◆31 国際経済秩序の形成、成長市場・パートナー国との共創
2026年9月 公益社団法人 経済同友会
| 位置づけ | ⑥ 世界市場での事業拡大 | 時間軸 | 長期 ~2035年「高付加価値国家の完成」 | 力 | 〈稼ぐ力〉 |
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基本的な考え方
経済同友会は、自由で公正な国際経済秩序の維持・発展、日本企業による世界市場の成長力の取り込み、各国・地域との経済関係の強化に向け、政策提言に加え、海外の企業経営者、政府関係者、経済団体、オピニオンリーダー等との継続的な対話・交流に取り組んできた。
国際情勢や経済環境の変化に応じて重点テーマや対象地域も変化している。これまで、経済連携、アフリカとの共創、開発金融、英国や韓国等との産業協力などについて提言を発出してきた一方、現在は、米国、欧州、ASEAN、中国、韓国、インド、中東・アフリカなど主要国・地域との対話を通じ、経済安全保障、通商・投資、先端技術、サプライチェーン、成長市場への事業展開等について議論を深めている。
経済同友会の主張 サマリー
課題認識
人口減少と国内市場の成熟により、日本企業が中長期的な成長力を維持・強化するには、海外市場の成長需要を取り込むことが不可欠である。
一方、保護主義の拡大、地政学リスク、経済安全保障、サプライチェーン再編、デジタル・AIを含む国際的なルール形成など、企業の海外事業を取り巻く環境は急速に変化している。こうした環境下では、政府間の経済連携に加え、企業・経済界による継続的な対話を通じて相互理解を深め、安定的かつ予見可能な国際経済関係を構築することが重要である。
また、世界経済の成長の重心が新興国・途上国へ広がる中、日本企業が各地域の成長機会を捉え、現地の社会課題や産業発展にも貢献する共創型の事業を拡大することが求められる。
目指すべき方向
自由で公正な国際経済秩序を維持するとともに、主要国・地域との官民双方の対話を重ね、日本企業が安定的に世界市場で事業を展開できる環境を形成する。その上で、各国・地域の経済・社会の変化を的確に捉え、先端技術、サプライチェーン、エネルギー、デジタル、人的交流など、日本と相手国双方の強みを活かせる分野で協力を具体化する。
新興国・途上国については、単なる市場や援助対象ではなく、社会課題の解決と経済成長を共に実現するパートナーとして位置づけ、企業、政府、国際機関等との連携を通じて、日本企業の事業機会の創出につなげる。
現在の重点的な取り組み [2026年度]
現在の国際交流・対話活動では、国際情勢や日本企業を取り巻く事業環境を踏まえ、以下の国・地域との継続的な対話・交流を重点的に進めている。
- 米州
日米関係を国際経済・安全保障の重要な基盤と捉え、米国の政治・経済情勢や通商政策を把握するとともに、企業経営者、政策関係者、シンクタンク、経済団体等との対話を継続する。経済安全保障、先端技術、投資、サプライチェーン等を横断的に捉え、日米経済関係の安定的な発展と新たな事業機会について議論する。 - 欧州
EUによるデジタル、AI、環境等のルール形成を注視し、日本企業への影響と事業機会を検討する。英国経営者協会、日独産業協会をはじめとする欧州の経済界との対話を通じ、経済安全保障、グリーン、先端技術、新興市場などの共通課題について連携を深める。 - アジア
ASEANについては、日本企業にとっての生産拠点としてのみならず、成長する市場・イノベーションのパートナーとして共創プロジェクトを立ち上げる。中国については、経済・政治情勢や事業環境の変化を把握し、リスク管理を進めながら官民の対話を継続する。韓国とは先端技術等を中心とする産業協力を具体化し、インドとは巨大な成長市場としての可能性を踏まえ、企業・有識者等との交流を通じてビジネス機会と課題への理解を深める。 - 中東・アフリカ
エネルギー・金融等で重要性を持つ中東、人口増加と経済成長が期待されるアフリカについて、現地の企業・政府・国際機関等との対話を通じ、市場や社会に対する理解を深める。アフリカについては、これまでの政策提言も踏まえ、日本企業による事業展開や現地パートナーとの共創を具体化するための取り組みを進める。
