現役世代の働く意欲を高め、将来の安心に備える年金制度の構築
~多様性を包摂し公平・中立・簡素な制度へ~
年金制度改革検討チーム 座長 深澤 祐二
(東日本旅客鉄道 取締役会長)
委員長 山口 明夫 (日本アイ・ビー・エム 取締役社長執行役員)
委員長 岩﨑 真人 (IGPIグループ シニア・エグゼクティブ・フェロー)
委員長 松江 英夫 (デロイト トーマツ グループ 執行役)
提言のポイント ※詳細は、本文PDFをご確認いただきますようお願いいたします。
本会は、昨年10月の意見書「いわゆる『年収の壁』問題の対応について」において、年金制度の抜本改革の必要性を指摘しました。今回は、現役世代の負担の高まりを抑え、働く意欲を高めると同時に、将来の生活の安心に備える年金制度を構築することを目指し、特に、第3号被保険者制度の廃止と社会保険料負担を抑え税財源による基礎年金制度の検討の重要性を提案しています。また、今後の社会保障制度やわが国財政の持続可能性と信頼性を確保するためにも、「令和時代における税と社会保障の一体改革」の議論・検討を速やかに開始することを求めています。
第1段階の改革:第3号被保険者制度の廃止
改革のねらい
●共働き・単身世帯への家族形態・ライフスタイルの多様化や働く意欲・子育て支援に応じた仕組みの転換と女性の潜在能力の発揮や自らの豊かな老後のための資産形成支援
●第3号から第2号被保険者への移行と第2号被保険者保険料負担低減による公平中立な制度
●世帯収入の捉え方や手当のあり方を世帯単位から個人単位へ
改革の内容
●将来的な第3号被保険者制度の段階的廃止とその時期を明示。被用者保険の適用基準である企業規模要件の撤廃および非適用業種の解消。5人未満の個人事業所への被用者保険の適用を拡大、事業所要件を完全撤廃(賃金要件は国民年金保険料との公平性に留意)。
●複数事業所勤務者はマイナンバー等の活用による収入等捕捉で、第1号被保険者の第2号被保険者への移行を促進。
●「年収の壁・支援強化パッケージ」の執行上の課題を整理・見直しの上、期限延長し就労を加速。5年間の猶予期間を設け、その初年度から第3号被保険者への新たな加入・適用は行わない。
●これまで第2号被保険者全体で負担していた保険料を削減。第3号被保険者は負担能力に配慮したうえで、保険料を負担し、老後の安心を確保。
移行方法・移行時の影響等
●猶予期間において第3号被保険者から第2号被保険者または第1号被保険者への移行を促し、5年の猶予期間中に完全移行。
●第3号被保険者から第1号被保険者への移行時の世帯年収が一定金額未満の場合で、かつ子育てや障がい等により就労困難な場合等においては保険料の減免措置を(要財政措置)。
第2段階の改革:税と社会保障の一体改革に向けた基礎年金改革の検討
改革のねらい
●若年層・現役世代の社会保険料負担の高まりを抑制し、応能負担を強化
●税財源によるセーフティネット、最低限の保障が確実に受けられる制度を構築
●税財源による基礎年金と保険料財源による報酬比例年金の2階建て構造の簡素な制度へ
改革の内容
●基礎年金部分の保険料徴収を段階的に廃止。基礎年金(1階部分)は現行の税負担割合(1/2)から段階的に全額税による財源へと移行。
●自営業者についても報酬比例年金に移行。標準報酬月額の月額上限については、段階的に引き上げ。
●高額所得者については、報酬比例年金の額に応じて基礎年金を減額(クローバック)。
●低年金者には所得審査を条件に一定額の補足給付。
移行方法・移行時の影響等
●「国民年金保険料」の水準の低下(税負担の増加)に応じ、厚生年金保険料の下限を見直すとともに、被用者保険の適用基準である時間要件についても見直しを進め、完全適用拡大を。
●基礎年金の保険料負担廃止と税財源による追加負担はマクロの視点ではほぼ同額。国民負担率は変わらないよう制度設計。
●事業主側は基礎年金部分の負担が減少する一方、被用者保険の適用拡大や標準報酬月額の引き上げによる負担を。
●保険料から税へ振り替える際の財政措置については、所得再分配を十分に機能させたバランスの良い税の組み合わせを検討。
以上