ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2011年08月30日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

動画を拡大する

冒頭、長谷川閑史代表幹事より「野田新政権への期待」について述べた後、記者の質問に答える形で、(1)大連立構想、(2)政策の優先順位、(3)法人税増税、(4)電力使用制限の解除、(5)電力供給問題、(6)TPP、(7)民主党内の融和、(8)野党の対応、などについて発言があった。

<長谷川閑史代表幹事のコメント>「野田新政権への期待」について

民主党政権においては、(政権交代以降、)二度にわたって新しい政権が誕生したが、残念ながら、国民の期待や、国家の危機的状況に対応するという形での期待に応え得なかった。そのような状況のなかで、最大限でも残り約2年の衆議院の任期において、世代交代とも言える清新なリーダーが選ばれた。まさに正念場という意味で、民主党らしい、民主党が実現しようとしてきた政策に優先順位をもって取り組まない限り、政党として将来の展望はなく、そうならないように新しいリーダーの下でしっかりと取り組んでいただきたい。

経済同友会として、限られた期間での重要課題をいくつか明示した。まず、成長戦略の実行で、これは代表幹事就任以来、最優先の課題と述べている通りである。緊急性の高い課題としては、震災復興と原発事故・エネルギー問題(への対応)があるが、震災復興と成長戦略の実行はある意味一体である。震災復興に向けた第3次補正予算を早期に成立させて実行に移すことで、成長に弾みをつける形につながるシナリオを描いていただきたい。それと同時に、成長戦略として、前内閣でアドバルーンは上げたものの実行に移されなかった経済連携協定や規制改革の推進にも取り組んでいただきたい。時間としては待ったなしなので、大変ではあろうが早急に取り組まれ、結論を出されることを望む。また、円高是正と脱デフレは表裏一体の関係にあるので、成長戦略の一環として取り組む必要がある。購買力平価の関係からまだ(円が)高くてもやむを得ないという方もいるが、実需の100倍もの(規模で)為替取引が行われている状況の中では、雰囲気に左右されるような懸念を少しでも排除・払拭していくことが必要である。その意味でも脱デフレ、経済成長にきちんと取り組まなくてはならない。

加えて、財政健全化と税・社会保障の一体改革は、前内閣からのコミットメントでもあり、野田新代表も取り組む旨を表明されている。5人の(民主党代表選の)候補者の中でも野田氏は、税・社会保障の一体改革や復興債発行の(償還)財源について、増税も視野に話されていた。復興に関する基本方針の中で、(復興債の償還財源は)基幹税で賄うと書かれているので当然ではあるが、選挙中も一貫して主張されたので、首相になられてもきちんと実行していただきたい。

その大前提となるのは、国家的な危機状況の中で、優先課題を解決するに相応しい、党内の融和・挙党一致をした内閣の組閣と党幹部の選任である。また、衆参のねじれ状態は今後も続くので、参議院における野党との協力がなければ重要課題は前進しない。そのため、野党との信頼関係の構築・協力体制の確立もお願いしたい。その上で、重要課題の優先的な解決を図っていただきたいと考えている。

質疑応答

Q: 重要課題の解決のためには党内の融和や与野党の協力関係が重要とのお話だった。野田総理は大連立について、他の候補者とは異なり前向きな発言をしていた。野党との連立構想についてはどのようにお考えか。

長谷川: 正式に首相に就任されてからの判断であるが、私の個人的な感想は、今の段階では大連立は極めて難しいと思う。大連立の対象となる自民党の中にも様々な意見があり、まとまりそうにない。また、(大連立を)無理やり進めようとすれば、相当無理な妥協を要求され、飲み難くなる可能性がある。大連立は現実的には難しいので、野党との協力・信頼関係の確立の中から、政策ごとに協定を結び、実行に移していくことが現実的ではないか。

