私の一文字
2023年11月号
会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、野田由美子地域共創委員会委員長にご登場いただきました。
今月は、野田由美子地域共創委員会委員長にご登場いただきました。
信じた道を『拓く』
地域共創委員会 委員長 野田 由美子
ヴェオリア・ジャパン 取締役会長
ヴェオリア・ジャパン 取締役会長

岡西
「拓」はへんとつくりの通り、「手で石を拾う」を表した漢字です。「未開拓の地を、手で石を拾いながらひらいていく」という意味も込められているのですが、選ばれた理由とも重なるところでしょうか。
野田
実は、私が大変お世話になり尊敬していた故松田昌士・元東日本旅客鉄道社長が好まれた字なのです。北海道ご出身の大地の大らかさと揺るがない信念で、国鉄民営化という大改革に尽力された方です。私自身のこれまでのキャリアを振り返っても、新しいことに挑戦し、石にぶつかっては、一つずつ拾いながら歩みを進めてきたので、この文字に親近感を覚えます。
岡西
女性の社会進出が少なかった時代に挑戦し続けてこられたことが、「拓」そのもののように感じます。
野田
働きたいと思っても、女性にはアシスタントのような働き口しかないのが新卒の頃の社会情勢でした。日本の企業に比べて仕事の幅が広いと思い、外資系金融機関に就職しましたが、ローカルスタッフの裁量は限られたものでした。英語もろくにできないのに、もっと裁量ある仕事に就くためにと挑戦したのが、米国でのMBA取得です。その後、日本長期信用銀行に中途入社するのですが、その長銀は1998年に破綻してしまいました。私にとって長銀の破綻は、日本の急激な凋 落と重なります。それ以来、日本をなんとか元気にできないかと挑戦を続けてきました。長銀のロンドン支店で手掛けていたPFI(Private Finance Initiative)に日本再生の糸口を見いだし、PwCに転職し、日本での普及に全力を注ぎましたが、初めはまったく相手にされませんでした。その後、地方から日本を元気にできればと、門外漢の行政に横浜市副市長として飛び込みますが、改革は容易でなく困難の連続でした。この数年間は、循環型経済社会の実現に向けて格闘しています。

岡西
女性活躍促進という点で、現状をどのように見ていらっしゃいますか。
野田
女性に限らず、どうしてもマイノリティーの声は届きにくいものです。やはり一定の数が必要ですね。一方で自身の歩みを振り返ると、いろんな「石」、時には「地雷」もありましたが(笑)、諦めずに努力し続ければ必ず誰かが手を差し伸べてくれる、ということを経験してきました。松田さんもそのお一人でした。どういう立場であれ、信じるところに向かって進み続けることこそ、道を拓くために必要だと思っています。
岡西
最後に、経済同友会での地域共創委員会の活動について教えてください。
野田
「地方創生」から「地域共創」へと一昨年、名前を変えました。各地の経済同友会と対話を重ね、共に地域の価値を創り出せるよう、活動してまいります。地域が豊かになり、人々のウェルビーイングが向上するように、委員の皆さまと一緒に考え、行動したいと思います。
書家 岡西 佑奈
1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。