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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年7月26日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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冒頭、横尾副代表幹事・専務理事より、「経済対策に対する意見」の説明があった。続いて記者の質問に答える形で、(1)経済対策、(2)相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件、(3)「ポケモンGO」、(4)日本銀行の金融政策、(5)ソフトバンクの英・ARM社買収、(6)最低賃金、(7)2020年のプライマリー・バランス黒字化、(8)経済指標、(9)リオオリンピック・パラリンピックなどについて発言があった。

<経済同友会「経済対策についての意見」について>

横尾:現在、政府では安倍内閣総理大臣の指示を受けて、事業規模で20兆円ともいわれる「経済対策」が検討されている。こうした動きを受け本会では、財政健全化が課題となっている中で、経済対策を打つのであれば、効果の薄いバラマキを避け、政策として意義があり、効果的な財政出動になるべきとの考えで、急遽意見を取りまとめた。

1ページ目の冒頭にあるように、過去において、経済対策が数多く行われてきたが、目先の需要増だけを狙うものも多く、その効果の検証は必ずしも十分に行われていない。わが国の財政の持続可能性が危ぶまれる中で、過去の繰り返しは避けるべきと考える。そこで、中段の「1.基本的考え方」にあるように、今回の経済対策については、「将来世代への負担先送りを避け、若者が希望の持てる施策を」とした上で、我々の考え方として、3点述べている。

第一は、「財政健全化路線との両立を図るため、将来世代の負担となる財政支出は最小限に」ということだ。財投債・赤字国債の発行は、可能な限り回避すべきである。

第二は、「目先の需要増よりも、持続可能な社会の基盤構築に資する費用対効果の高い投資を」ということで、将来を担う世代を支える施策を中心とすべきとしている。特に、持続可能な経済社会の基盤構築に資する分野で、費用対効果の高い取り組みとするべきだ。

第三が、「中長期の持続的成長に資する施策の加速を」ということで、政府の成長戦略の実行と、生産性向上を加速することを求めている。

2ページ目からの「考えられる施策について(例示)」は、本会での過去の提言や、現在行われている議論から、成長戦略の加速に資する内容を中心に、有効と思われる施策の例を示している。

子ども・子育て・若者への投資については、「高等教育における給付型奨学金創設に向けた試行」「家事支援費用の補助」「小中学校やNPOによる朝食支援事業の実施」「不妊治療支援の拡充」である。

環境・エネルギー・街づくりへの投資については、「住宅・建築物の耐震化、省エネ化・環境対応の加速」「再生可能エネルギーの開発・普及の加速」「持続可能な街づくり/景観形成支援」である。

中長期の経済成長の促進については、「農産物輸出促進に向けた質の面でのインフラ整備」「高速道路料金の定額化による物流・観光活性化」「マイナンバー制度の利活用拡大に向けた検討」「人工知能(AI)の研究開発・利活用の拡大を促進する共通基盤の構築、人材育成」「サイバー・セキュリティの強化に向けた研究開発」「医療データの利用拡大のための基盤整備の加速」「サービス産業の生産性向上に向けた支援」「行政手続きの簡素化に向けた取り組みの加速」である。

いずれも基本は単年度の支出を想定しているが、恒久的な制度として必要なものは、効果を検証する「パイロット事業」として行ってはどうかという位置付けにしている。

今回の経済対策については「未来への投資」というキーワードが付されている。今後のわが国の財政状況にも当然配慮しながら、将来のことを考え、選りすぐった投資をしていくことが必要であると考えている。

<記者との質疑応答>
Q: 「経済対策に対する意見」に関して、他団体は「大胆で大規模な国費投入を」と主張しており、自由民主党の二階俊博総務会長はさらに積み増す考えを示している。また、東京オリンピック・パラリンピックを4年後に控え、インフラ整備は大事な課題だと思われる。この部分についてもいくつか触れられているが、あらためてこのタイミングで政府に対して物申す意図や思いを伺いたい。

小林:インフラ整備への投資ももちろん否定しているわけではない。フォーカスしているのは、これら(意見で述べている施策)をすべて合わせても、概算で4,000〜5,000億円になる財政のプロポーザル(提案)である。最低限の施策に加え、特に将来世代、次の中長期のバーチャルやITにおける新しい成長を生む、そのようなアイテムにかなりきめ細かく配慮した。全部を細かく考察する時間的余裕もなかったため、少なくとも経済同友会がこれまで何回も提案してきた部分にフォーカスしたが、今回の第二次補正予算に入れていくべきでないかとの考えの表明である。

