に戻ることを祈っている。特に、日本企業への影響はないと思うし、ないと願いたい。

Q: ボブ・ディラン氏がノーベル文学賞を受賞したことについての受け止めと、同氏の曲などに思い出があれば伺いたい。

小林: 「風に吹かれて」など、若い頃なんとなく軽快で良い曲だと思い、口ずさんでいた時代もあった。どこまで文学と捉えるかを考えると、今までは散文文学、小説を書かれた人が(ノーベル文学賞受賞者の)かなりのウエイトを占めていた。韻文、ポエム、詩に(文学賞が)与えられたことは大いに結構である。詩は、必ずしも読んで口ずさむだけでなく、歌ってなおかつ共感するというところまで文学を広げたという意味では面白い定義になったのではないか。ボブ・ディラン氏は反戦の歌が多いが、反戦に限らず人生を深く洞察する歌手が受賞したことは、大いに結構なことだと思う。

Q: 本日からTPP特別委員会が開会し、いよいよ審議が始まる。野党の質問は来週以降になると思われるが、議論の中心となりそうなのは輸入米の不透明な入札取引の関係である。農林水産省は国産米の値段に影響を与えないという調査結果を出しているが、代表幹事の所感と今後の論戦に対する期待を伺いたい。

小林: 輸入米については、どこまでの情報が把握されているかであり、私自身は細かい情報を持っていないのでよく分からない。基本的には、米国の大統領候補は2名ともTPPを推進しない中で、最後の可能性としてはオバマ大統領がレームダックセッションで、12月末までにどれだけ努力をして議会でうまく承認できるかにかかっている。その後押しをする意味でも、(日本でのTPPに関する国会審議は)極めて重要である。今後、他のアジアのFTAを含め、日本にはぜひ早く承認・批准していただきたい。個別の問題については、参考人を何人か呼んでいるようなのでそこで議論をしていけば良いが、基本的には小異を捨てて大同に就くという精神でやってもらいたい。少なくとも、Brexit(が選択され)、米大統領候補がナショナリスティックになって(世界が分断の方向に進んで)いる中で、安定政権である安倍政権は前向きの強い意志で取り組んでおられると思うので、ここは大いに、早めに承認に持っていっていただきたい。

Q: TPPに関して、これから国会で論戦が本格化するが、農業改革が大きなテーマになるだろう。日本の農業の国際競争力を確保するために、どのような点が重要だと思うか。

小林: 農業に限らず、全体の国際競争力という視点で農業も見たらよいのではないか。それにはやはり解放していく以外にない。集約も必要であり、資材・人材も含めてコストを下げ、どうバリューを加えていくかに特化していく。農業においても、コモディティ系と言えるようなものは捨てていく。基本的には集約化ではないだろうか。片手間(程度)にやる農業をどう考えるのか、それは「業」といえるのか。いずれにしろ、他の産業と比べて特殊であるという考えは捨てたほうが良い。

Q: 農業についても集約化は避けられないということか。

小林: そう思う。コストダウンという意味では、石油精製や鉄(のような業界で)もみな、血のにじむような努力を苦労してやってきている。農業や医師会だからと、特殊領域として神格化されるのは、こういう時代にはそぐわないと思う。

Q: およそ59万件の停電と東京電力の対応について伺いたい。(送電設備の)老朽化が原因と指摘されており、そのような問題は東京電力に限ったことではないと思うが、どのような対処を期待するか。

小林: レジリエンスの問題は、日本の大きなテーマの一つだと思う。必ずしも、(今回の停電の原因と言われる)35年前に敷設された送電ケーブルの問題だけでなく、ケミカルプラントなどのコンビナートでも老朽化からくる不具合が何件か出てきている。日本そのもののインフラが老朽化してきている中で、IoTや映像で常に監視するなど新しいテクノロジーを活用したシステムを導入することで、(不具合を)事前に察知し、それをいかに早く代替するか(が重要である)。コストは掛かるが、どの産業でも、少なくとも製造業においてはかなり重要なテーマの一つではないか。たまたま今回は東京電力の問題があったが、報道されていない部分でもコンビナートや重化学工業系には二つ問題がある。一つ目は(インフラの)老朽化である。二つ目は熟練工が定年を迎え、高い教育を受けた感度の良い人たちが徐々に退職していく中で、若い人たちがそこまでの感性を持って安全に対応できないことである。マニュアル化やコンピュータ化もあり、非定常作業に対して慌ててとんでもない作業をしてしまうこともある。それに対する訓練と同時に、半導体をベースとしたIoTやロボティクス、センサーなど新しいテクノロジーがあるので、目立たない作業をしっかりやっていく(ことが重要である)。若い世代を含め、どちらかというと手が汚れない、綺麗でかっこいい仕事ばかりやりたがる傾向があるかもしれない。地味でコツコツやることの大切さをもう一度見直さないと、この国そのものが非常に基本的なところで腐食していく危険性は感じる。

Q: 今回の停電は、東京電力改革・1F問題委員会の議論に影響するか。

小林: 直接的な関わりはないと考える。委員会での議論は、オールジャパンの、日本のエネルギー政策というあたりから関わってくることで、1F(福島第一原子力発電所)をどうするかといった問題は、今の老朽化の議論よりも、もっと多変数で難しい解を求められていると思う。

Q: 配偶者控除が存続される見通しである。先日の経済同友会の財政・税制改革委員会の提言では廃止を求めていたが、それとは反対の方向である。女性の就労で(配偶者控除は)時代に合わないという見方もできる。安倍政権の働き方改革とも違う方向のように思えるが、所感を伺いたい。

