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「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」に対する意見

社団法人 経済同友会

はじめに

法制審議会会社法部会は、本年4月、「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」(以下、「中間試案」という)をとりまとめ、パブリックコメントに付した。

経済同友会は、従来より様々な機会をとらえ、企業法制、とくに商法のあり方について、抜本的な見直しも含めて以下のような視点を踏まえつつ提言してきたところである。

1.規制緩和と企業の自律性の尊重

企業活動の維持・高揚・生産性の向上、経営の効率化・合理化の視点から、企業活動の自由度が高いレベルで保障され、企業の創造性がいかんなく発揮される経済環境(民間主導型市場経済)が必要である。民間主導型市場経済では、法制は市場原理を維持するために必要かつ最小限度のものとし、企業活動について広範囲な裁量が認められなければならない。

一方、企業には高度の自己規律と法制の遵守が不可欠となるとともに、行政に依存しない自己責任の意識の徹底が必要である。

2.透明性・健全性の向上

経営者には、企業が社会の公器であるとの自覚のもと、市場原理に則った透明性・健全性の高い経営が求められる。

情報を開示し、外部と共有化することが、自らの企業経営の質を高めるということを認識して、市場の信頼性の確保に向けて、積極的にタイムリーで継続的なディスクロージャー(情報開示)を推進することが肝要である。

3.国際的ハーモナイゼーション

経済活動のグローバル化とともに、企業の活動に国境はなくなりつつある。  法制度についても国際的整合性の視点が必要となってくる。 ただし、諸外国の制度を取り入れるにあたっては、その背景となっている他の諸制度や、当該制度を機能させる前提となる条件・環境などを十分に考慮したうえで、導入を検討すべきである。

われわれは、今回の中間試案が、企業間の国際的な競争の激化やIT革命等、企業を取りまく社会経済情勢の変化を踏まえ、商法の抜本的見直しを目指していることを評価するものであるが、以上のような視点を踏まえつつ、会社の機関関係、計算・開示関係、株式関係について、それぞれ意見を述べることとする。

I 会社の機関関係

1.総 論

民間主導による市場経済においては、企業活動の自由度が最大限に確保されることにより、闊達な企業マインドが醸成され、その活動の成果として、グローバルマーケットにおける強い競争力の獲得があることは論ずるまでもない。

一方で、自由度の高い企業活動を可能ならしめる環境は、企業・経営者のたゆまない努力と同時に株主からの強い要請を意識することにより支えられる、という認識も必要である。

こうしたなか、既に一部の日本企業は、取締役会のスリム化、経営戦略・監督機能と業務執行機能との分離の観点からの執行役員制の導入、社外取締役の登用など、現行法制度の枠内で、国際的にも通用するコーポレート・ガバナンスの確立に向けて、自主的・積極的にその見直しに取り組んできているところである。

しかしながら、コーポレート・ガバナンスの構造は各国によりまちまちであり、単一のグローバル・スタンダードが存在するとは言い難い。しかも、要求されるコーポレート・ガバナンスのあり方は、個々の企業の規模や歴史、業種や市場によっても異なってくる。したがって、グローバル・スタンダードに関する国際的論議と動向を見守りつつも、企業の選択と自主的な改革努力を尊重すべきである。

このような場面におけるわが国商法の役割は、諸外国やわが国の様々な国際的に通用するモデルの中から各企業が自由に選択・導入できるメニューを提示することにあるのではないか。法律上の義務づけは必要最小限にし、各企業が、自己責任において、自らの置かれた環境に応じたふさわしい姿を選択できるようにすればよいのである。

この点は、コーポレート・ガバナンスにおいてチェック・アンド・バランスをどのようにとるかについてもあてはまる。チェック機能の過度な強化は経営の萎縮を招くおそれがあるため、経営の執行とそのチェックについて適切にバランスをとることが求められる。

また、企業間競争の激化により、企業はよりスピーディな意思決定を求められる場面が増えており、商法もそのニーズに応えて、意思決定手続の簡素化等により、手続規制を緩和すべきである。

2.各 論

(1)各種委員会制度及び執行役制度の導入について

変化とスピードの時代において、日本企業の多くは、事後のチェック機能を主とする監査役制度に加えて実質的に意思決定時にチェック機能を果していく社外取締役の登用や、執行役の登用による業務執行と監督の分離を図るなど移行期にある。

