代表幹事の発言

「年収103万円の壁」3党協議の結果について

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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  1. 少子高齢化に伴い生産年齢人口が減少する中で、近年の賃上げの動きは短時間労働者・非正規雇用者の就業調整を早期化させている。いわゆる「年収の壁」が人手不足を招き、労働供給を強く制約している現状にある。
    このような中、先日衆議院本会議で可決された2025年度予算案および税制改正関連法案において、「年収103万円の壁」(税に関する年収の壁)については、所得税の課税最低額が年収により最大160万円まで引き上げられた。年収の壁問題の改革の第一歩として評価したい。
  2. しかし、就業調整を回避する改革の本丸は、一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少する「社会保険料に関わる年収の壁」である。サラリーマン・専業主婦世帯から共働き世帯や単身世帯といった家族形態・ライフスタイルの多様化や、転職、副業・兼業、時短等の働き方の多様化に合わせて、令和時代に応じた仕組みへの転換が求められている。
  3. 本会では数次にわたり年収の壁に関わる意見(※)を発信しているが、その抜本改革として年金制度の第3号被保険者制度の段階的廃止と第2号被保険者への速やかな移行による将来の安心への備えとともに、当面の間は、「年収の壁・支援強化パッケージ」を活用するために、同パッケージをより効果のある政策に見直した上で3年程度期限を延長すべきと考える。
  4. 昨秋の衆議院議員選挙以降、「年収の壁」に関して各党・各団体からさまざまな提言がなされていることを歓迎したい。この改革機運の高まりを好機と捉え、国会、政府のそれぞれにおいて「令和時代における税と社会保障の一体改革」の検討を速やかに開始し、国民的議論が展開されることを期待する。

    (※)
    「いわゆる「年収の壁」問題への対応について ―支援強化パッケージの評価と社会保険制度の中長期的な改革の方向性―」(2023年10 月)

    「現役世代の働く意欲を高め、将来の安心に備える年金制度の構築 ~多様性を包摂し公平・中立・簡素な制度へ~」(2024年12月)

以 上

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