小林: 本会に限らず、女性の活躍というベースで言えば、論理的には撤廃するというのが普通の考えだと思う。(配偶者控除の廃止による税収増が)1兆円になるかは別として、そのお金を育児に充てたらどうかというのがわれわれの主張だった。残念ながらそうはいかず、選挙も含めてかどうか詳細は分からないが、いろいろな考えがあって自民党としては違う方向を選んだ。消費税(率引き上げ)もそうだったが、基本的な理念と実態が分かりづらいという印象である。

Q: 配偶者控除の上限を103万円から150万円、170万円に収入対象を引き上げるという議論もあるが、ある程度女性の就労につながるとお思いか。

小林: その点も難しい。(上限が)103万円から150万円になってどのくらい変わるのか。基本的には、本当に公平に扱うには撤廃するというのが最終的な方向だろう。

Q: 経団連が、今年も政治献金を会員企業に呼びかける方針を表明した。経団連は社会貢献として必要だと主張しているが、経済同友会は政治献金についてどう考えているか。

小林: 本会では、個人献金は奨励して、企業・団体の献金は基本的にはなくしていこうというのが長い間の主張である。社会コストとして(政治)献金が必要との考え方もあるが、個別の企業・団体で判断するところであろう。三菱ケミカルホールディングスも経団連の加盟企業であるが、個社として判断して対応していく。

Q: 出光興産と昭和シェル石油は、出光の大株主である創業家の反対を受け、経営統合時期の延期を発表した。一方、JXホールディングスと東燃ゼネラルは来年4月の経営統合を予定しており、業界の構図がアンバランスになる。統合問題に関する受け止めと業界再編について、所感を伺いたい。

小林: 業界再編と産業競争力、ガバナンスという2つの視点がある。産業競争力という意味では、すでにメガバンクを中心に金融系はかなり集約しており、鉄鋼業界も相当な集約が進んでいる。次の循環はコモディティ系で、石油精製や石油化学ではないかと思う。元々資源(が少なく)、電気代が高いというハンディキャップがある日本において、グローバルに輸入品と戦うには、それぞれの分野である程度一緒にならないと、なかなか産業競争力がつかないのではないか。
 その意味で、JXホールディングスと東燃ゼネラルの経営統合は当然の方向であり、そのような流れの中で、出光興産と昭和シェル石油の経営者も経営統合をしようと考えたのではないか。しかし、大株主である創業者は統合に対して、徹底抗戦という形を取っている。その中で、経営者である執行側がガバナンスを効かせ、競争力を付ける方向にどのように持って行くか。率直に言えば、創業家に統合に賛成してもらえばよいのだが、そうは言っても33%以上の株を保有し、それだけの権利を有しているので、両者の努力を見守るしかない。
 一方では、化学業界も欧米と比べて企業の数が多く、1社当たりの売上が少ない。日本には非効率な経営体があり、高いエネルギー・コストと相まって産業競争力が落ちている。経営者と株主との対話によって、どのような形に持って行くかが最大のポイントになる。創業家が「自分の会社」と思う気持ちは分からないこともないが、会社は法人であり、執行がいて、監督がいて、取締役がいる。ここはしっかり守りながら、対話を重ねていくしかない。

Q: 超高額と言われるがんの免疫療法薬「オプジーボ」について、公的保険と高額療養費制度による国の負担が大きく、価格値下げを巡る議論がされている。(対価として)出し過ぎだと思うか、あるいは他に工夫の仕方があるのか。

小林: (企業としては)研究開発(コストとの)見合いと、次の研究開発をアクティブにやっていける程度のリターンは必要である。定量的に評価して、オプジーボが安いか高いかは、私自身で計算をしていないので分からないが、相当な研究開発費がかかっていることは事実だろう。そのリターンをしっかりと貰いながら、厚生労働省も含め、適正なところに持っていく流れになるのではないか。

Q: (高額医薬品などを)使用した人に対して、本人負担の上限を設けて残りを国が負担する高額療養費制度がある。今年度の社会保障の焦点の一つとなっているが、所感を伺いたい。

小林: ジェネリック医薬品の(使用)比率を上げたように、定量的に評価してリーズナブルな方向に持っていくしかないだろう。

Q: 老朽化するインフラ施設に対して手を打たなければならないとの発言があった。人手不足に対して、安倍政権は限定的に外国人技能実習制度を使って外国人労働者を受け入れているが、日本の少子・高齢化が進めば、いずれ外国人が背負わなければならない部分もある。日本はどのくらいまで外国人を受け入れるべきか。

小林: センシティブな問題である。高齢化と人口減少の中で、(日本には)3つしか手がない。出生率を上げること、育児(サポートなどの仕事を)含め高度人材以外でも海外から来てもらうこと、ロボティクスなど新しいテクノロジーで補完していくことだ。この3つを地道にやっていくしかない。出生率を上げても、(生まれてから)活躍できるようになるには20年かかる。テクノロジーも、そんなに急激には代替できない。外国人労働者も1つの選択肢であり、高度人材については、かなり具体的に手を打ち始めている。建築関係の労働者も含め、期限付きで受け入れるのか、永住できるのか、最終的に何%までにするのかは、国として慎重に議論が始まっていると思う。私個人の考えでは、日本人は今まではホモジニアスで均一性が高く、その良さもあった。産業競争力(強化)や成長を考えるならば、外国人労働者に一定程度来てもらい、ヘテロを入れることでホモジニアスである良さをより認識できる程度に、外国人の助けを借りるのは良いことではないかと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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