政策提言
「ふるさと納税」の控除額の上限設定に関する緊急意見
~共助資本主義の実現に向けた寄付の維持・拡大のために~
特定非営利活動法人 新公益連盟
共同代表理事 小沼 大地
一般社団法人 インパクトスタートアップ協会
代表理事 水野 雄介
公益社団法人 経済同友会
代表幹事代行 岩井 睦雄
共同代表理事 小沼 大地
一般社団法人 インパクトスタートアップ協会
代表理事 水野 雄介
公益社団法人 経済同友会
代表幹事代行 岩井 睦雄
- わが国の個人寄付は、ふるさと納税制度の活用もあって増加している(2020年:12,126億円→2024年:20,261億円)※1 。個人寄付の中心を担うふるさと納税制度は、個人が寄付先や使途を選択し、地域を応援する制度である。現在、ふるさと納税制度を活用した寄付は、寄付者の使途希望に応じて自治体を通じてNPO法人にも交付され、地域の社会課題の解決に資するさまざまな活動・事業に活用されている。
- 他方、ふるさと納税制度における高額な返礼品の設定による自治体間の過度な募集競争に対する批判が依然みられるとともに、高所得者ほど高額な返礼品が受け取れることなど、本来の制度の趣旨とのゆがみを指摘する声もある。
- 上記の批判等を踏まえ、現在、政府・与党では、ふるさと納税制度における控除額に定額の上限を設けるなどの制度見直しについて議論している。ふるさと納税制度における控除額の上限設定について、制度本来の趣旨と寄付およびその活用の実態を踏まえ、以下の対応について検討すべきである。
① ふるさと納税のうち返礼品を希望しない寄付については控除額に上限を設けないこと
返礼品を希望せず、寄付者が純粋に寄付先のNPO法人の活動等に賛同して行う寄付については、制度本来の趣旨に沿っていることから、上限設定の対象から除くべきである。
② ふるさと納税の返礼品の有無について把握する仕組みを構築すること
返礼品の有無により控除額に差異を設けられるよう、返礼品の有無について一元的に把握する仕組みを政府が主体となって構築すべきである。 - ふるさと納税制度については、制度本来の趣旨に沿った健全な運用に向けて、返礼品の扱いなど必要に応じた適切な制度の改善を行うべきである。他方、NPO法人の一部にはふるさと納税での寄付が活動資金の中心になっている先があるほか、今回のふるさと納税の見直しについて事業の縮小に繋がる懸念を抱く先も相応にあることから、返礼品のみにフォーカスした拙速な制度変更ではなく、実態に則した慎重な検討を要する。
- 新公益連盟、インパクトスタートアップ協会および経済同友会は、共助資本主義の実現に向けて、引き続きセクターを越えた社会課題解決のための連携・協働とそのための制度設計・環境づくりに取り組んでいく。
以上
※1:日本ファンドレイジング協会「寄付白書2025 インフォグラフィック」。なお、2024年の個人寄付額20,261億円中、ふるさと納税が12,728億円(全体の63%)を占める。