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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年11月18日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)7~9月期の国内総生産(GDP)速報値に基づく景気認識、(2)衆議院解散のタイミング、(3)消費税率引き上げ先送り、(4)現時点のアベノミクスの評価、(5)改正消費税法の景気条項削除、(6)高倉健氏死去、(7)医療保険制度改革などについて発言があった。

Q: 昨日内閣府が発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値の結果は、2四半期連続のマイナス成長となった。在庫の減少という多少テクニカルな要因もあるが、個人消費の今後も含めて、景気の好循環サイクルが想像以上にうまくいっていないとの認識は現状であるか。

長谷川: 昨日公表した代表幹事コメント「7~9月期GDP速報値の結果について」で述べていることに尽きる。確報が出なければわからない部分はあるが、事前の予想を大きく下回り、足下の景気が厳しい状況にあることを示唆するような内容であったと思う。GDPのマイナスに最も大きく影響した要因は在庫調整で、何が原因だったかは別にして、結果として少し過剰だった在庫を減らしたということであり、長い目で見ると避けては通れないことであったものだと考えられる。むしろ、このことだけを取れば10~12月以降(のGDP)についてはポジティブに働くはずである。そういったことを考慮すると、消費については、特に住宅を中心に、あまり回復が目覚ましくなく、国内需要全体もマイナスの状況である。内需全体が良くないだけに、やや期待はずれではあった。全体の趨勢からすれば、実質賃金が目減りをしていることが消費者心理に影響していると思われ、日本銀行の(物価安定)目標が2%で、現状は1~1.5%のインフレ率だとすれば、消費税率3%の引き上げをすべて入れるとすると4~4.5%の物価上昇率となるが、それに賃金の上昇が追いついていない。その状況が、来年の賃上げで解消されるべきであると思う。それに向けて、まだ緩やかではあるが、トレンドとしてはその方向(回復基調)に向かっていると解釈している。したがって、消費税(率の引き上げ)についても粛々と実行すべきと考える。

Q: 本日、安倍首相が衆議院解散を表明するといわれている。解散自体は首相の専権事項であるが、このタイミングで解散総選挙を行うことについて所感を伺いたい。また、景気にとって正念場の状況で、アベノミクスの発展継続型を引き続き希望するか。

長谷川: 1997年の橋本龍太郎政権における消費税率引き上げ後の(駆け込み需要の)反動の経験を踏まえて、今回は4月の引き上げを前に、大型補正予算を組んで景気刺激策の措置を取っていたが、駆け込み需要およびその反動が想定よりも大きく、長く続いただけに、(消費税増税法の)景気条項をどう考えるかという余地はあるにしても、本日午前に最終回を迎えた政府の有識者会合での意見聴取の結果を見ると、6割が増税を実施すべきであると(の意見だった)。前回より1割ほど(増税派が)減ったようだが、われわれとしては、消費税(率10%への引き上げ)を行うべきだと考える。一方で、解散については景気が足踏み状態であるだけに、政治の空白をつくらないことが望ましいと思う。しかしながら、解散権は首相にのみ与えられた大権である。それをいつ、どのような形で行使するかはすべて首相の一存で決められることであるから、そのことの是非について申し上げるつもりはない。

Q: 消費税率の引き上げは先送りがほぼ確定となっている。未確定とはいえ、首相が再増税の延期を判断することについて、現状では賛同できないとの認識でよいか。

長谷川: われわれとしては、諸般の状況、景気の動向を考えても(再増税を)やるべきだと考えている。しかしながら、最終的には政治が判断することである。万一、解散せざるを得ないと首相が判断された場合には、三党合意の根幹にも関わる財政健全化目標に対し、PB(プライマリーバランス、基礎的財政収支)の赤字を2015年までに2010年度比で半減し、必ずしも閣内で意見が一致しているわけではないが、2020年には黒字化を達成すると同時に、基幹三税の改革を含めた税と社会保障の一体化改革を行うことを明示していただきたい。さらには、国会議員の定数削減も三党合意の一環であるから、これらについて明快な首相のコミットメントを出していただくことが必要ではないかと考えている。

Q: (総選挙では)アベノミクスの評価が争点になるかと思うが、現時点の評価はどうか?

