私の一文字

2026年8-9月号

会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、松江英夫副代表幹事にご登場いただきました。

「青雲の志」という言葉に宿る「志」

副代表幹事 経済同友インスティチュート 委員長 松江 英夫
デロイト トーマツ グループ エグゼクティブメンバー

岡西

 「志」の文字は、上部が「一歩前に踏み出す」を、下部が「感情が宿る場所としての心」を表し、心が目的に向かって進む様子を示しています。今回は未来に向けた勢いと、じっくりと歩む時間の両方を意識して、筆を運びました。

松江

志は踏み出さないと見えないと同時に、何十年もかけてようやくかなうものですが、この筆づかいにそれを感じます。最初に「志」を意識したのは、学生時代です。「青雲の志」という言葉に出会い、その響きに強く惹かれたことを今でも覚えています。当時は政治家も輩出するような雄弁会というサークルに所属し、国の未来を語り合っていました。その思いのまま、日本を変革する仕事に携わりたいと思って社会に出ましたが、無論、そう甘くはありませんでした。忙しい日々の中で、志を見失った時期もあります。しかし、まだ何かできるかもしれないと粘り続けたことで、今ようやく、日本を主語にして語れる立場に近づいた気がしています。

岡西

諦めなかった原動力は何なのでしょうか。

松江

学生時代に青臭く語っていたことを実現したい強い思い、まさに志が原点です。自分の都合で手放すべきものではないし、自分にまだチャンスがあるならがんばるべきだと思い続けてきました。進むたびに悩みも生じますが、苦しいときほど思いを書き記しながら、自問自答を繰り返しました。ある人から「悩みを乗り越えた経験の数だけ、人は対応力が広がる」と言われたことがあるのですが、そう考えられるようになってからは、困難も成長の機会だと思えるようになりました。

岡西

日本のこの先は明るいとおっしゃる発言を目にしたのですが、その背景をもう少し伺えますか。

松江

これからは、量ではなく心の豊かさや幸福度を物差しに見ていく時代です。日本には、文化や自然、社会的なつながりといった無形のアセットのストックがあり、潜在力が大いにあります。100年後の人たちから、「失われた数十年があったからこそ、日本はウェルビーイングを重視する新たな先進社会へ転換できた」と思われる時代にしたいです。人口減を前提にしても、逆転の発想で輝けるモデルは十分作れますし、特性を活かしながら多面的に取り組むアプローチは、日本は得意だと思っています。

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岡西

経済同友会では複数の委員会に参画しつつ、副代表幹事ならびに、経済同友会インスティチュートの委員長を務めていらっしゃいます。今後の展望をお聞かせください。

松枝

経済同友会はもともとシンクタンクとしての役割を担っていますが、さらにその機能を強化していくのが、インスティチュートの役割です。インターネット上の情報がAIのインプットとなる時代だからこそ一次情報、他にない経営者の生の声は、より大きな価値を持ちます。その声を集め政策提言に活かす、かつ政府や政党、メディアとも連携して実践できるのが、経済同友会の特色です。この強みを生かし、「日本を前向きに」する活動を積極的に進めたいと思っています。
書家 岡西 佑奈
1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。
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