私の一文字

2024年10月号

会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、今井誠司アジア委員会委員長にご登場いただきました。

「今」この瞬間を大切に生きる

アジア委員会 委員長 今井 誠司
みずほフィナンシャルグループ 取締役会長

岡西

「今」という文字は、「亼(しゅう)」と「丨(こん)」で成り、どちらも時の集約を示しています。この二つの意味の重なり合いをあえて墨の濃度を変え、一つの文字としてしたためました。選んだ理由をお聞かせください。

今井

座右の銘としている「而今」から「今」を選びました。而今は諸説ありますが、曹洞宗の開祖道元禅師が悟った世界観で、過去や未来にとらわれず、今を精一杯生きることを意味する説を、私の信条としています。人生は「今」の連続であり、「今」を全力で生きることを積み重ねて、最後の瞬間にわが人生に悔いなしと言えたら本望です。

岡西

私も「今を生きる」をテーマに展覧会を行ったことがあり、思い入れの強い一文字です。いつごろからこう考えられるようになったのでしょうか。

今井

ニューヨーク赴任時の30 代前半、「今」という瞬間にベストを尽くして臨むことが大切であるという思いに至りました。米系金融機関と競合しながら、苦手な英語で米系企業を担当するという厳しい環境下でしたが、自身の成長の機会と捉えることで、良い経験となりました。期せずして米国CPAという財産も得ることができました。現在も企業経営に携わる中で重要な判断に迫られる場面がありますが、目の前の状況に集中することで雑念を減らし、未来に過度な不安を払拭することが重要と考えています。

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岡西

熱量を持ち続け「今」に至っていることがうかがえました。現在も積極的に国内外問わず現場に出向いているそうですね。

今井

戦略策定上、お客さまのニーズを知ることが不可欠で、その源泉はお客さまを担当しているフロントにあります。取引先の要望をアップデートし、経営に活かせるよう心掛けています。現場の若手社員との対話も大切にしており、私の経験を伝えることが、彼らのキャリアディベロップメントに少しでも資すればと思っています。

岡西

多様な働き方も積極的に推進されているそうですね。「今」変わらなければいけない時期なのでしょうか。

今井

お客さまのニーズも社会も多種多様に変化していますし、それに応える多様な人材ポートフォリオの構築が求められます。自律的に自分のキャリアを考える方が増えてきており、社員の挑戦を後押しするさまざまな機会を提供することが肝要と考えています。

岡西

経済同友会ではアジア委員会委員長を務めていらっしゃいますが、今後の展望についてお聞かせください。

今井

昨年は日ASEAN友好協力50周年という節目でした。次のステップとして、さらなるパートナーシップの高度化を目指すべきと考えます。各国の経営者、経済団体などとの交流を深化させ、アジア域内の課題解決に取り組んでいきます。シンガポールに駐在し、アジア・オセアニア地域を統括していた経験と知見を活かし、この協働に貢献できれば幸いに思います。

書家 岡西 佑奈

1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。
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