特に重点的に思いの入っている部分は、やはり将来世代への投資の部分になるのか。

小林:子ども・子育て・若者など、中長期の観点による投資である。高速道路料金の定額化も新しい。サイバー・セキュリティ、医療データ、サービス産業、すべて思いはあって、先ほど説明があったように、やはり若者と環境・エネルギー、ITと次世代の社会構造に対して準備するところをメインにしており、従来型のインフラ整備といったものには今回は触れていない。

Q: 今日発表された「経済対策に対する意見」では、インフラ投資についてはあえて盛り込んでいない。政府としてはリニア中央新幹線の早期開業、港湾、整備新幹線など21世紀型のインフラ投資の必要性について強調しているが、経済同友会がインフラ投資を盛り込んでいない理由について伺いたい。
また、横尾副代表幹事・専務理事は、赤字国債の発行とともに財投債の発行も抑えるべき、可能な限り回避すべきと仰ったが、財投債のリスク、問題点について伺いたい。

小林:確かに未来への投資だが、8年から10年ものはるか先ということと、財政投融資というのは「かつて来た道」だ。そういう方向に行ってしまうこと、野放図に使うことはいかがなものかと思っている。

(インフラ投資について)記載がないのは、政府で議論されていることをオーバーラップして書いても仕方がない(との考えからだ)。意見内の「財投債・赤字国債発行は可能な限り回避すべきである」という一文にすべて表れている。

横尾:財投債について、ややテクニカルな問題もあるかもしれないが、マイナス金利の状態になって、国債も10年物はマイナス金利となってきている。仮に国債を出さなくても、財投債を出せば(資金調達できる)という話になり、市場の形成上、バランスが崩れる。(金利が高い)財投債の方が売れるから何でも財投債で賄えばいいのかという、財政のゆがみと市場のゆがみの問題をどう捉えるかという課題があるので、あまり財投債に頼るのはいかがかと思っている。

Q: インフラ関係の考え方について、一定の効果はあるが政府が触れているから触れていないのか、財投債や建設国債を発行する必要がないということか。

横尾:代表幹事が触れたが、前段の部分で政府が触れているので、我々があえて重複して話をする必要はないと思ったためである。

Q: 政府が検討している経済対策は、消費増税の判断と共通する部分があるが、目先の需要を優先して、なかなか痛みを伴う施策を講じることができない。本日、経済同友会が発表した「経済対策に対する意見」では、「目先の需要増にとらわれず」との指摘があるが、なかなか政治は動かない。選挙のために増税を先送りして、国民から支持されるというのが現状だ。そういった痛みを伴う施策を、いかに政治に進めてもらうか。難しいと思うが、国民や世論を含めてどのようなことが必要か。

小林:迂遠な方法とは言え、報道等メディアを通して、国民に理解を求める努力を(政治も本会も)お互いにやっていく(しかないのではないか)。政府には、これだけ強い政権基盤という政治的資産がある中で、果敢にやっていただきたいと思っているが、政治サイドから見れば、今までのマニフェスト、約束事に対して、それを空手形で終わらせるというわけにはいかない部分もある。基本的には、国民の思いや考え方を変えるしかなく、迂遠ではあるが、その方法しかないと思う。いたずらに政治に文句を言っても効果はない。

Q: 経済対策の効果を検証することは、なかなか難しいと思うが、どのようにお考えか。

小林:短期的には、検証しようと思えばできるのではないか。内閣府では一部、当然のことだが(検証)されていると思う。それがオープンになるような働きかけが必要ではないか。

Q: 今朝、知的障害者施設の入所者らが刃物を持った26歳の男に刺され、19人が死亡する凄惨な事件が起きた。一般化することは難しいが、国外では若者によるテロ行為が毎週のように起きており、今回、日本でも社会的弱者に対する殺人事件が発生した。こうした現象について、代表幹事はどのように見ているか。所感を伺いたい。

小林:グローバルにどう解釈するかはわからないが、テロの関連では格差や宗教の問題等があるため、理由付けは比較的簡単にできているのではないかと思う。今回の事件を含め、現在の社会の病理というか、すぐに殺人に走ってしまうような精神的な弱さ、そうでなければいいとは思うが、時代が病んでいる(とも考えられる)。政治などの問題だけではなく、社会そのものが極めて変革の中にあって、それについていけない人達や、そのような部分の病理もあるのではないか。あるいは、基本的な人間の命に対する重みの教育が、社会としても学校の教育現場としても行われていない。そのようなものの一つの表現だとしたら怖いという感じはある。

