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経済の成長なくして日本の再生なし 【2013年年頭見解】

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公益社団法人 経済同友会
代表幹事 長谷川 閑史

はじめに

国家およびそれを形成するほぼ全ての組織・構成員にとって、自らの存続と発展を考える上で、益々加速化し多様化する国内外のグローバル化への対応の重要性が高まっていくことは異論のないところであろう。

世界の各国との競争や協調を要する課題が山積する中で、日本の政治・行政は危機意識が欠如し、強くて安定したリーダーシップも不在であった。時代はかつての「所得の再分配」から「負担の再配分」に変化して久しいにも関わらず、政治は現実と真っ正面から向き合い、痛みを伴う改革の必要性を国民に真摯に訴えることを回避し続け、問題の先送りを繰り返してきた。

時代の変化に対応した変革の遅れという観点では、経済界のみならず学界・教育界をはじめとする他の多くの組織も決して褒められた状況ではない。こうしたことを率直に認め、リーダー自らが率先して、たとえ痛みを伴う変革であっても、待ったなしに実行していく不退転の覚悟と行動が必要である。

1.日本再生への分岐点にあって、経営者自らが経済再生の先頭に立つ

我々経営者は、日本経済の成長の担い手たる経済界の牽引役であり、企業活動における全ての最終責任を負っている。いつの時代にあっても、経営者がリーダーシップを発揮して成長戦略を描き、経営改革に挑戦し続けていかなければならない。市場を創造し、雇用を創出すると共に、常に業績の更なる向上を目指し、その結果、好業績を実現できた企業は率先して社員に成果を配分する。このように経営者には、供給サイドとしての役割を果たすだけでなく需要拡大にも貢献し、もって日本経済再生の先頭に立ち、その責務を果たす覚悟が求められている。

グローバル化の進展に伴い企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、従来と異なる戦略が求められていることを日本の多くの企業経営者は自覚している。これまで“失われた20年”とも言われる経済の長期停滞の下で、企業同士が熾烈なシェア争いや価格競争によって消耗戦を繰り返してきた。真の競争相手と海外の成長市場で戦うために、多くの産業において業界再編は避けて通ることはできない。最近、いくつかの業界でようやく本格的再編の動きが出てきていることは望ましい兆候である。

一方では、日本企業は今や200兆円を超える現預金を有していると言われているにも関わらず、市場には政府・日銀の連携により120兆円超という過去に例のない巨額の資金が供給されることになった。いくら潤沢な資金があっても、国内には魅力的な投資機会が少ないと嘆いたり、超円高の是正を政府・日銀に要請するばかりでは事態は解決しない。

先ずは、経営者自らがリスクを取ることである。円高を活用して、今後も相対的に高成長が期待できる新興国への進出や、経済停滞で資産価格が下落している先進国市場におけるM&Aを積極的に行うなど、自らのリーダーシップで逆境を逆手にとるぐらいの思い切った戦略の決断と実行が求められる。まさに、経営者のリーダーシップが企業の優勝劣敗により大きな影響を与える時代である。

第二に、グローバル化への対応という観点からは、主に製造業がASEAN諸国などの新興国市場においてM&Aのみならず経済成長の加速化と国民生活のレベル向上に貢献しつつ、その成長のパイの一部を日本に還元することにより、沈滞している内需の喚起に活用するべきである。こうした企業行動が、延いてはサービス産業の育成・効率化等を通じた内需拡大につながるかを検証の上、実践されるべきである。なお、日本企業の海外進出の強みとしては、新興国への輸出や社会インフラ整備に必要な高い技術のみならず、契約を誠実に履行することに対する厚い信頼もある。

第三に、日本企業の競争力の源泉としての弛みのない技術革新への挑戦である。最先端技術の応用や製造業とサービス産業との連携によって、社会的課題に対するソリューション提供、新しいライフスタイルの提案、他との差異化により競争優位を追求することで、グローバル競争を勝ち抜いていく。こうした新市場創造や社会変革に必要な事業構想力のあるプロデューサー型人材の獲得・育成に努める。

