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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2013年03月19日(水)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加の正式表明、(2)白川方明日本銀行総裁の退任、(3)春闘、(4)産業競争力会議での「解雇ルールの明確化」提案、(5)三村明夫氏の日本商工会議所次期会頭への内定、について発言があった。

その後、長谷川閑史代表幹事より、(1)消費者集合訴訟、(2)意見書「経済連携協定を生かし、成長を実現するために」、について発言があった。

Q: 3月15日、安倍晋三内閣総理大臣がTPP協定交渉への参加を正式に表明した。同日代表幹事コメントも発表したが、改めて所感と今後の交渉に関する要望などを伺いたい。

長谷川: 交渉事なのでやってみなくては分からず、(現時点で交渉に関する)要望などはない。(3月15日に発表した)代表幹事コメント「TPP協定交渉参加の正式表明について」でも述べた通りであるが、(自由民主)党からはいくつかの要望書が出されたものの最終判断は首相に一任すると表明があり、(首相が)このタイミングで決断されたことを高く評価したい。(TPP協定が)年内に合意に到達するかは分からないが、交渉(会合)は(既に)回を重ねており、(先行11カ国で合意が)相当進んでいる部分もあるだろう。米国議会の90日ルールを考えれば、日本が交渉に参加できるのは早くても7月くらいになる。その意味でも、(今回が)ギリギリのタイミングだったと思う。事前交渉の中である程度の感触の探り合いはされていると想像できるが、先行11カ国の合意があって初めて日本が正式に参加できる。今の段階では、それ(11カ国の合意)を早く突破することが、日本にとって望ましい。

Q: 本日、日本銀行の白川方明総裁が退任される。この5年間についての評価を伺いたい。

長谷川: 大変な経済の変動が世界的に起こった任期期間だったと思う。リーマン・ショックに始まり、欧州のソブリン・リスク、米国の財政の崖などさまざまなことがあり、大変にご苦労の多い5年間であっただろう。デフレ脱却の具体的な成果を上げられなかったことは、白川総裁ご自身も残念に思っておられることと想像する。一方で、常に正論を述べられ、国際社会における中央銀行総裁の集まりなどでの日本の信頼を維持された点は評価できる。政権交代後、退任直前ではあったが、政府との共同声明を発表し、インフレ・ターゲットを2%に設定し、資産の無期限購入にも踏み切られるなど、最後までベストを尽くされ、評価できる点は多分にある。個人的には、民主党政権下の国家戦略会議でご一緒した。その後の自民党政権では経済財政諮問会議のメンバーを務められたが、常に言い続けておられたのは、金融緩和(などの金融政策)は日銀の専決事項であるが、経済成長がなければ本質的なデフレ脱却はあり得ないということである。労働人口が減少していく中で経済を成長させるためには、生産性向上だけでは極めて難しく、中長期的には労働人口についても何らかの手を打つべきだろうし、規制改革で投資を日本に呼び込み景気を刺激する、かつ生産性も上げるように成熟産業から成長産業へ人や金(投資)が流れるような政策を期待する、ということを折に触れて述べられていた。安倍政権では「第三の矢」として(経済成長戦略に)真剣に取り組んでおり、ようやく実現の兆しが見えつつあるので、白川総裁がおっしゃっていたことが、少し遅れてではあるが結果として結び付きつつあり、白川総裁も納得されているのではないかと拝察する。

Q: 春闘について、集中回答日を過ぎたが、所感を伺いたい。代表幹事が年頭見解で「可能な企業から給与総額の引き上げ」を呼びかけた通りとなった。

長谷川: 経営者は経営者で、企業は企業で、できることをしっかりとやり、政府にしかできないこと、あるいは政府と協力しなければできないことは、意見を述べる、あるいは協力し、そこに官も参画する。互いにやることをしっかりとやって相乗効果を生んでいくことが極めて重要である。いろいろなきっかけはあったにせよ、今回の春闘で賃上げの流れに向かっていることは好ましいことである。物価が上がる前に少しでも賃金が上がることは、購買力が増して消費につながると思われる。インフレ・ターゲットを設けたことで、先に物価が上がって実質購買力が落ちるとの懸念に対しても、今のところはある程度バランスが取れているのではないか。うまく三者(政・官・民)の意思や実行がかみ合ってきていることは好ましい。

