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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年10月02日(火)15:00~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)野田第3次改造内閣の顔ぶれ、(2)緊迫する日中関係の打開策、(3)IMF・世銀総会への期待、(4)日本触媒姫路製造所での事故、(5)電源開発(Jパワー)の大間原発建設再開とエネルギー政策、(6)竹島一彦前公正取引委員会委員長の評価、(7)政府の尖閣諸島をめぐる対応への米倉弘昌経団連会長の発言、について発言があった。

Q: 野田第3次改造内閣が発足した。新閣僚の顔ぶれを含めて現段階での所見を伺いたい。

長谷川: (顔ぶれについては、)個別の閣僚の略歴や政治歴を十分に承知しておらず、実際に国会での言動を拝見しない限り、何とも述べられない。様々な事情があったにせよ、あれだけ多くの方々を短期間の任務で代える必要があったのかについては若干の疑問があるが、国政の場でそれぞれが実力を発揮されるのを拝見したい。昨日発表したコメントでも述べたように、課題が山積する中で、一票の格差(是正のための選挙制度改革法案)や特例公債法案(の成立)は当然であるが、経済同友会が求め続けてきた、また野田首相も一時は積極的な姿勢を示されていた経済連携協定、中でもTPP(交渉参加)について、ぜひ積極的に、前向きに進めていただきたい。経済産業大臣と外務大臣は留任され、加えて新たに就任された前原誠司国家戦略担当大臣は、報道によるとその点(TPP交渉参加)に触れ、積極的に進めたいとの発言があったようなので、期待したい。

Q: 新閣僚の中で、前原誠司国家戦略担当大臣は、国土交通大臣時代から長谷川代表幹事と懇意にしているようだが、認識に間違いはないか。

長谷川: 特別に懇意にしているわけではない。前原大臣が国土交通大臣の時代に、「国土交通省と言えども成長戦略はあり得べし」ということで成長戦略会議の座長の要請をいただき、引き受けた。この立場を通じて、接点は確かに多く、他の閣僚や政治家の方との濃淡を比べればより親しさは感じるが、それ以上のものではない。

Q: 前原大臣は、予算編成の問題について、「政権交代の際に国家戦略局を作って(政治主導で予算編成を)やるはずだったが、ねじれのためできなかった。自分がこういうポストに就いたからには、今後は国家戦略室が予算編成の中心的役割を果たす」と述べたが、これについてどう考えるか。

長谷川: 本来、政府という組織の中ではそうある(国家戦略局で予算編成を行う)べきだと考える。小泉政権時代に官邸の力が発揮されたように、官邸(機能)強化が必要とよく言われるが、組織には永続性が重要であり、個人の力量によって(権能が)変わることは組織として弱いということに他ならない。そういう意味では、法的根拠を持った国家戦略局が設置され、それがワークすることがもっとも望ましい。経済財政諮問会議には法的根拠はあったが、経済・財政にフォーカスした組織であった。本来は、国家戦略全体の大枠を作り、各省庁にその大枠の中で政策立案と予算要求、法案作成を求めていくべきである。ただし、(衆議院議員の任期から)新内閣の余命が1年以内であることは明白であり、総選挙後も民主党が政権に留まるかどうかも分からない。そういう状況下で、前原大臣が指導力を発揮されようという意図は是としながらも、制度的な仕組みを作らなければ限界があると感じざるを得ない。

Q: 新内閣について、「余命は1年未満」との発言があった。財界の中には、早急に解散して国民に信を問うべきとの意見もあるが、どのように考えるか。

長谷川: 野田首相と谷垣禎一前自由民主党総裁との間にどのような話し合いがあったかは分からないが、結果として公表されたのは「近いうちに国民の信を問う」とのことであった。自民党サイドはもちろん、一般的な国民の理解でも、そう遠くない時期に解散があるものと判断されているのは間違いないだろう。一方、(衆議院の)解散権は首相の専権事項であり、国益を損なわない形で政権運営ができるのであれば、その時期を遅らせることもあり得ない話ではない。解散時期を問うよりも、TPPを始めとした待ったなしの政策課題をきちんと成し遂げていただくことを強く望みたい。それができないのであれば、国益からも経済界としても、早く信を問うていただきたい。