イノベーションに繋がる創造的なアイディアは、異質な考えやアプローチの衝突、徹底した拘り、失敗を恐れない風土・環境などから生まれることが多い。こうした観点から、多くの日本企業において創造性を育む環境が次第に減少しつつあることを懸念している。ダイバーシティやオープン・イノベーションの推進は、付加価値生産性向上の面からも重要である。

これから目指すべきイノベーションを通じて、環境・エネルギー問題、人口・食料問題、ヘルスケア・アクセス問題等の地球の持続可能性に関わる課題への解決策を提供することも技術先進国日本の重要な役割である。なかでも、創エネ・蓄エネ・省エネは日本がこれまで得意としてきた分野であると同時に、緊急度の高い電力不足問題の改善に繋がるだけに大いに期待したい。

第四に、就労におけるダイバーシティを本格推進し、柔軟な組織や強い事業を創ることである。多様な人材の活用は、多様化する市場ニーズへの対応や社会的課題の解決に不可欠である。企業活動を担う人材として、若者、女性、高齢者、障がい者、外国人が潜在的な能力を十分に発揮できるいわゆる“包摂”の概念を具現化した環境と機会を提供する。その際、個々人の能力を最大限に活かすために、採用・育成・評価・処遇等のシステムを整える必要がある。

少子高齢・人口減少社会におけるダイバーシティ促進は、投下労働の増大に資する重要な成長ファクターであり、給付と負担の両面から社会保障制度の持続可能性を高めることにも大きく貢献する。

さらに、大震災からの早期復興への貢献である。経済同友会が昨年7月に岩手で開催した夏季セミナーで、復旧・復興が被災地のみの問題として風化しつつあることを指摘したが、半年を経過してもなお本格的な復興は進んでいない。現状を打開するために、官民とも前例の無い事態には前例の無い対策で臨むべきである。特に、縦割り行政の弊害を直ちに排除し、政府として総合的な政策を講じるとともに、被災地の住民の希望や気持ちに寄り添った復興を、少しでも早く実現しなければならない。

企業としては、日本再生に不可欠な本格的復興に向けて、本業を通じた社会貢献や産官学協働による新規事業創造、人材づくりなど、民間の知恵を十分に生かした創意工夫によって最大限の努力を続けていく。

2.民主導による構造改革の再起動を

経済同友会は、新政権が実現すべき政策として「決断と実行の政治体制」「経済成長の実現と財政健全化の道筋」「国家運営の再構築:政治改革・行政改革の再起動」「外交・安全保障政策の積極的展開」の4点を既に表明※している。ここでは、改めて経済の再生と発展に資する政府と民間のあり方に焦点をあてる。

※『新政権に望む -経済成長の実現と国家運営の再構築を-』
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2012/pdf/121218a.pdf

先ず、経済の司令塔として、新設された「日本経済再生本部」と下部組織である「産業競争力会議」、復活が決定した「経済財政諮問会議」において、民間人の知見を十分に活用するべきである。

また、喫緊の課題である円高、高い法人実効税率、自由貿易協定の遅れ、労働規制、環境規制、電力不足のいわゆる“6重苦”を速やかに克服しなければならない。そのために政府が果たすべき役割は、諸外国との競争条件のイコール・フッティングを図ることであり、スピード感を持って施策を講じるべきである。また、財政に負担をかけることなく、新たなビジネスを生み、経済を活性化させるために、規制の緩和・撤廃と公務員制度や国と地方の行財政制度等の制度改革を断行することを求める。

なお、過度な行政・官僚バッシングをしても得るものは無い。むしろ、公務員の専門能力を活かすことが日本再生の加速のために有効であり、能力・成果主義に基づいて処遇する必要がある。報酬のあり方については、公務員給与水準に準拠する組織・企業も少なくないことから、地域経済に与える影響やデフレ脱却のための施策なども含めて総合的に判断する必要がある。

