新浪 剛史 副代表幹事/東京オリンピック・パラリンピック招致推進PT 委員長
(ローソン 取締役社長CEO)
「復活ニッポン」の オリンピックへ
東京都はオリンピック開催によって新たに15万2000人の雇用が創出され、経済波及効果は2兆9600億円に達すると試算している。しかし、影響は経済の数字だけではない。昨今元気がないといわれる、若い人たちがもっと“夢”を持つことにつながるだろう。
開催まで7年あれば、具体的な取り組みができ、アスリートを目指す若者たちの“夢”の実現になる。何より、世界中が注目する大舞台にわれわれの暮らす日本が選ばれ、開催できる“力”を示すことで、若い人たちはもちろん、全国民が勇気づけられることだろう。とりわけ、東日本大震災から復興した日本の姿を世界に示すことができる。「復活ニッポン」のオリンピックである。
IMF・世界銀行の年次総会が日本で開かれたが、世界の人たちは日本のホスピタリティ(おもてなしの心)の質の高さに感動して帰国していったと聞く。この感動を、招致活動を通じてより多くの海外の人たちにも体感してもらいたい。そして、東京オリンピックをもって、さまざまな活動で日本の“おもてなしの心”を世界に発信できれば、政府の目指す観光立国へ向けオリンピック開催は大いなる偉業になるのは間違いない。
また、2020年の東京オリンピックは、“社会善”のために行政のみならず、われわれ企業も自社の持つさまざまな経営資源を供与して、また、NPO/NGOも参画して、東京オリンピックを“$”マーク中心からあらゆるステークホルダーによるコラボレーション(オールニッポン)としてはどうだろうか。ロサンゼルスから始まったオリンピックの商業イズムを大きく変え、金融資本主義が世界経済を崩壊させてしまった今こそ、企業と、そして“公”と社会が共生してゆくモデルケースにすべきだ。
東京オリンピックは、東日本大震災で“復興”と“連帯”を見せた日本が、公共機関等インフラの強さのみならず、運営する人々のソフト面での圧倒的なモラルの高さ、食のおいしさといった多彩な魅力を知らしめる良い機会になる。若い人たちは、このような大きなきっかけできっと大いなる希望を持ち、活力ある日本をクリエイトしていってくれるだろう。
先達たちのおかげでわれわれ世代は、1964年に開催された東京オリンピックを通じて将来への希望と夢を持つことができた。同様に、私たちは次世代に希望と夢へのきっかけ作りをしていかなくてはならない。そして、復興をアピールする“オールニッポン”によるオリンピックを実現することで商業イズムになり過ぎたオリンピック自体が新たなステージに昇華していくだろう。一方で、予算面では最小限を目指し、耐震や一部の建物・道路の整備等必要なものは作るべきである。
日本の将来のために、夢の祭典をぜひ東京で開催したい。
(「経済同友」 2012年11月号より)