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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2013年1月29日(水)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)2013年度予算案、(2)2013年度経済見通し、(3)世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、(4)日中関係、(5)春闘、(6)アルジェリアのイスラムテロ人質事件、(7)産業競争力会議、について発言があった。

Q:今夕、2013年度予算案が閣議決定される見通しである。(一般会計)総額は92兆円程度、公共事業費・防衛費は増加、新規国債発行は減りながらも42兆円規模となるようだが、代表幹事の所感を伺いたい。

長谷川:来年度予算は、(2012年度)補正予算とセットの「15か月予算」ということで、大型補正予算の規模から考えても、新規国債発行が若干でも減ることはあって然るべきと思う。今後、この予算をいかに成長に結び付け、(成長を)実現していくか、(政府の予算の)使い方にかかっている。

Q:以前の経済財政諮問会議では民間議員ペーパーが活用された。メンバー間の連携を取るということだが、そのようなものを活用する考えはあるか。

長谷川:当然あり得る。近々開催される予定の第一回会合で、運営方法に関する感触も得られるだろう。

Q:2013年度予算案の点数と中身に対する評価を伺いたい。

長谷川:点数はつけないが、現状を考えると理解が得られるまずまずの予算だと思う。(予算案の中身については、)また公共事業かという(否定的な)見方はあながち的外れでない部分もあるかもしれないが、即効性のあるものをできる限り前倒しで実行することが、景気が弱い動きになっている現段階では必要と考えるので、納得できる予算案だと思う。

Q:昨日、政府から2013年度の経済見通しが発表された。16年ぶりに(名目経済成長率が実質経済成長率を下回る)「名実逆転」状態を脱すると予想されているが、その実現性を含め所感を伺いたい。

長谷川:実現性は神のみぞ知るで分からないが、産業競争力会議の議員の一人として、その実現に向けて少しでも貢献できればと思っている。実際にインフレがどの程度になるか、本当に2013年度平均してインフレになるかで、実質(成長率)がどの程度必要かが見える。来年度だけを見れば、急にインフレが1%を超えることは難しいと思われ、実質(成長率)1%以上ないと(実現)できないため、相当高いハードルであることは事実だろう。実現するためには、即効性があるものと時間のかかるものとをうまく合わせて進める必要があるが、来年度予算の執行としては即効性があるものを重点的に進めていかざるを得ない。公共事業の乗数効果は(低下し)、昔に比べれば(経済波及効果は)限定的である。さらに補修・維持保全となれば、具体的に、どう効果的に景気刺激につなげるかは中身をよく精査しなければ何とも言えない。ただ、今の日本の経済情勢から見れば、ぜひ(「名実逆転」解消は)実現すべきだと思う。

Q:先週まで出席していたダボス会議の感想を伺いたい。また、現地で欧州の首脳から日本の円高修正策に対する批判が出ていたようだが、この受け止めについても伺いたい。

長谷川:アンゲラ・メルケル独首相の発言が目立ち、全体が(日本に対して)否定的と受け止められたかもしれないが、全体のトーンとしては決して否定的ではなかった。甘利明内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)も理解が得られたと述べており、私もその見方に賛同する。甘利大臣と茂木敏充経済産業大臣は、現地時間金曜日の夜チューリッヒに着き、土曜日朝にダボス入りした。土曜の朝、世界の学者や経済界の日本ウォッチャーを集めた有識者会議があり、竹中平蔵慶應義塾大学教授が司会を務め、両大臣が出席、安倍晋三首相もライブ中継で参加した。昼12時からは、少しメンバーを代え、両大臣を囲んで同様のセッションがあった。その場で、為替に関して批判めいた論調はまったく出ていないし、今の(日本の)円高修正は理解できるとの意見が多かった。
今年のダボス会議のテーマは「レジリエント・ダイナミズム(弾力ある活力)」であった。昨年は、欧州金融危機の真っただ中で、底が見えず、欧州自身もこのトンネルをどう脱するかの目途が立たない状況だった。今年は、ほぼ底が見えた印象で、メルケル独首相、デービッド・キャメロン英国首相の各セッションでも、オランダ、デンマーク、アイルランド、イタリア各国首相が登壇したパネル・ディスカッションでも、これを機に今まで少し甘かった部分を見直し、国を完全にリフォームし、新たな競争力をつけて成長軌道に戻したいと宣言していた。どこまで実現できるかは結果を見ないと分からないが、ダボス会議という場で堂々と発言されていたことからも、必ず成果に結び付けようという決意と成算があるのだろう。日本もよほど決意をもって改革を行い、経済成長を実現していかないと、欧州と状況が逆転しかねないとの危機感すら覚えた。

