◆6 経済安全保障・貿易管理

2026年5月 公益社団法人 経済同友会

位置づけ ② 安心・安全の基盤確立 時間軸 中期 ~2030年「供給力の抜本的強化」 〈支える力×分かち合う力〉

提言のポイント

  • 国家戦略としての経済安全保障体制の構築
  • 重要技術・産業基盤の育成と研究開発セキュリティの確保
  • 技術流出防止・技術管理のための官民対話と実務ガイドライン整備
  • 政府の技術インテリジェンス機能強化と企業支援体制の整備
  • 輸出管理・セキュリティ・クリアランス制度の実効化と情報保全体制の整備
  • サプライチェーン・重要インフラ・サイバーの強靱化
  • 国際ルール形成・同志国連携への能動的関与

経済同友会の主張 サマリー

課題認識

米中対立、ウクライナ侵略、先端技術を巡る覇権競争、サプライチェーン分断リスクの高まりにより、経済活動と安全保障が不可分に。半導体、AI、量子、バイオ、宇宙、サイバー等の重要技術は、産業競争力だけでなく国家安全保障にも直結。一方、従来型の輸出管理だけでは、事業活動を通じた技術流出リスクに十分対応できないが、経済安全保障を名目とした過度な規制は、企業の研究開発、国際連携、投資、スタートアップ成長を萎縮させるおそれがある。

目指すべき方向

経済安全保障を重要技術・産業基盤の育成、必要な技術・情報を保護、企業の国際競争力を向上に資する攻守一体の国家戦略として位置づける。政府は、技術インテリジェンス、官民対話、企業支援、制度の予見可能性、国際連携を強化。企業は、自社技術・情報・サプライチェーンのリスクを経営課題として把握・管理。自由貿易・市場原則とのバランスを保ちつつ、同志国と連携し、国際的に通用する技術管理・情報保全・セキュリティ・クリアランス制度を整える。

具体的な施策

  1. 国家戦略としての経済安全保障体制の構築
  2. 重要技術・産業基盤の育成と研究開発セキュリティの確保
  3. 技術流出防止・技術管理・輸出管理制度の実効化
  4. 政府インテリジェンス機能と企業支援体制の強化
  5. サプライチェーン・重要インフラ・サイバーの強靱化
  6. 国際ルール形成・同志国連携への能動的関与

現状 2026年4月時点

経済安全保障推進法に基づき、4制度(特定重要物資の安定供給確保、基幹インフラ役務の安定供給確保、先端的重要技術の開発支援、特許出願の非公開)の実装・運用が進行。特定重要物資の指定~対象拡大(2022年~2025年12月)、技術管理強化のための官民対話スキームの始動、重要経済安保情報保護活用法(セキュリティ・クリアランス制度)の施行(2025年5月に)、技術流出防止ガイダンスおよび経済安全保障経営ガイドラインの発表等

施策1 経済安全保障推進法に基づく4制度が具体化・拡充。2025年5月に「技術流出対策ガイダンス(第1版)」、2026年1月に「経済安全保障経営ガイドライン(第1版)」が発表済み。パブコメを通じた対象技術の追加検討も進行中。
施策2 Kプログラムを中心とした重要技術・産業基盤育成、研究セキュリティ・インテグリティに係る制度整備が進捗。後者については有識者会議で議論を通じ手順書を策定。
施策3 重要管理対象技術提供を目的とする取引について、経済産業大臣への報告を求める告示を制定。これを受け、技術管理強化のための官民対話スキームが確立される等、制度導入面では進捗。
施策4

経済産業省による経済安全保障経営ガイドラインの公表。シンクタンク設置による技術インテリジェンス機能強化は検討途上。

施策5

特定重要物資制度の対象拡大、安定供給確保に関わる民間事業者を政府が支援。サイバーについても、2025年サイバー対処法力強化法・同整備法により、能動的サイバー防御等の体制整備が進展。

施策6

G7、同志国との政治的合意、セキュリティ・クリアランス制度整備、FOCIの論点か等が進むが、国際的な相互運用の具体化・実行化は今後の課題。

 

提言内容 詳細

1. 国家戦略としての経済安全保障体制の構築

  • 経済安全保障を、技術、産業基盤、サプライチェーン、データ、サイバー、人材を含む国家戦略として位置づけ
  • 省庁横断の司令塔機能を強化、守るべき技術・情報・インフラと、育成すべき産業・技術領域を明確
  • 規制・支援・情報提供を一体で設計し、経済安全保障と民間企業の研究開発・事業活動を両立