Q: TPPについて、政権を継続できるなら、野田首相にやってほしいということか。

長谷川: 昨年11月のAPECで(野田首相がTPP交渉参加の)予備交渉に入ることを表明され、ほぼ1年が経過している。その直後に(日本を追う形で)表明したカナダとメキシコは、この間に参加し、日本は既に遅れをとっている。また、米国大統領選挙の情勢は、現時点ではバラク・オバマ大統領が優位な状況にあると言われており、オバマ大統領が再選されれば、(共和党大統領候補の)ミット・ロムニー氏が選出されるよりも、TPPに関する動きはかなり早いと考えられる。さらに、既に米国とFTAを締結している韓国に、TPPでも先行されるとなれば、(日本の)不利な状況がさらに加速することが心配である。これらを考慮し、できるだけ早く(TPP)交渉参加を表明していただきたい。

Q: 行政行為であり国会承認も不要なので、野田首相は(TPP交渉参加を)早急に表明し、国民の信を問えということか。

長谷川: (TPP)交渉参加の表明は、早急に行っていただきたいということである。

Q: 今回の内閣改造で、先のエネルギー政策に関わった古川元久前国家戦略担当大臣が担当を外れ、枝野幸男経済産業大臣は留任となったが、この点をどう評価するか。

長谷川: 首相ではないので選任の背景は分からないが、大臣が頻繁に代わる中でもっと短命の大臣もおり、古川前大臣が特に短命であるとは思わない。

Q: 田中眞紀子文部科学大臣について、原発に関する発言もあり、日中関係の今後にも影響を与えるのではないか(との話題も出ている)。経済界にも少なからず影響を与えるのではないかと思うが、今回の起用について所感を伺いたい。

長谷川: 田中大臣の文部科学行政に関する経験・知識の蓄積や、これから何を目指されるかを詳しく存じ上げないのでコメントしかねるが、野田首相からの指示事項も含め、どう実行されるかを見たい。文部科学大臣という立場と、田中角栄元首相の日中国交正常化への功績とは、直接結び付くものではないと判断するので、日中関係においては直接関係ないと思う。

Q: 日中関係が変わらず緊迫の状況にある。今は国慶節であまり大きな動きはないようだが、(中国人)観光客の激減など日本経済にはあまり良い影響を及ぼしていない。打開策はあるか。

長谷川: (打開策が)あれば苦労はしない。今年4月、石原慎太郎東京都知事が、米国・ヘリテージ財団での講演の際に、東京都が尖閣諸島を個人の所有者から購入すると宣言されたことに端を発している。事の発端やその後の経緯を考えれば、これまで国が個人の所有者から借りている形であったものを、(東京)都が買うのであれば、国として購入する方が理に適うだろう。今回の国の判断は、やむを得ない流れであったと感じている。(9月に)APECで、野田首相と中国の胡錦濤国家主席が立ち話をし、国有化はしないよう求められたが、その二日後に(購入を)閣議決定し、発表したことは少し早計であったのではないかとの報道もある。それも含め、(日本)政府が、中国とどのようなコミュニケーションをしてきたのか、どういう理由でタイミングを判断したのか、交渉の経緯等も踏まえ、我々が知る由もないことである。諸般の事情を考えた上での判断であったと想像されることを、情報のない者が現象面のみを捉えて言っても詮ないことだと私自身は考える。一方、これを契機に(中国で反日デモや)暴動が起き、多くの日本企業や日本人が経営する小売店・飲食店等がダメージを受けたことは、極めて遺憾である。外国籍企業の財産やビジネスの施設等を保護するのはその国の責務であり、極めて不幸なことである。2005年、小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝時にも、長く大規模に(中国で反日デモが)起こった記憶がある。今は、沈静化しつつあり、このまま推移を見守り、今後このようなことが起きないよう、関係修復や相互の理解に努めることしかないと考える。

