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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年03月04日(火)13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)消費税率引き上げに伴う価格転嫁、(2)ロシアによるウクライナへの軍事介入、(3)武田薬品工業の薬品宣伝問題、(4)春闘、(5)東日本大震災から3年、(6)法人実効税率引き下げ、(7)環太平洋パートナーシップ(TPP)協定、(8)日本放送協会(NHK)の辞表提出問題、(9)仮想通貨「ビットコイン」の大手取引所破綻、(10)企業における女性の活躍推進、などについて発言があった。

Q: 3月に入り、4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要が見られる。一方で、中小の小売業者などは価格転嫁がスムーズにいかず悩んでいる側面がある。政府は、“転嫁Gメン(転嫁対策調査官)”を配備するなどチェック体制を強化しているようだが、価格転嫁がスムーズにいくような打開策は考えられるか。

長谷川: 購買側が理不尽な圧力をかけることなく、適正に次の購入者に(消費税引き上げ分の負担が)反映され、バトンタッチされていくことが極めて大事である。政府もさまざまな監視体制等を構築し、(価格)転嫁ができないことのないよう対応している。買う側と売る側の信頼関係を維持するためにも、価格にきちんと反映されるよう、個々の経営者が考えることも重要である。

Q: 企業側には(転嫁を阻害する)企業名の公表に躊躇する向きがあるが、良い方法はないか。

長谷川: 経営者の良心、考え方の問題であり、強制されたから(転嫁する)という問題ではない。消費税率引き上げは、誰もが克服していかなければならない日本経済全体の問題であり、違う対応をすることは極力避けていただくことが極めて重要である。

Q: ロシアがウクライナに軍事介入したことで、世界への影響が懸念されているが、現状と先行きをどのように見ているか。

長谷川: 極めて憂慮する事態である。(ウクライナは)旧ソビエト社会主義共和国連邦内の共和国の一つで、「鉄のカーテン」が崩れた後に独立したという経緯がある。また、ソ連時代に意図的にロシア人の周辺国への移住が進められたこともあり、相対的にウクライナの東南地域にはロシア人が多く、ロシアとのつながりも強いというような、難しい問題も内在している。これまで独立国としてやってきた経緯は、当然尊重されるべきである。一方で、ロシアは黒海艦隊の基地をクリミア半島に持っており、重要な軍事拠点であるという問題もあるが、それらを乗り越えて平和裏に解決されるよう、努力していただくことを願っている。それでなくても不安定な世界の経済情勢に影響を与えるのは必至であるが、それが決して長引くことのないよう、外交努力による解決を強く望む。

Q: 日本経済への影響をどのように見ているか。

長谷川: (ウクライナとの)貿易取引額も日本からの進出企業も少なく、直接直ちに大きな影響があるとは思わないが、世界経済全体に与える不安感が株式市場や為替市場に与える影響を懸念している。

Q: 米国が経済制裁を考えているようだ。日本も同調せざるを得ない状況になれば、ロシア向けの投資等に影響があるのではないかと思うが、いかがか。

長谷川: 今は混乱の初期段階にあるため、ロシア側も米国側も相手を説得するために強い姿勢を示しているものと理解している。最終的には、経済制裁やソチでの開催を予定している主要8カ国(G8)首脳会議を欠席するなどということは避け、外交努力での解決を望みたい。現段階で、もしそう(経済制裁に)なったらどうするかなどを述べること自体が、それを認めることにもなりかねないので、経済制裁等を必要としない形での解決を望むとの発言に留めたい。

Q: 昨日、武田薬品工業の高血圧症治療薬に関する記者会見において、広告で誤解を招く部分があり、第三者委員会を設置して調査するとの説明があった。この一連の問題で、経済同友会代表幹事の職務を一旦でも休むなどの考えはあるか。

