私の一文字
2024年2月号
会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、深澤祐二経済・財政・金融・社会保障委員会委員長にご登場いただきました。
今月は、深澤祐二経済・財政・金融・社会保障委員会委員長にご登場いただきました。
『風』を読む
経済・財政・金融・社会保障委員会 委員長 深澤 祐二
東日本旅客鉄道 取締役社長
東日本旅客鉄道 取締役社長

岡西
「風」という文字には緩急や人間の五感と同様の強弱を感じます。選ばれた理由を教えていただけますか。
深澤
鉄道の仕事をしていると、風は大敵です。強風による事故を防ぐため、電車を止めることもあります。一方で、風によって地球を守る大気を五感で感じることができます。大学時代にヨットをやっていたことも影響しているかもしれません。風を読む、すなわちこれから起こることを読むというのは非常に大切なことです。鉄道のようなロングスパンの事業では、まさに先を読んでさまざまな意思決定をする必要があります。そんなところから、「風」を選びました。
岡西
風を読む、先を読むというところで意識されていることはありますか。
深澤
先を読んでいても、コロナ禍のように想定していなかった事態は起こり得るものです。そのときに修正できる柔軟性と、軸をぶらさないこと、その両面が必要だと思っています。ヨットは常に不安定な状況で、風をうまく使わないと動きません。風に乗り過ぎても転覆します。組織も同様で、自分一人だけでは何ともなりません。多くの人の力が集まるからこそ動きますし、あまりに勢いが強いときはリスクにもなり得ます。その変化、動きを感じられるように、感覚を研ぎ澄ませておくことが大事だと思っています。
岡西
まさに風を捉えて進むということですね。
深澤
山手線を一周されたことがあるでしょうか。明治神宮の横に位置する原宿駅だけは、他と違って緑の香りが漂ってきます。日常的にそうした風を感じられる場所は東京でも案外あります。山手線の高輪ゲートウェイ駅前のまちづくりを進めていますが、東京大学とプラネタリーヘルスという研究領域で提携しました。人の生命にとって最も重要な地球環境からの視点を、新たなまちづくりにも活かしていきたいと考えています。

岡西
最近はインバウンドも増えていますが、今後運輸業界はどう変化していくと見ていらっしゃいますか。
深澤
インバウンドは今後も増え続けていくでしょう。ただし現状は東より西を観光する方が多いようです。日本へのリピーターが増え、東北方面にも訪れる方がもっと増えるようにしたいですね。各地の魅力を発信し、それらをつないでいく役割により力を入れたいと思っています。
岡西
最後に経済同友会では経済・財政・金融・社会保障委員会の委員長を担われていますが、今後の活動についてお聞かせくだい。
深澤
非常に大きく重要なテーマで、問題点はすでにいろいろと指摘されています。今後は「実行」をキーワードに、実行につながる力のある提言を、委員会の皆さんと共に発信していきたいと思っています。経営者としてやるべきこと、発信すべきことを意識して取り組んでいきます。
書家 岡西 佑奈
1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。