Q:先週、山口那津男公明党代表が訪中し、習近平中国共産党書記長と会談したが、この成果について所感を伺いたい。

長谷川:与党の一翼を担う政党、特に長きにわたり中国との関係を築いてきた政党の代表が出向き、(習近平書記長との会談を実現されたことについては)少なくとも半歩前進だと思う。現在、村山富市元首相や加藤紘一元自由民主党幹事長など(日中友好協会代表団)も訪中されているようである。いろいろな中国側の動きがある中で、高いレベルでの会談が実現することは望ましい。一方、以前と比べてエスカレートしてしまった中国側の尖閣諸島に対する態度の現状を踏まえながら、どう落としどころを見つけていくかについては、決して容易な課題ではないだろう。日中首脳会談も前向きに検討されているとの報道があるが、そこに至るまでには周到な準備をし、落としどころを決めていかないと、そう簡単な問題ではない。ダボス会議の日本ウォッチャーやグローバル・ウォッチャーの非公開会議でもこの話題が出たし、尖閣諸島の施政権は明らかに日本にあるのでこれを犯すことについては断固反対する、とヒラリー・クリントン米国務長官も発言されている。いろいろな動きを総合し、準備を周到にして話し合いを進め、何らかの形で落ち着かせることが必要だろう。貿易相手国としても互いに上位で、中国への対内直接投資も日本が上位であるが、これが急速に落ち込んでいることは、双方にとって良いことはない。互いが傷ついている経済関係の停滞を少しでも早く改善する方向で対話が進むことを望む。

Q:今日が実質的な春闘のキックオフである。安倍政権がデフレ脱却を掲げていることもあり、連合側は(経団連に対して)賃上げをして消費拡大につなげるよう求めているが、これについてどのように考えるか。また、2013年年頭見解にて「可能な企業から給与総額の引き上げを実施すべき」と述べていたが、武田薬品工業は(賃上げを)どうするお考えか。

長谷川:自社の賃上げについては、これから考える。利益率は他社との比較においてはそう悪くないが、商売の実力を表す営業利益率は、売上比率で過去最低の10.3%程に落ち込んでいる。これを改善するプロジェクトは立ち上げているが、特に賃金は一回上げると下げにくいので、現段階での業績に応じて、そういう(賃上げの)状況にはならないだろう。労働組合との間に協定を結び、ある程度交渉の余地も残しているが、従来と比べて上積みができるなどの状況では、残念ながらない。

Q:今回の春闘で賃上げムードが出てくるかと感じていたが、武田薬品工業でも(賃上げが)難しいとなると、あまり期待できないのか。

長谷川:(賃上げを)頑張れる企業には、頑張ってほしい。

Q:65歳までの定年延長について、賃金や雇用面にどの程度影響すると考えるか。

長谷川:これまでは、労働組合との協定の下、(対象者が)選択的ではあるが、実態として雇用延長を行ってきている。自社(武田薬品工業)でも、高齢者の方々には特に生産現場等で有効に活躍していただき、かつ、ある程度賃金を抑えながら可能な部分においては、今回の法改正でも特に大きな影響が出ない、双方が納得できる形で対応できるものと考えている。一方で、新卒採用との関係であるが、日本の場合、安定的に継続して雇用をしていくことが極めて大事である。途中(の状況)で(人員が)不足した際の採用は、少しずつ改善しているものの、そう簡単ではない。自社では、できるだけそのこと(定年延長)が、若い人の採用に大きく影響することがないようにしたい。

