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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年2月3日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)いわゆるイスラム国(ISIL)、およびイスラム諸国との関係、(2)エネルギーミックス、(3)ピケティ氏来日、(4)高度プロフェッショナル労働制、(5)柏崎刈羽原子力発電所視察、(6)TPPについて発言があった。また、前原金一副代表幹事・専務理事よりIPPO IPPO NIPPONプロジェクト第7期活動終了に関する発言があった。

Q: イスラム過激派組織「イスラム国」(ISIL)による日本人人質事件について、一連の事件により、イスラム過激派の広がりがあらためて鮮明になった。中東、イスラム圏で日本がビジネスを展開していく上での対応のあり方について伺いたい。

長谷川: 大変難しい問題である。いかなる個人的な事情があったにせよ、日本人がISILの人質となり、最終的に、ほぼ間違いなく殺害された(と見られる)ことについて、一国民として強い憤りを覚える。ご家族やご親戚をはじめサポートされていた方に対して、(お悔やみ申し上げるとともに)心から哀悼の意を表したい。その上で、イラクやシリアを中心として、国家のガバナンスが今、大きく揺らいでいるというか、効いていない。そのようなガバナンスの空白があるところで、一説によれば、イラクの旧政権を追われたスンニ派によって、あのようなテロリスト集団と言わざるを得ないグループが発足し、アラビア半島のアルカイダ(AQAP)やナイジェリア、さらには東南アジアにまで呼応する動きがイスラム過激派の中にあることは、大変憂慮する。同時に、ISILの(ジハーディ・)ジョン(と見られる人物)が述べていたように、これからは日本人もターゲットとすることについて、どこまでの信憑性があるかは別としても、まずは個々人が自らの身を守るために、できる限りのことを自分でやることが大前提である。当社(武田薬品工業)も含め、そのような地域で事業を行っている会社については、個々の経営陣が判断することだが、当社の場合には、外務省が渡航情報を常にアップデートしているため、当社でも(その情報を)ホームページに掲載して注意喚起を行っている。今回の事件で、あらためてビジネスはもちろんのこと、プライベートの旅行でも、できるだけ(事件に巻き込まれる)恐れのある地域は避けるように社員に要請しており、今のところはそれが限界である。それ以上のことについては、政府も(事件に関する)状況について検証するとしている。検証の内容については、一部は開示できないこともあるだろうということであり、また、その過程や検証の後には、有識者の意見も聞いて、今後の対応強化に資するものにしたいとのことだった。そのような状況のため、現時点では今行っていることが限界ではないかと思う。

Q: 先週から経済産業省による2030年時点のエネルギーミックスの策定に向けた議論が始まっている。原子力発電比率や再生可能エネルギーをどのようにしていくかなどの課題が挙げられるが、代表幹事の見解を伺いたい。

長谷川: 報道では、経済同友会は「縮・原発」を見直すとの認識になっているが、当初から「縮・原発」とは、30%程度の電力を発電していた原発が、少なくとも当面は大幅に比率を下げざるを得ないであろうという意味で申し上げたのであって、原発を順番に止めていくという意味で申し上げたわけではない。それはそれとして現状を見ると、原油価格が想定外に大幅に下がっている。このこと自体は日本経済にとっては追い風になっていると認識しているが、一方で、3.11以降、大飯原発が停止し、(稼働している)原発が完全にゼロになってから相当な時間が経過している。発電(比率)の90%近くは火力発電であり、使用する化石燃料のうち、原油は90%近くを中東から輸入するという構図は変わっていない。原油の価格について、下がれば上がるものであるから、いつまた反転し、高騰に転じるかもわからない。ニューヨークでは(1バレル)48ドルになったとも聞く。本来、中長期的に見れば、再生可能エネルギーが競争力のあるコストで、必要な電力が賄われるよう、技術が発展することが一番望ましい。当面、日本の産業競争力、アベノミクスの第三の矢である民間を巻き込んだ経済成長にも、電力の料金の値下げが望まれる。そういったことからも、原子力規制委員会が作成した新規制基準の適合性審査をクリアし、地域の住民や自治体の納得を得られたところから再稼働していくことが必要ではないか。その観点から、まだ様子見ではあるが、(経済産業省の有識者会議の議論の中で、)原発はベースロード電源として、当面は20%程度の電力を創出すると打ち出されたと記憶している。比率の妥当性について申し上げるつもりはないが、3.11以降のことを考えると、妥当な範囲内ではないかと、個人的には考える。