長谷川: 率直な感想を申し上げると、第一、第二の矢はそれなりに効果があったということは異論のないところだが、第三の矢については、骨格の部分が民間企業を巻き込んだ成長路線への回帰ということであり、その表裏一体にあるものが構造改革である。構造改革については、まず一般論として申し上げると、仮にそれをやると決めても、例えば日本再興戦略の改訂版は、6月に最終的に閣議決定されたが、そういうものを出して、それから法制化をして、実行して、結果につながって効果が出てくるという時間軸を考えると、即効性のある類のものではないと思う。これが一般論。

個別論では、その中でも岩盤(規制)と言われた農業改革について、いまだ全国農業組合中央会(全中)と規制改革会議、あるいは政権との間での意見の食い違いや、やりとりがあるが、全中を社団法人にするという方向性は変わっていない。全中が自己改革案の中で、監査権を残すという妥協案を示しているが、監査権自体を残すことも妥当ではないのではないか(との意見が出されるなど)、相当厳しい、当初通りのことをやり抜こうとしている。

また医療改革についても、患者さんが選んだ形でということではあるが、保険外(療養)との混合診療的なものも導入しようとしているし、医療の全体の効率化のため、予防から治療、介護、そういったところまでをワンストップでできるコンソーシアムのようなものを非営利ホールディングカンパニー型法人の下に作ろうという、そういったことを法制化する議論もある。そういう部分でも前進はあったと考える。

雇用については三つの岩盤(規制分野)の中では一番進展は少なく、小さな第一歩ではあるが、私は(産業競争力会議で)この(雇用・人材)分野の主査として、ホワイトカラーエグゼンプションという表現を一回も言ったことがないが、時間ではなく成果に応じて報酬を払うという働き方について、労働政策審議会で審議をしていただいている。あるいはテレワークを含めたもっとフレキシブルな働き方とか、少なくとも事後型の紛争解決システムについては、各国の解決金額はどの程度かという事例を調査した上で、日本や韓国が諸外国と比べると例外的になっているということが明らかになり、それを踏まえて今後、仲裁や労働審判、あるいは裁判で決まった場合など、それぞれがどういった金額で解決されているかを明らかにしていくことによって、ある程度の目安を出していこうというところまでは議論されていると認識している。成熟産業から成長産業への失業なき(労働)移動については、いわゆるハローワーク(情報)のオープン化で、求人情報だけでなくて、求職状況についてもある程度、個人情報保護の範囲の中でやっていこう、あるいは転職のための教育、トレーニングについても、民間と公のお互いのいい部分を上手くかみ合わせて、切れ目のない支援をしていこう、という方向で進められていると認識しているが、いずれも時間がかかる。加えて、特に国家戦略特区についても実行のスピードには若干隔たりがあって、どうしても東京のような大きな都市は、担当大臣や自治体の長たちが集まって運営を決めていく、区域会議がようやく(本格的に)開かれようとしている状況である。国家戦略特区は従来の特区とは違うので、これを活用することによって、従来できなかった例えば外国人を誘致するため、高度外国人材が来た時に、そういう人たちが教育のみならず医療についても、外国人のお医者さんの英語での診断、治療を受けられる環境や、外国人だけではなく、ある程度高収入の方については、家事のスペシャリストを海外から受け入れることについて、一定の方向性は出されている。そういったことが具体的に動き出して、経済成長にポジティブに影響を与えるには少し時間がかかる。少し長くなったが、前進はしているが、結果が出るにはもう少し時間がかかるというのが私の結論である。

Q: 三党合意に対する総理の明確なコミットメントを出してもらいたいとの発言があったが、消費税(率の引き上げを)先送りをするとしたら、消費税増税法の景気条項を削除すべきとの意見もあるようだが、それについてはどう思われるか。

長谷川: 個人的な見解を申し上げれば、あらぬ懸念を払拭するためにも、削除される方が好ましい。

Q: 高倉健さんが亡くなられたことについて、どのように感じられるか。

長谷川: 私の世代の人間にとっては本当にアイドル、スターであり、若かりし頃の任侠路線から見事に変身をされ、日本を代表する世界的なスターになられたことに敬意を表するとともに、そのような方がお亡くなりになったことを大変残念に思う。80歳を過ぎても現役で、映画に出演をして、人々を本当に勇気づけ、(我々も)楽しませていただいた数少ない俳優でいらっしゃるので、心からお悔やみを申し上げたい。

Q: GDP速報値について、10~12月期はポジティブに動くだろうとのことだが、今回、2四半期続けてマイナスとなった原因は、消費税率引き上げによる影響の他、景気が後退局面に入っているため、との見方もある。アベノミクスの是非、評価にもかかわると思われるが、このような数字となった原因をどのようにとらえているか。