Q: 重要課題の優先順位について言及されたが、具体的に優先順位をつけると、どういった政策が重要か。

長谷川: 「野田新政権への期待」の1ページから2ページで挙げた項目の順が優先順である。緊急度からは、震災復興、第3次補正予算の成立・執行が一番高いが、震災復興は成長戦略と一体であるので、その間の優劣は無い。「新成長戦略の早期実行」の中では、規制改革の推進、TPP交渉への即時参加、EPA交渉の加速などは優先順位が高い。また「脱デフレと円高是正」、特に円高是正は優先順位が高いと考えている。

Q: 法人税の問題が中途半端な状態にあるが、増税の位置付けをどのようにお考えか。

長谷川: 復興財源に関連した法人税の問題については、前内閣の復興の基本方針において、復興債の償還財源は基幹税で賄うという合意が形成され、野田代表も踏襲されると伺っている。基幹税となると所得税、法人税、消費税の3つで、これらの組み合わせになるだろう。その範囲においては、法人税は例外と言うのは客観的には難しいかもしれないが、税体系を変えるのであれば、諸先進国と比較して直接税(所得税や法人税)に偏っている日本の税制を見直し、中長期的には景気の変動に影響を受けにくい間接税(消費税)にシフトしていくべきである。(法人実効税率の引き下げは、成長戦略の一環として、日本を魅力的な市場にするという大きなメッセージになる。)個人的な希望としては、消費税(の増税)を改めて考えても良いのではと思う。

Q: 東京電力・東北電力管内の大口電力需要家への電力使用制限が、前倒しで解除されることになった。産業界もさまざまな節電に協力したと思うが、今夏を振り返っての感想を伺いたい。

長谷川: 節電にはさまざまな経緯があり、突然の計画停電で企業も社会もかなり混乱したが、最終的には政府が法律に基づいた要請を出すことになった。この要請に対して、産業界としても家庭においても精一杯対応したのは、日本人の順応性であり、協力的な姿勢といえる。結果として、電力使用率はほぼ80%台、高くても90%台前半に収まったことは、家庭としても産業界としても誇って良いと思う。ただし、これはあくまでも緊急の要請への対応としてさまざまな工夫をした結果であり、景気回復や成長路線への復帰という観点からは、電力の制約が景気や成長の制約になるようなことだけは避けていただきたいというのが強い要望である。

Q: 今後も定期検査中の原発の再稼動が難しければ電力不足が続くと思うが、今後の政府の対応への注文を伺いたい。

長谷川: 野田代表は、電力・エネルギー問題、特に原発に関して、安全性が確認されたものから再稼動すると一貫して仰っているので、確実に実行していただきたい。ストレステストの二次評価も早急に実施し、電力需要が増加する時期に向けて着実に再稼動の目処をつけていただきたい。(報道によると)東京電力は、火力発電のフル稼働による燃料費の大幅増から10%を超える値上げを検討しているようである。(電気料金は)政府の認可が必要で、現在、第三者委員会である「経営・財務調査委員会」が東京電力の資産査定や経費見直しを行っており、政府が決めることではあるが、消費者の立場からすれば、ギリギリのコスト削減を行い、コスト構造も開示した上で、国民や産業界の理解をきちんと得る努力をお願いしたい。

Q: (電力使用量の)計算上は、仮に原発がすべて停止しても今夏の電力は足りたようだが、企業にとってはかなり厳しい体制を強いられていたのか。この夏を乗り切ったから原発はなくても良い、とは言えないか。

長谷川: 火力発電での代替による燃料高・コスト高の問題、中長期的には温暖化対策におけるCO2排出の問題などを除外すれば、何とかもったといえるかもしれないが、あくまでも節電要請への緊急対応として需要抑制に応えたものであり、今後の安定的な電力供給のやり方として持続可能とは思えない。(電力の安定供給について、)政府や電力会社から今後の見通しを聞かない限り、需要サイドであるわれわれは何とも言えないが、そう単純にはいかないと思う。

