政策提言

部活動の地域展開を起点とした好循環モデルの構築を
~スポーツ・文化芸術分野の投資と成長の好循環に向けて~

# スポーツ・文化 # 地域経済 # 子ども・子育て # 教育
2025年度スポーツと文化による社会の再生PT
委員長 木村 弘毅
(MIXI 取締役社長 上席執行役員 CEO)
委員長 山口 栄一
(アートパワーズジャパン 代表理事)

 部活動の地域展開(地域移行・地域連携)は、教員の長時間勤務の是正や少子化への対応を契機として進められてきました。しかし現状は、理念が先行し、必要となる財源規模、担い手確保、地域差への対応などの実装上の課題に十分な対応がなされているとは言い難い状況です。とりわけ、部活動の地域展開には相当規模の恒常的財源が不可欠であり、財源規模と確保策を曖昧にしたまま改革を進めれば、改革の空洞化、教員負担の逆戻り、あるいは活動機会の縮小による地域間・家庭間格差の拡大を招くおそれがあります。
 部活動は、子どもたちが学業とは異なる分野で挑戦や努力を経験し、協調性や責任感を育むとともに、体力の向上や豊かな情緒や感受性の涵養をもたらす重要な機会であり、さらには日本社会の豊かさや生活の質、人々の生きがいにも大きく関わるスポーツ産業や文化・芸術分野の基盤でもあります。本提言では、部活動改革を教育関係者だけの課題にとどめることなく、学校内外での人材育成、スポーツや文化・芸術を核とするコンテンツ産業の成長、地域の経済循環へとつながる社会基盤の再構築として捉える視点の下、中長期的な展望を示すとともに、改革の過渡期にある地方自治体の現場を支えるために、早急に取り組む必要のある現実的な財源・制度対応をまとめました。

提言のポイント  ※詳細は、別添の提言概要および本文をご確認いただきますようお願いいたします。

【部活動の地域展開をめぐる構造的課題】(第Ⅱ章)
 部活動の地域展開は、地方自治体の創意工夫の下で進められているが、その進展や持続可能性は、各地域の特性や人口規模によって大きく異なっています。本PT でのヒアリングを踏まえれば、地方自治体が置かれた地理的・経済的状況によって、主に以下の三つの類型に整理されます。

  1. 地域類型ごとに異なる課題
    ・大都市では、大学や企業などの人的資源の存在により指導者確保のハードルは相対的に低いものの、寄附や協賛だけで恒常的な財政基盤を確立することは容易ではなく、公的な財源なしに運営することは困難
    ・三大都市圏のベッドタウン型自治体では、地域クラブ化を前提として、保護者負担により指導者謝金や運営費を賄う仕組みが構築されつつある一方、子育て世帯が負担できる水準には限度があり、結果として市の財政負担を増加させる要因となっている
    ・過疎地域では、人口減少が進み、大学や各種団体・施設が少なく、企業支援なども期待しにくいことから、地域の子どもたちに公平な活動機会を保障するためには地方自治体が積極的に運営に関与せざるを得ず、自治体の財政負担が相対的に重くならざるを得ない
  2. 全国共通の課題
     以上のように、地域類型ごとに条件は異なるものの、持続可能な収支構造の構築、指導者の量と質の確保、保護者負担への配慮という課題は全国共通です。地域努力のみでこれらを解決することには限界がある以上、全国的に薄く広く下支えする仕組みが不可欠です。
  3. 財源確保こそ最重要の課題
     部活動の地域展開は、単に活動の場を学校外に移すことではなく、指導という労務を明確に切り出し、正当に評価し、有償で担う体制へと転換することを意味します。そのため、有償の指導者を安定的に確保するには、一過性の財政措置では不十分であり、継続的な財源の裏付けが不可欠です。
     この意味で、部活動改革の成否は、指導に対する対価をどのような仕組みで継続的に支払うかにかかっています。国・地方を通じた財政健全化と整合するかたちでの安定的な財源の確保こそ、部活動の地域展開の成否を左右する中心的課題であると認識しています。

【提言(早急に講ずべき4つの対策)】(第Ⅳ章)
 将来的には、スポーツ・文化芸術分野の「共創と循環」の実現が必要ですが、直ちに完成するものではありません。一方で、部活動の現場はすでに改革の過渡期にあり、現在の中学生世代が十分な活動機会を得られず、不利益を被る事態は回避しなければなりません。したがって、将来における「共創と循環」の実現を見据えつつも、当面、即実行可能な財源・制度対応を早急に講じることが不可欠です。
 その際に重要なのは、保護者負担を安易に拡大するのではなく、新たな財源確保に取り組むことです。企業参画を促す税制措置やスポーツ振興くじの活用であり、保護者負担と国による財政措置をそれらと組み合わせることで、必要額を担保していく必要を提言しています。

  1. 企業参画を促す税制措置
    ・部活動の地域展開を持続可能なものとするには、企業による継続的な関与を広げていくことが不可欠。
    ・企業支援に対する後押しは、財源確保に資するだけではなく、企業が有する指導人材や施設・用具、デジタル技術といった知見を部活動の現場に取り込むことにもつながり、ひいては部活動の地域展開を社会全体で支える仕組みへと発展させる契機となる。
    ・企業版ふるさと納税の拡充や、クラブチームでの支援や指導者派遣といった部活動の地域展開に関する企業の活動について、それに要した費用を法人税から税額控除する優遇措置の導入
  2. スポーツ振興くじ助成金の活用拡充策の実施
    ・任意参加型の財源であり、新たな税負担を伴わないスポーツ振興くじを最大限活用すべき。
    ・限られた原資の再配分にとどめず、スポーツ振興くじの魅力向上を図ることで、売上そのものを大幅に拡大する発想が必要
    ・様々なプロスポーツへの対象拡大を進めるとともに、チームの勝敗以外にも個人成績なども対象とするエンターテインメント性の高い投票形式の導入などの検討が必要。
    ・購入利便性の向上や新たな購入導線の整備、販促強化などの地道な運用改善を進めることにより、スポーツ振興くじを部活動の地域展開を支える基幹財源の一つとして強化。
  3. 円滑な部活動の地域展開のために双方向のコミュニケーションの徹底を
    ・居住地域や家庭環境にかかわりなく、すべての子どもがスポーツや文化・芸術に継続的に親しみ、健やかに成長していく社会を実現するため、保護者負担を最小化する努力が不可欠。
    ・各地方自治体には、部活動の移行計画の策定にあたり、保護者や生徒を対象とした説明会などの開催が必要。
    ・指導者、会場、交通手段、活動内容、費用、スケジュール、安全対策などを丁寧に説明し、不安や疑問にきめ細かく応えることで、保護者や生徒の理解と協力を得ることが必要。
    ・一方的な通知にとどめず、双方向のコミュニケーションを重視し、活動内容や費用負担に関する不安の払拭に努めるべき。
  4. 国による財政支援の充実
    ・スポーツ振興くじの拡充、企業参画を促す税制措置、保護者負担の制度化を講じてもなお必要となる財源額に不足する場合には、国として必要な財源を措置すべき
    ・将来における社会保障費の軽減やスポーツ産業の発展の効果を踏まえれば、国による財政措置は、単なる支出ではなく国家による投資として位置づけられる。
    ・これはスポーツ・文化事業の振興を国費のみで行うことを求めるものではなく、将来的な「共創と循環」の実現に向けた民間投資の呼び水と捉えるべき。

以上

本文 概要

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