Q: これで消費意欲は湧くか。

長谷川: これだけで(湧くか)どうかは一概には言えない。賃上げもあるが、全体の景気に対するマインドがポジティブになってきている。同時に、株価がこれだけ上がっていることは相当大きなインパクトだと思う。個人の方がどれだけ株式市場に戻ってきているかは十分には把握していないが、少なくとも株を保有している個人は、この数カ月でかなり含み益が増しており、消費意欲がポジティブに変わっていくことは十分にあり得る。

Q: 先日、産業競争力会議で解雇ルールについて提案があったが、ルール作りの必要性と今後の具体化について、考えを伺いたい。

長谷川: 提出した民間議員ペーパー「人材力強化・雇用制度改革について」の趣旨は、まったく自由に解雇をできるようにお願いしているわけではない。今の日本の状況を考えれば、成熟産業から成長産業へ人も金もシフトさせることが、成長を実現するためには必須である。第一に、失業のない形で労働移動を行う橋渡しが重要である。ハローワークには、これまで地域限定であったり、民間企業には情報公開がされないなどの制約があった。ハローワークの広域化や民間との情報共有を行うことで、民間のアウトプレースメント(再就職支援)サービスで行われている、実際の企業のニーズと求職者の経歴や能力のマッチングやフォローアップが円滑に進み、企業としても個人の労働者としてもプラスになる。これまで(雇用維持を目的に使っていた)雇用調整助成金を、そちら(円滑な労働移動)にシフトすべきであると述べた。雇用調整助成金は、一時期に比べれば減ったもののまだ1,000億円近くあり、職業紹介などには6億円程度しか使われておらずアンバランスであるため、これを逆転するくらいの発想で考えていただきたい。第二に、職業訓練や新たな知識の教育について、官・民それぞれが得意とする部分でうまく連携を図ることで、成熟産業から成長産業への失業を経ない形での人の転換を進めていただきたい。第三に、解雇ルールについて、民法と労働契約法とで違いがあり、企業側からすると、解雇についての一定の予見性が得られるようにしていただきたい、と述べた。決して、解雇を自由にできるようにしてほしいと求めているつもりはない。規制改革会議でも、労使双方が納得する形での労働解雇規制の再検討を述べており、我々の平仄と一致している。

Q: 景気にはマインドが大事と言われたが、政府や長谷川さんが労働移動と言っても、やはり雇用不安を醸成してしまうのではないか。マインドを冷やさないためにはどうすれば良いか。

長谷川: 現実に、例えば製造業は一時期1,500万人程度雇用を抱えていたが、今は1,000万人を切ってしまった。一方で、医療・介護の分野ではここ10年近くで300万人ほど雇用が増え、実際のシフトは既に起こっている。今回の民間議員ペーパーでの提言は、もう少しシステム的・計画的に、官・民総力を挙げて不安を払拭する形で、成熟産業から成長産業へ労働力をシフトしようということである。医療・介護は成長産業の一例であるが、国内においては主としてサービス業になると思う。どのようなスキル、知識、能力があれば転職がスムーズにいくかについて、必ずしもハローワークだけでは求職者側・企業側のニーズを十分に満たせていない。足りない部分は民間のノウハウで補っていくことで、うまく連携を取り、労働者や労働組合の皆さんの不安については、実際にやって見せ、具体的に事例を積み上げることで解消していくしかないだろう。雇用調整助成金も、本気でシフトをすれば相当の金額が使えるはずで、十分可能だと思っている。

実績として具体的な形で表れていないので不安はあろうが、まずは成功例を見せることが一番大事だと思う。日本の社会そのもの、経済界そのものが直面している問題で、過去の成功体験の延長線上では持続した成長が望めず、何か新しいことに取り組まなければならないが、それには従業員の不安も多いし、経営者も迷う。しかし、経営者が実際に新たなことに取り組み、成功した体験のある人や組織を取り込む、これは国内での補完でもいいし、海外から取り込む形でもいい。オープンな気持ちで取り組むことで、早くキャッチアップをする。早くする方が成功する可能性が高くなるので、そのような気持ちで早く進めないと現状打破は難しい。決して優しいことではなく、私も日々の経営の中で難しさは感じているが、それでも勇気を持って踏み出さないと変革はできないし、変革をしなければ置いていかれてしまう。例えば、女性の管理職登用についても、逆差別との指摘もあるが、実際に(女性管理職の)成功モデルが個々の企業に目に見える形で存在しないと、女性の方も信じられないし不安になる。数値目標を掲げたり、ハイ・ポテンシャルの方を対象とした特別のディベロップメント・プログラムを策定して実行するなど、今までなかった道を開いて突破口にする。「これなら挑戦してみよう」という気持ちにさせることが非常に大事で、これもその一環と考えれば分かりやすいかもしれない。

