私の一文字

2026年10月号

会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、井上慎一中国委員会委員長にご登場いただきました。

「縁」は未来を動かす力

中国委員会 委員長 井上 慎一
ANAホールディングス 特別顧問

井上

今日の自分があるのは、これまでのご縁のおかげだと心から感謝しています。私自身、変化の多い人生の中で、縁とは「常に変化し、影響を与え続けるもの」だと実感しています。時に太く、時に細くなりながらも今に至るまでつながっている―この書を拝見したとき、まさに自分が抱いていたイメージが見事に表現されていて驚きました。

岡西

「縁」という文字は、糸の端から次につながっていく様子を思わせる言葉です。緩急がつきながらも絶対に途切れない「縁」を想いながら書いたので、そのように見ていただき、とてもうれしいです。井上様ご自身も、さまざまな縁を力強くつかんだり、しなやかに継続させてこられたりしたのではないでしょうか。

井上

私が初代社長を務めた日本初のLCC、Peach Aviationの成功は、海外を含めたさなざまな人とのご縁なくしては成し得ませんでした。当時は格安航空会社のノウハウが全くない、ゼロからのスタートでした。そこで、世界的レジェンドであるライアンエアー初代会長のパトリック・マーフィー氏に、面識もないまま押し掛けて教えを請い、アドバイザーになっていただきました。後に「熱意に負けた」と仰っていただきましたが、必死の思いで「縁」をつかみました。彼とは今なお、相談にのっていただく関係が続いています。

岡西

他に印象的な経験はございますか。

井上

人との「縁」の力は、組織を動かす上でも身に染みて感じました。ANA社長就任時、業績はコロナ禍でまさに修羅場でした。しかし、経営再建を進める中、懸命に会社を支えてくれた社員とは、同じ船に乗り運命を共にする強い絆で結ばれました。対話を重ね、時にはぶつかり合いながらも『ANA を復活させたい』という想いを一つに挑み続け、4 年後には過去最高の業績を達成できたのです。強い縁があったからこそ、組織を大きく動かせたと確信しています。

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岡西

最後に、経済同友会では中国委員会委員長を務められていますが、今後の展望についてお聞かせください。

井上

つい最近、岩屋前外務大臣が会長を務める日本国際貿易促進協会の一員として、中国を訪れてきました。王毅外相に加えて何立峰副首相ともお会いすることができ、実りある訪問だったと思っています。人とのご縁は、国と国との関係をも動かす力になります。ANA の第2代社長・岡崎嘉平太氏は、日中関係の礎を築いた人物の一人です。政治的・外交的な試練の中にあっても101回の訪中を重ね、周恩来総理との深い信頼関係を築き、国交正常化を結実させました。現在、日中関係は厳しい環境にありますが、私は中国委員会共同委員長として、この大先輩の志を継ぎ、対話と交流を推し進めていきたいと考えています。「一衣帯水」の隣国同士として、互いを敬い、共に平和と繁栄を分かち合える揺るぎない関係を築いていく。覚悟を持って自ら動き、国と国をつなぐ真の「縁」の力を未来へ紡いでいきたいと思います。
書家 岡西 佑奈
1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。
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