政策提言

日本経済のダイナミズム復活のために
―経営者・投資家の実践的活動と政府等への提言―

# 人材 # 企業法制/ガバナンス # 企業経営 # 税制 # 起業/スタートアップ # 雇用・労働
2024年度企業変革委員会
委員長 山口 明夫
(日本アイ・ビー・エム 取締役社長 執行役員)
委員長 川﨑 達生
(ユニゾン・キャピタル 取締役会長 パートナー)
委員長 平野 博文
(KKRジャパン 取締役社長)
委員長 吉田 憲一郎
(ソニーグループ 取締役 代表執行役 会長)

第1部 本文 第2部 講演録

提言のポイント ※詳細は、別添の提言本文をご確認いただきますようお願いいたします。

 わが国経済は、デフレからの完全脱却が見え始める中、持続的な成長への転換を図るかつてない重要なチャンスを迎えています。しかし、長期間のデフレ経済により定着したコスト抑制型経営からの転換、コーポレートガバナンス制度の実質化、リスクテイクを促す環境整備などの課題が残されています。

 本委員会では、2年間にわたり「日本経済のダイナミズム復活」に向けて、企業経営者と投資家を含むステークホルダーが活発な議論を重ね、互いの意見をぶつけ合った結果、企業経営者の本質的な役割は「パーパス(存在意味)とプロフィット(利益)をつなげること」にある、という共通認識に辿り着きました。この共通認識を起点に、企業経営者・政府・投資家がそれぞれの役割を果たし、三者協働により日本経済のダイナミズムを復活させることが必要であると結論づけています。

 そこで今回は、経営者として取り組むべき3つの課題とその解決に向けた8つの実践的活動を明示するとともに、政府への政策提言および機関投資家へのメッセージを示します。

1.経営者が取り組むべき課題

経営者が優先的に取り組むべき課題は、以下の3点であると整理しました。

  課題1

パーパスと企業文化の深化

成長に向けた内発的な動機を生み出すパーパスの実質化と、パーパスを日々の活動に反映させるための企業文化の変革

  課題2

稼ぐ力と投資の好循環の確立

資本コストを上回る収益を上げるための、事業ポートフォリオの絶えざる最適化とそれを支える経営基盤の構築

  課題3

企業価値向上のためのガバナンス強化

 

取締役会を中長期戦略の検討と戦略の実行の主軸として位置づけるための運営体制、ルール設定、人材確保策の具体的推進

2.経営者の実践的活動

3つの課題を解決する為に経営者が具体的に取り組む行動を「8つの実践的行動」としました。

1)パーパスと企業文化の深化
 ①パーパスの実質化
 ②適切な企業文化への変革と浸透

2)稼ぐ力と投資の好循環の確立
 ③資本コストを意識した稼ぐ力の強化
 ④成長分野への戦略的ヒト・モノ・カネの投資拡大

3)企業価値向上のためのガバナンス強化
 ⑤中長期目線の株主からの真摯な問題提起への責任ある対応
 ⑥取締役会での長期戦略の深化
 ⑦成果連動型の経営者の評価・報酬制度
 ⑧社外取締役に求める条件の再定義

3.実践的活動を支える政策提言

日本経済のダイナミズム復活をより推し進めるためには、政府等による環境整備が必要であり、以下6項目について提言を実施しました。

 提言1

「パーシャルスピンオフ税制」及び「株式交付制度」の対象拡大

 提言2

労働市場改革および労働法制の見直し

 提言3

債権者を社外取締役とする場合のガイドラインの明示

 提言4

株式の取引単位を単元株単位から1株単位へ縮小(単元株取引制度廃止)

 提言5

株主提案権の条件引上げ(1%以上もしくは300個以上議決権保有)

 提言6

実質株主を把握する制度の制定

4.機関投資家へのメッセージ

 近年、「エンゲージメント」の重要性は共有されているが、共通認識や相互理解の不足により企業と機関投資家の関係構築は課題があるあります。特に、中長期目線での双方向の対話の質を向上させることが必要であり、以下6点のメッセージとして整理しました。

双方向のコミュニケーションの実現
企業価値向上に向けた対話の実現
有益情報の共有
担当者の継続性の確保
協働エンゲージメントの拡大
長期目線の投資活動拡大

以 上

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