Q: 先週末、フランスの経済学者のトマ・ピケティ氏が来日した。格差の是正のため、富裕層への課税や多国籍企業への課税制度などを提案している。格差は、経済成長の妨げになっているのか。また、最近のイスラム国の議論の中でも、不満分子が増大する理由として、貧困や格差の存在があるのではないかとも言われるが、どのように考えるか。

長谷川: 貧困と格差は必ずしも同じ意味ではない。日本のような先進国、成熟国において、貧困で子どもを学校にもやれない、結婚もできない、あるいは十分な家庭(生活)を築くことができないというようなことが現実にあるとすれば、社会のサステイナビリティ、あるいはアベノミクスでも掲げているように、経済を安定成長軌道へ復活させ、2050年代になっても2‐3%の成長を目指す上で必要な労働人口を確保するために(は問題である)。そのためには、今の人口減少を看過するのではなく、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」作成時に検討されたように、合計特殊出生率を2030年に1.8程度、2040年に2%台にするという数値目標を出していかなければならない。それを実現するために、結婚したくてもできない、家庭を持ちたくても持てない、子どもの教育などといった問題を解消していく必要がある。これらの問題が、収入格差に起因しているとすればそれを是正していかなくてはならない。ただ、イスラム国の問題とは少し次元が異なるだろう。ある程度の格差は、資本主義、自由主義社会の中では結果として生じてくるものであり、結果平等ということはまずありえない。しかしその場合、結果の不平等が、次の機会の不平等につながらないよう、十分ケアし、担保する必要がある。それは、本人の再チャレンジであったり、子どもの教育であったり、そういう場面で機会が限定されることのないよう、社会や国が支えていかなくてはならないと考える。トマ・ピケティ氏が言っていることはある種のロジックではあるが、それをやって成功する国もあれば、失敗する国もあるだろうと感じるので、何とも申し上げづらい。

前原: 若い時に格差問題の分析をした経験で申し上げる。ジニ係数が0.4を超えると社会が不安定になり、子どもの教育にも問題が出る。したがって、ある程度平等な社会を作る必要がある。また、社会主義国の方が不平等度が高いという現実をどう考えるか。本当はどのような社会体制や国家体制がいいのかという議論をした方がいいが、社会主義国の方が格差が大きいということを経済学的にどうとらえるか。日本は世界的にはまだ良い方であり、世界中で悪化している。よく考えなくてはならない問題である。

Q: 厚生労働省の労働政策審議会で、労働時間法制に関する議論が進んでいる。労働時間規制の見直しに関する所見と、実施する企業の立場で、どのような点が重要かを伺いたい。

長谷川: 政府としては、「高度プロフェッショナル労働制」という呼称に統一するようである。この制度の基本や、職種の具体例なども労政審の資料に提示されているが、最終的には恐らく(職種等は)省令か何かで決められることになるのであろう。要は、会社でも認められており、労働市場でもプロとしてマーケットバリューを持っているような人が、本人の同意のもとで、働いた時間の長さではなく成果で評価される働き方ができるようになれば、職務が明確で高度な専門知識を有し、自己管理能力の高い社員は、より高い生産性をもって働くことができる。日本が特異的にやろうとしているわけではなく、欧米では一般的に行われているものであり、日本全体が競争力を持つ意味でも、一定の条件を付けた上で導入することは意義のあることである。その際、産業競争力会議での検討過程でも懸念が示されていた強制性の問題については、それを排除するため選択制を担保すること、また、健康への十分な配慮も必要であり、その点、労政審では3つの条件も示されている。年間104日の休日、1カ月の在社時間の上限、一定時間以上のインターバル(休息時間)のいずれかを満たすことのようであるが、会社の経営者の立場からすると、仮に3つのうちのひとつの条件になったとしても、できるだけ多くの条件を満たそうと努力をするであろう。そういう配慮との抱き合わせで導入することは、意味のあることだと思っている。

Q: イスラムとの付き合い方について伺いたい。1991年に湾岸危機が起こり、湾岸戦争に発展した。その後、9.11があり、2013年にはアルジェリアで日本企業の社員が犠牲になった。このように過去の経緯を見ても、イスラム教の国との対峙の仕方は、日本企業のグローバル化の上で重要ではないか。イスラム教徒が全員悪ということではないが、イスラム諸国とうまく付き合っていくいい方法はないか。有志連合に入ることで、イスラム過激派と対峙していくことが日本の進むべき道だと考えるか。