今回の中間試案においては、大会社について、現在の監査役制度をとらない場合の条件として、監査委員会・指名委員会・報酬委員会及び執行役の採用を掲げている。これは、米国における制度を参考にしているものと思われるが、米国のニューヨーク証券取引所の上場規則においても、設置が義務づけられているのは監査委員会のみである。

中間試案が、各種委員会及び執行役を、新たにそれぞれ法律上の制度として位置づけ、監査役制度との選択を可能としていることには賛成である。しかし、「3委員会プラス執行役」のセットでの導入に限定すべきではなく、監査役制度をとらない場合は、社外取締役が半数以上を占める監査委員会の設置のみで代替できるようにすべきである。

いずれにせよ、国際的に通用する企業統治(透明性と競争力の確保)が実践できることが重要である。

(2)社外取締役選任の義務化について

日本企業の中には自主的に社外取締役を登用したり、現行の監査役制度を最大限活用して、社外監査役の増員や監査役の経営会議への出席などによってコーポレート・ガバナンス機能を強化しようと努力している企業も多い。

コーポレート・ガバナンスとは、優れたチェック・アンド・バランスの仕組みを確立し、競争力とコンプライアンスの強化を同次元で実践することであり、そのなかで、経営に社外の視点を取り込むことは不可欠である。こうした観点から米国では、連邦レベルでの統一会社法がないためニューヨーク証券取引所の上場規則で社外取締役を2名以上置くことを義務付けていることは承知している。

しかしながら、上記のような日本企業の実情を勘案すると、チェック機能強化のための方法として、すべての大会社に社外取締役の選任を法律上義務づける必要はない。ただ、証券取引所の上場規則で上場会社について、一定の猶予期間を示した上で、複数の社外取締役を義務付けることは望ましいと考える。

すなわち、日本企業は現在変革の過渡期にあり、法律上の義務としては必要最小限にとどめ、当面は各企業の自由裁量に委ねるべきである。なお、中間試案の選択制が実現すれば、監査役制度を採用しない大会社においては、当然のこととして複数の社外取締役からなる監査委員会が設けられることになることは言うまでもない。

(3)取締役の任期短縮について

大会社の取締役の任期を法律で一律に1年とすると、短期的な業績のみが重視され、長期的な戦略に基づく経営を阻害するという懸念もある。取締役の任期の妥当性は、企業の規模・業種など個々の企業の置かれた状況によっても異なるのではないか。

取締役の任期については、現行どおり、法律上は最長2年とし、各会社の定款で任期を短くできる余地を残しておけば十分である。

(4)意思決定手続の規制緩和について

株主総会の特別決議の定足数の緩和、利益処分案の株主総会から取締役会の決議事項への移行、書面による株主総会決議・取締役会決議の導入など、意思決定手続の規制緩和、簡素化がはかられている点は、評価できる。

II 会社の計算・開示関係

会社の計算・開示制度については、ディスクロージャーの充実やグローバル・スタンダードとの整合などの視点が不可欠である。

(1)資産評価等に関する規定の方法について

資産評価等に関する規定に関し、商法から法務省令に委任することについては、会計基準の国際的な調和にすみやかに対応するという観点から、適当であると考える。

(2)連結貸借対照表及び連結損益計算書の作成について

商法に連結貸借対照表、連結損益計算書を導入することについては、企業集団に関する情報開示の充実という観点から適当であると考える。

ただし、連結計算書類の作成にあたっては、企業に過度な負担がかからぬよう、連結財務諸表規則の規定によることとするなど、一定の配慮が必要である。

さらに、SEC基準や国際会計基準など、海外の会計基準に基づいて作成された財務諸表についても、商法上認めることが適当である。

(3)貸借対照表等の公開について

貸借対照表・損益計算書・監査報告書の公開は、企業の情報開示の観点から基本的には望ましい方向であるが、既存の公告制度や証取法上の有価証券報告書提出制度との調整もはかる必要があるのではないか。

III 株式関係

(1)ストック・オプションの付与対象者拡大等について

株式関係についても、ストック・オプションの付与対象者の拡大や株券不発行制度の導入など、規制を緩和し、企業の裁量の余地を広げている点は評価できる。

(2)新株発行規制の見直しについて

発行済株式数の一定比率を超える新株発行を行う際に、株主総会の特別決議を新たな要件として課しているが、これは、企業の迅速な意思決定と機動的な業務運営を妨げるものであり、前述の会社の機関関係の一連の意思決定手続の規制緩和とも矛盾するものである。少なくとも、現行どおり、取締役会決議を要件とすれば十分である。

以上


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