◆15 就労環境・ダイバーシティ

2026年5月 公益社団法人 経済同友会

位置づけ ③ 豊かさと幸福の実感 時間軸 長期 ~2035年「高付加価値国家の完成」 〈支える力×分かち合う力〉

提言のポイント

  • DEI経営の推進と包摂的な職場環境の整備
  • ジェンダー平等と真の共働き・共育て社会の実現
  • 選択的夫婦別姓制度の早期実現と旧姓使用に伴う不利益の解消
  • ハラスメントから従業員を守る安全・安心な就労環境の整備
  • DEI・両立支援・就労環境改善を促す政策インセンティブ

経済同友会の主張 サマリー

課題認識

日本においては、多様な人材が能力を十分に発揮しにくい制度・慣行・職場風土が残っている。企業における多様性の確保が、組織文化、評価、働き方、家庭責任、顧客対応まで含めた実質的な包摂には至っていないという点にある。女性活躍は進展しているものの、キャリア継続や意思決定層への参画を妨げている。また、カスタマーハラスメントの深刻化により、従業員の安全・尊厳・安心して働く権利が脅かされている。また、選択的夫婦別姓制度が実現しない中、旧姓の通称使用拡大を法制化する動きがあるが、旧姓の通称使用は国際的には安全保障上のリスク要因になり得る。

目指すべき方向

ダイバーシティを生産性向上、イノベーション創出、企業価値向上の源泉として位置づける。企業は、経営トップのコミットメントの下、DEIを経営戦略・人的資本経営の中核に据え、公正で包摂的な職場文化、育児と就労を両立できる制度、安全で尊厳ある就労環境を整える。社会全体としては、男女がともに働き、ともに育てる「真の共働き・共育て社会」を実現する。

具体的な施策

  1. DEI経営を推進し、包摂的な職場環境を整備
  2. ジェンダー平等と真の共働き・共育て社会を実現。選択的夫婦別姓制度の早期実現
  3. カスタマーハラスメント等から従業員を守る安全・安心な就労環境を確保
  4. DEI・両立支援・就労環境改善を促す政策インセンティブと企業行動の可視化

現状 2026年4月時点

カスタマーハラスメント対策、女性活躍促進、仕事と育児の両立支援については、2025年の労働施策総合推進法等改正を機に制度整備が進展。包摂的な職場環境づくりに向けた企業行動の可視化・政策的インセンティブは法的・制度的実装は限定的。女性活躍推進法改正により男女間賃金差・女性管理職比率の公表義務化(2026年1月施行)。

選択的夫婦別姓制度は2025年に28年ぶりに国会審議入りしたが、法案成立には至っていない。

施策1 女性活躍推進法改正、SOGI(性的指向・性自認)ハラスメント対応等が進展。DEIを包摂的に制度化する段階には至っていない。
施策2 2025年女性活躍推進法改正により、男女間賃金格差、女性管理職比率、雇用環境整備実績などの公表義務付け。同年改正育児・介護休業法により男性育休の取得率等の公表義務が拡大。選択式夫婦別姓制度については、1996年法制審議会による提案から30年、2025年に28年ぶりに国会で民法改正案が審議入りしたが、旧姓の通称使用法制化案も並行して議論されている。
施策3 2026年1月より段階的に施行。カスハラ防止が事業主義務に。ストレスチェック制度の全事業場義務化も2026年実施。
施策4

法改正により企業による情報公開義務が拡大、人的資本開示も進捗しているが、政策インセンティブと体系的な指標整備の段階には至っていない。

提言内容 詳細

1. DEI経営の推進と包摂的な職場環境の整備

  • ダイバーシティを、生産性向上・イノベーション創出・企業価値向上の源泉として位置づけ
  • 経営トップがDEI推進にコミットし、KPI設定、人事制度、福利厚生等に反映
  • 性別、年齢、障がい、性的指向・性自認、婚姻状況、家庭責任等による不利益をなくし、公正な機会と処遇を確保
  • 多様な人材が意見を表明し、意思決定に参画できる心理的安全性と包摂的な組織文化を形成

2. ジェンダー平等と真の共働き・共育て社会の実現

  • 夫婦同姓を規定する民法 750 条を改正し、婚姻時、夫婦が同姓、または 各自の婚姻前の氏を称することができる選択的夫婦別姓制度を導入
  • 同制度に対し、国民の理解を深めるための啓発活動を強化
  • 同制度の導入に向けたロードマップを策定し、公表
  • 旧姓の通称使用拡大を法制化する動きがあるが、旧姓の通称使用は国際的には安全保障上のリスク要因になり得ることに留意(上玉利委員改訂案より採用)

4. ハラスメントから従業員を守る安全・安心な就労環境の確保

  • カスタマーハラスメントの定義の明確化と法的対応の整備
  • カスタマーハラスメントを企業の安全配慮義務・職場環境配慮義務の問題として位置づけ
  • 経営者が対応方針を明確にし、現場判断基準、相談・通報体制、従業員保護措置等を整備

5. DEI・両立支援・就労環境改善を促す政策インセンティブ

  • DEI、男性育休、福利厚生、ハラスメント対応等を人的資本経営の重要項目として可視化
  • 女性管理職比率、男性育休の質、福利厚生利用状況、ハラスメント対応状況、企業内出生率等を経営指標として活用
  • 企業の就労環境整備を促す制度・税制インセンティブ設計➤ 好事例の横展開、中小企業向け実務ガイド、研修、相談体制の整備

参照提言

  • 生産性革新に向けたダイバーシティの進化-グローバル、デジタル時代を勝ち抜くためのKPI-(2016年7月6日)
  • ビジネスリーダーによる多様性ある、公正で、包摂的な社会の実現への協働宣言(2023年6月22日)
  • 選択的夫婦別姓制度の早期実現に向けた要望(2024年3月8日)・ 企業・経営者によるカスタマーハラスメント対応強化に向けて(2024年10月1日)
  • イノベーション創出へのDEI経営~第二章:男性育休から考える育児のジェンダー平等~(2025年4月23日)
  • 社会全体で育み、活力ある未来を共創する~多様な働き方を支える「真の共働き・共育て社会」の確立へ~(2025年6月10日)

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