会社法改正審議を通した企業統治改革の加速実現を
委員長 長谷川 閑史
委員長代理 小林 喜光
(三菱ケミカルホールディングス 取締役社長)
事務局長 冨山 和彦
(経営共創基盤 代表取締役CEO)
「成長戦略実行国会」が開幕し、日本再興戦略の実現へ向けた議論が始まった。安倍首相が目指す「世界で一番企業が活躍しやすい国」を実現するためには、諸外国と比べて遜色ない規制、税制、法制など経済社会の制度インフラを整備する必要がある。
この点、会社法改正については、昨年9月に法制審議会が「会社法制の見直しに関する要綱」を取りまとめてから1年余りが経過し、今臨時国会に改正法案が提出される見通しとなった。
同要綱では、会社法によって独立取締役又は社外取締役(以下では区別なく単に「独立取締役」という。)の選任を強制することは見送られ、取引所の上場規則によって、いわゆる「Comply or Explain」(応諾か釈明か)のルールが導入されることとなった。これを受け、各取引所は、上場規則の見直しを検討している。
しかし、Comply or Explainの下では、独立取締役を置くことが相当でない理由を説明すれば、独立取締役を設置しないことも許される。特に定型的、表層的な釈明が許される場合、ルールが形骸化する可能性が高く、その結果、独立取締役の導入が進まない事態となることが懸念される。
ところで、当会は、上場企業では、独立取締役を少なくとも1名導入すべきであるし、さらには複数名導入することが望ましいこと及び公的なルールによって独立取締役を義務付けるのであれば、上場規則で検討するべきであることを繰り返し提言してきた。
上述の通り各取引所は、上場規則の見直しの検討を開始しているが、単なるComply or Explainによる規律のみでは、踏み込み不足の感が否めない。そこで、当会は、複数独立取締役の選任がさらに促進されるために必要な措置を求める。
具体的には、今回の会社法改正案の審議を通して、上場規則を通じた複数独立取締役の選任を強制するために、必要な政省令やガイドライン等の策定を含めた適切かつ実効的措置を講ずる方向を明確化されることを求める。
自民党は総合政策集「J −ファイル2012」、「J −ファイル2013」において社外取締役の導入促進、上場会社における複数独立取締役義務化を含む「企業統治改革の推進」を掲げている。複数独立取締役の義務化については、適格者の確保等の課題もあり、義務化の実施時期・方法等についての現実的な対処が必要と考えるが、上述のとおりこの改革の方向性については、大いに首是すべきものである。
昨年末、政権交代により発足した安倍内閣による第三の矢が重要な局面を迎える中で、今回の会社法改正を通して企業統治改革を加速することは、企業や投資家等の行動変革を促し、持続的な経済成長の実現に大きく資すると考える。
以上