Q: 来週、国際通貨基金(IMF)と世界銀行グループの年次総会が、東京で開催される予定である。まだ欧州の金融不安が終わったような状況ではないが、どのような議論を期待されるか。

長谷川: 欧州のソブリン・リスクを契機とした金融不安・景気停滞が世界経済に影響を及ぼしているという観点からすれば、世界にとって大いなる関心事であるが、その解決は、欧州内で解決しない限りなかなか難しい。スピードという点では、本来もっと迅速に(欧州内で)色々な解決策をとるべきだったが、各国の事情もあり、(解決に向けて)リードすべきドイツでは憲法裁判所の判断を待つ必要があった。ドイツの憲法裁判所で条件付きではあるが(ユーロ圏の金融)支援(プログラム)を支持するという判断が下り、結果として、財政・金融政策において中央がより監視・統括力を強める方向に行きつつあるのは、方向として正しい。幸い2年前のソブリン・リスクまでは表面化しなかったが、元々ユーロ圏ができた時から内包していた矛盾が噴出し、大きな世界経済危機を招いた。今、少しずつではあるが、あるべき方向に向かっている。米国や日本に先行例があるとしても、17カ国全てが合意しなければならないという(ユーロ圏の)状況を考えれば、まだ時間がかかるのではないか。今回のIMF・世銀の年次総会でも議論されるだろうし、世界経済フォーラム(WEF)の(年次総会である)ダボス会議でも何度も議論になったが、結局は欧州自身で解決していくしかない。クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事は、“Nobody is immune from this crisis.(誰もこの金融危機からは免れることはできない)”と言っている。結果の影響からは誰も免れることはできないが、元々内包する矛盾が爆発したものであり、それを修正できるのは(ユーロ圏の)メンバー国しかない。

Q: 日本触媒の工場で大事故が起き、消防隊の方が亡くなるなどの被害が出た。三井化学や東ソーなど工場の火災が目立つような気がするが、どのような背景があるのか。

長谷川: 各企業の個別事情もあり、すべてに共通する原因があるかについては、(個々の事故原因の)詳細を承知しないため判断できないが、人命を損なうような事故が起こることは経営者として何としても避けなければならない。今回の事故で亡くなられた消防士の同僚の方の話によれば、タンクが爆発して大量の灼熱の触媒が降り注いできた状況であったようだ。結果論ではあるが、爆発の可能性について企業側と消防側との間で連携を取ることで、人命の損失は未然に防げた可能性もあったかもしれない。今回のような事故を他山の石として、我々も改めて(事故防止や対応について)再点検し、決して事故を起こさないという個々の企業あるいは経営者の教訓にするしかないと思う。

Q: 先日、Jパワー(電源開発)が大間原発の建設再開を表明した。国のエネルギー政策が定まったのかどうかが微妙なところで一旦ペンディングした後、すぐの表明でもあり、原発アレルギーが再燃しているように感じるが、このタイミングをどう考えるか。

長谷川: 二つの側面がある。一つは、政府のエネルギー政策、とりわけ原子力発電の政策が迷走し、矛盾を抱えた形で(国のエネルギー政策が)発表されたこと、あるいは民意を問う形で進めてきたこと自体が混乱を呼ぶ要因の一つになったのではないか。もう一つの面では、建設中であった大間原発、(中国電力)島根原発の(工事)再開を経済産業大臣が許可したことについては、冷静に考えなければいけない。福島第一原発が建設された40年前と現在とを比べると、技術の進歩もあり、安全性に対する二重三重四重の仕組みがより充実していると考えても良い。再稼動との関連を考えれば、そういう方法(着工済みの原発の建設工事再開)は、矛盾するものではないと考える。

Q: 例えば年明けまで待つとか、民意が落ち着くまで待つという方法もあったのではないか。

長谷川: 確かにそういう見方もあるが、これ(建設工事再開)については首相を始め担当大臣の発言に矛盾はない。再稼動あるいは完成したものの稼動は、先般発足した(原子力)規制庁や(原子力規制)委員会の安全基準に基づきテストをした上で実施されると理解している。最終的にきちんとした共通のチェックやテストがなされた上でのことであれば、そう問題はないと判断する。