Q: TPPについて、野田氏は反対派の支持も得ている。今後TPPに向けての態度が変化することも懸念されているが、11月のAPECが迫っている中で新首相にはどのような対応を望むか。また党内の抵抗勢力の影響についての懸念はあるか。

長谷川: TPPについては、民主党のみならず野党第一党である自民党にも賛否両論あって対立している問題であり、党内や国民のコンセンサスを得るのが難しいテーマであることは十分理解している。一方で期限のある問題であり、どこかの段階で国としての結論を出さなければならない。その一つのタイミングが11月のAPECである。そこで態度が表明できればもっとも望ましいが、必ずしもそれが最後のチャンスではないと思う。米国の人とも話すが、震災や総理交代などの事情を踏まえれば、もう少し待ってほしいと求めれば、数ヶ月の範囲内であれば他国も聞いてくれる余地がある。何よりも問題なのは、国内での意思決定である。税・社会保障一体改革も規制改革も然りだが、まとまりにくい状況の中で、首相のリーダーシップの下、ご自身はドジョウと仰っていたが、一つひとつ粘り強くまとめていただきたい。民主党政権も瀬戸際、正念場で、最後のチャンスを活かせず、いよいよ駄目か、とならないことを望んでいる。

前原: 『2020年の日本創生』でも示したが、日本経済が成長できる可能性があるのは、国を開き、発展の速い新興国の成果を吸収できる場合に限られるのが現状だ。成長戦略の実行と国を開いていくことは同義である。

長谷川: 例えば、EUとの関係において、韓国と比べた関税のハンディキャップは看過できない。この問題に解決の目処が立たなければ、他の生産地で製造してEUに輸出する、あるいはEU圏内で造るという方向に舵を切らざるを得ない。そのことが国内での雇用や成長をさらに難しくしていくことはご承知の通りだと思うので、総合的に判断していただきたい。誰もが満足する解決策はない。(野田代表は、)難しい問題をきちんとやると一貫して仰っているので、その実行を期待する。経済同友会メンバーには第2次産業や第3次産業(従事者)が多いが、これらの産業のエゴではない。第1次産業は極めて重要であり、第1次、第2次、第3次の産業がお互いに助け合い、技術を提供し合って発展していく形が、すでに具体的に現れている。大いに協力して経済の成長に貢献していく用意があるので、そういった場を作っていただきたい。

Q: これまでの総理は、党内の反対派を抑えるというところで、いつも理想と現実が離れてしまった。今回の代表選を経て、党内の融和を図る術として新たな光明は見出せたか。

長谷川: まだ分からない。「ノーサイドで、怨念を忘れて」ということがどこまで具体的に表れ、それがどう挙党体制につながるのかは、これからの組閣や党幹部の人事を見て、それにどう反応されるかを見ないと分からない。しかし、事ここに至っては、ある程度の痛みや苦しみを分かち合いながら、国益に向けて克服していかなければならないことは、国民の多くも分かっていると思うので、大局観を持ってドジョウの粘りで実現していただけばと思う。

Q: 野党もねじれ国会の中で大きな責任を負っていると思うが、野党に対して要望や期待することは。

長谷川: 大きく言えば、予算(の議決)や条約(の承認)以外は、参議院はほとんど衆議院と同等の権利を有しており、これがねじれ国会の中で、政策の停滞を招いている。政権交代が今後も起こることを前提に考えれば、野党になった時にそれを利用して与党を困らせ、国政の停滞を招くことは良いはずがない。少し冷静になって、重要政策については国益を考え、協力してやっていくという大人の対応を望む。ある意味ではそれが、日本の民主主義をもう少し成熟させることになると思う。それができないと、もう一つの方法は憲法改正(により衆議院の優越性を明確にすること)であるが、百年とは言わないまでも十年河清をまつがごとしで、喫緊の課題解決にはまったく間に合わない。国会議員である限りは、国益のために小異を捨てて大同につくことを、具体的な形で示していただきたい、というのが私の希望である。

以上

(文責:経済同友会事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。