政策提言

持続可能で強靱な医療システムへ ~7つの危機に立ち向かう2つの改革~

# デジタル化/IT # 医療・介護 # 安全保障/経済安全保障 # 社会保障
2025年度経済・財政・金融・社会保障委員会
委員長 武藤 真祐
(鉄祐会 理事長)
委員長 岩﨑 真人
(IGPIグループ エグゼクティブ・フェロー)
委員長 深澤 祐二
(東日本旅客鉄道 取締役会長)
委員長 福留 朗裕
(三井住友銀行 頭取CEO)
委員長 松江 英夫
(デロイト トーマツ グループ 執行役)

 国民の生命と安全を担保する不可欠な社会インフラである医療は、その持続可能性を脅かす複合的な「危機」にさらされており、「漸進的な改善」に留まる政策では、もはや現行制度の維持は困難です。医療機関の経営危機や地域医療の崩壊といった喫緊の課題への即応に加え、新興感染症や地政学リスク等の有事を見据えた強靭な体制構築まで、制度の根幹に踏み込んだ抜本的な改革が不可避です。
 本提言では、現行制度が直面する諸課題を「危機」として定義し、「具体的施策の方向性」を網羅的に整理した上で(第Ⅱ章)、既存制度の根底にある前提条件や運用の枠組み自体を抜本的に再構築(パラダイムシフト)すべき、新規性の高い2つの基幹改革に焦点を絞り、その具体的処方箋をまとめました(第Ⅲ章)。

提言のポイント ※詳細は、別添の提言概要および本文をご確認いただきますようお願いいたします。

【医療を取り巻く7つの危機と具体的施策の方向性】(第Ⅱ章)

7つの危機 具体的施策の方向性

1.医療機関経営の危機
 ―地域医療崩壊の危険水域

・医療機関自らが創意工夫によって生産性や収益性を高める規制緩和
・政府は診療報酬以外の手法(税制改革等)も組み合わせて支援

2.医療費膨張と財政硬直化の危機
 ―負担限界が迫る国民皆保険

・給付と負担のメリハリ付け(EBPMに基づくワイズスペンディング&応能負担の徹底)

3.医療提供体制の構造的危機
 ―病院過多・機能不明瞭・再編停滞

・各圏域の特性に即応した柔軟な施策展開を可能とする制度設計

4.医療従事者の不足・偏在の危機
 ―「量」と「質」両面の低下

・多種多様な専門職が高い倫理観と誇り、「やりがい」を堅持しつつ持続的に就業し得る環境の整備
・職種間の役割分担の再定義やチーム医療の深化、業務効率化など

5.有事対応の危機
 ―感染症・医薬品供給不足・地政学リスク

・平時から官民連携による緊密な準備を徹底し、有事に限られた医療資源を迅速かつ機動的に確保・配分し得る体制の構築

6.医療機関へのサイバー攻撃の危機
 ―診療継続と医療情報を脅かす新たな脅威

・危機管理投資の一環として、国が主導的な役割を果たす形でサイバーセキュリティ対策の強化

7.制度ガバナンスの危機
 ―診療報酬に過度に依存した意思決定構造

・診療報酬のみならず、税制措置、補助金、規制改革を重層的に組み合わせた、中長期的な視座に立つ医療制度改革プロセスの再構築

【提言(2つの改革)】(第Ⅲ章)

  1. 中長期のマスタープランに基づく診療報酬改定
    ・診療報酬制度の意思決定プロセスを「中長期ビジョン型」へと転換することが不可欠
    ・医療制度全体を俯瞰した5~10年サイクルのマスタープランを策定し、その中で診療報酬改定に関する「原則・方向性・中期目標」を示し、2年ごとの改定は「機動的な短期調整」として再定義

    ※運用にあたって重視すべき「格差の是正」に向けた具体策として、以下の2つを提言
    (1) 社会保険医療の消費税課税対象化
    診療報酬から消費税補てん分を切り離し、社会保険診療を「課税対象」へ転換
    (2) 地域別診療報酬制度の導入
    地域の実情に応じた柔軟な制度運用に向けて、国が決定する「基礎診療報酬」と都道府県が決定する「地方裁量診療報酬」の二階建て構造とする地域別診療報酬制度を導入
  2. 医療安全保障の実効力強化
    (1) サイバーセキュリティ対策の強化
    ・サイバーセキュリティ対策の強化を個別の中小病院の自助努力にのみ委ねるには既に限界を露呈
    ・国主導による支援の実効力を強化するため、「危機管理投資」の一環として、さらに踏み込んで以下の3つの対策が不可欠
     ①「専門アドバイザー」派遣事業の創設
     ②医療実務とITの両方に精通した人材の養成
     ③対策予算の拡充
    (2) 感染症への対応
    ・有事における限られた医療資源の最適配分を実現するため、現場の稼働状況を即時把握し得るデジタル基盤の構築とともに、特に以下の2つの取組みを実施すべき
     ①政府対策本部長(内閣総理大臣)の権限の明確化
     ②訓練の実施等

本文 概要

以上

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