私の一文字

2024年4月号

会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、梶川融財務委員会委員長にご登場いただきました。

お互いを「敬う」

財務委員会 委員長 梶川 融
太陽有限責任監査法人 会長

岡西

「敬」は神様に祈る姿を由来とする漢字なのですが、選ばれた理由を教えていただけますか。

梶川

「敬う」として使われる漢字ですが、私はこれを目上の人のみならず、自分以外の人を尊重するという意味で捉えています。他の人と向き合うためには自身の確立、すなわち自立が欠かせません。相手の意見を尊重しつつ自分の意見を言う、自分で意思決定をするということにも、自立が大きくかかわります。特に私どものような仕事はクライアントを尊重して話を聞かないと成り立たないですし、チームとしても個々人がきちんと自立し、お互いに尊重し合うことが求められると思っています。

岡西

そうしたお考えに至った背景はございますか。

梶川

母が早くから子どもに自立を求める人だったことは影響していると思います。自分で決めたことは、その理由を説明できれば口出しをされませんでした。それが職業選択にも影響し、自分で物事を決められる仕事を志向するようになったと思います。

岡西

自立して考え、行動できることは大事だと思うのですが、他方で若い頃は特に、やりたいことが見えずにもがくこともあると思います。若い方向けの講演などでは、どのようなアドバイスをされているのでしょうか。

梶川

まさにおっしゃる通りで、私自身も若い頃はやりたいことが明確だったわけではありません。ただ、仕事を自分で選択できる状態にすることは意識してきました。必ずしも求められているのではないことを、自ら「やる」と決めること自体が「やりたい」の一端であるわけです。ここで大事なのが自分で考える力、決める力です。これは仕事にも通じます。例えば「規則だから」で済ませるのではなく、どういう理由で決まっているかまで掘り下げること。必要があれば規則自体を作ることもできることが、専門家の役割でありやりがいでもあります。自分できちんと考え、決め、それを説明できることが重要だと、講演などで伝えています。

岡西

組織運営で意識されていることはございますか。

梶川

自立と協調でしょうか。自立はともすると孤立に、協調はともすると依存になりかねません。自分の判断をきちんと持っていながらチームとして協調できるということを、特に組織が拡大する過程で重視してきました。

岡西

最後に、経済同友会では財務委員長を務めていらっしゃいますが、活動についてお聞かせください。

梶川

財務委員会は、経済同友会という組織が続くための基盤を財務面から考える役割を担っています。数字は無味乾燥に見えがちですが、その裏に思いや価値観があります。会員の皆さまにどのような気持ちで活動していただくか、どうお金を活かしていくが大事な点で、私企業とは異なる組織特性だと考えています。今後も経済同友会としての意義をきちんと考えながら、活動していきたいと思っています。

書家 岡西 佑奈

1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。
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