私の一文字
2023年7月号
会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、寺田航平副代表幹事にご登場いただきました。
今月は、寺田航平副代表幹事にご登場いただきました。
『鎹』のごとく、つなぐ
副代表幹事 寺田 航平
寺田倉庫 取締役社長
寺田倉庫 取締役社長

岡西
「鎹」には「かねへん」と「送る」が含まれていますが、この「送る」部分が転じ、つなぐ意味で使われるようになりました。日本でつくられた国字だという特徴もあります。
寺田
「つなぐ」という役割は、まさにこの文字を選ぶに際して思ったことです。私自身、人と人、人と仕事をつなげることも多く、一期一会を大事にしながら人と接してきました。当社は一般的な倉庫会社に比べ、「預かる」に特化していることが特徴なのですが、お預かりしたものの先にある、お客さまの人生ともつながるような感覚で仕事をしています。
岡西
事業自体が「鎹」の意味に重なってくるのですね。
寺田
まちづくり事業も行っているのですが、これも倉庫という箱に命を吹き込み、人と人をつなぐ結節点となればと思っています。単にイベントを開催するだけではなく、複数の企画が掛け算のようにつながり、何か新しいものが生まれる場にしていきたいですね。
岡西
「つながり」よりも強いニュアンスを感じます。
寺田
表には見えないけれども、無くてはならない、という意味合いもあるかもしれません。生産者と消費者、卸会社とエンドユーザーといった接点をつくることもありますが、裏方として各産業の発展に寄与したいと思っています。アートも同様です。お客さまからお預かりした貴重品をデータ化することで、眠ってしまうモノに命を吹き込んで、それを活かすことが可能となります。当然開示するかどうかはお客さま次第ではありますが、それぞれの業界で必要なエコシステムを構築し、伝承につなげていきたいと思っています。

岡西
広がりをつくっていくために、意識されていることはあるのでしょうか。
寺田
特にまちづくりは、私の代だけではなく、この街を肌で感じながら過ごしてきた70年の歴史に依るものだと思っています。ただ大事なことは、自分たちの持つ強みと元々の基盤、そして事業特性と時代の流れとをうまく掛け合わせていくことでしょう。そこから、新しい方向に進むチャンスが広がると思っています。
岡西
最後に、経済同友会の副代表幹事として、今後の展望をお聞かせください。
寺田
日本はうまくいき過ぎた社会のシステムが、結果として新しい変革を滞らせてきたのだと思います。未来に向けて変えていくべきことは、誰かが声を上げて取り組んでいかなければなりません。経済同友会は個人の集まりである分、一番正しく世の中に声を上げられる団体だと思います。新体制となり、変革に向けて加速しようとしているところです。私自身も「鎹」のようにそれを下支えし、取り組んでいきたいと思っています。
書家 岡西 佑奈
1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。