長谷川: 今の段階では、一旦でも経済同友会代表幹事を外れるという考えはない。

Q: 春闘について、各社経営側がベースアップ(ベア)を容認する流れにあるが、これに対する評価を伺いたい。また、長期にわたって賃金が上がらない状況が続いた中で、ここにきて賃上げが実施されることについての所感を伺いたい。

長谷川: (春闘の)集中回答日である3月12日の状況を見ないと、実際の方向性は分からない。デフレ状況下ではベースアップの論理付けが難しかったが、日本銀行が昨年1月に、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とすることを打ち出し、その効果として消費者物価指数(除く生鮮)は1%を超える上昇を見せている。また、4月には8%への消費税率引き上げも控えており、昇給がなければ購買力が相対的に低下する状況にある。それらをベアでカバーしていくことは考えられていい。同時に、日本経済を本当に成長軌道に乗せられるかについては、(「日本再興戦略」の)柱の一つである構造改革がどう進むかにもよるが、民間企業としても、賃金の増額による購買力(消費)の増や、最新統計で上向いてきた設備投資などで内需を刺激することが、経済成長の循環にもっていくために重要である。

Q: 中小企業への普及や消費税率引き上げの企業業績への影響についてはどう考えるか。

長谷川: 日本経済にとっては、適度なインフレと適度な成長が続くことが最も望ましい。日本の経済成長との組み合わせで考えれば、定期昇給のみならず、もちろんパーセントや金額は状況や個別企業によって異なるにせよ、ベアもある程度復活することが望ましい。

Q: 来年以降もベアが継続することが望ましいということか。

長谷川: そういう形が望ましい。

Q: 3月11日で東日本大震災から丸三年となる。福島県では未だ13万人以上が避難生活を送っている一方、日本の西側の地域では風化が進んでいるような印象もある。経済同友会ではさまざまな復興支援活動を進めているが、改めて支援の在り方等について、所感を伺いたい。

長谷川: 一番難しい、しかし忘れてはならないのは、東日本大震災を距離的な遠近で風化させてはいけない(ということである)。未だ13万人を超える方々が避難している状況であり、今後もできる限りの支援を継続していかなければならない。経済同友会としても、来週、3月11日に、(全国43の経済同友会と連携して)追悼シンポジウムを開催する予定である。また、復興支援「IPPO IPPO NIPPON」プロジェクトも、当初から5年間は継続しようということで、第5期を終え6期目に入っている。少し(寄附の)金額は少なくなってくるかもしれないが、専門高校を中心とした支援先のニーズも少しずつ落ち着きつつあり、今後も活動を続けたい。さらに、東北大学などが主催している東北未来創造イニシアティブにも特別協力をし、現地のリーダー人材育成を支援するため、会員所属企業から人材を派遣している。今後も、地道にできる限り長く、さまざまな活動を続け、またそれによって被災された方々にできるだけ寄り添っていきたい。

前原: 加えて、震災復興委員会でも宮城県女川町での(人材育成や人的ネットワーク構築など人づくりに関する)支援活動を開始した。また、秋には福島県郡山市で、全国経済同友会の代表幹事円卓会議を開催する予定である。

Q: 1月20日の経済財政諮問会議で法人実効税率引き下げの議論があり、日本経済団体連合会の次期会長も25%が望ましいと発言しているが、法人実効税率引き下げについて所感を伺いたい。