長谷川: ご指摘の中で非常に大事な点は、イスラム教徒全員が過激派を支援しているということはないということである。あくまでも一部の人がやっていることであって、もちろん日本にいるイスラム教徒、現地の人の多くが、むしろそういったことは、イスラム教の根本的教えには反すると考えていると思う。平和・友好を望む方が大多数であろう。ただ、冒頭申し上げたように、(国家)ガバナンスの間隙を縫って、過激派が勢力を拡大していくことは極めて由々しきことであり、これをどうするか。中東の問題だから中東でという選択肢もないわけではないが、有志連合に加わっている国などは、常に「自由民主主義」、「法治国家」、「基本的人権の尊重」と主張していながら、それらがまったく無視される状況を看過して何もしないというのも、言っていることとやっていることが違うということになり、ある程度の対応をしないといけないだろう。国連の非難決議は実際の抑止力にはならないので、米国がリーダーシップをとって、有志連合でエアーストライク(空爆)をするというのがこれまでの合意である。そこから先になると、アフガニスタンやイラク戦争と同じようになり、なかなか対応は難しい。私も含めて皆苛立っているが、こうすれば解決するというものもない。日本としては、根本原理を同じくする国から賛同してくれと言われれば、安倍首相の言う積極的平和主義の範疇で、難民の方々への支援を中心に対応していくことは、当然の義務とも思われる。その結果として、われわれ(日本国民)がターゲットになることがあるとすれば、国家は国民を保護し、個人は危険を避ける最大限の努力をすることしか、武力での対抗手段を持たない国としては、方法はない。

Q: 先週、(経済同友会で)柏崎刈羽原子力発電所を視察したが、東京電力のプラントということもあり、国民や地元の理解が得にくいと思うが、再開の可能性についてはどのように考えるか。

長谷川: 再開するかどうかを決めるのは地域の住民であり、国と東電が協力してどこまで信頼を得られるかということである。元々、2007年の(新潟県)中越沖地震の時に、火災事故が発生するなどあって、その後の耐震性、安全性の強化について、非常に地道な努力を進められてきた。その後、3.11が発生し、再稼動の見通しがつかなくなった。それを機会に、新しい安全基準が作られることになった。中越沖地震の時からの対策をさらに(強化し)、津波も10mの想定ではなく、15mまで対応可能にしたり、高台に貯水池を作り、全電源喪失になった場合でも、重力でそのまま(冷却に)使えることに加え、必要とあらば40数台あるポンプ車を使い、冷温停止状態にもっていけるようにしている。さらには、いわゆるブラインド・ドリルという、何が原因かを事前に知らせず、いきなり発生したことを前提に(した訓練で)、すぐに免震構造の施設に集まり、各担当部門が連携を取りながら対応する。本社はそれをモニタリングする。何かあれば(本社が)言うが、基本的には現場で対応をする。所長不在の場合でも代役となるバックアップ要員を2人決めておくなど、さまざまな形でフェールセーフを織り込んだ対策をしている。加えて、現地で聞いてわかったことだが、県と協力して作った第一次避難計画があり、それを元に昨年11月に小規模ではあるが、地域の周辺住民の避難訓練も実施された。そのような地道な努力を積み重ねている。ただし、福島第一原子力発電所で事故を起こした東電が、真っ先に再稼働するというのは自治体も住民も納得いかないということもあるだろう。川内原発、伊方原発などが無事に再稼働を果たせば、いずれ柏崎刈羽にもそのような可能性が開けてくるのではないかと思う。新規制基準の適合性審査についても、6号機、7号機で現在進行中であると聞いたので、そのあたりの進捗状況を見ながら、となる。何といっても地域住民の方の信頼、安全・安心、それを構築することが第一歩となる。

前原: 視察当日は地元メディアの方も大勢お見えになった。東電の方に、これまでメディアの方が訓練を見たかと質問したところ、初めてではないかとのことであった。できれば(記者の)皆さんのご自分の目で見ていただけるといいのかなと(思う)。私の目から(見たところ)、本当にこれでもかという準備をされていたことがよくわかった。視察には是非来てほしいとのことであった。

