「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上に向けて
~「取適法」施行を契機とし、社会全体での「価格転嫁の商習慣」の定着を~(経済3団体)
日本商工会議所 会頭 小林 健
経済同友会 代表幹事 山口 明夫
わが国経済は、長期停滞を脱し、成長型経済への移行、地域経済の好循環を実現する好機を迎えている。一方、人口減少や人手不足、賃金引上げに伴う労務費の増加、円安やコスト上昇によるコストプッシュ型のインフレ、消費低迷、米国の関税措置など、企業を取り巻く環境は不透明感を増している。
長年続いたデフレマインドを払拭し、成長の果実を賃金や投資へ着実に循環させるためには、適切な価格転嫁を商習慣として定着させることが、我々経済界の責務である。
2023年1月以来、3年連続で経済3団体による共同要請を発出し、「パートナーシップ構築宣言」の推進活動を行ってきた。宣言企業数は約5倍に増加するなど年々普及しているが、昨年11月に中小企業庁が公表した調査結果では、価格転嫁率は5割程度にとどまるなど、価格転嫁はいまだ道半ばの状況にある。要因には、サプライチェーンにおいて、下流に位置する中小企業にはコスト転嫁の恩恵が、十分に届いていない状況が継続していることなどが挙げられる。サプライチェーン全体を強靭化し、付加価値を増大するためには、日本の強みである大企業と中小企業の共存共栄関係の再構築が求められる。
そのためにも、民間事業者においては経営者トップが意識を持って悪しき商習慣を改める行動をもって、「パートナーシップ構築宣言」の実効性を高めることが不可欠である。
加えて、本年1月1日の 「中小受託取引適正化法 以以下、取適法)」施行を契機として、適用となる企業はもとより、あらゆる業種業態のさまざまな取引を含め、価格転嫁を社会全体で受け入れる商習慣の確立に向けて、官民挙げて推進していくことが急務である。
本年も経済3団体として、会員企業、特にサプライチェーン上流に位置する大企業、発注者となる中小企業に対して、「パートナーシップ構築宣言」の趣旨の徹底と実行を強力に進めるとともに、未宣言企業に対して宣言への参画を呼びかける。
1.経営者が先頭に立った取引適正化への取組み強化
- 経営者自らが先頭に立ち、「パートナーシップ構築宣言」について、積極的に宣言・公表、社内での周知を行うとともに、実行とフォローのための社内体制を明確に示し、取引適正化の徹底を図る。
- 宣言後も、経営者は、実行状況を確実に把握し、実効性確保のため宣言内容の不断の見直しを図る。また、直接の取引先を通じて、その先の取引先へ働きかけるなど具体的な行動により宣言の実効性確保に努める。
- 経営者は、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(別添1)に沿った行為を徹底するとともに、調達部門等の実務者が価格転嫁を受け入れたとしても不利益を被ることのない人事評価制度の整備に努める。
2.「取適法」の施行を契機とした価格転嫁等の推進
- 「取適法」の趣旨を理解のうえ、自社の取引を改めて見直し(別添2)、依然として価格転嫁率が5割程度にとどまる労務費・エネルギー費・原材料費の価格転嫁を推進する。
- サプライチェーンの階層が深くなるほど、価格転嫁が困難になるという構造的な課題に対応するため、サプライチェーン全体において、価格転嫁を商習慣として定着するよう取り組む。
- 価格転嫁のみならず、支払条件の適正化(別添3)や優越的地位の濫用による悪しき商習慣からの脱却を目指し、あらゆる業種業態の大企業、中小企業ともに対等な取引関係の構築を目指す。
3.官民挙げた「価格転嫁の商習慣」の定着による社会全体の付加価値向上
- 単なるコストの転嫁にとどまらず、大企業と中小企業が連携して生産性を高め、人手不足や環境対応など、中小企業単体では解決困難な課題に対し、デジタル化や省力化投資を協働して進め、共創による付加価値向上を目指す。
- 「良いモノやサービスには値が付く」という適正な価格設定・受容の考え方をBtoB取引のみならず、最終消費者まで含めた社会全体の規範として定着させる。
- 政府においては、官公需への対応を含む、業種間格差・地域間格差を克服し、事業者の自発的かつ持続的な賃上げを可能とする環境整備に資する価格転嫁等の取引適正化を強力に推進することを求める。
以上