Q:政府が地方公務員の人件費相当の地方交付金削減を予定しているが、考え方によってはデフレ脱却と逆行するものではないかと思われる。デフレ脱却と賃金との関係について、所感を伺いたい。

長谷川:マクロの観点からは、(給与削減がデフレ脱却の逆行に)影響がないとは言い切れない。政府としては熟慮の上で、国家公務員(の賃金)との一貫性の面から、今回は地方(公務員)にそういう(給与削減)要請を行うことが妥当と判断されたのだろう。ラスパイレス指数が110を超えているところがあるのか細かいところはまだ見ていないが、政府として、あまり格差を放置しておくこともできないという判断はやむを得ないだろう。

Q:アルジェリアの人質事件で、日揮の社員10名が亡くなるという痛ましい事件が起きた。今後、企業が成長市場を求めてアフリカやアジアなどに進出していく上で、どのように対応していけばいいか。

長谷川:誠に痛ましい事件であり、テロリストの計画的攻撃で多くの犠牲者が出たことは痛恨の極みである。業態の関係から、あのような地域に自社の社員を派遣しなければならない状況にはないものの、日揮の社長が何度も辛いとおっしゃっているのは、経営者としてその通りだと思う。日本の国際化の先手のエンジニアリング会社として、早くから世界に進出し、日本の資源の獲得などに貢献してきた企業が、あのような痛ましい犠牲を払うことになり、本当に残念でならない。(テロに対して)企業に何ができるかについては、計画されたテロリストの攻撃にはまったく無力、無防備と言わざるを得ない。一朝一夕にどうなるものではないし、報道などには駐在武官を増やすべきと論じているものもあり、できることならやった方がよいと思う。一方で、アフリカは欧州の裏庭的なところもあり、旧宗主国である仏、伊、英、ベルギー等との連携をより強化し、できるだけ事前に情報を得るという回答しか思いつかない。(テロの)実態を見ると、フランス人もノルウェー人も犠牲になっている方がいるので、なかなか防ぎようがない、大変痛ましい結果であったとしか言いようがない。報道によると、イナメナスの天然ガス関連施設に勤めていた運転手のアルジェリア人がテロリストに通報していたとの話もあり、そのようなことであれば、ましてや防ぎようがない。日本人だけがターゲットにされることが少しでも減るように、価値観を同じくする国々との連携をさらに深めていくしかないと思う。

Q:産業競争力会議の初会合に提出した代表幹事の意見書を見ると、かなり総花的であるが、何を優先すべきとお考えか。

長谷川:(私の主張は本日公表予定の)議事録を見れば分かるが、産業競争力会議がどこまで実効性ある形をもたらすことができるかは、今まで十分に切り込めなかった規制・制度改革をどこまでできるかにかかっている。それを何としても政治のリーダーシップ、決断で突破していただきたいというのが、多くの民間議員に共通する意見であった。国家が抱えている多くの政策課題は、複数の省庁にまたがることが多い。ややもすれば、そういったテーマについては、文書の最後に「省庁間の連携を密にして遺漏なきように対応する」という文言を入れて終わりがちである。しかし、本当にやろうとすれば、あるリーダーの下に権限・予算・人材を集中し、PDCAサイクルを回して結果責任も負わせるという形をとらなければ覚束ない。どこまで具体的に切り込んでいけるかにかかっており、産業競争力会議の初会合でも述べたし、今後も主張していきたい。

Q:具体的に、どの分野の規制緩和を進めたいか。

長谷川:具体的には意見書にも書いたが、例えば自身が関与している産業においては、日本版NIH(National Institutes of Health)のような、学会(アカデミア)と産業界の橋渡しをする国の機関を作るべきである。先進諸国にはあるが日本にはなく、アカデミアで生まれた研究の芽が、政府の支援を必要とする段階を経て、うまく産業界に橋渡しされる形ができてない。これは医療分野に限ったことではないが、日本版NIHを(規制緩和の)突破口とするか、具体例として示していただきたいし、今後も主張を続けたい。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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