長谷川: 消防車42台に加え、電源車も配備するなど、大変な投資をして万全の体制を整えていた。柏崎刈羽だけで7基の原発があり、800数十万キロワットの発電出力がある。一カ所にある発電所としては、世界一の発電量である。福島と柏崎刈羽を合わせて、ピーク時で(東京電力の)全発電量の30パーセント前後を原子力で発電されていた。この数字はご存じのように、関西電力や北海道電力に比べると少し低い。このような対策を採りながら、猛烈なコストダウンの努力をしている。二度目の値上げ申請をしなくても、2,000億円を超える利益が出ると報道されている。それは多分、当たらずといえども遠からずということだと思う。発電所で、私から最後にご挨拶をした際に、東電の電力料金は他の電力会社と比べて若干高い。歴史的な経緯もあるし、これだけの(コストダウン)努力をしていることにも敬意を表するが、もし原発の再稼動が可能になれば、是非価格を下げていただきたい。安倍政権発足前から問題となっていた六重苦の一つが、エネルギーコストである。この問題は、悪くなりこそすれ、改善していない。アベノミクスの成功のための非常に重要なファクターの一つなので、是非先頭を切って(価格引き下げを)やっていただきたい、期待していると申し上げた。

前原: 今は石油価格が下がって助かっているが、過去の石油価格の統計を見ると、ボトムに近づいた瞬間に跳ね上がるという傾向がある。今のように低い価格がずっと続くというようには私は考えていない。そういう意味からも、原発(の再稼働)もよく考えていたほうがよい。

長谷川: 最近のシェール革命は新しい要素であるが、有限の資源であり、下がったものがずっとその状況にはないだろうと思われる。

Q: TPPの実務者協議が行われ、甘利明TPP担当相は、日米の実務レベルの協議を早く決着をつけ、春の早いうちに12カ国の閣僚会合が持てることが望ましいという見立てを述べたが、これについて改めて代表幹事の受け止めを伺いたい。

長谷川: 昨年末ぐらいから、米国からそういう(TPP合意に向けた)言葉が聞こえるようになってきた。大統領の一般教書演説でもそのような話があって、具体的に交渉頻度(の増加)とスピードアップが図られ、かなり前に進むようになった。いわゆるTPA(大統領貿易促進権限)の承認も、共和・民主両党の話題にもなってきているようで、機運が高まっていると思う。この機会を逃すと、できない(と危惧する)。一方米国は欧州ともかなり積極的に(FTA交渉を)進めている状況である。オバマ大統領としては、キューバ(との国交正常化)と合わせてレガシーとして残したいという本人の強い意向もあると思う。かなりギャップは修正されていると報道されているし、そのように理解している。(TPP交渉が)成功すること、合意に達することを心から強く願っている。

それが(わが国の)農業改革の後押しになり、「まったなし」につながるのだと思う。米国産の主食用米の輸入を年間5万トン程度増やす案というのは、大した影響はないにしても、さまざまな関税が期間の長短はあれ大幅に下がっていくとなると、農業の競争力強化もまったなしで行わざるを得ない。本日の共同通信社の配信では、自民党と農林水産省が全国農業協同組合中央会(JA全中)を農協法に基づく組織から、一般社団法人に転換させる方向で最終調整に入ったとされる。これは安倍首相もたびたび公言されてきたことであり、是非、それを実現していただきたい。監査については、新たな監査法人を創設とあったので、各地域の農協しか使えない監査法人を作るのかなと思ったが、監査制度については現行制度を廃止し、地域農協には一般企業と同様に公認会計士監査を義務付ける考えで、移行には一定期間を設けるとあった。そこの部分は譲らずに守っていただきたい。先日の正副代表幹事会で、規制改革会議でその(農業)分野を担当されていた金丸恭文副代表幹事から話があったが、専業農家と兼業農家は合わせて460万人程度で、他方、農協組合員の総数は準組合員を入れると900万人程度いる。実態としては、発足当時(の姿)からかなりかけ離れ、金融業で稼ぐ組織であるという。であれば、なおさらのこと金融庁や公認会計士の監査を受けないということがあっていいはずがない。それも農協全体では何兆円という額である。そういったことも踏まえると、これは避けて通れない改革であり、是非、やっていただきたい。安倍首相が今国会を「改革断行国会」と名付け、(改革の必要な)岩盤規制の一つが農業である。もう一つが雇用であり、シンボリックには高度プロフェッショナル労働制である。他に医療・介護もある。これらについては、必ずやっていただかないとそのこと自体が政権の信頼性にも影響を及ぼしかねない。逆に言えば、それらをやってTPPも合意に達すれば、政権への支持も浮揚する可能性がある。是非やっていただくことが日本の将来にとって非常に大事なことである。

前原: IPPO IPPO NIPPONプロジェクト第7期活動終了に関する資料を配布させていただいた。(活動が)4年目に入り、参加会社の数が減少するのではと思っていたが、むしろ参加企業数はさらに増え、金額も2億円を超えた。お手元の資料の通り、実行したことをご報告する。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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