2.重要技術・産業基盤の育成と研究開発セキュリティの確保

  • 半導体、AI、量子、バイオ、宇宙、サイバー等の重要技術を特定し、研究開発、量産、標準化、人材育成まで一体で支援
  • 国が支援する研究開発プログラムにおいて、研究のインテグリティとセキュリティを確保
  • 民間セクターの過度な萎縮を招かないよう、重要技術の育成と技術流出防止を一体的に設計
  • デュアルユース技術について、防衛技術と民生技術を過度に分断せず、産業競争力強化にもつながる形で活用

3. 技術流出防止・技術管理のための官民対話と実務ガイドライン整備

  • 半導体ロードマップ等を参考に、技術進化の道筋や管理対象となり得る重要技術の範囲を提示
  • 技術流出防止の対象範囲、管理水準、実務対応を明確化したガイドラインを整備
  • 重要管理対象技術の選定根拠について、対象となり得る事業者に対し、丁寧な事前説明と正確な情報発信を徹底
  • 官民対話を通じ、企業自身がインテリジェンス機能を強化し、自社技術の国際競争・安全保障上の立ち位置を把握

4. 政府の技術インテリジェンス機能強化と企業支援体制の整備

  • シンクタンク設置等により、政府の技術インテリジェンス機能を強化、技術動向・地政学リスク・産業競争力を一体で分析
  • 関係官庁に相談窓口を設置し、企業・大学が事前相談できる体制を整備
  • 中小企業・スタートアップに対し、技術流出防止、輸出管理、情報保全体制整備に係る実務支援
  • 政府が有する機微情報や技術インテリジェンスを、守秘を前提に必要な範囲で民間と共有し、官民双方の判断精度を向上

5.  輸出管理・セキュリティ・クリアランス制度の実効化と情報保全体制の整備

  • 輸出管理・技術管理に係る判断基準・考え方を明確化し、企業の予見可能性を高める
  • セキュリティ・クリアランス制度を適切に設計・運用し、民間企業・研究機関が重要経済安保情報を活用できる環境を整備
  • 適合事業者認定を検討する企業に対する十分な判断材料の提供
  • FOCI(外国の所有・支配・影響)に関する指針・マニュアルを整備し、十分に周知
  • 官民双方が持つ機微情報を正しく守るため、情報指定、共有、保管、アクセス管理、解除に関する情報保全体制を整備

6. サプライチェーン・重要インフラ・サイバーの強靱化

  • 重要物資、重要部素材、製造装置、ソフトウェア、クラウド等の依存構造と脆弱性を把握
  • 調達先多元化、国内生産基盤確保、備蓄、代替技術開発、同志国連携によりサプライチェーンを強靱化
  • 基幹インフラにつき設備、システム、委託先、保守運用、データ管理を含むリスク評価を強化
  • サイバーセキュリティを経営課題として位置づけ、官民の脅威情報共有、能動的サイバー防御、中小企業支援を推進

7. 国際ルール形成・同志国連携への能動的関与

  • 経済安全保障と自由貿易・市場原則のバランスを取り、過度な保護主義やブロック化を回避
  • G7、OECD、WTO、IPEF、日米欧連携等を通じ、技術管理、AI、サイバー、研究セキュリティ等の国際ルール形成に関与
  • FOCIを含む制度整備と政府間交渉により、諸外国に通用するセキュリティ・クリアランス制度を構築
  • 特定秘密保護法との適性評価結果のポータビリティを確保し、国際共同研究・調達で日本企業が不利にならない運用を実現

参照提言

  • 強靭な経済安全保障の確立に向けて―地経学の時代に日本が取るべき針路とは―(2021年4月21日)
  • 経済安全保障法制に関する意見(経済安全保障法制に関する有識者会議提言を踏まえて)(2022年2月16日)
  • G7広島サミットに向けた提言~より包摂的な世界を築いていく“Boundary Spanner(結節点)”として~(2023年3月31日)
  • “Politics meets Technologies.”の時代を生き抜く国と企業の戦略(2023年5月15日)
  • 「経済安全保障に係る産業・技術基盤強化アクションプラン」への意見(2023年12月4日)
  • セキュリティ・クリアランス法制に関する意見(2024年2月22日)
  • 「経済安全保障上の重要技術に関する技術流出防止策についての提言~国が支援を行う研究開発プログラムにおける対応~」への意見(2024年6月27日)
  • 「貿易関係貿易外取引等に関する省令の一部を改正する省令(案)等」に対するパブリック・コメント(2024年10月3日)
  • 「Cyber Security Everywhere」時代~経営者の8つのアクションと政府への6つの提言~(2024年10月23日)
  • 「重要経済安保情報の指定及びその解除、適性評価の実施並びに適合事業者の認定に関し、統一的な運用を図るための基準(案)」に対する意見(2024年12月25日)
  • 能動的サイバー防御の実現に向けて~サイバー対処能力強化法案及び同整備法案の早期成立を~(2025年3月10日)
  • サイバーセキュリティ戦略(案)に関する意見(2025年11月18日)

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