3.若者が自ら夢を描き実現できる持続可能な社会へ

我々は、次代を担う若者たちに地球環境、財政、社会保障などの面で持続可能な社会を引き継ぐ責任がある。企業としては、サステイナブルな経営の実践を通して社会に貢献するとともに、新たな雇用を創出していかなければならない。さらに、経営者は前向きに行動する若者に対してチャレンジする機会やグローバルに活躍する場を惜しみなく提供する。

先ず、人材づくりの始点となる教育について、経営者自らが現場に行き、教育活動に参加する機会を増やす。グローバル時代に必須の英語力や異文化理解などの重要性を伝え、企業が求める人材像を発信するとともに、インターンシップを積極的に受け入れるなど、産学の連携を一層深化させる。

採用に関しては、学生が安心して勉学に専念できるように、新卒採用活動の適正化への継続努力、日本人留学生の留学先での就職説明会の開催や採用別枠の設定などを行う。特に中小企業と学生のミスマッチを解消すべく始まった様々な試みをさらに発展させるべきである。

また、既卒3年以内の若者にも新卒者と同等のチャンスを与えることは十分認識しているが、教育改革の根幹である大学教育の抜本的な改革なくして、この問題の本質的な解決は難しい。大学設置基準は勿論、大学入試を含めた大学ガバナンスの制度と運営の根本的な見直しが必須である。

雇用・賃金の面では、今年4月から義務化される65歳までの継続雇用において、若者と高齢者との世代間の雇用格差が生じてはならない。そのためには、能力・成果主義を基本とした賃金カーブの見直しや社会保障制度と整合性のある雇用・人事制度改革に取り組む。なお、雇用の維持・拡大努力に加えて、消費を刺激し、経済成長への好循環を作り出すためには、能力・成果主義を前提に可能な企業から給与総額の引き上げを実施することが望ましい。

以上のような取り組みを通して、日本社会を支える若者や次世代に「元気が出る」メッセージを送り続けていきたい。彼ら・彼女らが、自ら描く夢を実現するために、様々な機会や場を活かして果敢に挑戦し、未来を切り拓いていくことに期待する。

4.2013年の経済同友会の取り組み

日本再生の分岐点にあって、経営者が個人で参画する経済同友会は経済再生の先頭に立ち、以下の通り行動する。

  • 「自ら変革し、行動する政策集団」としての本会の役割を強化し、政策実現のために、より戦略的・実効的な提言と行動を行う。
  • 本会の「『意思決定ボード』のダイバーシティ行動宣言」を実践する。
    (特に、2020年までに女性役員の登用も視野に入れ「女性管理職30%以上」の目標を企業が率先し達成するために努力すること等)
  • 2011年の宮城、2012年の岩手に続き、今年も被災地である福島で第28回夏季セミナーを開催し、「東北アピール2013」を発信する。
  • 2020年の東京オリンピック・パラリンピック実現に向けて世論喚起のためのイベントを企画・実施し、招致活動を展開する。
  • 我々経営者が世界のオピニオン・リーダーが参加する国際会議等に従来以上に積極的・計画的に参加し、日本のプレゼンス強化を図る。

おわりに

構造改革の先送りと大震災による6重苦などの環境悪化で“失われた20年”は、さらに長期化する恐れもある。日本経済は低迷を続け名目GDPはピークである1997年度より約1割縮小した。一方、世界経済は成長を続け、特に世界の経済成長における新興国の寄与が6割近くを占めるまでになった。

グローバル経済下で日本再生への分岐点に立った今年、第二次安倍内閣には過去に囚われない大胆な改革を断行していただきたい。我々経営者も覚悟と行動をもって、積年の課題を克服していく。

政・官・民を挙げて不退転の決意で臨む2013年を日本再生に向けた転換の年としたい。

以上


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