長谷川: 経済の専門家ではないので、確たる解を持っているわけではないが、一つは、駆け込み(需要)が想定よりも大きく、その反動も大きかった(ことにある)。それに加えて、夏場の長雨が週末に集中して降ったことによる景気への抑制効果(があった)。それらが相まって、このような結果になっている。その背景として、実質賃金の低下がまだ埋め切れていない。先ほど述べた通り、(賃金と物価の)ギャップは(最大で)4.5%ほどあるため、これを一回の賃上げ、あるいは賞与アップによって1年で埋めることは難しい。今年4月に賃金が2.2%、夏の賞与が7%強上がって、冬の賞与は5%強上昇する見込みであることから、年間でみれば(民間の主要企業の賃金は)2%半ばには上がるはずである。それに加えて来年の賃上げと賞与がある。企業業績は幸いにも順調に伸びていることから、全体の税収も増え、労働分配についても可能な配分ができるだろうから、そこで(ギャップは)埋まっていくのではないか。それらを考えると、今が足踏み状態だからと言って、三党合意で決めた問題について先送りをする圧倒的な理由にはならないのではないか、と考えている。

前原: 住宅(新設住宅着工戸数)を見ると、昨年の夏から秋にかけて投資が増えた。それから比べると確かに落ちているが、一昨年の水準から比べるとほぼ同じ値をキープしているため、(落ち込みは)一過性のものだと考えている。昨年があまりにも高くなったため、(落ち込みが大きいように見えるが)一昨年と比べてもまずまずのレベルである。これをどのように評価するか。評価の仕方の問題である。

長谷川: アベノミクスが失敗かどうかと言うよりは、日本の現状を考えると、誰がやっても極めて難しい状況であるから、失敗と決めつけるのは早計ではないかと考える。

Q: 消費増税の先送りが規定路線となっているが、そうであるなら政府はどのような対応すべきか。また、経済界として何を望むか。

長谷川: これはかつてない三党合意という形で決まったものである。その根幹にかかわる点は三つである。財政の再建、税・社会保障の一体改革、国会議員の定数削減で、(一票の格差は)違憲状態ないし違憲との判決も出ている。消費税(率引き上げ)のタイミングが後ろにずれるとしても、根幹は絶対に揺るがしていただきたくない。万一、消費税の増税を遅らせることであれば、これらの問題についてどのように対応するのかは明確に述べていただく必要があると思う。特に、財政再建については、2010年のG20において国際公約されたとも言われており、ないがしろにされることは許される状況ではない。そこは明確にしていただきたい。

Q: 経済界として景気の状況で意見が分かれる状況の中で何をするか。

長谷川: 経済界も、業績のよくなかった企業でも、ここはがんばって賃金を上げ、賞与も出して、そういうギャップを埋める努力をして、少しでも自分たちの力の及ぶ範囲で好循環の創出を考える。賃金・賞与の他にも設備投資を増やし、また、雇用の質と量について、企業の貢献として、非正規雇用から正規雇用へ切り替えたり、雇用数を増やしたりする。そうしたことで全体として景気、内需を刺激して、好循環の形成に貢献するよい時期であると思う。

Q: 厚生労働省が13日に予定していた医療保険制度改革案の公表が見送りとなった。高齢者医療に関する所見を伺いたい。

長谷川:高齢者医療費の問題については、先に経済三団体で意見書を発表したところである。消費税増税が先送りされ、解散総選挙になる場合、将来の人口構成の変化や現状の財政状態を踏まえて、長期的に持続可能な社会保障制度の給付と負担のバランスをどのように構築していくかが、依然として残された課題である。それに対し、先ほどから申しているように、税と社会保障の一体改革は三党合意の根幹であることから、その一つとして、医療保険制度の改革、特に全面総報酬割の移行については、安易な問題の先送りであり、本質的な世代間の負担(格差の)問題の解決にはつながらない。抜本的な改革案を示していただくことが重要であると考える。まして、世代間格差を増加させるようなことがあっては、安倍政権の政策の柱の一つである女性の労働参加、あるいは企業内、組織内でのプロモーション(昇進)促進のバックアップである子育て世代の支援を通じた少子化対策の強化が滞ることにもなりかねない。(現役世代の)負担が増えるということは、働く女性にとってネガティブに影響する可能性もある。抜本改革をやることで対応いただきたい。

前原:経済三団体で(先般)意見表明した際にも申し上げたが、経済団体健康保険組合の理事長を拝命しており、高齢者医療の分担金のウエイトはかなり高い。この健保の支出の40数%が高齢者医療の拠出金となっている。その(拠出金)計算方法は厚生労働省の省令で決められており、その点にも疑問がある。上限なども決まっていないので、(保険料収入に占める拠出金の比率が)多いところは80%程度にもなっている。そういうことで意見書出した次第であり、慎重に検討していただきたい。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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