Q: 産業競争力会議で議論しているが、その場に労働側の代表がいないことについてどう考えるか。

長谷川: (産業競争力会議の)議員を選んだ立場ではないので、選任については述べようがないが、労働組合側ともきちんと話し合いを持つべきとの必要性は十分に感じている。

Q: 成長産業の具体例として挙げた医療・介護などのサービス業は、製造業に比べて賃金水準が低めである。低賃金という実態の中で、成長産業への労働力の移行がうまく進むかは疑問に感じる。

長谷川: それ(サービス業への労働移動)はそう簡単にはいかないと思う。製造業でも言われている通り、個別のカスタマー・ニーズに合わせることももちろん大事だが、そこにフォーカスし過ぎると事業の効率化や大規模化による生産性向上が必ずしも十分に達成されない場合もある。サービス産業も、生産性を飛躍的に上げていくためのさらなる努力をすべきで、そのためには標準化や大規模化を図ることも当然必要であり、実施していかなくてはならない。これにより賃金も魅力あるものになり、好循環が生まれる。低賃金のままその業界に来てほしいと言われてもなかなか難しく、生産性や付加価値を上げることで変えていかなければならない。またそこには、個別の企業努力と同時に規制改革が必要である。例えば、民間も介護施設の経営により自由に参入できるようにし、最低限の保障は特別養護老人ホームや民間のケアハウスなどで行い、一方で民間(の居住系施設)は少しサービスのレベル・内容を上げて少し高いサービス料で提供する(ように分担する)ことで多様な選択肢を与え、付加価値を上げる。そのようなことをもう少し自由に考え実行できるような制度改革をしていかなければならない。さらには、高齢の方向けの施設はその自治体の中で作るのが原則であるが、東京都区部では1床に約1億円かかることも珍しくない。港区では50人収容の施設に70億円かかっている。極端なことを言えば、地方であればこの1/10のコストでできるかもしれない。都市部からなるべく近く、気候も良く、食事も美味しく、物価も安いところが望ましいが、受け入れを希望する自治体に手を挙げてもらい、(高齢者を)送り出す自治体がお金を負担し、受け取った自治体が設備を運営して雇用を創出する。かつその施設には現地の高齢者も受け入れるなど、広く全国規模で物事を考え、地方に仕事を作り、ニーズを満たしながら、お互いを補っていくことをぜひ考えるべきである。先駆例として、杉並区は南伊豆町に所有していた学園跡地を老人ホームに変えることを3年越しで合意し、現在リフォームを行っているようである。そのような具体例がどんどん出てくるよう、国ができるだけ後押しすべきである。従来の枠組みや既成概念を変えないとなかなか実現できないだろう。

Q: 日本商工会議所の次期会頭に三村明夫さんが内定したが、所感を伺いたい。

長谷川: 日本経済団体連合会の評議員会副議長を4年間務めた際、当時副会長だった三村さんとは、夏の東富士夏季フォーラム(現・軽井沢での夏季フォーラム)などでご一緒し、お人柄に接する機会が度々あった。岡村正会頭も表現されていた通り、スポーツマンで陽性で人当たりが良く、(夏季フォーラムなどの)意見表明の場でも誠に理路整然と明快に述べられる。様々な面で良いリーダーシップをお持ちの方だと思うので、日本・東京商工会議所の次期会頭に内定されたことは、非常に喜ばしく、応援している。