Q: 「ポケモンGO」が社会現象になっている。交通事故になったり、怪我をしたりもあるが、規制されているエリア、たとえば皇居や原発でもバーチャルゲームができるようになっているが、その点についてはどのようにお考えか。

小林:二つ局面があると思う。21世紀に入って、Virtual Reality(VR)だったものがAugmented Reality(AR)というように、まさに仮想現実ではなく、現実と仮想が一緒になってしまうという、ある意味では大変なイノベーションが、社会で起こっている。将来的にどのような方向へ行くか、かなりのビジネスモデルさえ変えてしまう。(「ポケモンGO」の社会現象化は)そのような可能性、危険性の両面を秘めているのではないかと思う。

(ゲームの)提供者は一つの倫理観で、少なくとも原発の領域や皇居には、自主規制をし、そのようなところにはポケモンが出ないようにするというのが最低限やるべきことではないかと思う。一方で、グローバルにこういったものに対する感性(が高まっており)、これだけ強烈に皆が興味を示すという時代の流れをストップしては、グローバルの中のビジネスも含めた国際競争力、あるいは時代の流れに対して疎外材として働いてしまう。新しいツールは必ず良い面と悪い面の両面を持っているので、ここは大いに前向きに進めつつ、負の部分にも注目しながら、いきなり良い方向へ行くかは別として、いろいろトライアルをしていくべきフェーズにあると思う。

Q: 日本銀行の金融政策について、今週の28、29日に金融政策決定会合が開催され、おそらく追加の金融緩和についての議論があると考えられている。ETFや長期国債の買い入れ、マイナス金利政策の拡大等が議論されると思うが、金融政策の限界を指摘する声もあり、これ以上追加緩和するとマーケットに対してマイナスの効果が出てしまうのではないかという意見もあるが、追加金融緩和の是非について考えを伺いたい。

小林:米国も含めてもう一度考えていく時期にきているというのが一つ。マイナス金利も含め、非常に積極的に手を打ってきた。お金をいかに使わせるか、三次元的に量も質もマイナス金利も、ということで、ある意味ではかなりやり尽くされているが、それによる効果が明快に出てきているわけではない。マイナス金利についてはもう少し評価に時間がかかるとは思う。

その意味で、ここでもう少しファイン・チューニングしたところで、急激に物価が上がるなり、あるいは為替(の流れ)が変わる、あるいは企業のマインドセットが変わって投資が増える、というほどの力はない。マーケットは常に動きを好むため、(追加の金融緩和を)催促するのは当然なので、そこに敏感に反応するより、この辺りで、本当の意味での成長戦略を待つくらいの余裕があってもよいのではないか。

Q: 日銀の金融政策について、夏季セミナーでも議論があったが、日銀がターゲットにしているCPIも、シンギュラリティに向かっていく社会では、物価が上がりにくくなることが考えられる。GDPやCPIなどの目標としている経済指標が、生活感なりの実体経済を反映しているのかについて、考えを伺いたい。

小林:今までの重さのあるものを尺度としていた経済学から、重さのない経済学(に移ってきている)。まして、AIなどの時代になってくると、サービスだけではなく人間の感性にどのように刺激を与えるかといったことまでカウントしないと全体像がつかめないのではないか。そういう意味で、クラシカルなGDPやCPIは、重要なコアの指標ではあるが、それだけに固執していては、政策の方向性を誤るだろう。2年で(物価上昇率)2%という目標を2013年4月に立てたが、一年半遅れても2%どころか、コアコアのCPIでも0.7%程度で、原油価格(下落)を考慮するとほとんどゼロに近い中で、それらにいつまでもこだわることが本当に方向性として正しいのかということを議論していただきたい。

GDPについては、本会の「経済統計のあり方に関する研究会」にて、さまざまな側面から、従来の手法ではカウントできていない部分、ビッグデータなどの新しいツールを使ってより正確に把握する手法、あるいは従来のモノを買うという文化からタダで(アプリ)をダウンロードできるなど、ビジネスモデルが多様化し、結果としてお金に換算できるようなものをどうカウントしていくのかといったことを検討している。リアルとバーチャルの足し算か掛け算かは別にして、そういった経済学をどう考えていくかを整理して11月くらいに発表する。

Q: ソフトバンクが英・ARM社を買収することになった。かつてない規模の巨額な買収であり、IoTの基盤となるデバイスを押さえる買収である。これについての所見と今後のM&Aのあり方について、改めて伺いたい。