長谷川: 法人実効税率の引き下げは重要であるが、何のためかがより重要である。もちろん個別企業の競争力強化、あるいはイコール・フッティングやレベル・プレイング・フィールド(競争条件を同じにする)と言われる状況に近付けるという観点からも必要である。同時に、人口が減少する中で、日本経済を、長い間のデフレから脱却させ、安定的に成長させるためには、かつてやったことのないいろいろな施策を打っていかなければならない。日本は、GDPに占める対内直接投資残高(ストック)の比率が、先進国だけでなく新興国と比べても極めて低く、先進諸国が軒並み30%程度であるのに対し、日本は4%を切っている。安倍政権ではこれを2020年までに倍増するとの方針を打ち出しているが、倍増してもまだ一桁に留まる。この実現のための大きなファクターとして、法人実効税率の引き下げや規制緩和があり、日本が投資家にとって魅力ある市場にする(ことが重要である)。(対内直接投資を増やすことにより、)フェアな投資のリターンを得ることができる。同時に、新たに日本に進出したり、日本で起業をしようとする際、規制をクリアする時間やコストを競争力のあるものにする。それらをまとめると「日本再興戦略」の『世界で一番企業が活動しやすい国』にすることにつながる。そのパッケージにおける重要ファクターの一つが、法人実効税率の引き下げであると考えている。

<環太平洋パートナーシップ(TPP)協定について>

長谷川: TPP協定交渉について述べたい。2月にシンガポールで開催された閣僚会合では、若干の前進もあったと発表されているが、残念ながら日本が期待していた大きな前進は実現できなかった。この(TPP協定の)実現は、日本経済にとって本当に重要な政策課題の一つであると思うし、日本経済の成長に大きく貢献すると考える。実現しなかった場合と比較すると重要性が分かりやすい。日本の場合、周辺諸国と比べて自由貿易協定や経済連携協定における遅れが著しいが、TPP協定の性格上、合意にこぎつくことができれば、かなりの課題が一挙に解決できる。TPP協定の実現により、いよいよ国内のさまざまな改革、特に農業の生産性向上等に取り組まざるを得ない状況もできる。そのような環境ができれば、日本の農業は必ず競争力のある形になる。組織でも個人でも、追い詰められなければなかなか変わらない。変わらないと生き残れないと思わなければ変わらない。

 4月下旬に予定されているバラク・オバマ米大統領の訪日で、それ(日米の合意)を祝うことが最も好ましいので、政府には、特に大きな懸案となっている米国との二国間市場アクセス問題について、早く結論を出していただきたい。センシティビティ項目はあるにしても、障壁となる高い関税率の撤廃が基本的なコンセプトである。経済同友会では、従来80%台にとどまっていた関税の自由化率について、90%を大幅に超えて98%を目指していただきたいと述べた(意見書『TPP首脳会合(於:バリ)に向けた意見』(2013年9月26日))。米韓間の経済連携協定で98%を超えているので、その程度を目指すのが当然で、達しなくても近いレベルまでいかなければなかなか追い付けないのではないかと考える。政権与党はもちろん承知の上だと思うが、できるだけ早く進めないと、少し漂流しかけている懸念がある。改めて閣僚会合をやるのか、二国間でやるのかは別にして、あるいはEUやオーストラリアと経済連携協定(EPA)を進めることも大事だが、肝心の日米間交渉、そしてTPP協定交渉全体を、ここで失速することなく進めていただきたい。

Q: 自由化率98%を達成しようとすれば、日本が農産物で譲歩しなければ難しいと思われる。日本がその辺りを柔軟に考えるべきという意図か。

長谷川: (交渉は)腹の探り合いで、どこまでがぎりぎり(譲歩できる線)なのかは、交渉当事者、あるいは政権は、既に考えていると思う。現時点では98%を目指すべきと要望しているが、要は米国と合意に達していただきたいということである。両者の合意を形成できる点がどこかは、交渉の当事者が読まれることだが、これまでの経緯からいけば、95%以下では到底合意には達せず、TPP協定を漂流させることになってしまうだろう。それを見極めた上で、こちらからカードを切っていくことは自分で自分に交渉することになり、交渉としては最もやってはいけないことだが、さはさりながら、表向きはどうであれ裏で必要なことをやるのかも含め、できるだけ早く、特に米国との間で合意を形成していただきたい。重要農産物5項目586品目の内、200品目ほどは過去の輸入実績がない。既に計算されていると思うが、それらを考えても(譲歩できる)ぎりぎりの線が出てくる。最終的にどのような形で(交渉の場に)出すかということになるが、ぜひ進めていただきたい。