Q: 昨年、代表幹事が述べた「縮・原発」の考え方と今回の政府案は、細かい違いはあったが方針は同じではないか。

長谷川: 当面の方向としてはそれ(縮・原発)しかないと考え、(昨年の夏季セミナーの場でメンバーの)賛同を得て経済同友会の意見として発表した。政府の考えも大筋では似通っているが、決定的に違うのは、最後に民主党の決定を受けて『革新的エネルギー・環境戦略』に盛り込まれた「2030年代に原発稼動ゼロにする」という部分である。誰しも、原発ではなく、安全・安価な電力で産業活動や家庭生活が享受できれば、それに越したことはないと思っているのは間違いない。そこの部分(原発稼動ゼロにした場合の安全・安価・安定したエネルギーの確保)の検証や担保がないままに期限を区切ることについては、場合によっては将来に大きな負担を残すことにもなりかねず、ここだけは決定的に違う。

Q: 竹島一彦公正取引委員会委員長が先月26日をもって退任したが、経済同友会として竹島氏の功績をどのように評価するか。

長谷川: 経済同友会として竹島氏の功績について議論をしたことはないので、会の総意ではなく、個人的に知る限りで見解を述べる。(竹島氏は、公正取引委員会委員長として、)「吠えない番犬を吠える番犬にする」と自ら宣言され、それを実行された。また、既に諸外国では整備されていたものの、日本では経済界を始め様々な反対があった課徴金減免制度(リーニエンシー)を導入して通報の促進を実行され、大いに成果を上げられた。当会の会員懇談会でも、委員長退任直前に10年間の振り返りを語っていただいた。何度もお話させていただく機会があったが、単刀直入で率直な人柄も含め、(委員長としての就任)期間の長さだけでなく、成し遂げられた実績を見ても、出色の委員長であったと思う。

Q: 公正取引委員会は、M&Aの迅速化などグローバル化する企業の国際整合性に力を入れると同時に、企業統合による市場の実質的独占防止にも介入している。これについてはどのように考えるか。

長谷川: 本来、公正取引委員会は、市場における公正な競争を常に担保する状況を作っていくという使命を負っている。竹島委員長は、当会の講演でも、韓国を例に挙げ、日本企業の数はもっと統合されても良いのではないかと述べられた。公正取引委員会委員長の立場を若干逸脱した発言かもしれないが、経済同友会としても(第16回)企業白書(『新・日本流経営の創造』)で同様の趣旨を主張した。(日本企業にとっての)マーケットも競争相手も、国内よりむしろ海外に存在しており、国内では規律の下で利益を上げて体力をつけ、それをもって海外(市場)に打って出るという経営戦略が望ましい。

Q: 竹島委員長在任中に、公正取引委員会ができなかったことについてはいかがか。

長谷川: 考え方次第だろう。個人的には、随分広範に課題を解決されたと認識している。企業側あるいは産業側から見れば、就任当初は、マーケットシェアに対する判断について、国内市場のみで考える傾向が強く、メガ・マージャー(巨大企業同士の合併・買収)をサポートする方向に必ずしもいっていなかった、あるいは事前審査制度において、M&Aの過程で話が漏れて進まなかったケースもあった。これらについても、竹島委員長の任期後半ではかなり修正され、現在では払拭されたと考えている。

Q: 尖閣諸島をめぐる野田政権の対応について、米倉弘昌経団連会長が北京での記者会見で、「領土問題について、中国がこれほど問題視していることで、日本が問題がないというのは理解しがたい。民間の交渉では通らない。問題を解決するのが(政権の)仕事ではないか」と発言された。領土問題への認識も含め、所感を伺いたい。

長谷川: 外交・安全保障は、政府が行うべき専権事項である。個々の経営者や個人としていろいろな考えはあるものの、それについて団体を代表して意見を述べるつもりはない。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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