Q: 三村さんが会頭に就任されても、変わらず経済3団体のトップの中では一番若いが。

長谷川: サミュエル・ウルマンの詩にある通り、若さとは肉体ではない。

長谷川閑史代表幹事より、消費者集合訴訟に関する所感

消費者集合訴訟(Class Action Lawsuit)の法案が、来週にも閣議決定され、議会に提出されようとしている。昨年制度概要についてのパブリック・コメントを求められたがその結果が公表されておらず、法律案も公表されていないので詳細な内容が分からない段階であるが、米国で10年以上仕事をしてきた経験から言うと、米国型の消費者集合訴訟の法律であれば、あまり好ましくない。米国には集合訴訟を専門とする弁護士事務所があり、何かあればテレビや新聞などメディアで広告宣伝をして人を募集し、訴訟を起こす。米国の場合は(集合した)人数が多くなればなるほど訴訟費用がかさむので、企業と原告が延々と訴訟を続けて膨大な訴訟費用を払うよりは、何とか和解をしようとするのが常道になっている。今回俎上に載っているものがこのような米国型であれば、慎重に考えていただきたい。仄聞するところによれば、検討している法案は欧州はじめ諸外国の例も踏まえ、そういう形にはならないようなメカニズムも考えているようである。現在検討中の制度は、消費者団体が妥当性を見極めた上で訴訟し、勝訴した後に個人の消費者が集まる二段階式の「オプトイン方式」を採っていると聞いている。いずれにせよ、このような問題については十分に産業界と意見を交換し、慎重に進めていただきたい。近々正式な意見として発表する予定で、できれば経済3団体での意見表明も考えたい。

意見書「経済連携協定を生かし、成長を実現するために」について

経済同友会 経済連携委員会(委員長:藤森義明)は、意見書「経済連携協定を生かし、成長を実現するために」を取りまとめた。

TPP協定の中身については交渉してみないと分からない部分はあるが、それ以前の大きな問題として、アジア太平洋経済協力(APEC)の21加盟国・地域は2020年までにアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP:Free Trade Area of Asia-Pacific)を実現する基本合意をしている。FTAAP実現の一つの試みがTPPであり、さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国を中心として、地域の包括的な経済連携協定(EPA)を結ぶ東アジア地域包括的経済連携(RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership)やASEAN+3、ASEAN+6という動きもある。また、日本-カナダ、日本-オーストラリアといった二カ国間のEPAの議論や、日韓についても長い間議論が止まっているが完全に終結しておらず、近々第一回会合が開かれると言われている日中韓EPAもある。(TPPは)さまざまな取り組み(協定の)中核を成す一つであり、ポイントはハイレベルな合意を目指している点である。もちろん(TPP協定は日本を含め)12カ国に及ぶので、関税だけが(課題の)すべてではなく、食品の安全性や自動車の安全基準の問題、あるいは金融業界での保険分野において政府と民間それぞれが保有しているところでどのようにイコール・フッティングで競争するかなど、さまざまな問題を包含している。日本が従来締結してきたFTA/EPAでは、(関税表にある)約9,000アイテム(項目)のうちおよそ1割が関税撤廃の除外対象で、必ずしもハイレベルとは言えなかった。TPP協定ではせいぜい2~3%が(例外である関税撤廃除外の)限界と言われており、(除外対象の)アイテムをこれまでの1/3程度に絞らなければならず、相当な覚悟が要るだろう。それらを踏まえて、(TPP協定の合意を)実現することが重要であり、WTOが機能していない今、ドーハ・ラウンドを待つのではなく、日本が置き去りにされないためには、(協定締結を)早く進めること、苦しくても高いレベルに挑戦することが極めて重要である。TPP(協定での交渉)をクリアすることが、この国の将来にとって極めて重要である。日本の貿易総額のうち、EPA締結国との交易は18%程度しかなく、韓国は(日本の)倍程度、中国でもおよそ20%あり、(日本は)極めて低い状況である。また、安倍首相も述べられているように、一番問題となる農業については、農業界と経済界の対立構図ではなく、農業が国の基幹産業であり、食料安全保障の面でもしっかりと支えていくことが望ましい。オランダは、九州ほどの面積で人口も約1,600万人(と少数)であるが、農産品の純輸出額は世界第一位である。オランダは国家戦略として、シリコンバレーに対応した半径30km程の「フードバレー」をアムステルダム郊外に作り、多くの(農業関連)企業や研究機関などを集中させ、徹底した効率化や研究、6次産業化を行い、付加価値の高いものを意図的に品種改良して輸出で稼いでいる。個別農家への補償も大事だが、日本の農業が本当に競争力を高めるには、そのような戦略も考えなくてはいけない。その点にも、日本が「技術で勝って、事業で負ける」という一つの例がある。野菜工場などは、日本企業が10~20年間、実験やデータを積み上げたが、オランダやシンガポールが大規模に国家戦略として行っている。そうして野菜の自給率1%未満のシンガポールが高層の野菜工場ビルを作って自給率を上げていこうとしているが、残念ながら日本はそこまでの国家的な集中投資は行っていない。このようなことは競争力会議でも表明しており、安倍首相や日本経済再生本部も「従来の枠組みを越えて実行する」とのことなので、具体的に実現することを期待したい。

以上


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