Q: 日本放送協会(NHK)の籾井勝人会長が、理事全員から日付の記載されていない辞表を取り付けていたことが話題になっている。籾井会長は、「一般社会ではよくあること」と述べているが、武田薬品工業を含め、民間企業の取締役会でそのような人事運営はあり得るか。

長谷川: 武田薬品工業では一切やったことがない。これはコーポレート・ガバナンスの問題で、取締役の役割は、それぞれの立場で、株主に代わって経営を監視することである。その(立場にある取締役の)発言の自由をあらかじめ制限することは、私は適切でないと思う。すべての企業の実態を把握していないので分からないが、三村明夫 日本・東京商工会議所会頭も一般的ではないと述べられているようである。三村会頭の方が多くのケースをご存知であり、(一般的でないというのは)正しいのではないか。

Q: インターネット上で取引される仮想通貨「ビットコイン」の大手取引業者が破綻した。これに対する受け止めと、規制をかけるのであればどのようなやり方が望ましいと考えるか。

長谷川: 専門家ではないので、どのような規制をかけたら良いかは分からない。基本的には、通貨の信用を誰が保証するかが問題である。それが国家でなく、実体のないインターネット上の通貨で、市況商品のように値段が上がったり下がったりする類のものに、自らの資産を預けることへの本質的なリスクは、今の段階では個人が負わざるを得ないのではないか。その上で、今後どうするかについては、知恵のある人に考えていただきたい。素人感覚では、ギャンブルと同じで負けたから何とかしてくれと言われてもできないので、今の段階で私からの解はない。

前原: 信用を扱うので、誰も保証できない仕組みが本当に良いのか。各国では、マネーロンダリングに使われているということで規制しようとしている。金融の世界ではある程度の透明性が必要であり、最終的に誰が責任を取るかをはっきりしなければならないと思う。

Q: 経済産業省と東京証券取引所は3日、女性の活躍推進に積極的な一部上場企業26社を2013年度「なでしこ銘柄」として選定したと公表した。改めて、日本企業の女性の活躍推進策について所感を伺いたい。

長谷川: 安倍晋三首相がいろいろな場面で述べられていることが誠に正しく、(女性は)日本経済の成長に貢献し得る、今まで十分に活用されていない資産であると考える。モノのように扱うという意図ではない。多少仕事に向き/不向きはあるかもしれないが、男性と女性で能力に差はない。今の日本のように労働力が減少していく社会にあっては、できるだけ多くの女性が安心して働けるような環境を作り、労働に参加してもらう(ことが望ましい)。また、企業もそれを推進する。安倍政権になって、「2030」という「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上」とする達成目標が掲げられているが、自社(武田薬品工業)ではまだ程遠い状況にある。現在、女性管理職比率は3%程度で、2015年度中に5%にする目標を掲げているが、それでも(「2030」は)相当頑張らないと(達成)できない。特別プログラムを作って教育を行い、フォローアップのメンタリングを実施すれば、必ず成果に結び付くことは社内でも実証されているし、どの会社でも本気でやればできないことはないと思うが、少し時間がかかる。それをどのように加速するか。場合によっては外からも招聘する。そのように目標の達成に取り込むことで、(組織が)活性化され、良いモデルをつくり相互の刺激となっていく。ぜひ真剣に取り組みたいという機運も出てきている。経済同友会でも、毎年フォローアップとしてアンケート調査(「『意思決定ボード』の真のダイバーシティ実現に向けて~女性管理職・役員の登用・活用状況のアンケート調査結果~」(2012年10月16日2013年11月22日発表)を行っており、新たな取り組みを始めたとか、ぜひ考えたいという企業の数が毎年大幅に増えている。この成果は必ず数年のうちに出てくると思う。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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