これまでの主な提言・主張
本分野では、国際経済環境や各地域との関係の変化を踏まえ、その時々の重要課題について提言・意見を発信してきた。以下は、これまでに示してきた主な考え方である。
1.自由で公正な国際経済秩序と経済連携
主に2019年以降
- WTO改革、EPA、CPTPP等を通じたルールベースの経済秩序の維持・強化
- デジタル貿易・データ流通等の国際ルール形成への積極的な関与
- 経済安全保障と自由で開かれた貿易・投資環境とのバランスの確保
- 保護主義や過度な経済のブロック化を回避し、企業の予見可能性を向上
2.アフリカとの共創型経済関係
2019年提言以降、2021年、2025年に具体化
- アフリカを援助対象としてだけでなく、成長市場・共創パートナーと位置づける
- 社会課題を起点として日本企業の事業機会と現地の産業発展を結びつける
- 市場参入を行わないことによる機会損失、いわゆる "Cost of Inaction" も踏まえた中長期的な関与
- TICADを案件形成、投資実行、フォローアップにつながる官民連携の場として活用
3.官民連携・開発投資による海外事業基盤の強化
2021年提言等
- ODA、公的金融、保証、民間資金等を組み合わせ、海外事業の初期リスクを低減
- フィージビリティ調査から実証、商業化、スケールアップまで切れ目なく支援
- 特にアフリカについて、民間投資を後押しする継続的な官民連携の仕組みを構築
4.パートナー国との産業連携・ルール形成
2021年以降
- 英国をはじめ価値や利益を共有する国々と、デジタル、データ、金融、サービス、知的財産、サプライチェーン等で連携
- 韓国とは、AI、半導体、データ、デジタルインフラ、標準化、人材等の分野で相互補完的な産業協力を推進
- 二国間の経済関係のみならず、国際的なルール形成や第三国市場での協力につなげる
参考:近年の国際経済環境・政府間連携の主な動き
経済同友会自身の活動上の優先順位とは別に、日本企業を取り巻く国際経済環境では、主要国・地域との間で経済安全保障、サプライチェーン、エネルギー、先端技術等に関する政府間連携が進展している。
- CPTPP:2024年12月、英国が加入
- ASEAN:2025年10月の日ASEAN首脳会議において、サプライチェーン強靱化、経済共創、GX・DX等について連携を確認
- インド:2025年8月、今後10年の日印関係を見据え、経済安全保障、半導体・重要鉱物、AI、デジタル人材等を含む協力を確認
- カナダ:2026年3月、経済安全保障、重要鉱物、エネルギー、AI・量子等を含む日加協力の方向性を確認
- 豪州:2026年4月、経済安全保障、重要鉱物、エネルギー、食料、サプライチェーン等について協力を確認
こうした国際環境の変化を継続的に把握しながら、経済同友会としても、企業経営者による民間外交・国際対話を通じ、日本企業の国際競争力向上と安定的な国際経済関係の形成に貢献していく。
参照提言
- アフリカ進出のすすめ(2019年2月27日)
- 経済連携のさらなる拡大と深化に向けて(2019年5月9日)
- 変容するグローバル社会における新たな「連携」(2020年5月27日)
- 英国経営者協会と経済同友会との共同文書(2021年6月4日)
- 「アフリカ投資機構(仮称)」の設立を~開発投資の加速に向けた更なる官民連携強化の道筋~(2021年10月6日)
- G7広島サミットに向けた提言~より包摂的な世界を築いていく“Boundary Spanner(結節点)”として~(2023年3月31日)
- TICAD9を契機にアフリカへのコミットメントの具現化を “Cost of Inaction”に目を向け、共創を通じて成果を生み出す(2025年3月5日)
- 経済同友会・韓国貿易協会 共同提案「AI時代の日韓産業協力」― 米中主導のAI競争を前提に、日韓が取るべき産業連携の共創領域を提示 ―(2026年1月14日)