小林:非常に見事な決断だと思う。ギャンブルだと述べる人もいるが、私はこれくらいのリスクにかける企業家精神は称賛に値すると思う。産業競争力会議が中心となって、政府も特にここ2年、強烈にIoT、AI、ロボットという領域の情報を整理し、国家としてこれを取り進めていこうという中で、トヨタ自動車はカリフォルニアにAIの研究所(Toyota Research Institute)(を設立し)、今回、ソフトバンクの孫正義氏が3.3兆円(での英・ARM社買収)という大変大きな買い物をした。そのような形で、国内に限らず、どんどんグローバルに進出し、特に第4次産業革命に関連した手を主導的に打ってもらい、製造業、サービス産業に関わらず、他の日本企業がより積極的にそういった分野に進出しつつ、今までの事業形態を変えていくということは大いに結構で、お見事だと思う。

Q: 最低賃金について、安倍政権で今週にも上げ幅が決まるが、3%という数字が出ている。最低賃金自体は労使を含めた有識者なりで協議して取り決めた経緯があると思う。政治主導での(上げ幅)3%という数字は、物価が上がっていない中で、中小企業には負担が重いと思うが、経済界としてはどうお考えか。

小林:まさにご指摘の通りである。中小企業、大企業を含め、(上げ幅)3%が本当に良いのかは労使で(決めるべきである)。政府は、ガイドラインとして出しているという認識である。アメリカも(最低賃金は)15ドルと言っている人もいる。賃金を上げることに、政府がリーダーシップをとることに対する抵抗感はない。

Q: 本日開催した経済財政諮問会議において、財政の「中長期試算」が議論され、2020年のプライマリー・バランス黒字化は達成可能であるという見込みが示された。2020年のプライマリー・バランス黒字化の実現可能性について、どのようにお考えか。

小林:目標を立ててそこに迫っていくのは、当然の手法として、政治に限らず民間企業の大部分では重要なことである。ただし、今回の仮定自体(の問題)として、現状でTFPが0.5%程度であるところ、2020年には2.2%としている。また、潜在成長率も0.3〜0.5%であるのに、2%超という仮定である。さらに、2017年までは2%程度の名目GDPが2019〜2020年には急に3.7〜3.8%となり、現状ではマイナス金利であるのに金利も3〜4%のかなり高い仮定になっている。なおかつ、消費税率は2019年10月に8%から10%に上げる前提での数値である。世界情勢も含むすべてが上手くいって、それでも2018年はマイナス1.9%、10.5兆円(の赤字である)。2020年には税収も含めて5.5兆円の赤字となっている。プライマリー・バランスの均衡というところには、あれだけの仮定をしても到達しないのかという印象だ。目標は目標として、ベースがGDP600兆円なので、全体をそれに向けて進めていくことは良いことだが、個人的にはかなり難しい(と感じている)。目標というのは、パン食い競争ではないが、背伸びして口に届くくらいが丁度良く、少し高すぎるのではないかと感じる。

Q: リオオリンピック・パラリンピックへどのようなことを期待されているか。

小林:実は観戦に行くつもりだったが、周りから「危ない」との意見が多かったので断念した。米・ダウ社のアンドリュー・リベリス会長からソチ五輪の際も誘われていたがお断りしてしまい、今回も誘っていただいたのでぜひ行こうと思っていた。南米は(フライトが)30時間もかかり、なかなか行く機会もないので、意志は固かったのだが、事故でも起こってはいけないと考え取り止めた。(渡航を)やめたので、実を言うとほっとしている。テロに限らず、治安という意味では、30時間かけて行ってもホテルと競技場以外はどこにも出られない。しかも危ないバスに乗っていくというのは(懸念がある)。そこから逃れられ、夏休みもとることができる。

(今回の五輪で)やはり(気になる点は)ロシアのドーピングで、IOCが逃げを打ってしまったのは残念である。日本人が今までお見事だと思うのは、柔道や格闘技の精神を引き継いで、ドーピングで引っかかったというのはあまりない。三菱ケミカルホールディングスには、アジアで唯一認定されたドーピングチェックの子会社がある。この社はずっと赤字だったが、(事業を)続けていてよかった。社会正義を裏切った人間に対しては、明確な手を打たなければ(ならない)。オリンピック・パラリンピックそのものの存在が、参加することに意義があるとはいえ、勝負を明確に、フェアに決めるという根源を失ってしまうのではないか。そこを今後どう処理していくかは注目すべきだ。そういう意味で、日本人の心の潔白さを表現するいい機会だと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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